新潟県立看護大学 看護研究交流センター どこでもカレッジ 公開講座 新潟県立看護大学 小泉 美佐子 高度実践看護師の養成教育と 活動の展望 新潟県立看護大学 看護研究交流センター どこでもカレッジ 公開講座 新潟県立看護大学 小泉 美佐子 本日のシンポジウムのテーマは、「高度実践看護師の養成教育と活動の展望」としました。 私は、前職の群馬大学大学院修士課程において、専門看護師の教育課程の開設にかかわり、平成18年度から老年看護学分野において老人看護のCNS教育に携わりました。 CNSコースの教育課程は、日本看護系大学協議会の認定を受ける必要があり、その認定もなかなか厳格ということで、2年くらいかけてその準備に当たりました。 老人看護分野の教育課程編成に関して、当時、その認定審査を、本学の前学長でいらっした中島先生に助言をもらいに平成18年3月にこの大学にきました。 その年も結構大雪の年で、3月とはいえ雪が積もっていたのを覚えています。 それで、私は、昨年4月から本学に勤めることになりましたが、中島先生が、そのことを知って「新潟県立看護大とは、そのころから縁があったのね」といった言葉をもらいました。 本学では、大学院修士課程において、がん看護学、地域看護学分野にCNSコースがあります。 老年看護学分野においては、今年からCNS教育を開始しております。但し、先にも申しましたが、その教育課程は日本看護系大学協議会の認定審査を受ける必要があり、 規則上、そのコースを学ぶ2年生の在学生がいることを前提としているところから、来年度に認定審査を受ける予定となっております。 このように私は専門看護師の養成教育に関わり、日本看護系大学協議会の役員・理事を数年間勤めた経験もあるところから、基調講演として表題のテーマでお話したいと思います。
高度実践看護師をめぐるトピックス 看護師特定能力認証制度骨子(案) チーム医療推進会議 平成23年11月18日~ ・・・継続中 1.特定看護師制度をめぐって 看護師特定能力認証制度骨子(案) チーム医療推進会議 平成23年11月18日~ ・・・継続中 *(医師の指示の下)医行為まで踏み込んだ高度実践看護師の養成、 認証等のうごき 2.専門看護師教育課程38単位への移行計画 26単位→38単位 日本看護系大学協議会 平成23年6月決定 平成24年度 認定開始 *ケア+キュアを統合的に提供できる能力の基盤形成;医学的知識・技術の強化 高度実践看護師をめぐる最近のトピックスとして 1.特定看護師制度をめぐって 後で特定看護師制度に向けた動きについては説明しますが。 資料の3枚目をご覧ください。平成23年11月18日第9回チーム医療推進会議、この会議は厚生労働省におかれた会議ですが、看護師特定能力認証制度骨子(案)というのが示されています。その背景及び目的に、医療現場における患者の高齢化や医療の高度化・複雑化に伴い、・・・・ この特定看護師制度制定に向けた審議は現在も進行中でありますが、一方、従来からある専門看護師養成に関わる教育課程認定も従来は大学院修士課程において26単位の基準が38単位へ移行するということが決まり、今年度から38単位の教育課程認定がなされています。 こちらは、これまでのケアに医学的キュアをプラスした高度な実践ができる能力の基盤形成という方向が打ち出されています。
高度実践看護師の定義 「高度実践看護師(Advanced Practice Nurse: APN)とは、看護系大学院の教育を受け、個人、家族集団および地域に対して、ケア(Care)とキュア(Cure)の融合による高度な知識・技術を駆使して、疾病の予防および治療・療養過程の全般を管理・実践できる者を言う。」 (日本看護系大学協議会高度実践看護師制度推進委員会) さて、高度実践看護師とは何ぞやという定義になりますが、Advanced Practice Nurse という英語を高度実践看護師と訳しています。 日本看護系大学協議会高度実践看護師制度推進委員会の定義では、高度実践看護師(Advanced Practice Nurse:APN)とは、看護系大学院の教育を受け、個人、家族集団および地域に対して、ケア(Care)とキュア(Cure)の融合による高度な知識・技術を駆使して、疾病の予防および治療・療養過程の全般を管理・実践できる者を言う。」
国際看護協会(International Council of Nurse)によるANPの定義 「APNは、専門的な知識ベース、複雑な意志決定能力、実践の拡大に対応出来る臨床上の能力、実践の資格を与えた国や背景が示す特性を有する登録(正)看護師のことである。働き始める時点で修士号を持つことが望まれる」 ①より高い専門性を有する ②複雑な健康問題に取り組む能力を有する ③実践の資格を持つ ④大学院での教育を受けていること また、国際看護協会による定義では、高度実践看護師(Advanced Practice Nurse: APN)とは、専門的な知識ベース、複雑な意志決定能力、実践の拡大に対応出来る臨床上の能力、実践の資格を与えた国や背景が示す特性を有する登録(正)看護師のことである。働き始める時点で修士号を持つことが望まれる」と定義されています。 要約すると、①より高い専門性を有する ②複雑な健康問題に取り組む能力を有する ③実践の資格を持つ ④大学院での教育を受けていること になります。 ちなみに、アメリカでは、ANP教育は修士課程から博士課程へ、修士課程は、ナースのジェネラリスに対する卒後教育へ移行してきているとのことです。 米国:修士課程→博士課程へ移行
APNの種類/称号 わが国の現状では、専門看護師 (Certified Nurse Specialist)のみがAPNと考えられる。 高度実践看護師(APN)の言葉が勝手に使われている! 米国では ・Clinical Nurse Specialist(CNS):専門看護師 ・Nurse Practitioner(NP):ナースプラクティショナー ・Certified Nurse Midwife(CNM):助産師 ・Certified Registered Nurse Anesthetist(CRNA):看護麻酔師 ------------------------------------------------------------------- Non Nurse *Physician Assistant(PA):フィジシャンアシスタント
高度実践看護師(APN)の分類と割合 (2004年) 高度実践看護師(APN)の分類と割合 (2004年) 高度実践看護師 240,461人 (全看護師の8.3%)
APNの能力 Hemric(2009)による概念図から作成 核となる能力 中心的能力 APNの要件 熟練した教育指導能力 コンサルタントとしての能力 研究の能力 臨床の専門性や組織内のリーダーシップ 調整能力 倫理的意思決定能力 直接的臨床実践 大学院教育 認定 患者家族に焦点化した実践
日本看護協会による資格認定制度 ・専門看護師 (Certified Nurse Specialist : CNS) 1996年誕生 ・認定看護師(Certified Nurse : CN) 1997年誕生 ・認定看護管理者(Certified Nurse Administrator) 1999年誕生
専門看護師とは 認定看護師との比較 専門看護師 認定看護師 日本看護協会専門看護師認定審査に合格し、複雑で解決困難な看護問題をもつ個人、家族及び集団に対して、水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識及び技術を深めた者をいう。 日本看護協会認定審査に合格し、ある特定の看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる者をいう。
6つの役割を果たすことにより保健医療福祉や 専門看護師の役割 認定看護師との比較 専門看護師 認定看護師 実践 個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する。 相談 看護者を含むケア提供者に対しコンサルテーションを行う。 調整 必要なケアが行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う。 ・ 倫理調整 個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる。 教育 看護者に対しケアを向上させるため教育的機能を果たす。 研究 専門的知識及び技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究活動を行う。 実践 指導 相談 看護者に対しコンサルテーションを行う。 専門看護師 6つの役割を果たすことにより保健医療福祉や 看護学の発展に貢献する
専門分野 認定看護師 21分野10,875人 専門看護師 11分野795人 全保助看就業人口の0.074% 専門看護師 11分野795人 認定看護師 21分野10,875人 がん看護(327) 精神看護(116) 地域看護(23) 老人看護(41) 小児看護(73) 母性看護(38) 慢性疾患看護(63) 急性・重症患者看護(85) 感染症看護(15) 家族支援(14) 在宅看護(2012年認定開始) 救急看護、皮膚排泄ケア、集中ケア 緩和ケア、がん化学療法看護、 がん性疼痛看護、訪問看護、 感染看護、糖尿病看護、不妊症看護、 新生児集中ケア、透析看護、 手術看護、乳がん看護、 摂食・嚥下障害看護、小児救急看護、 認知症看護、がん放射線療法看護、 脳卒中リハビリテーション看護、 慢性呼吸器疾患看護、 慢性心不全看護
専門看護師への道 ・日本国の保健師、助産師及び看護師のいずれかの免許を有する ↓ 1.日本看護系大学協議会が認定する専門看護師教育課程(看護系大学大学院修士課程)を修了し所定の単位(総計26または38単位)を取得 2.実務経験が通算5年以上、3年間以上は専門分野の実務経験 ↓ ・認定審査(書類審査・筆記試験) ・専門看護師認定症交付・登録 ・5年毎に更新 (看護実践の実績、研修実績、研究業績等書類審査)
新潟県の専門看護師登録者数 2012年8月1日現在 ・がん看護 5名 ・慢性疾患看護 2名
認定看護師への道 ・日本国の保健師、助産師及び看護師いずれかの免許取得 ・実務経験が通算5年以上、うち3年以上は認定看護分野の実務経験 ↓ ・認定看護師教育機関(課程)修了(6か月・615時間以上) ・認定審査(筆記試験) ・認定看護師認定症交付・登録 ・5年ごとに更新 (看護実践と自己研修の実績について書類審査)
専門看護師養成の教育課程38単位のあり方に対する提案(2009年5月) (当時のカリキュラムで強化すべき点) 1.共通科目(3P)の強化 ①advanced フィジカルアセスメント ②advanced 生理学・病態生理学 ③advanced 薬理学 2.専門分野の教育内容の強化 3.実習の強化
専門看護師教育課程新基準 科目 内容 新基準 現行 共通科目A 教育・研究・管理・倫理・ 政策・コンサルテーション 8 共通科目B 8 共通科目B ①臨床薬理学 ②フィジカルアセスメント ③病態生理学 6 0 専攻分野共通科目 専攻分野専門科目 専門分野に関する診断・治療 に関する教育内容 sub specialityの強化 14 12 実習 実習の強化 10 6 計 38 26
専門看護師教育38単位の意義 ・11の専門看護師の分野ごとに、Advancedな フィジカルアセスメント・生理学・病態生理学、 薬理学および診断・治療に関わる看護実習を強化することによって、ケアとキュアを統合的に提供する能力の基盤ができる。 (特定の医行為を修得する道筋をつける???)
38単位への移行計画(2011年6月決定) 日本看護系大学協議会 【38単位】 【26単位】 ・23年度 総会で決定 ・新規・更新とも10年有効 ・24年度 認定開始 ・新規・更新とも9年有効 ・25年度 以後毎年1年ずつ減少 ・26年度 ・26年度 新規認定最終年 ・26年度 ・27年度 (新規申請の再 申請受付) ・32年度 26単位教育の最終年 (2020年度) 33年度 全て38単位 (2021年度)
専門看護師教育課程の新基準移行に伴う審査方法の変更について 年度 申請年度 審査基準 ~2023年度 (旧課程修了から 3年後まで) 26単位で申請可 旧基準 2024年度~ 38単位で申請 新基準 日本看護協会認定部ホームペイジから
特定看護師(仮)の検討経過 ・平成21年8月~「チーム医療の推進に関する検討会」厚生労働省 背景には医師不足・偏在 ・平成22年3月19日 同検討会報告書 特定看護師(仮称)という新たな枠組み・制度づくり構築の必要性 ・平成22年5月12日 「チーム医療推進会議」厚生労働省 特定看護師の養成調査施行事業 (A)修士課程 調査施行事業 7大学院11課程 (B)研修課程 調査施行事業 1研修期間3課程 (皮膚・排泄ケア、救急、感染管理) 特定看護師業務施行調査 看護業務実態調査(チーム医療推進のための看護業務WG)
医行為をめぐっての解釈 医師法 第17条 医師でなければ、医業をなしてはならない。 第17条 医師でなければ、医業をなしてはならない。 ここでいう医業(歯科医業を含む)とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことである。
保健師助産師看護師法 第五条 この法律において「看護師」とは、厚生大臣の免許を受けて、傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。 第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。
診療の補助としての医行為 医行為 診療の補助 看護行為 A B C A 絶対的医行為 医師のみが行い得る医行為 (医師法第17条) A 医行為 B 診療の補助 C 看護行為 A 絶対的医行為 医師のみが行い得る医行為 (医師法第17条) 高度な知識、または 技術を要する医行為 (診断、処方、治療方針の決定、手術など) B 相対的医行為 医師の指示に基づき、看護師が行いうる医行為(保助看法第37条) C 療養上の世話 看護師の知識・技術において行う看護行為(保助看法第5条)
看護師特定能力認証制度骨子(案) 平成23年11月18日 【制度骨子の抜粋】 1 特定行為 医師又は歯科医師の指示の下、臨床に係る 実践的かつ高度な理解力、思考力、判断力その他の能力をもって行わなければ、衛生上危害を生ずるおそれのある行為に関する規定を保健師助産師看護師法に位置づけることとする。 ・褥瘡の壊死部分のデブリードマン ・脱水の判断と補正(点滴)等
2 特定行為の実施 看護師は、以下のいづれかの場合に限り、特定行為を実施することができることとする。 (1)厚生大臣から能力の認証を受けた看護師が、能力認証の範囲に応じた特定行為について、医師の指示を受けて実施する場合 ・医師による包括指示がある (2)看護師が、特定行為を実施しても衛生上危害を生じるおそれのない業務実施体制で、医師の具体的な指示を受けて実施する場合 ・特定のマニュアル整備 ・特定行為それぞれに対する講習、トレーニング 等を実施
3 厚生労働大臣の認証 (1)厚生労働大臣は、以下の要件を満たす看護師に対し、特定能力認証証を交付することとする ①看護師の免許を有すること ②看護師の実務経験が5年以上であること ③厚生労働大臣の指定を受けたカリキュラムを修了すること 大学院修士課程(2年間)程度及び8か月程度 ④厚生労働大臣の実施する試験に合格すること (2)特定能力の交付を受けた者は、特定能力認証証の交付を受けた後も、特定行為を含む業務を行うのに必要な知識及び技能に関する研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない
第13回チーム医療推進会議 平成24年8月22日 これまでに提案している厚生労働大臣による能力認証を改め国家試験は行わないで、 国は研修機関を指定し、研修の修了者を看護師籍に登録するという試案 A案:骨子案(大臣認証案) 試案(指定研修機関案) B案:民間(学会等)認証案 日本医師会は試案にも反対
看護師の特定能力の認証に関する医行為分類(案)と 教育内容等基準(案)に関する意見の募集と説明会の開催について・・・24年 9月7日・18日 特定看護師制度の行方 看護師の特定能力の認証に関する医行為分類(案)と 教育内容等基準(案)に関する意見の募集と説明会の開催について・・・24年 9月7日・18日 ・報道によると来年度の通常国会にて審議 ? ? ?
高度実践看護師の有効性を 示す課題 *専門看護師・認定看護師の名称は広告可能だけでなく 専門看護師・認定看護師による診療報酬加算 【認定看護師の方が専門看護師より優位】 *アウトカムを示す課題 ・患者のアウトカム ・ケアに伴う満足度 ・ヘルスケアのコスト ・ケアシステムの質向上 看護ケアを基盤とした 患者・家族への関与 環境・資源への働きかけ 全人的アプローチ
本学大学院・高度実践看護師 教育課程 ・がん看護CNSコース ・地域看護CNSコース ・老年看護CNSコース 平成24年度開講、25年度教育課程認定申請 *看護管理学→認定看護管理者資格取得に つながる