リーンスタートアップ法を適用した プロジェクト立案・計画方法 静岡大学大学院　情報学研究科　 石田　諭史　湯浦　克彦

目 次 背景,関連研究および目的 リーンスタートアップ法の概要 PM教育用リーンキャンバスの提案 プロジェクトの分類 導入手順 目　次 背景,関連研究および目的 リーンスタートアップ法の概要 PM教育用リーンキャンバスの提案 プロジェクトの分類 導入手順 評価方法および結果 考察と今後の課題 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

静岡大学情報学部におけるプロジェクトマネジメント 静岡大学情報学部におけるプロジェクトマネジメント　 「プロジェクトマネジメント」開講 学生独自のプロジェクトを用いた演習形式 背景 目的 達成方針 導入 立案 発表 計画 自主開発 インターフェース改善 某HPの利用方法が不明 外注 学生 マニュアル作成 紙媒体 ロジックツリー 成果提出 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

学生のプロジェクト立案例 【イベント系】市場，大学，地域の活性化を目的としたプロジェクト 学生限定格安バスサービス 学生食堂の食券システム 【業務系】大学等の業務について，利便性の向上や，効率化を目的としたITシス テムや業務改善モデルを提案するプロジェクト 【イベント系】市場，大学，地域の活性化を目的としたプロジェクト 【ビジネス系】新しいビジネスモデルを提案し，顧客に新しいサービスや既 存のサービスに付加価値を付けて提供するプロジェクト 学生限定格安バスサービス 学生食堂の食券システム 移動式洋服販売 空き教室検索システム 静岡大学合同ライブ 学祭用HPの開設 （2012～2013年度の受講生の成果物より） 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

プロジェクトマネジメントの概要 監視プロセス 立ち上げ 実行プロセス 終結プロセス プロセス 計画プロセス 7 つの管理対象 ５つのプロセス 監視プロセス 立ち上げ プロセス 実行プロセス 終結プロセス 計画プロセス 　　7 つの管理対象 【立案】要件，目的　 【作業項目】WBS 【タイム】工数，日程 【コスト】費用 【体制】人材管理 【品質】性能 【リスク】リスク 作業項目 リスク タイム 立　案 品　質 コスト 体　制 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

計画プロセスにおける学生の問題 ①計画の詳細化 ②リスクの特定 を困難と感じている ③正確な見積もり ②リスクの特定　を困難と感じている ③正確な見積もり （2012～2013年度の受講生の講義レポートより） 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

ゼロベース思考法を用いたプロジェクト演習の実施 関連研究 ゼロベース思考法を用いたプロジェクト演習の実施 文教大学の那須は，プロジェクト自体を目的化しないように，学生には独自の経験を基にしたプロジェクトを提案させている．その一つの思考法として先入観や実施方法の枠組みを取り払うゼロベース思考法を導入している． 出典　那須一貴：プロジェクト・マネジメントの学部教育的意義 出典：大学のプロジェクトマネジメント教育 シナリオベースのオンライングループワーク環境を構築 東京工科大学の中村らは，プロジェクトマネジメント教育用のオンライン演習環境を構築し，仮想プロジェクトの問題を学習者に提示するロールプレイ演習形式の講義を行った．プロジェクトは独自の提案ではなくシナリオを使用し，学習者は計画プロセスと実行プロセスを疑似体験することができる 出典　中村太一，丸山広，立川結貴：大学のプロジェクトマネジメント教育 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

演習型プロジェクトマネジメント教育において， 学生がプロジェクト計画を細部まで検討し， 充実した成果物を作成するための方法論を開発すること 目　的 演習型プロジェクトマネジメント教育において， 学生がプロジェクト計画を細部まで検討し， 充実した成果物を作成するための方法論を開発すること 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

リーンスタートアップ法 学習 構築 エリック・リースが考案した ビジネスを立ち上げるための マネジメント手法 アイディア 計測 データ 製品 エリック・リースが考案した　ビジネスを立ち上げるための　マネジメント手法 短期間に【構築－計測－学習】を繰り返し，顧客主導で製品を開発する． 出典　アッシュ・マウリャ：Running Lean 実践リーンスタートアップ，オイラリー・ジャパン，p13,（2012） 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

出典 アッシュ・マウリャ：Running Lean 実践リーンスタートアップ， リーンキャンバス 簡潔性・携帯性に優れたビジネス企画の検証ツール． 俯瞰したビジネス企画文書を高速で作成． 重要度が高い順に記述 市場 製品 出典　アッシュ・マウリャ：Running Lean　実践リーンスタートアップ， オイラリー・ジャパン，p27,（2012） 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

ユーザー主導のアプリケーション開発手法が必要． 導入理由 静岡大学の学生が立案するプロジェクトは，工数や規模が小さいスマートフォン向けサービス開発プロジェクトが増えている傾向がある． Ex．家計簿記録サービス(2013)，空き施設検索システム(2013)，etc ユーザー主導のアプリケーション開発手法が必要． リーンスタートアップ法の導入 ウォーターフォール型開発 取り組む課題や解決方法が定まっている 市場の変化が緩い 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

リーンスタートアップ法を用いることで顧客のニーズへの到達度合いが上がる 導入の狙い リーンスタートアップ法を用いることで顧客のニーズへの到達度合いが上がる 立ち上げプロセス 計画プロセス 時間経過 顧客の要求への到達度合い リーンスタートアップ法 従来の立案 Ver.1作成 Ver.2 顧客ニーズを捕えたプロジェクトの立案が可能 顧客ヒアリングで 早期撤退or仕様変更 時間やリソースをすでに消費し，撤退や仕様変更が困難 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

拡張① リスクの記述項目の追加 従来リーンキャンバスは「リスク」に対応していない リーンキャンバス 立案 作業項目 チャネル コスト構造 拡張①　リスクの記述項目の追加　 従来リーンキャンバスは「リスク」に対応していない プロジェクトマネジメント の管理対象 リーンキャンバス 顧客・課題・ 価値提案・解決策 立案 作業項目 チャネル スケジュール コスト構造 コスト 収益の流れ 体制 主要指標 品質 圧倒的な優位性 リスク 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

既存のサービスや類似した事例があることを前提としている 拡張②　「顧客との関係」の入れ替え 既存のサービスがない場合のプロジェクトに対応する 【圧倒的な優位性】 他社には真似できない点を記述． 既存のサービスや類似した事例があることを前提としている 【顧客との関係】 提供するサービスを通して， 顧客とどのような関係を 構築するのかを記述． 出典　アレックス・オスターワルダー， イヴ・ピニュール：ビジネスモデル・ ジェネレーションビジネスモデル企画書 初版，翔泳社，p14，（2012） 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

拡張③ 管理対象をすべて網羅 既存の製品・サービスがないプロジェクトに対応 【顧客との関係】の 追加 【リスク】の追加 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

プロジェクトの分類 プロジェクトの特徴に応じて計画の一部を充実化する プロジェクトを6つの型に分類 分類型 分類方法 プロジェクトの内容 チャネル型 顧客の集客や宣伝を課題としたプロジェクト 主要指標型 基準となる品質を顧客に提供するためのプロジェクト コスト型 直接の利益がなく，支出が大きいプロジェクト 収益型 利益を出すことを目的にしたプロジェクト 顧客との関係型 顧客との関係を獲得・維持・拡大を目指したプロジェクト リスク型 利便性の裏に潜む危険因子を考慮すべきプロジェクト 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

講義手順 立ち上げ（立案）プロセス 計画プロセス 構築 構築 発表前 レビュー 構築 計測 計測 中間発表 最終発表 学習 学習 ロジック ツリー， LC作成 分類決定 構築 構築 LC作成 プロジェクト計画 発表前 レビュー 構築 計測 計測 回収 中間発表 ロジック ツリー， LC返却 最終発表 学習 学習 LC：リーンキャンバス 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

評価対象 中間・最終成果物から講義手順の効果を定量的に評価 構築 構築 最終発表 発表前 レビュー 計測 計測 構築 中間発表 学習 学習 ロジック ツリー， LC作成 分類決定 構築 構築 LC作成 最終発表 プロジェクト計画 発表前 レビュー 計測 計測 構築 回収 中間発表 ロジック ツリー， LC返却 学習 学習 評価対象 最終成果物 LC：リーンキャンバス 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

分類型別の評価方法 チャネル型の評価 宣伝・PRに関するWBSの階層と末端の要素を計測． 左上図では， 階層は3層 要素は2個 1.1 ポスター 1.1.1 ポスター準備 1.1.2 ポスター貼り付け プロジェクト チャネル型の評価 宣伝・PRに関するWBSの階層と末端の要素を計測． 左上図では， 階層は3層　要素は2個 主要指標型の評価 品質計画の目標値や具体的な数値の要素を計測． 左下図では，要素数は5個 目標指数 目標値 学生からの改良要求頻度 1回 / 年 システム使用時の誤差 平均故障回数 3回 / 年 平均回復時間 1日 稼働率 (362 / 365) * 100 = 99% 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

最終成果物の充実度評価方法 収入 支出(コスト) 収益型 コスト型 収入・支出の個数を要素数として計測 支出の個数を要素数として計測 商品 （・単価2,000×84着 　・単価3000×72着） 168,000 （・仕入れ値1000×100着 　・仕入れ値1500×10着） 215,000 デザイン商品 (単価2,000×24着） 216,000 (・単価2,500×10着） 25,000 NPOからの奨学金 50,000 ガソリン代 70,000 PRのための費用 4,000 車両のリース支払 諸経費 35,000 駐車場代 20,000 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

最終成果物の充実度評価方法 リスク型 リスク表から特定されたリスクの個数を要素数として計測． 左図では，要素数は4 顧客との関係型 リスク項目 メンバの多忙による 進捗遅れ メンバの病気による 欠員 利用者が増えない Webページが続かない リスク型 リスク表から特定されたリスクの個数を要素数として計測． 左図では，要素数は4 顧客との関係型 顧客の獲得・維持・拡大に基づく要求仕様の目的の有無と関係を結ぶためのコストを見積もりに含まれているかを計測． 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

分類別の評価結果 チャネル型，収益型の充実度は向上 主要指標型，コスト型，顧客との関係型には効果が薄い 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

リスク型の再評価および結果 リスク型の各要素を分類 2014年度は3タイプのリスクをすべて特定された． 【製品リスク】 【市場リスク】 【顧客リスク】 2014年度は3タイプのリスクをすべて特定された． 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

考察 チャネル型の『チャネル＿要素数』および収益型の　　『収入・支出見積もり要素数』が増加によって，それぞれの分類型のプロジェクト計画が充実化された． リスク型は製品リスク・市場リスクだけでなく顧客リスクが特定されており，質的に充実化された． 利点 主要指標型，コスト型，顧客との関係型には効果が薄く，充実化に至っていない． 課題点 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

今後の課題 導入手順の見直し プロジェクト計画全体の充実化 【構築－計測－学習】のサイクルを複数回実施． 計画プロセスにおいてレビューの実施． リーンキャンバスと管理対象の関係を公開 導入手順の見直し 分類型ごとに一部のプロジェクト計画が充実化がされたが，その他の計画内容の充実化を目指す． プロジェクト計画全体の充実化 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室

プロジェクトとビジネス企画を一緒にして良いのか？ →いずれにも「有期性」と「独自性」があるため，一緒にして良いと考えている 補足 プロジェクトとビジネス企画を一緒にして良いのか？　 →いずれにも「有期性」と「独自性」があるため，一緒にして良いと考えている リーンスタートアップではなくインスペクションなのでは？ →本研究ではプロジェクト立案のチェックリストがないため，インスペクションと違うと考えている 静岡大学大学院　情報学研究科　湯浦研究室