ソフトウェア無線機と その国内における開発の現状 キマグレー!!!管理人 しょ~へ~
1・まえがき ・現在わが国において、自動車電話・携帯電話に代表される 無線通信技術は爆発的な普及が続いている。 しかし、自由競争の先に見えてくるものは周波数の枯渇問題と 複数システムの乱立による弊害である。 このような弊害や問題を乗り越え、第4世代の無線機技術として 期待されてるのがソフトウェア無線機である。 ソフトウェア無線機とは・・・ 乱立する幾多のシステムをソフトウェアのダウンロードにより1台の 無線機で吸収し、更にはアンテナの指向性、変調方式、等化方式等 を適応的に可変にし、結果的に周波数の有効利用にも貢献しうる もの。
しかし、ソフトウェア無線機の実現に向けてはまだまだ高いハードルが ある・・・ このような無線機は自身の無線機能をソフトウェアで変更できることが 必須であり、広帯域な無線部、低消費電力で高速なADC/DAC、 DSP、FPGA等のハードウェアにかかわる開発ばかりではなく、JAVA ライクなプログラムの記述、実行環境等のソフトウェアにかかわる開発 も大きな時間が必要である。 実用化にあたっては当面、製品化時期、コスト、パフォーマンスの トレードオフによる最適化が課題といえる。
2・ニーズから観た ソフトウェア無線機 ソフトウェア無線機 図1 ニーズからみたソフトウェア無線機 解決が迫られている主要課題 期待される無線機像 ソフトウェア無線機 ●高速化、マルチメディア化への対応 (音声、画像、データ) ●周波数の有効利用 ●マルチパス・フェージング対策 ★アクセス方式可変 ★周波数大域可変 ★変調方式可変 ★アンテナ指向性可変 ★チャンネル帯域可変 世の中の状況 期待させる端末像 ○多くのスタンダードの乱立 (AMPS,PHS,CDMA-one等) ○端末開発周期の短期化 (開発コストとバグ処理の増加大) ☆マルチモード端末 ☆ソフトウェアオリエンテッドな端末 必要とされる主な要素技術 図1 ニーズからみたソフトウェア無線機
必要とされ主な要素技術 ◎無線機システム技術→スマート無線機アーキテクチャ 単にソフトウェアの入換えで機種変更を可能とするだけでなく、 ディジタル信号活用して広帯域化、高効率化を達成しうる無線機を 構築する ◎アンテナ技術→アダプティブアンテナ 空間フィルタリング機能を有する信号処理アンテナであり、マルチパス フェージング対策には有力であり、実装する事によって周波数の利用 効率が向上する ◎回路技術→デバイス適応型回路アーキテクチャ 変化する無線環境に応じた木目細かな適応制御により、結果的に効率 のよい広帯域化、低消費電力化を達成しうるアナログ回路構築のため の設計指針を意味する
◎半導体デバイス→アナログ回路への最適化 半導体プロセスのアナログ回路への最適化 ◎デジタル信号処理→最適化&適応信号処理アルゴリズム 単に各種機能の可変化にかかわる最適アルゴリズムだけでなく アナログ回路等の適応制御のためのアルゴリズムをも含む広範な 適応制御アルゴリズムを意味する
3・シーズからみた ソフトウェア無線機 無線機技術の懸かる流れの先には二つの方向が見えてくる。 ・アナログ技術の行く先の姿として「CMOSによる1チップ無線機」 ・ディジタル技術の行く先の姿として「ディジタル無線機」 ここでの「ディジタル無線機」は究極的にアンテナ、フィルタ、ADC、 DAC以外のアナログ部品を必要としない無線機を意味する。 しかし、1チップ化に意義を見出す事が出来ても、消費電力とコスト の面から単なるディジタル無線機に意義を見出す事は難しい。 ディジタル無線機に意義を見出す為に、付加価値をつけなければ ならない。 ここでの、付加価値はソフトウェア化するということ!!!
4・ソフトウェア無線機の 理想と現実 理想のソフトウェア無線機を定義すると、最後のデータ出力処理を 通して ・システムごとのチャネル単位でのデータとして ・システムごとの複数のチャネルにまたがる合成データとして ・システムにまたがる複数のチャネルの合成データとして 出力される。データ出力処理についてはほかにも種々考えられ、 このような多様性がソフトウェア無線機の魅力ある可能性につながる 最大の特徴となる。 ソフトウェア無線機に期待されるもう一つの用要素はパフォーマンスと その多様性がソフトウェアの入換えのみで自由に変更できるとこである
以上、ソフトウェア無線機の理想像をパフォーマンスの面から見て きたが、ハードウェアの面から見ることにより現実の姿が見えて くる。 (a) (b) (c) ADC DSP LPF DSP ADC BPF ADC DSP (d) (e) BPF LNA ADC DSP BPF LNA ADC DSP 図2 ソフトウェア無線機を早期に実現する為の妥協策
(a) 広帯域無線部がアンテナのみからなる構成がソフトウェア無線機の 理想像といえる。 (b) サンプリングを行う以上、エイリアシングによる不要波からの干渉を 抑圧するためのフィルタは必須である。なんで、(a)のアンテナとADCの 間にLPFを挿入したもの (c) 携帯電話の第3世代では2GHz帯の周波数の使用が決まっている。 この周波数帯をナイキストサンプリングする場合4GHz以上のサンプ リングプレートが必要であり、このクラスのADCの実現には数十年の 歳月が必要とされている。なので、早期実現のためにアンダサンプリング 方式がある。この場合の無線機構成でありLPFに代えて所望帯域のみ を通すBPFを挿入することによってエイリアシングの影響を抑圧している
(d) 携帯電話の世界では無線部に対し、100数十dBのダイナミックレンジ が要求されている。このレンジ内の信号をひずみなく直接ディジタル 変換するためには20ビット程度の分解能を有するADCが必要になる このような高分解能のADCが携帯電話に使えるようになるにはやはり 10年単位の歳月が必要である。そこでADCの前段にLNAを挿入し、 LNAの利得を可変する事によりADCに要求される分解能を軽減した 無線機の例 (e) 最後に残された問題がジッタの影響であり、これを軽減するための 最もオーソドックスな方法はサンプリングの対象としている周波数帯 を2GHzから下げる事である。そこでミキサを用いてダウンコンバート し、対象とする周波数帯を下げる事によりジッタの影響を軽減した 無線機の例である。 当面の間は(e)のレベルがソフトウェア無線機の現実解といえる。
5・ソフトウェア無線機の 開発状況 このように理想に近いソフトウェア無線機の開発には大きなハードル があり現実にはなお多くの時間が必要と思われる。このような状況下 においてソフトウェア無線機の開発を行う場合大きく二つの流れが 考えられる。 ・アプリケーションの実装を志向し、無線機そのものの開発よりも アプリケーションの実証を通して、ソフトウェア無線機の有効性、及び 利用形態を追求することに主眼を置く流れ ・ハードウェアにかかわる要素技術の開発を志向し、あくまでソフト ウェア無線機そのものの開発に主眼をおく流れ まず、後者の流れに沿った開発状況について述べる
現状の技術レベルを前提としてソフトウェア無線機を考える時、 マルチモード端末対応と部品点数削減の観点から ダイレクトコンバージョン方式の無線機が注目されている。 この方式では、システム帯域を一括受信すると、システム帯域内の チャネル信号間でのイメージが干渉となる。 無調整でのイメージ抑圧レベルは、30~40dBであり、イメージ抑圧 に対する仕様がより厳しい場合にはディジタル処理部からのフィード バック等による適応制御が必要となる。 このような適応制御がむりな場合の方法の一例としてLow-IF方式が 提案されている。 この方法によれば、チャネル信号間でのイメージによる干渉を本質的に 避ける事ができる。
一方ソフトウェア無線機についてはある程度のデモを目的とした 施策装置の開発も活発に行われている。 国内における試作の歴史は、ARIB(電波産業界)で行われた 「ソフトウェア受信機の開発に係る調査検討会(H9~H11年度)」 のなかで試作された「電波監視用受信装置」にさかのぼる事が できる 近年では2000年10月に行われたソフトウェア無線研究会での 装置展示が注目される。 ソフトウェア無線機の利用分野としては携帯電話、無線LANの分野 がメジャーであり、サンプリング方式としてはIFアンダサンプリング に関心が高い。
6・最後に 現段階でソフトウェア無線機の定義を一般化するのは時期尚早かも しれないが少なくとも ・ソフトウェアの入替えのみでパフォーマンスを変更できること ・ソフトウェアのダウンロード仕様が統一されてること ・ソフトウェアの改変により悪用されない構造になっていること の3項目は基本コンセプトとして提唱されている。 今後、ソフトウェア無線機はハードウェアが現実のものに近づいて行く につれてますます多方面から応用、利用が考えられていく!!