HACCP手法研修用教材 「養豚技術編」 社団法人 日本獣医師会 日 本 中 央 競 馬 会 特別振興資金助成事業

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HACCP手法研修用教材 「養豚技術編」 社団法人 日本獣医師会 日 本 中 央 競 馬 会 特別振興資金助成事業 平成17年度 獣医師生涯研修事業 HACCP手法研修用教材 「養豚技術編」 企画・出版 社団法人 日本獣医師会

編集・製作 編集協力 獣医師研修体制整備推進検討委員会 HACCP手法研修用教材検討小委員会 鹿児島県 食品安全性問題研究会 委員長  酒井 健夫(日本大学生物資源科学部教授) HACCP手法研修用教材検討小委員会 委員長 副委員長 委 員 岡本 嘉六  柏崎 守 天野 弘 長田 貴 川邊久浩 種市 淳 濵岡隆文 宮里俊光    鹿児島大学農学部教授 社団法人畜産技術協会参与 静岡県農業水産部畜産振興室主幹 千葉県東部家畜保健衛生所次長 熊本県城北家畜保健衛生所参事 山形県農林水産部生産流通課畜産室長補佐 動物衛生研究所七戸研究施設長 鹿児島県鹿児島中央家畜保健衛生所衛生課長 編集協力 鹿児島県 食品安全性問題研究会

食の安全性を巡る情勢 ● 「食育基本法」の施行 ● 国際的食料事情 新世紀の発展目標に関する報告 2005 パート1 ● 「食育基本法」の施行 ◆ 安全性の基礎となる食料生産への理解 新世紀の発展目標に関する報告 2005 国際連合 ● 国際的食料事情 ◆ 健康と食事の関係

食品の安全性と「食育基本法」 「食育基本法」が2005年7月15日から施行されている。この法律が準備された背景には、肥満や偏食による生活習慣病の広がり、自給率低下の中で食べ残しや廃棄の増加、食料生産についての知識の欠如、食品の安全性を巡る未曾有の騒動などがあり、それらを結ぶものとして食を通した生命観の涵養がある。「前文」には、次のように記載されている。 ・・・国民の食生活においては、栄養の偏り、不規則な食事、肥満や生活習慣病の増加、過度の痩身志向などの問題に加え、新たな「食」の安全上の問題や、「食」の海外への依存の問題が生じており、「食」に関する情報が社会に氾濫する中で、人々は、食生活の改善の面からも、「食」の安全の確保の面からも、自ら「食」のあり方を学ぶことが求められている。また、豊かな緑と水に恵まれた自然の下で先人からはぐくまれてきた、地域の多様性と豊かな味覚や文化の香りあふれる日本の「食」が失われる危機にある。・・・

女 フランス ドイツ イギリス 米国 日本 男 全体 65 70 75 80 85 90 主要国の平均寿命 2002年 (総務省統計局)

出生後早期死亡率の推移 70 (1950 ⇒2002) 60 :新生児死亡率 ( 27.4 ⇒ 1.7 ) :乳児死亡率 ( 60.1 ⇒ 3.0 ) 50 割合(人口千対) :出 生 率 ( 28.1 ⇒ 9.2 ) 40 30 20 10 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 出生後早期死亡率の推移

The Millennium Development Goals Report 2005 United Nations 新世紀の発展目標に関する報告 2005 国際連合 サハラ以南のアフリカ サハラ以南のアフリカ 南アジア 東南アジア 東アジア ラテンアメリカとカリブ海沿岸 西アジア 北アフリカ 発展途上地域 体重が足りない5歳以下の子供の割合(%) 目標 1. 極度の貧困と飢餓の 克服 世界の貧困率は低下しており、それはアジアがもたらした。しかし、サハラ以南のアフリカだけで100万人以上が貧困に喘いでおり、しかも貧困が更なる貧困を生んでいる。  飢餓対策は進展してきたが、農業生産高の成長が遅く、ある地域では増大する人口が後戻りさせている。1990年以降、サハラ以南のアフリカと南アジアにおいて数100万人が恒常的な飢餓状態にあり、それらの地域では5歳以下の子供達の半数が栄養失調に陥っている。 Goal 1. Eradicate extreme poverty & hunger Global poverty rates are falling, led by Asia. But millions more people have sunk deep into poverty in sub-Saharan Africa, where the poor are getting poorer. Progress has been made against hunger, but slow growth of agricultural output and expanding populations have led to setbacks in some regions. Since 1990, millions more people are chronically hungry in sub-Saharan Africa and in Southern Asia, where half the children under age 5 are malnourished. 南アジア 東南アジア 東アジア ラテンアメリカとカリブ海沿岸 西アジア 2015年の目標 北アフリカ 不十分な食事で生活している人口の割合(%) 発展途上地域

カロリー供給量の食品別割合の比較 (2002年) 穀類 砂糖類 芋・豆・野菜 肉類 卵類 乳製品 魚介類 その他 インド 中国 エジプト 日本 イギリス ドイツ フランス 米国 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 1人1日当たりKcal カロリー供給量の食品別割合の比較 (2002年) (総務省統計局)

Dietary Energy Consumption (2000 - 2002) 1日当りカロリー摂取量 (2000 - 2002) Dietary Energy Consumption (2000 - 2002) 1969-71 92.8 1979-81 127.0 1990-92 169.0 1995-97 196.6 2001-3 206.2 サハラ以南のアフリカにおける栄養不足人口(100万人)

Undernourished Population (2000 - 2002) 栄養不足の人口割合 (2000 - 2002) Undernourished Population (2000 - 2002)

世界人口の推移と予測 牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵 大豆油 菜種油 食品1kgを生産するために必要な穀物量 (農水省試算) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 1950 1960 1970 1980 1990 2000 世界 先進国 発展途上国 世界人口の推移と予測 (総務省統計局) 億人 牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵 大豆油 菜種油 11 kg 7 kg 4 kg 3 kg 5 kg 2 kg 2010 2020 2030 2040 2050 食肉については、可食部の生産に必要なとうもろこし量。 油については、各原料の量。 食事内容が改善され、動物性蛋白や油脂の摂取量が増えると、そのまま食べる穀物量は相対的に少なくなる。かつては穀物輸出国であった中国が輸入国に転じた理由は、経済的発展による食事内容の改善であった(日本も同様)。 飼料摂取量 飼料要求率= 増体量 鶏肉の飼料要求率=約2

The Next Food Revolution -5 10 20 30 40 50 60 牛肉 豚肉 鶏肉 乳 先進国 途上国 100 200 300 400 500 600 Live stock to 2020 The Next Food Revolution 1999, FAO 肉(kg)、伸び率(%) 乳(kg) 一人当たり年間摂取量の予測 :1993年、 :2020年(推定)、 :伸び率=2020年/1993年

主要国の食料自給率の推移 (農水省)

世界の人口と農産物輸入額に占める日本の割合 5 10 15 20 25 30 35 1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2002 割合(%) 33.8% 肉類 大豆 24.8% とうもろこし 10.2 % 農産物合計 5.8% 0.7% 3.1% 小麦 人口 2% 世界の人口と農産物輸入額に占める日本の割合 海外食料需給レポート2002(農水省)より

生態系と人類の福祉: 健康の創生 ECOSYSTEMS AND HUMAN WELL-BEING : Health Synthesis A Report of the Millennium Ecosystem Assessment World Health Organization 2005 生態系と人類の福祉: 健康の創生 新世紀の生態系アセスメント報告 WHO 2005 死亡率の低い先進国では、食事と関連するリスクは主に栄養過剰と運動不足によるものですが、病気に罹る10分の1から3分の1に及んでおり、それらは、主として高血圧、冠状動脈性心臓病ならびに糖尿病のような健康状態に起因する。 5歳未満死亡率 (2003年推定) 170~318 110~170 55~110 25~55 3~25 データなし 1000名の新生児の中で、5歳までの死亡数 WHO 2005

主要国の死因別死亡率 (総務省統計局) 腸炎、下痢疾患 フランス ドイツ イギリス 米国 日本 自殺,自傷 10 20 30 40 50 10 20 30 40 50 腸炎、下痢疾患 自殺、自傷 フランス ドイツ イギリス 米国 日本 不慮の事故 自動車事故 腸炎、下痢疾患 呼吸器系疾患 脳血管疾患 5 10 15 20 25 自殺,自傷 心疾患 悪性新生物 50 100 150 200 250 300 人口10万人当たり 主要国の死因別死亡率  (総務省統計局)

The right to food, not free food 食の権利 Hunger is both a violation of human dignity and an obstacle to social, political and economic progress. International law recognizes that everyone has the fundamental right to be free from hunger, and 22 countries have enshrined food rights in their constitutions. National governments must do everything possible to ensure that people have the physical and economic access to enough safe, nutritious food to lead healthy and active lives.  飢餓は、人間としての尊厳への侵害であり、また、社会的、政治的、ならびに経済的発展への障害となっている。国際法では、何人も飢餓から解放される基本的権利を有するとしており、22カ国が「食の権利」を憲法において定めている。一国の政府は、国民が健康で活気に満ちた生活を過ごすために、十分量の、安全で、栄養価の高い食品を物理的および経済的に手にすることができることを保証する上で可能なあらゆる方策を実施しなければならない。 The right to food, not free food A common misunderstanding is that the right to food requires the State to feed its people. This is not necessarily the case. Rather, the State must respect and protect the rights of individuals to feed themselves. Direct food assistance is mainly called for in emergencies, such as natural disasters or war. When a country cannot meet this need through its own resources, the State must request international assistance. 食の権利は、無制限の食料ではない  一般的に広まっている誤解は、食の権利は人々を養うことを国連に求めることであるという見解である。これは必ずしも正しくはない。むしろ、個人が自ら食べる権利を国連は尊重し保護すべきである。直接的な食料援助は、主として、自然災害や戦争のような緊急事態に要請されることである。国家が自らの資源でこの要請に応えることができない時に、国連は国際的支援を要請しなければならない。