W31A領域に付随する 水蒸気メーザーによる3次元的速度構造

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W31A領域に付随する 水蒸気メーザーによる3次元的速度構造 総研大 天文科学専攻 D3 山下 一芳 指導教官 柴田 克典

I ntroduction W31A ・・・ 大質量の星形成領域 Ultra-Compact HⅡ Region 別名:G10.6-0.4 22GHz Continuum Map (Sollins+,2004)‏ サイズは ~0.06pc W31A ・・・ 大質量の星形成領域 Ultra-Compact HⅡ Region 別名:G10.6-0.4 いて・たて・へび座に囲まれたあたり R.A. = 18h10m28.3s DEC. = -19d55'59.0" (J2000)‏ 距離 4.8 ~ 6 kpc from HⅠ absorption etc. (Fish et.al.2003 etc.)‏ この発表では5kpcとして議論する。 質量 1330太陽質量 @ 0.2 pc from 350μm Continuum Map (Kaisa E.M, et.al. 2002)‏ 3230太陽質量 @ 1.1 pc from C17O & C18O (P.Hofner et.al. 2000)‏ Clusterが予想されるが,複数のコアは見当たらない

I ntroduction W31A 's Accretion Flow 回転するガス雲の系 NH3 Absorption Line 分散大 Hα(E.Keto+,2005)・CS(Omodaka+,1992)でも 同様の回転が確認されている 分散大 回転するガス雲の系 rotation Velocity Dispersion 縦軸・横軸は各々赤径・赤緯。色は視線速度。 白線は22GHz Continuum 0.8mJyの等高線 P.K.Sollins et. al. (2005)‏

I ntroduction W31A 's H2O Maser @ VLA 赤方偏移側に弧状に分布。 Aim 1.3 cm Continuum 1.3 cm Continuum & H2O maser NH3 Absorption Line 赤方偏移側に弧状に分布。 Aim この水蒸気メーザーの3次元的速度場構造から 大質量星形成領域の星形成メカニズムに 迫れるかもしれない! P.Hofner et.al. (1996)‏ P.K.Sollins et. al. (2005)‏

O bservation VERA望遠鏡を用いて H2O maserの VLBI観測を行った。 観測周波数  K-Band (22.255080GHz)‏

R esult W31A maser features distribution まずは以下の2つの結果を示す W31A  maser features distribution VLBI用解析ソフトAIPSを用いて全5回の観測のマップを出し, 全観測のmaser featuresを重ね合わせた。 W31A  maser features velocity field 全観測で検出されている適当な視線速度のmaser feature を位置基準(原点)にした各観測の重ね合わせをし, 相対速度を検出する。 Maser feature とは? …空間的に同じ場所に存在しているH2O maser雲の塊。  各速度成分をmaser spotという。

R esult W31A maser features distribution 弧状に約5000AUで分布 500 AU @ 5kpc 色は視線速度を表す。

R esult 固有運動(Proper motions)の出し方 速度マップを見せる前に・・・ Vectorの平均 1.27 mas/year 距離6kpcを仮定した 速度の天球面成分 36.65 km/s ① 全観測で見えている   適当なコンポーネントを重ねる ② すると相対運動が   見えてくる 1 観測目 2 観測目 3 観測目 4 観測目 5 観測目 ③ 直線Fittingをし   速度を求める。

R esult W31A maser features velocity field S2 S1 この速度分布は,H2O maserが 2つの星の系に付随すると 仮定すれば説明可能。 S1 色は視線速度を表す。

C Onsideration of S1 Velocity field S1 Velocity (km/s)‏ Distribution 赤方・青方偏移したfeatureが50km/s以上の スピードで広がっている    双極流 S1 S1 Velocity (km/s)‏ Distribution Maser featureの分布に うねりが見られる。 歳差?ヘリカルジェット? S2 もしもこれらを見分ける場合は, 更なる固有運動の導出が必要。 S1 + S2 Year Lekht et.al. (2006)

C Onsideration of S1 Position vs Velocity Map Position vs Velocity Map Distribution C Onsideration of S1 Position vs Velocity Map S1 Dec. に平行な方向に 視線速度の射影をし プロットする 赤方・青方偏移の中心から離れるに伴い 加速している様子が見られる。

C Onsideration of S1 Maser spots direction & proper motion Maser spotsが細長く直線的に伸びた弧状になった feature が多い。 赤方偏移成分のfeature (spots) を抜粋 Distribution Velocity field 単純に双極流の先端にあるようなものでは ないと考えられる。

C Onsideration of S2 Velocity field Distribution 双極流 S2 右上に位置したfeatureが 原点付近のmaser featureに対し 相対速度50km/s以上で 遠ざかっている。 ショック面 ?

C Onsideration of S2 Position vs Velocity Map Distribution S2 maser feature の視線速度を 射影する。 右上の成分は重心から離れるに伴い 加速・減速している様子が見られる。 この速度分散の 原因?

C Onsideration of S2 直線的な弧状のものが多い部分 複雑な形状のものが多い部分 どうしてこのような違いが出てくるのか? Distribution C Onsideration of S2 Maser featureには弧状の構造があるが, maser spotsには細長く直線的に伸びた弧状 構造が見られず,複雑な形状のものが多い部分と, 直線的な弧状構造が多い部分が存在した。 例 例 直線的な弧状のものが多い部分 複雑な形状のものが多い部分 どうしてこのような違いが出てくるのか?  双極流の向きの違い? その場所の乱流による違い?  現在考察し,モデル検討中...

S ummary 水蒸気メーザーは2つの星S1, S2(もしくはそれ以上)の系を起源と していることを明らかにした。 これはこれまでの質量計測などから予測されたように, W31Aがclusterであるという予測と一致。 これまで,様々な大質量の星形成領域と呼ばれる領域が観測されてきたが, 今回のようにガス雲が回転している1つのシステムの中で, 複数のサブシステムらしきものが観測された例は稀である。 Future Work H2O maser の位置に関しては,1980年代に行ったVLAの観測を元に赤方偏移側に 存在するとしたが,正確ではない。 最近,VERAで観測可能な2度離角内にQSOを発見し検出したので, 正確な位置・距離を出すためにも再観測を初めたい。 また,他の大質量星形成領域(特にG12.21-0.10)に対しても同様の検証を行う。

ご清聴, ありがとうございました。