攻撃性尺度の分析:小学生vs中学生Ⅱ ---- 多母集団の同時分析&男女間の平均を調整 ---- 平成10年6月6日於:神戸女学院 HP2000研究会発表スライド 攻撃性尺度の分析:小学生vs中学生Ⅱ ---- 多母集団の同時分析&男女間の平均を調整 ---- 狩野 裕 人間科学部行動工学講座 kano@hus.osaka-u.ac.jp http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/~kano/application/index.html
本日のスケジュール 最終分析結果と解釈についての質問 分析方法の簡単な復習 探索的因子分析(EFA) 個別に分析する検証的因子分析(CFA) 多母集団の共分散構造分析 因子間に因果関係を想定する
攻 撃 性 質 問 紙
データ 小学生 963名(公立小学校) 中学生 579名(公立中学校)
・多母集団検証的因子モデルによる分析 ・多母集団共分散構造モデルによる分析 最終分析結果 ・多母集団検証的因子モデルによる分析 ・多母集団共分散構造モデルによる分析
同時検証的因子分析の最終推定値 因子負荷量の違いを 内容的説明したい
共分散構造モデル1 因子間のパス解析モデル:偏相関なし 小学生 中学生 パス解析モデル 因子相関 .776 .282 -.195 -.143 .553 .745 .393 -.324 -.309 .544 .689 .149 -.032 .291 .551 .231 .559 .180 -.097 .105 .539 .336
共分散構造モデル2 因子間のパス解析モデル:偏相関あり 中学生 小学生 .760 .240 -.165 -.128 .551 .161 .709 .327 -.273 -.278 .539 .239 偏相関あり 偏相関なし .776 .282 -.195 -.143 .553 .745 .393 -.324 -.309 .544
共分散構造モデルによる解析の 解釈と疑問 モデル1の適合は良いとは言えない.「身体-言語」の相関が「短気」と「敵意」とで説明しきれていないようである.「短気」と「敵意」を一定にした下で「身体」と「言語」の偏相関を生み出すものは何か? 「敵意→身体」の偏回帰係数は負の値であり( 「敵意」から「身体」への直接効果<0 ) ,この意味は,「短気」を一定に固定すると「敵意」は抑制的に「身体」へ影響している.この解析結果に reasonable な解釈が与えられるか? 「敵意」から「身体」への直接効果が男女間で差がある.なぜか? 「敵意」から「言語」への直接効果が男女間で差がある.なぜか? 因子間の単相関では,「身体-短気」,「身体-敵意」の相関において男女間で違いが見られた.この観測は共分散構造分析でやや違った見方になる.短気から身体への直接のパス「短気→身体」は男女間で差はなく,「身体-短気」の単相関との結果の違いは,「短気」から「敵意を経由した擬相関(間接効果らしきもの)の違いから来る. 以上のことがやや程度の差はあるが,偏相関を入れたモデルの解析でも観測される.
解釈への手がかり 単純相関 偏回帰係数 .70 .75 身体 短気 身体 短気 .55 .55 .30 -.15 敵意 敵意 Y X X+Y 変数の内容 + ー What are X and Y such that 身体=Y 短気=X+Y 敵意=X
分析方法について ---- 簡単なサーベイ ----
共分散構造分析とは 直接観測できない潜在変数を導入し,潜在変数と観測変数との間の因果関係を同定することにより社会現象や自然現象を理解するための統計的アプローチ.基本的に非実験多変量データの分析方法で,因子分析と多重回帰分析(パス解析)の拡張.
実験計画と共分散構造分析
多母集団の分析のメリット 潜在構造の比較 潜在変数の平均に関する推測ができる 欠測値がある場合の分析
探索的因子分析(EFA) vs 検証的因子分析(CFA) 潜在構造に関する仮説がなく,探索したいとき 因子負荷に恣意的な仮説をおきたくないとき CFA を行う場合 潜在構造に関する仮説があり,それを検証したいとき 想定する共通因子が多すぎ Ledermann の限界を満たさないとき EFAでは識別性の問題が起こるとき 因子負荷に関するさまざまな仮説を検証したいとき 多母集団・潜在変数の平均の解析をするとき
異なる母集団のデータを合併する際の注意 身体22 身体22 併合後r=0 男子 r = 0.5 r = -0.5 男子 r=0.5 女子 身体4 身体4 (1) 平均が異なる場合 (2) 相関が異なる場合
「攻撃性データ」の場合 下位尺度合計得点が男女間で異なる → 平均が男女間で異なることを示し,平均の調整が必要 下位尺度合計得点が男女間で異なる → 平均が男女間で異なることを示し,平均の調整が必要 男女間で因子負荷パターンが似ている → 相関係数は男女間で近いことが期待される. ⇒ 平均を調整すれば,標本を併合してよさそう.
探索的因子分析(直交解,斜交解) 検証的因子分析:個別分析 検証的因子分析:同時分析 共分散構造分析 分析...スタート 探索的因子分析 探索的因子分析(直交解,斜交解) 検証的因子分析:個別分析 検証的因子分析:同時分析 共分散構造分析
EFAによる比較 (最尤法+直交解(バリマックス回転))
因子相関(尺度間相関?) 尺度間(観測変数の合計得点)の相関
EFA+直交回転:解釈 EFA+直交回転:解釈 4つの因子の同定は可能 因子負荷量の違いから知見は得にくい 小学校:短気F→身体V 中学校:敵意F→短気V(少し目立つ程度) 因子相関(尺度間相関)に大きな違いはない
4因子探索的因子モデルの適合度 4因子モデルは,小学生のデータへの適合の方が良い 中学生のデータは4因子モデルで説明しにくい
EFAによる比較(最尤法+斜交解(オブリミン回転))
斜交回転による因子相関は不安定である!
EFA+斜交回転:解釈 EFA+斜交回転:解釈 EFA+直交回転:解釈 4つの因子の同定は可能 因子負荷量の違いから有益な知見は得にくい 小学校:短気F→身体V 中学校:敵意F→短気V 因子相関に大きな違いはない EFA+斜交回転:解釈 (身体,短気)の相関ならびに(身体,敵意)の相関に違いが見られるが,因子相関の細かい解釈はし難い
検証的因子分析(個別分析) 以降「短気16」を解析から外してある 検証的因子分析は難しくない. 探索的因子分析の方がチョウムズイのだ
小学生のデータの検証的因子分析:初期モデル
プログラム
小学生のデータの検証的因子分析
小学生のデータの検証的因子分析
小学生のデータの検証的因子分析
小学生のデータの検証的因子分析
中学生のデータの検証的因子分析
中学生のデータの検証的因子分析
中学生のデータの検証的因子分析
中学生のデータの検証的因子分析
LM 検定はいつ終了させるのか? 内容的吟味 統計的基準 χ^2(0.05)=3.841 χ^2(0.005)=7.882…..default of LISREL χ^2(0.05/検定の総数)….検定の多重性を考慮 χ^2( 0.05/66)=11.3 [註:66=22×4-22] AIC でみるときは 2 CAICでみるときは 1+log n 1+log957=7.86, 1+log579=7.36 スクリープロットの要領で 飛びぬけて大きな統計量がなくなるまで続ける 1 1 1 1
Wald 検定:小学生 ---- 偏回帰係数=0の検定 ----
Wald 検定:中学生 ---- 偏回帰係数=0の検定 ----
Wald 検定:比較
個別分析結論...ここではモデル2でいこう モデル1(配置不変は成立しない) LM検定での最終モデル モデル2(配置不変が成立) 小学生:(短気11,敵意因子),(言語10,身体因子)のパスを外す(el_add61) 中学生:(敵意19,言語因子),(短気5,敵意因子) のパスを外す(jh_add5)
個別分析最終推定値
検証的因子分析による比較
CFA(個別分析):解釈 CFA(個別分析):解釈 因子負荷量の違いが解釈できそう(差の有意性は不明) EFA+直交回転:解釈 4つの因子の同定は可能 因子負荷量の違いから有益な知見は得にくい 小学校:短気F→身体V 中学校:敵意F→短気V 因子相関に大きな違いはない EFA+斜交回転:解釈 (身体,短気)の相関ならびに(身体,敵意)の相関に違いが見られるが,因子相関の細かい解釈はし難い CFA(個別分析):解釈 因子負荷量の違いが解釈できそう(差の有意性は不明) (身体,短気)の相関ならびに(身体,敵意)の相関に違いが見られる
多母集団の同時分析 各母集団で検証的因子分析モデルが適合するか? 配置不変:パス(因子負荷)の位置が一致 測定不変:パス係数(因子負荷)の値が一致 強因子不変:パス係数(因子負荷)の値と因子間相関の値が一致
「小学生+中学生」の同時分析
母集団間の制約の検定
モデル修正のまとめ
最終モデルの推定値 因子負荷量の違いを 内容的に説明したい
因子間相関の比較
CFA(同時分析):解釈 CFA(同時分析):解釈 因子負荷量の違いが解釈できそう(差の有意性を確認) EFA+直交回転:解釈 4つの因子の同定は可能 因子負荷量の違いから有益な知見は得にくい 小学校:短気F→身体V 中学校:敵意F→短気V 因子相関に大きな違いはない EFA+斜交回転:解釈 (身体,短気)の相関ならびに(身体,敵意)の相関に違いが見られるが,因子相関の細かい解釈はし難い CFA(個別分析):解釈 因子負荷量の違いが解釈できそう(差の有意性は不明) (身体,短気)の相関ならびに(身体,敵意)の相関に違いが見られる CFA(同時分析):解釈 因子負荷量の違いが解釈できそう(差の有意性を確認) (身体,短気)の相関ならびに(身体,敵意)の相関の違いに有意性を確認
各種手法による因子相関推定値一覧
まとめ EFA+直交回転→EFA+斜交回転→CFA(個別)→CFA(同時)の順に解釈がし易くなる.統計的証拠が強くなる[CFA(同時)がいつも良いというわけではない.先に述べたように住み分けがある] 良く練られ,良く管理されて収集されたデータと感じる 4因子モデルの当てはめが中学校のデータに対する方がやや悪い→小学生の方が少し単純 因子相関が小学生の方が高い→小学生は「身体的攻撃」と「短気」, 「身体的攻撃」と「敵意」の分化が中学生と比して進んでいない
因子間に因果関係を考えてみよう 共分散構造分析の試み
最終の検証的因子分析モデル
共分散構造モデル1 因子間のパス解析モデル:偏相関なし 小学生 中学生 .689 .149 -.032 .291 .551 .231 .559 .180 -.097 .105 .539 .336 因子相関 パス解析モデル .776 .282 -.195 -.143 .553 .745 .393 -.324 -.309 .544
共分散構造モデル1の 適合度評価
共分散構造モデル2 因子間のパス解析モデル:偏相関あり 中学生 小学生 .760 .240 -.165 -.128 .551 .161 .709 .327 -.273 -.278 .539 .239 偏相関あり 偏相関なし .776 .282 -.195 -.143 .553 .745 .393 -.324 -.309 .544
共分散構造モデルによる解析の 解釈と疑問 モデル1の適合は良いとは言えない.「身体-言語」の相関が「短気」と「敵意」とで説明しきれていないようである.「短気」と「敵意」を一定にした下で「身体」と「言語」の偏相関を生み出すものは何か? 「敵意→身体」の偏回帰係数は負の値であり( 「敵意」から「身体」への直接効果<0 ) ,この意味は,「短気」を一定に固定すると「敵意」は抑制的に「身体」へ影響している.この解析結果に reasonable な解釈が与えられるか? 「敵意」から「身体」への直接効果が男女間で差がある.なぜか? 「敵意」から「言語」への直接効果が男女間で差がある.なぜか? 因子間の単相関では,「身体-短気」,「身体-敵意」の相関において男女間で違いが見られた.この観測は共分散構造分析でやや違った見方になる.短気から身体への直接のパス「短気→身体」は男女間で差はなく,「身体-短気」の単相関との結果の違いは,「短気」から「敵意を経由した擬相関(間接効果らしきもの)の違いから来る. 以上のことがやや程度の差はあるが,偏相関を入れたモデルの解析でも観測される.