1. カタストロフィックな気候変動の回避 県立川崎図書館LRTフォーラム 2006年2月25日 環境自治体会議 環境政策研究所 上岡直見

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気候 - 海・陸炭素循環結合モデルを用い た 地球温暖化実験の結果 吉川 知里. 気候 - 海・陸炭素循環 結合モデル.
本牧LRTの 実現に向けて 平成 18 年 2 月 7 日. 1 交通に関する時代の状況 LRTへの期待感の向上 – クルマへの過度の依存への反省 – 環境・高齢社会への対応 – 都市再生、中心市街地の活性化 – コンパクトシティ、TOD 各人が個別交通システムを所有 → 共用交通システムを利用.
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脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型 自然冷媒機器導入加速化事業(一部農林水産省、経済産業省、国土交通省連携事業)
図3 地球環境変動の中核的課題と動向 自然圏(Natursphäre) 人類圏(Anthropophäre) 生物圏 大気圏 水文圏 土壌圏
物流分野におけるCO2削減対策促進事業 (国土交通省連携事業) 背景・目的 事業概要 期待される効果 事業スキーム
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国 非営利法人 背景・目的 事業スキーム 事業者等 事業概要 期待される効果 脱フロン・低炭素社会の早期実現のための
生態地球圏システム劇変のメカニズム 将来予測と劇変の回避
背景・目的 事業内容 事業スキーム 事業概要 期待される効果 公共交通機関の低炭素化と利用促進に向けた設備整備事業 (国土交通省連携事業)
宅地の液状化対策 国土交通省 都市局 都市安全課 平成31年3月更新.
「水俣市の取り組み」に対する意見発表 ○鈴木慎也 構成 〒 福岡市城南区七隈 福岡大学工学部社会デザイン工学科
まちづくりと交通 (株)ライトレール 阿部 等
平成31年度 環境保全基金を活用して実施する事業(案) 府民がつくる暮らしやすい、環境・エネルギー先進都市
仙台管区気象台 気象防災部 地球環境・海洋課 渕上 隆雄
物流分野におけるCO2削減対策促進事業 (国土交通省連携事業) 背景・目的 事業概要 期待される効果 事業スキーム
地球温暖化問題と森林        4班 遠嶽、橋本、林、日浅、東田.
海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター 河宮未知生 吉川知里 加藤知道
地域の多様な課題に応える低炭素な都市・地域 づくりモデル形成事業
自転車の利用促進に着目した研究 名古屋大学  E班 M1  酒井大輔             徐剛           高橋和大 平野泰博    安江勇弥.
LPガスに係わる10項目 安定供給の確保 ①石油とLPガスの備蓄の確保 環境への適合 ②ガス体エネルギーへの転換を進める
環境学 第9回目 (H ) 環境法と循環型社会 p.68~
新エネルギー ~住みよい日本へ~ E 山下 潤.
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1. カタストロフィックな気候変動の回避 県立川崎図書館LRTフォーラム 2006年2月25日 環境自治体会議 環境政策研究所 上岡直見 New Orleans, 2005

2 解像度 大気100km程度、海洋20km程度の地球シミュレータ IPCC(気候変動に関する政府間パネル) によるA1Bシナリオ: 将来の世界が経済重視で国際化が進むと仮定したシナリオ (2100年の二酸化炭素濃度が720ppm) 国立大学法人東京大学気候システム研究センター(CCSR), 独立行政法人国立環境研究所(NIES), 独立行政法人海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)の合同研究チーム http://www.env.go.jp/earth/earthsimulator/ 2

国立大学法人東京大学気候システム研究センター(CCSR), 独立行政法人国立環境研究所(NIES), 独立行政法人海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)の合同研究チーム 3

国立大学法人東京大学気候システム研究センター(CCSR), 独立行政法人国立環境研究所(NIES), 独立行政法人海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)の合同研究チーム http://www.env.go.jp/earth/earthsimulator/ 4

国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp) 深刻な温暖化影響を回避するには、 温度上昇を2度以内に抑える必要 極めて危険   国際的な共通認識へ 気候の様相の変化、海洋大循環の 停止、南極・グリーンランド氷床の  崩壊等の、大規模かつ不可逆な影響 危険 水文・水資源、農林水産業、人の健康などへの影響が多地域で発現 脆弱システム 極端な気象 悪影響の分布 世界経済 (海洋大循環の崩壊等) 破局的事象 長期的な温暖化対策を考える場合、まずは、対策の目指すべき目標について明らかにし、それを国際的な共通認識とする必要がある。 それは、どの程度の温度上昇で温暖化を食い止める必要があるかということである。 温暖化の影響に関する様々な研究によれば、  -1℃程度の上昇でも珊瑚礁などの脆弱な生態系に影響が現れ、  -2~3℃になると農業への悪影響等が地球規模で顕在化し、  -3℃を超えると、海洋大循環の停止など、気候システムそのものに異変が生じる恐れがある とされている。 中央環境審議会の専門委員会は、先月中間報告を公表し、地球の気温上昇を工業化以降、2℃に抑えることが、今後の長期目標検討の出発点になるとの見解をまとめた。 植生変化、サンゴ礁の白化などの 脆弱な生態系への影響 IPCC第3次評価報告書 5 国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp)

国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp) 2. 交通CO2削減のシナリオ 2020年基準シナリオ 対策を強化しなければ、1990年比18%増と予測 6 国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp)

国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp) 2020年対策シナリオ HV車の大量普及、軽自動車分野の電気自動車の普及により、1990年レベルまでなら下げることができそう。 小型貨物(従来型) HV車の大量普及のためには年産約500万台となるよう、生産設備を6年間、年々倍増させることが必要。 7 国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp)

国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp) 交通需要削減想定量 8 国立環境研究所 脱温暖化2050研究プロジェクトより (http://2050.nies.go.jp)

3. 日本の交通とCO2に関するトレンド・要因 9 国土交通省「地球温暖化防止のための道路政策会議 中間とりまとめ資料」 2005年8月より。 9

国土交通省「地球温暖化防止のための道路政策会議 中間とりまとめ資料」 2005年8月より。 10

自動車(に限らず陸上の移動体)が走る という現象はどういうことか? 抵抗力 推進力 = 消費エネルギー 加速抵抗 空気抵抗 転がり抵抗 勾配抵抗 転がり抵抗 空気抵抗 加速抵抗 抵抗力 推進力 = 消費エネルギー

自動車(陸上の移動体)のエネルギー消費 高速道路以外では小さい 12

道路整備は自動車の増加に追いつかない 年々低下する走行速度 13

道路を整備するほど自動車が押し寄せる

せっかくバス専用レーンを作っても… 無料駐車場になっている。(川崎駅前) 15

道路容量の増加と 自動車走行距離の増加

4. クルマ依存社会がもたらす影響 17 名古屋大学 加藤博和氏作成の図に補足 いずれも自動車走行台kmが支配的因子。 CO2を代表指標とする。 17

横浜より川崎~東京西部の逆転層を撮影 1998年12月14日 10:15 撮影 上岡直見

大気汚染の現況 環境基準 1日平均値が0.04~0.06ppmの範囲内 国立環境研究所「そらまめ君」 2005年9月1日 13時

注意報 1時間値で0.12ppm 国立環境研究所「そらまめ君」 2005年9月1日 13時

環境基準 1時間値の1日平均値が0.10mg/m3以下, 1時間値が0.20mg/m3以下 国立環境研究所「そらまめ君」 2005年9月1日 13時

スプロール化した街では、行政費用がよけいにかかる。 【青森市】過去30年間の郊外スプロールにより、約350億円の行政投資が余分にかかった。(上下水道, 学校, 道路) 【富山市】従来型の政策(弱い開発管理)では、今後20年間で総人口2.2万人減、郊外で1.9万人増加すると予想され、511haの新規開発に伴い177億円(3万円/m2)の費用が余計に発生すると試算。 (中心市街地再生のためのまちづくりのあり方について─アドバイザリー会議報告書, 2005年8月) 22

空巣多発地帯の条件: ① 新興住宅地で近所付合いが乏しい、 ② 道路交通が便利で犯行後移動しやすい。(警察関係者)

クルマ依存(生活習慣)と健康への影響 まだ明確ではないが、ある程度の相関あり?

5. 交通環境負荷の地域性 松橋啓介・工藤祐樹・上岡直見・森口祐一「市区町村の運輸部門のCO2排出量の推計手法に関する比較研究」『環境システム研究論文集』vol.32,2004年10月,p.235より作成。 25

推計テーブル 松橋啓介・工藤祐樹・上岡直見・森口祐一「市区町村の運輸部門のCO2排出量の推計手法に関する比較研究」『環境システム研究論文集』vol.32,2004年10月,p.235より作成。 26 (以上)

6. LRT全国展開の展望 既存の研究から 黒水健・中川剛士・嶋野崇文・和田忠幸・青木秀一「自治体及び第三セクターによる公共交通事業の成立性に関する一考察」『第28回土木計画学研究発表会・講演集』 28

既存の研究から 黒水健・中川剛士・嶋野崇文・和田忠幸・青木秀一「自治体及び第三セクターによる公共交通事業の成立性に関する一考察」『第28回土木計画学研究発表会・講演集』 29

LRT導入適合都市 ○ レベル1: その都市にDID区域が含まれ、DID人口が8万人以上かつDID人口密度が7,000人/km2以上である場合 ○ レベル2: 同じくDID人口密度が4,000人/km2以上7,000人/km2未満である場合 遠藤玲・竹田敏昭・古賀一人「サービス水準変化がLRTの事業性に与える影響に関する研究」『第28回土木計画学研究発表会講演集』2003年11月より。 30

レベル1: LRT適合地域で採算性可能 31

レベル2: LRT適合地域で公的助成が必要 32

7. 新潟における概略シミュレーション 33

ただし、需要予測は 大変難しい。 安易な予測は禁物。 34

35 もともと存在した市内線計画 1918年に新潟水電(後に新潟交通に継承)が軌道事業免許 個人ホームページ「未来鉄道データベース」 http://www.mifuru.to/frdb/index.htm

路面設置ケース LRT敷設による車線削減影響 v.s. LRT敷設によるモーダルシフト効果 ルート1 複線 ルート2 中止 ルート3 単線 ルート4 ルート5 ルート6 時間費用削減効果のみで評価してトレードオフという意味。従ってこれ以上に各種社会的費用が削減されるので費用対効果は必ず1.0以上になる。 (以上)