2016年1月8日 生命環境科学域 植物バイオサイエンス課程 尾形 善之

Slides:



Advertisements
Similar presentations
生物統計学・第 5 回 比べる準備をする 標準偏差、標準誤差、標準化 2013 年 11 月 7 日 生命環境科学域 応用生命科学 類 尾形 善之.
Advertisements

生物統計学・第 4 回 比べる準備をする 平均、分散、標準偏差、標準誤差、標準 化 2015 年 10 月 20 日 生命環境科学域 応用生命科学類 尾形 善之.
生物統計学・第 2 回 全体を眺める(1) 平均と分散、各種グラフ、ヒストグラム 2013 年 10 月 7 日 生命環境科学域 応用生命科学類 植物バイオサイエンス課程 尾形 善之.
生物統計学・第 15 回 エラーを調べる -第一種の過誤、第二種の過誤、外れ値 - 2016 年 1 月 26 日 生命環境科学域 応用生命科学類 尾形 善之.
バイオエタノール ~化石時代の救世主?~ 北海道情報大学 情報メディア学 部 情報メディア学科 新井 山ゼミ 瀬戸 裕.
生物統計学・第4回 全体を眺める(3) 各種クラスター分析
1
1.遺伝子とは何だろう?.
RNA i (RNA interference).
現代文明論 14 命に関わる文明の諸問題 遺伝子組み換え.
生物統計学・第3回 全体を眺める(2) 主成分分析
植物遺伝子工学分野の研究紹介 “blue rose” フレッシュマンセミナー 担当:入船
植物系統分類学・第13回 木本植物の特徴と分類
活性化エネルギー.
トウモロコシの動向 2班.
第3班 C07011 奥田愛 C07012奥野智也 C07013 奥山唯香 C07014 片山貴詞
バイオマス E0202477 村田万寿男.
木の利用 5班 田村浩幸 徳直哉 中家葵 長濱大介 西村陽平.
Forest tree genomics: growing resources and applications
植物系統分類学・第12回 木本植物の特徴と分類
栄養と栄養素 三大栄養素 炭水化物(糖質・繊維) 脂質 たんぱく質 プラス五大栄養素 ビタミン 無機質.
8章 食と健康 今日のポイント 1.食べるとは 何のために食べるのか? 食べたものはどうなるのか? 2.消化と吸収 3.代謝の基本経路
生物統計学・第1回 統計解析を始める前に -妥当なデータかどうかを判断する-
生物統計学・第2回 注目要素を決める まず木を見る、各種グラフ、ウェブツール
社会システム論 第5回 生態系(エコシステム).
食品の表示 (2)-イ-aーM.
2016年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第10回 情報解析(3) Rを使った主成分分析
酸化と還元.
本時の目標 ○ 主な材料の特徴をまとめよう ○ 材料と環境とのかかわりを知り、材 料の使い方についてまとめよう
2016年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第13回 情報解析(6) エクセルVBAによる遺伝子機能解析
生物統計学・第2回 全体を眺める(1) 各種グラフ、ヒストグラム、分布
コレステロール その生合成の調節について 家政学部 通信教育課程 食物学科 4年 大橋 万里子 佐藤 由美子 鷲見 由紀子 堀田 晴 子
※ エネルギー環境教育を中心とした学習内容です。 教育課程に準じて,内容を加筆修正してください。
地球温暖化と森林 西浦 長谷川 馬場 曵地 藤田.
第19回 HiHA Seminar Hiroshima Research Center for Healthy Aging (HiHA)
持続可能社会実現にむけた現実的なシナリオ
受粉 風媒(wind-pollination) 少数の種が均質な大群落を形成するような場合に有利。 イネ科草原,マツ林,スギ林など
2017年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第7回 公共データバンクの遺伝子発現情報
2017年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第5回 公共データバンクの遺伝子情報
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第5回 公共データバンクの遺伝子情報
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第7回 公共データバンクの遺伝子発現情報
2017年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第1回 情報検索(1) ビッグデータを眺める
植物系統分類学・第15回 比較ゲノミクスの基礎と実践
生物統計学・第3回 全体を眺める(1) R、クラスタリング、ヒートマップ、各種手法
2016年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第6回 情報処理(4) データを加工する・2
研究内容紹介 1. 海洋産物由来の漢方薬の糖尿病への応用
Central Dogma Epigenetics
カルビンーベンソン回路 CO23分子が回路を一回りすると 1分子のC3ができ、9分子のATPと 6分子の(NADH+H+)消費される.
牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥の無機・有機成分と窒素肥効 鶏ふん堆肥(副資材なし)の無機・有機成分、分析方法と窒素肥効
植物系統分類学・第14回 分子系統学の基礎と実践
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第12回 情報解析(2) 配列相同性解析・DNA
2019年1月22日 生命環境科学域 応用生命科学類 尾形 善之
生物統計学・第3回 全体を眺める(2) クラスタリング、ヒートマップ
新聞発表 2003年4月16日 大和田・鈴木・菅原・山中.
循環型社会構築に向けた バイオマス利用 産業技術総合研究所 バイオマス研究センター 坂西欣也.
2017年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第11回 系統樹
●食物の消化と吸収 デンプン ブドウ糖 (だ液中の消化酵素…アミラーゼ) (すい液中の消化酵素) (小腸の壁の消化酵素)
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第13回 メタゲノミクス
2 生態系の危機への対応 エコロジカル・フットプリント ミレニアム生態系評価 生物多様性条約 国内対策.
CO2大幅削減のためのCNF導入拡大戦略の立案 (3)バイオマスプラスチックによるCO2削減効果の検証
11月21日 クローン 母性遺伝.
バイオ特許 2002.12.04.
主要穀物の 需要と生産状況 7班 07A024 奥藤智代 07A043 小西郁里 07A052 坂田秋沙 07A053 坂本典子
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第12回 次世代シーケンシング・RNA
物質とエネルギーの変換 代謝 生物体を中心とした物質の変化      物質の合成、物質の分解 同化  複雑な物質を合成する反応 異化  物質を分解する反応 
特論B 細胞の生物学 第6回 エネルギーはどこから 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
細胞の構造と機能.
生物統計学・第14回 全体を眺める(6) -相関ネットワーク解析-
生物統計学・第11回 全体を眺める(3) -主成分分析1:分析の基本-
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第9回 公共データバンクの代謝パスウェイ情報
Presentation transcript:

2016年1月8日 生命環境科学域 植物バイオサイエンス課程 尾形 善之 第13回資源植物学 木質資源植物 2016年1月8日 生命環境科学域  植物バイオサイエンス課程 尾形 善之

本講義の概要 木質資源植物について 定義 特徴 目的 利用 探索

定義

樹木はどれでしょうか? 2 マツ 3 ケヤキ 1 ハイマツ 5 ココヤシ 6 タケ 4 ブドウ 7 リュウゼツラン 8 ソテツ 9 クスノキ Wikipedia

木質資源植物はどれでしょうか? 2 マツ 3 ケヤキ 1 ハイマツ 5 ココヤシ 6 タケ 4 ブドウ 7 リュウゼツラン 8 ソテツ 9 クスノキ Wikipedia

木質資源植物とは ネットで調べても出てきません 木質資源とは 木材:樹木からの材、主に幹や枝 「樹木」と言えればいいのですが…… 「木質バイオマス」とも言います 林野庁によると、「再生可能な、生物由来の有機性資源(化石燃料は除く)の中で木材からなるもの」 木材:樹木からの材、主に幹や枝

木質とは 大辞林 大辞泉 木の性質。植物の幹の内部の固い部分。木化した細胞からなる。木材に似た性質。 木の性質。木のたち。木材に似た性質。 木材:建築物・工作物やパルプなどの材料あるいは原料として用いる木。材木。 大辞泉 木の性質。木のたち。木材に似た性質。 「木質部」に同じ。 木質部:樹木の幹の内部の、木質化して堅い部分。 木質化:植物の細胞壁のリグニンが沈着して、組織が堅くなること。木化。

木質とは 木材の性質。または木材に似た性質。 木質化した組織、すなわち植物の細胞壁にリグニンが沈着して堅くなった組織。 「木化した細胞壁」 セルロース ヘミセルロース リグニン Wikipedia

木質資源とは 木質をもつ植物資源 林野庁 「木化した細胞壁を基にした資源」 木質バイオマスとも呼ばれます 再生可能な、生物由来の有機性資源(化石燃料は除く)の中で、木材からなるもの 「木化した細胞壁を基にした資源」

木質資源植物 針葉樹(イチョウを含める) 広葉樹 つる植物 タケ類(ヤシ類を含める) イネ科草本類 マツ、スギ、ヒノキなど ケヤキ、ナラ類、カンバ類、カエデ類 つる植物 タケ類(ヤシ類を含める) イネ科草本類

リュウゼツラン 高さ10数メートル 20~30年

特徴

木質資源植物の形態的特徴 マクロ的特徴 幹と茎と稈 茎 稈 幹

木質資源植物の形態的特徴 ミクロ的特徴 木化した細胞壁 稈 茎 幹 単子葉植物 双子葉植物(草本) 樹木(木本)

チェックポイント・I 木質とは? 木質資源とは? 木質資源植物とは? 木質資源植物のマクロの特徴は? 木質資源植物のミクロの特徴は?

目的

木質資源植物を研究する目的 木質資源は最大のバイオマス 細胞壁成分の中心は多糖類 その他の成分の多くが未利用 天然の合成系を利用 微生物と比べると、量が多く合成が中心 細胞壁成分の中心は多糖類 分解すれば糖としてバイオエネルギーに利用 その他の成分の多くが未利用 種子の脂肪などもバイオエネルギー等に利用 天然の合成系を利用 持続可能な合成系

利用

そのまま利用する 木材 建材、楽器など 端材・間伐材 家具、ウッドチップ、DIY、燃料など 木粉 パーティクルボード

銘木 シタン(紫檀) コクタン(黒檀) タガヤサン(鉄刀木) ウォールナット(胡桃) チーク マホガニー ジンコウ(沈香) Wikipedia

スポーツや芸術の分野では… スポーツ 芸術 野球のバット:アオダモ、アッシュ 弓道の弓:マダケ、ハゼノキ ヴァイオリン:ドイツトウヒ、イタヤカエデ、黒檀 ピアノ:ドイツトウヒ、スプルース、黒檀 Wikipedia

木材利用の課題 建材として使われなくなった。 一般的な利用価値が少ない。 産業利用が期待される。 「暮らしごこち」のためには使われる。 スポーツや芸術は限られた利用にすぎない。 産業利用が期待される。 バイオエネルギーや工業部品。

細胞壁の成分を利用する セルロースが最大の標的 ヘミセルロースやリグニンの除去がポイント 従来は、紙など 今後の課題はセルロースの分解

細胞壁の成分を利用する セルロースの効率的な分解 酵素糖化 工業的な分解 現状では、産業ニーズには届いていない。 効率的に分解できるセルラーゼの探索 シロアリ、マツノザイセンチュウ、ヨコエビなど 工業的な分解 蒸煮爆砕法、希硫酸前処理、加圧熱水など 現状では、産業ニーズには届いていない。

バイオエタノール 糖質原料(単糖や二糖が中心) デンプン質原料(多糖類) セルロース系原料(多糖類) サトウキビの搾りかす、ほぼそのまま利用可能 ブラジル デンプン質原料(多糖類) トウモロコシ(可食部)、分解が必要 アメリカ セルロース系原料(多糖類) 木質(非食部)、分解が必要 各国で研究段階(スイッチグラスなど) Wikipedia

各種成分を利用する 樹皮に含まれる成分 種子に含まれる成分 ラテックス(パラゴムノキ) 菜種油 ヤトロファ燃料(ヤトロファ) 長所:強度、伸縮性 短所:熱、気候、油 種子に含まれる成分 菜種油 ヤトロファ燃料(ヤトロファ) 例えば、バイオマスジャパン株式会社 Wikipedia

バイオディーゼル 原料 精製 欧州:菜種、ひまわり 北中米:大豆 熱帯:ヤトロファ、ヤシ 脂肪酸メチルエステル(FAME) メチルエステル化~グリセリン除去 水素化処理油(BHD) まだ研究段階 Wikipedia

バイオ燃料の現状 原油価格の影響をまともに受ける 価格が高騰すると、脚光を浴びる 継続的な研究開発が不可欠 Wikipedia

探索

遺伝資源としての植物 遺伝資源とは… 「現実の又は潜在的な価値を有する遺伝素材(遺伝の機能的な単位を有する植物、動物、微生物その他に由来する素材)」 生物多様性条約第2条より あえて簡単に言えば、「遺伝子とその派生物」

遺伝資源を保つには… 生物多様性が重要 多くの遺伝子の機能は、まだ分かっていない 潜在的な価値をもつ遺伝子の消失を防ぐ いつまでも機能が分からないままでは…… 多くの遺伝子の機能を明らかにしていく さらに、明らかになった遺伝子を活用していく

有用遺伝子の探索・合成編 重要成分の合成量を増やすには… 生合成経路を活性化する!! 経路に関わる遺伝子を探す その植物のゲノムを解読する 条件ごとに遺伝子発現を調べる 合成量と高発現した遺伝子の関係を知る その遺伝子が高発現する条件を知る

木質資源植物のゲノム解読 ポプラ:モデル樹木 ブドウ:つる性果樹 ユーカリ:ユーカリオイル ヤトロファ:バイオ燃料 リンゴ:バラ科果樹 ほか続々 Wikipedia

木質資源植物の遺伝子探索 木質(細胞壁)形成の関連遺伝子の探索 二次代謝成分の生合成関連遺伝子の探索 セルロース合成酵素 ヘミセルロース合成酵素 リグニン合成酵素 二次代謝成分の生合成関連遺伝子の探索 果実の利用:食用、バイオ燃料用 薬効・機能性成分:果皮、樹液

セルロース合成酵素 茎で遺伝子発現量が高い Wikipedia

遺伝子の探索・分解編 例えば、セルラーゼ遺伝子の探索 セルロースを分解できる生物を探す 注目微生物のゲノムを解読する 木材腐朽菌、シロアリ腸内、ウシの消化管内 注目微生物のゲノムを解読する セルラーゼ遺伝子を選び出す セルラーゼによる分解プロセスを明らかにする 有用な分解プロセスを活用する

探索例 汚泥試料 セルロース入り 時点1 A, B, C 時点2 D, E, F Yamazawaら、2014

遺伝子探索の今後… 植物・微生物ともに、多くの生物のゲノムが解読されていない ゲノムが解読され遺伝子が予測されても、遺伝子の機能が分かっていない 遺伝子の機能を明らかにするために… 遺伝子の塩基配列から攻める!! 遺伝子の発現傾向から攻める!!

チェックポイント・II 木質資源植物を研究する目的は? 木質資源植物はどのように利用されるか? 木質資源植物の遺伝子を探索する方法は?

今日の課題 木質資源植物を対象として、どのような研究をしてみたいですか? 植物種、目的、期待する結果を含めて書いてください。