鉄道システム 富井規雄編:「鉄道システムへのいざない」,共立出版,2001. 脇田・富井,他:「鉄道とコンピュータ」,共立出版,1998. 鉄道システム 富井規雄編:「鉄道システムへのいざない」,共立出版,2001. 脇田・富井,他:「鉄道とコンピュータ」,共立出版,1998. 鉄道はシステムだ! システム:「複数の要素が有機的に関係しあい、全体として機能を発揮している要素の集合体、組織、系統、仕組み」(広辞苑)
<鉄道システムに関する業務> 設備の計画や建設 巨大な設備産業 車両、線路(トンネル、橋梁なども含む)、信号、架線などの電力装置、駅での設備など 切符の販売 駅、旅行センター、みどりの窓口のコンピュータ 輸送計画の作成 列車ダイヤ、運転士や車両の勤務計画、車両の検査や清掃の計画、駅や車両基地での入換作業の計画
列車の運転 運転士、車掌、指令員、ホームの駅員、信号機を操作する駅員 設備の保守 車両の検査・修繕、保線、架線や信号装置の保守など
<鉄道システムの構成> 鉄道システム 線路 車両 運転 ネットワーク 運営 建造物 軌 道 台 車 車 体 動 力 信 号 駅 フロー 鉄道システム 線路 車両 運転 ネットワーク 運営 建造物 軌 道 台 車 車 体 動 力 信 号 駅 フロー 保 守 経 営 佐藤吉彦:「第Ⅴ世代鉄道」,交通新聞社,2005
<鉄道の業務プロセス> 設備を計画・建設する 輸送計画を作る 電車を走らせる 切符を売る 設備を保守する (車両、線路、信号、架線、駅、他) (列車ダイヤ、車両・乗務員運用計画、他) 電車を走らせる (運転士、車掌、指令、駅員、他) 切符を売る 設備を保守する (車両、線路、信号、架線、駅、他)
鉄道と情報処理技術 コンピュータをいち早く取り入れたのは鉄道 ・座席予約システム ・列車運行管理システム、など <鉄道の輸送業務に関係する情報システム> 営業関係のシステム ・座席を予約し、切符を販売するシステム ・駅の収入管理を行うシステム ・自動改札システム
輸送計画を作るシステム ・列車の駅間の運転時分を計算するシステム ・列車ダイヤを作るシステム ・車両運用計画を作るシステム ・乗務員運用計画を作るシステム ・構内入換計画を作るシステム 輸送計画を伝達するシステム ・輸送計画データベースシステム ・駅や電車区での必要帳票を作成するシステム
輸送を管理するシステム ・ダイヤに従って信号機を自動的に制御するシステム ・発車標や自動放送装置を制御するシステム ・ダイヤが乱れた時に運行計画の変更案を作るシステム ・ポイントと信号機を連動させて制御するシステム ・駅などにダイヤの変更を伝えるシステム ・車両の検査や使用計画を作るシステム ・列車走行実績に関する各種統計情報を作成するシステム その他にも、設備の計画やメンテナンスに関する業務を支援するシステムも多数ある。
列車ダイヤ ・1日あたり2万6000本の旅客列車(JR各社の合計) ・1日の走行距離の合計は約180万km(地球45周分) これらの計画を定めたものが列車ダイヤ <列車と車両はどこが違う?> 「列車」とは物理的な「車両」のことではない 例)東京発博多行きの「のぞみ」 ・東京から博多までが一つの「列車」 ・この「車両」は博多で折り返して別の「列車」になる
鉄道部内での規定:列車とは 「停車場外の線路を運転させる目的で組成された車両をいう」 「車両が駅の外を走る場合、それなりの準備がなされていないといけない」という意味 ブレーキ、運転台の向き、列車番号など 列車ダイヤとは? ダイヤ:ダイアグラム(図という意味)
列車ダイヤ 駅 5 4 3 2 1 列車 時間
実際の列車ダイヤの例
列車ダイヤ:列車計画をさす言葉としても使われる 列車の運転計画の情報 <列車計画の内容> ・名称・・・列車番号、愛称名 ・車両・・・両数、車両系式 ・速度・・・速度種別 ・経路・・・経路、運転線路、始発駅、終着駅 ・時刻・・・停車駅、各駅の着時刻・発時刻、番線 基本ダイヤ:「ダイヤ改正」のときに作られる(1回/年) 実施ダイヤ:当日に実施するダイヤ(毎日変更)
列車を走らせるしくみ ダイヤにしたがって列車を走らせる 鉄道の安全確保の基本的考え方 閉そく <閉そく> 線路を一定の区間に分割して、1つの区間(閉そく区間)には、同時に1つの列車しか入れないようにして、列車どうしの追突を防ぐ仕組み 閉そく区間
<軌道回路> 線路をある区間に区切り、そこに電流を流して(隣の区間とは絶縁)、列車がいれば電流が短絡することにより検知する仕掛け。 <ATS> ATS (Automatic Train Stop):自動列車停止装置 赤信号を行き過ぎようとした時に、自動的にブレーキがかかる装置 <ATC> ATC (Automatic Train Control):自動列車制御装置 閉そく区間内のレールに速度指示信号を示す電流を流し、列車が速度信号以上で走行している場合は、その速度になるまで自動的にブレーキがかかる装置
ATS-SおよびATS-SN
ATS-Pの作動原理
ATS (Automatic Train Stop):自動列車停止装置 <列車の走行> 閉そく区間 電流 軌道回路 ATS (Automatic Train Stop):自動列車停止装置 ATC (Automatic Train Control):自動列車制御装置 ATO (Automatic Train Operation):自動列車運転装置
<連動> 信号機とポイントを連動させる仕組み 2番線の信号機 1番線の信号機 2番線 1番線 出発進行! 出発信号機が青(進行)になっている 1番線の信号が青になる条件: (1)この列車の進路上に他の列車が存在しない (2)1番線と2番線を振り分けるポイント(転てつ機)が1番線側に固定されている) (3)反対側から1番線に着く進路があった場合、その信号機は赤になっている
列車が信号を見て、駅に進入したとき: (1)軌道回路によって、列車の位置が検知され、1番線の場内信号機が赤になる (2)列車が完全にホームに着くまで、1番線と2番線を振り分けるポイントを固定する 信号機を制御する回路 一種の論理回路 (順序回路) ある条件が揃えば、信号機を青(赤、黄)にする マイクロコンピュータによる連動装置(電子連動装置) リレー(継電器)による制御回路(継電連動装置)
<進路制御> 実施ダイヤにもとづいて、列車の進路と順序を制御する PRC(Programmed Route Control):進路制御システム コンピュータで鉄道の信号を制御するシステム ・列車追跡:軌道回路単位で列車位置を検知 ・列車識別:車両に列車番号を発信する装置を搭載 コンピュータが列車ダイヤにしたがって信号を制御 CTC (Centralized Train Control) :列車集中制御装置 線区全体を管理する指令センターの指令員が各駅に対して信号機を遠隔操作で制御
中央指令室 列車ダイヤ 列車集中制御装置 ATS, ATC 駅 駅 駅 列車追跡 連動装置
列車運行管理システム 列車の運行を集中的に監視制御するシステム 新幹線開業:昭和39年 当初はARC (Automatic Route Control)という装置でポイント制御 岡山まで開業:昭和47年 新幹線の進路制御をコンピュータで自動的におこなうシステムを導入 新幹線の運行管理システム:愛称コムトラック COMTRAC(COMputer aided TRAffic Control)
<コムトラックの機能> ・内部に蓄えたその日のダイヤにもとづいて、各列車に対する信号を制御 ・列車運行が乱れたときに、それ以降の列車運行を予測し、運転整理ダイヤを提案 ・ダイヤをもとにして、駅の発車標や案内放送を自動的に行う 昭和50年、博多開業時に機能拡張 昭和57年、東北・上越新幹線用コムトラックの導入 その後も機能拡充 車両割当機能、指令伝達機能、乗務員運用機能など
<コムトラックの全体構成> 中央(指令センター) 運行表示系サブシステム 進路制御系サブシステム 情報処理系サブシステム 列車集中制御装置 発車標装置 自動放送装置 駅 連動装置 駅、区所 端末装置 ATC装置 指令伝達 進路制御 遅延情報 地点検知
平成7年、東北・上越新幹線用のコムトラックを全面的に改良(通称COSMOS ) <ニュー新幹線総合システム> 平成7年、東北・上越新幹線用のコムトラックを全面的に改良(通称COSMOS ) (Computerized Safety Maintenance and Operation Systems of Shinkansen) 従来の電力系統制御システムや設備管理、車両管理などのシステム、新たに開発された保守作業管理や基地構内作業管理も取り込む <特徴> ・駅や現場に配置したコンピュータと中央とを高速ディジタル回線で結んだネットワークを構成(情報の共有化) ・指令室の大型運行表示盤の代わりに情報の表示や制御はすべてコンピュータのディスプレイ上で
日立製作所ホームページ(列車運行管理システムの製品紹介)より
列車運行管理システムの構成
駅システム
中央指令室の風景
列車在線モニター画面
ダイヤ表示画面
駅扱い所の風景
列車在線モニター画面
発車標(電光表示板)
列車遅延モニター
保守作業管理システム