消費者選好からみる空間デザインによる他店差別化の可能性 ~喫茶店の事例~ 2010年2月1日(月) カフェ班
目次 はじめに 研究の目的 喫茶店における空間デザイン 評価手法(コンジョイント分析) アンケート調査概要 結果と考察 結論と今後の課題
1.はじめに 背景 「空間デザイン」の提供による差別化が注目 近年、その数が飽和状態に達し、激しい生き残り 競争が繰り広げられている飲食店業界 「空間デザイン」の提供による差別化が注目
2.研究目的 消費者が何を基準に店の選択を決定して いるのか どのような雰囲気の店がどれほど好まれ るのか コンジョイント分析によるWTPの計測
3-1.喫茶店市場の動向 80年代後半には喫茶店が飽和状態になり、その後 は衰退の道をたどる 年次 事業所数 (個所 ) 従業者数 (人 ) 80年代後半には喫茶店が飽和状態になり、その後 は衰退の道をたどる 年次 事業所数 (個所 ) 従業者数 (人 ) 1966 昭和 41 27,026 139,821 1975 50 92,137 350,967 1981 56 154,630 575,768 1986 61 151,054 529,540 1991 平成 3 126,260 456,774 1996 8 101,945 366,270 1999 11 94,251 331,349 2001 13 88,924 329,198 2004 16 83,684 314,944 2006 18 81,042 322,924
「食」に対する動機や目的の変化 喫茶店の役割が変化 3-2.喫茶店の役割の変化 「食」に対する動機や目的の変化 喫茶店の役割が変化 年次 合計 家庭 喫茶店・コーヒーショップ レストラン・ファストフード 職場・学校 その他 1983 昭和 58 8.60 5.10 1.10 0.10 1.70 0.50 1990 平成 2 9.90 5.62 0.88 0.11 2.37 0.92 2000 12 11.04 6.49 0.52 0.17 2.98 2002 14 10.03 6.27 0.34 0.14 2.50 0.76 2004 16 10.43 6.42 0.38 0.12 2.69 2006 18 10.59 6.38 0.33 2.78 0.93 2008 20 10.60 6.52 0.22 2.77 0.91
3-3.空間デザインの概要 「空間」の差別化の重要性 時代の変化と共に、人々のカフェに対する意 識が変化 「空間」の差別化の重要性 時代の変化と共に、人々のカフェに対する意 識が変化 味や品質で集客することは難しい時代へと変化 「空間デザイン」による差別化が注目
4-1.環境評価手法 市場価格が存在しない財の価値を、金銭単位で評価する手法 選好独立型評価法 代替費用法 回避支出法 用量反応法 選好依存型評価法 顕示選好法 トラベルコスト法 ヘドニック法 表明選好法 仮想評価法 コンジョイント分析
4-1.環境評価手法 市場価格が存在しない財の価値を、金銭単位で評価する手法 選好独立型評価法 代替費用法 回避支出法 用量反応法 選好依存型評価法 顕示選好法 トラベルコスト法 ヘドニック法 表明選好法 仮想評価法 コンジョイント分析
4-2-1.コンジョイント分析概要 コンジョイント分析(Conjoint Analysis) ・商品を様々な属性レベルに分類し対象者に質問す ることで、選好を調べ属性レベルごとの効用関数を 推定する方法である。 ・マーケティング調査、商品開発の分野で研究 現在では環境経済学の分野で応用
4-2-2.コンジョイント分析概要 コンジョイント分析の4つの形態 各プロファイルを提示して、それがどのくらい好ましいかを尋ねる 完全プロファイル型 各プロファイルを提示して、それがどのくらい好ましいかを尋ねる ペアワイズ評価型 2つのプロファイルを提示し、どちらが望ましいかを尋ねる 選択型実験 複数のプロファイルから、どれが最も望ましいかを尋ねる 仮想ランキング 複数のプロファイルから、望ましい順に並べてもらう
4-2-2.コンジョイント分析概要 コンジョイント分析の4つの形態 各プロファイルを提示して、それがどのくらい好ましいかを尋ねる 完全プロファイル型 各プロファイルを提示して、それがどのくらい好ましいかを尋ねる ペアワイズ評価型 2つのプロファイルを提示し、どちらが望ましいかを尋ねる 選択型実験 複数のプロファイルから、どれが最も望ましいかを尋ねる 仮想ランキング 複数のプロファイルから、望ましい順に並べてもらう
4-2-3.コンジョイント分析概要 利点 問題点 CVMに比べ複数属性の環境価値を評価できる アンケートを用いるためバイアスの影響を 受けやすい 環境評価の分野ではいまだ開発途上である ため今後さらなる研究が必要である
5-1.アンケート調査概要 日時 2009年11月7日(土)12時~17時 11月8日(日)12時~17時 場所 2009年11月7日(土)12時~17時 11月8日(日)12時~17時 場所 立命館大学びわこ草津キャンパス学園祭 サンプル数 81
5-2.質問項目 問1 喫茶店にどのくらいの頻度で行くか。 問2 よく行く喫茶店について。 問1 喫茶店にどのくらいの頻度で行くか。 問2 よく行く喫茶店について。 問3 喫茶店を選ぶときに最も重視することはなにか。 問4 喫茶店の雰囲気について最も重視することはなにか。 問5 提示する四つの喫茶店について、行きたいと思う順位。 問6 ドリンクメニューの数、価格、雰囲気、駅からの距離の 異なる喫茶店のなかでどちらに行きたいか。 問7 性別 問8 年代 問9 職業
6-1. 被験者データ 性別は偏りなくデータが取れたが、年代、職業 に関してはアンケート実施場所が立命館大学BKC 学園祭であるため、学生が大半を占めた。
6-2. 喫茶店利用の割合 1ヵ月単位でみると喫茶店に行く回数が増える程に割合が少なくなっている。 問1 どのくらいの頻度で喫茶店を訪れるか 1ヵ月単位でみると喫茶店に行く回数が増える程に割合が少なくなっている。 女性の方が喫茶店に行く割合が高く、利用割合は86%という数字が出た。
6-3. 最も行く喫茶店について a) 店名 問2 良く訪れる喫茶店について (店名、場所、一緒に行く人数、目的、滞在時間) 問2 良く訪れる喫茶店について (店名、場所、一緒に行く人数、目的、滞在時間) a) 店名 海外チェーン店のスターバックスが80%近くの割合を得て1番で、そ の後、コメダ珈琲店、サンマルクカフェ、ドトールが続いた。
b) 場所 c) 人数 一緒に行く人数の項目では、2人 が44.4%で最も多く、次いで1人 が28.6%という結果になった。 一緒に行く人数の項目では、2人 が44.4%で最も多く、次いで1人 が28.6%という結果になった。 比較的近い喫茶店に行っているのが表れている。累積度数を見てみると、0~10分の間で半数を超えている。
d) 目的 休憩の回答が57.1%で1番多く、次いで暇つぶしの項目が28.6%で多 かった。 休憩、暇つぶしの項目が多いことから、やはり喫茶店は息抜きの場として利用されていることが多いことがわかる。
e) 滞在時間 60分の利用者が37.1%と1番多かった。 滞在する場合その時間を尋ねた。98%の利用者が喫茶店に滞在するのに対し、 テイクアウトのみの利用者は2%となった。 60分の利用者が37.1%と1番多かった。 表3-9と照らし合わせて考えてみると、休憩、暇つぶしに喫茶店で60分滞在するというスタイルなのであろう。
6-4.喫茶店で重視するもの 安らぐ事が出来るかなど利用者が求める要素が喫茶店のインテリアに帰結していると考えられる。 問3 喫茶店を選ぶ時に最も重視すること 1番多かったのが「味」、「雰囲気」で34.9%、次いで「価格」、「無回答」 の9.5%という結果になった。 問4 喫茶店の雰囲気で重視すること インテリアを重視しているが55.6%で最も多く、次に20.6%で照明を重視している人が多いという結果になった。 安らぐ事が出来るかなど利用者が求める要素が喫茶店のインテリアに帰結していると考えられる。
6-5-1.雰囲気に対する選好 問5 写真を提示し、行きたい喫茶店を順位づけしてもらう 個性的:インテリア、レイアウトなど全てが個性的 問5 写真を提示し、行きたい喫茶店を順位づけしてもらう 個性的:インテリア、レイアウトなど全てが個性的 にぎやか:明るい照明、簡易なイス、席数多い
6-5-2.雰囲気に対する選好 開放感:明るい照明(自然光)、テラス席が多い 落ち着き:暗めの照明、ゆったりしたイス、席数少ない
6-5-3.雰囲気に対する選好 1番好まれたのが「落ち着き」で、63%の人が1位と判断している 各空間で入った票に1位4点、2位3点、3位2点、4位1点という点数付 けを行った。 落ち着き 245 にぎやか 136 開放的 162 個性的 147 1番好まれたのが「落ち着き」で、63%の人が1位と判断している 「にぎやか」には最も4位の票が入っており、38.3%の人が票入れている。「開放感」、「個性的」は似たような結果になってしまったが、個性的を表す写真が私たちの判断で決定したため個性的分類ははっきりとした結果とは言い難い。
6-6.コンジョイント分析概要 選択型実験で調査 効用関数を推定 支払意思額WTPを推定 属性 レベル ドリンクメニューの数 200円、250円、300円、350円 ドリンクの価格 10種、20種、30種 駅からの距離(徒歩) 5分、10分、15分 雰囲気 個性的、にぎやか、開放的、落ち着き
6-7.コンジョイント質問例
6-8.コンジョイント分析結果 喫茶店の属性に関する効用関数 変数の定義 変数 定義 OCHITUKI 落ち着き=1 それ以外=0 落ち着き=1 それ以外=0 KAIHOU 開放的=1 それ以外=0 KOSEI 個性的=1 それ以外=0 MENU ドリンクメニューの数 KYORI 駅からの距離(徒歩) PRICE ドリンクの価格
6-9.コンジョイント分析結果 効用関数推定結果 消費者は「にぎやか」から他の雰囲気に変化すると 効用が上がる 「開放的」という雰囲気は、他の「落ち着き」「個 性的」という雰囲気よりも「にぎやか」という雰囲 気に近い 変数 係数値 t値 p値 OCHITUKI 0.565865 2.359008 0.0183 ** KAIHOU 0.367692 1.782365 0.0747 * KOSEI 0.536493 2.376930 0.0175 MENU 0.024243 2.123302 0.0337 KYORI -0.046947 -3.082585 0.0021 *** PRICE -0.009766 -5.018348 0.0000
6-10.コンジョイント分析結果 WTPの推定結果 WTP 落ち着き 57.9円 開放的 37.7円 個性的 54.9円 メニューの数 2.5円 距離 -4.8円 空間デザインへのWTPは、メニューの数が10種増えることに対するWTPよりも高い 空間デザインは喫茶店を選ぶ際の大きな基準となっている
6-11.コンジョイント分析によるWTPの 推定値 空間属性 落ち着き 開放的 個性的 WTP 57.9円 37.7円 54.9円 「にぎやか」を基準とした「落ち着き」に対する追加的な WTPは、ドリンク一杯当たりで見て57.9円、「開放的」に ついては37.7円、「個性的」については54.9円 「落ち着き」、「個性的」、「開放的」、「にぎやか」の順で選好している
どれくらいまでの距離の差ならなら落ち着きを選択するか? シュミレーション① 落ち着いた雰囲気のカフェとそれ以外の別のカフェが 二つあるとき、どれくらいの距離の差なら落ち着いた雰 囲気のカフェが選ばれるか? メニュー:20種 価格:300円 メニュー:20種 価格:300円 A+ΔX A どれくらいまでの距離の差ならなら落ち着きを選択するか?
シュミレーション① これらが等しくなるΔXは? 開放的との間なら 個性的との間なら
シュミレーション① A+ΔX A にぎやか:ΔX=12分 開放的 : ΔX=4.2分 個性的 : ΔX=0.6分 メニュー:20種 価格:300円 メニュー:20種 価格:300円 A+ΔX A にぎやか:ΔX=12分 開放的 : ΔX=4.2分 個性的 : ΔX=0.6分
シュミレーション② 距離、メニューの数、価格すべてが同じ2つのカフェがある とすると、一方が「にぎやか」でもう一方が「落ち着いた」雰 囲気のカフェである時に「落ち着いた」カフェを選ぶ確率は ? メニュー:20種 価格:300円 同じ メニュー:20種 価格:300円
シュミレーション② 選択確率の導出
シュミレーション② 他の条件を一定として、にぎやかなカフェとそれ以外の 別のカフェが二つあるときのそれぞれの選択確率 落ち着き:71.4% 開放的:64.3% 個性的:70.4%
6-11.考察 つまり つまり 消費者はドリンクメニューの数よりも空間デザイ ンに対して、高い価値を持っている。 空間デザインは喫茶店を選ぶ際の大きな基 準となっている 「にぎやか」に比べて追加的に「落ち着き」に 57.9円、「個性的」に54.9円、「開放的」に37.7 円支払ってもよいと考えている。 「落ち着き」、「個性的」、「開放的」、「にぎ やか」の順で選好している つまり つまり
7-1.結論 ドリンクメニューの数が多かったり、駅か らの距離を近かったりするなど、実質的な 利便性が良いだけでなく、消費者のニーズ に合った空間デザインを提供するといった ような、視覚的・感覚的な視点も重要であ る。 空間デザインによる他店差別化は効果的で ある!!
7-2.今後の課題 雰囲気の基盤の統率 喫茶店属性に対する他属性による影響 対象を学生から拡大