ユートピアはディストピアなのか 指導教官 北村賢介准教授 1DS04205N 村上英峻
研究背景・目的 いつの時代にも人間はユートピア、つまり理想国をもとめてきた。 過去に表現されたユートピアは本当にユートピアなのか。 ユートピアとディストピアには共通するものがあるのではないか。 いつの時代にも人間はユートピアつまり理想国をもとめてきた。しかし過去に表現されたユートピアは本当にユートピアなのか。ユートピアとディストピアには共通するものがあるのではないか。
研究背景・目的 ユートピアとディストピアそれぞれの作品をとりあげ、社会像に注目してその特徴を比較し、ユートピア・ディストピアそれぞれの本質について述べる。 ユートピアとディストピアを比較することで、はたしてユートピアが本当に理想的な社会であるか、考察する。
ユートピア作品 トマス・モア『ユートピア』(1516) スウィフト『ガリバー旅行記』(1729) -第4編フウイヌム国渡航記- -第4編フウイヌム国渡航記- ウィリアム・モリス『ユートピアだより』(1890)
ディストピア作品 H.G.ウェルズ『タイム・マシン』(1895) ハックスリー『すばらしい新世界(1932) ジョージ・オーウェル『1984年』(1949)
トマス・モアの『ユートピア』 私有財産をもたない 細かい生活行動の規定 相互監視 奴隷制の導入 悪(アンチ・キリスト教的な)を犯す自由が奪われている
スウィフトの『ガリバー旅行記』 フウイヌムが統治する「馬の国」 「理性」による支配 法律は存在しない 人口過剰と種の退化を 防ぐ対策 理性の王国
モリスの『ユートピアだより』 共産主義国 質素な生活 貨幣制度の消滅 政府、法律は存在しない 共産主義国
ユートピアの特徴 ◯物理的・時間的に隔絶された領域 ◯理性による生活の規定 ◯社会における悪を犯す自由の否定 ◯歴史が止まった、完成された社会 社会悪 キリスト教、理性、共産主義 これらの思想が悪とするもの
H.G.ウェルズの『タイム・マシン』 80万年後の世界:衣食住が充足した社会 地上人エロイ ⇔ 地下人モーロック 資本家 ⇔ 労働者 支配 ⇔ 生産 資本主義の堕落した形態 資本主義の堕落した形態
ハックスリーの『すばらしい新世界』 安定至上主義 人工授精による階級の選別 階級化に不満をもたない教育 極端な自由恋愛の奨励 技術と全体主義による 人間の奴隷化
ジョージ・オーウェルの『1984年』 一党独裁の全体主義国家 思想・言語・結婚など生活の統制 市民行動の監視 管理社会の地獄 管理社会の地獄
ディストピアの特徴 ◯徹底的な管理・統制社会 ◯プロパガンダによって理想社会だとみせかけている ◯体制の反抗者は社会から排除される ◯管理社会における自由の否定 管理社会における自由の否定 →社会悪の消滅
ユートピアはディストピアなのか 「理性」による統制 個々の自由な活動の犠牲 精神的な閉塞感 社会悪の消滅のための自由の否定 悪を犯す自由の否定 管理社会における自由の否定 ・他人にとっては理想にはならないことが多々ある ・自分が理想だと思うものをより信じることで、他者に強制したくなる ・ある程度の自由を管理することがどうしても必要 ・どこまでの自由を許すか、バランス感覚が重要
参考文献 トマス・モア著 平井正穂訳『ユートピア』(岩波文庫 1957年) スウィフト作 平井正穂訳『ガリバー旅行記』(岩波文庫 1980年) ウィリアム・モリス作 松村達雄訳『ユートピアだより』(岩波文庫 1974年) H.G.ウェルズ作 橋本槇矩訳『タイム・マシン』(岩波文庫 2005年) ハックスリー著 松村達雄訳『すばらしい新世界』(講談社文庫 2001年) ジョージ・オーウェル著 新庄哲夫訳『1984年』(ハヤカワ文庫 2005年) 田村秀夫著『イギリス思想叢書1 トマス・モア』(研究者出版 1996年) 和田敏英著『「ガリバー旅行記」論争』(開文社出版 1983年) 田村秀夫著『増補 ユートピアへの接近 社会思想史的アプローチ』(中央大学出版部 1992年) ルイス・マンフォード著 関裕三郎訳『ユートピアの系譜 理想の都市とは何か』(新泉社 1984年)