第8回 記憶研究とテレビ 1.集合的記憶とは 2.社会的出来事に関する集合的記憶 3.外国の社会的出来事に関する集合的記憶 第8回 記憶研究とテレビ 1.集合的記憶とは 2.社会的出来事に関する集合的記憶 3.外国の社会的出来事に関する集合的記憶 4.集合的記憶とテレビ視聴との関連 5.社会的出来事に関する集合的記憶の総括
1.集合的記憶とは 集合的記憶:集団や社会全体に共有されて いる記憶 (思い出)。 例) 2020年の東京オリンピックの招致に成功 集合的記憶:集団や社会全体に共有されて いる記憶 (思い出)。 例) 2020年の東京オリンピックの招致に成功 滝川クリステルの「お・も・て・な・し」 9.11アメリカ同時多発テロ
・記憶の分類 保持時間の長さ 短期記憶 長期記憶 記憶の種類 エピソード 記憶 手続き記憶 自伝的記憶 集合的記憶
自伝的記憶と集合的記憶 過去の自分の体験 過去の自己に関わる情報 幼児期健忘 レミニセス・バンプ 親近性効果 集団や社会全体に共有されている記憶(≠個人の経験) 「想起」(思い出すこと)に焦点が置かれる 集団的記憶 社会的記憶 歴史的記憶
新近性効果 集合的記憶における想起の特徴 関与度 最近の出来事ほどよく覚えている。 自国や自分自身との関わりがより重要な出来事ほどよく覚えている。 出来事の情動的インパクト。 出来事に関する心情の社会的共有 アクセス可能性(マス・メディアでの繰り返し接触)
2.社会的出来事に関する集合的記憶 2009年に10代~60代を対象にウェブ調査を実施。 社会的出来事のリストを提示し、覚えているものをチェックしてもらった(再認法)。 平均認知率は65.9%。 認知率は年代が上がるに連れ上昇。特に40代以上での認知率が高い。 認知率の高い出来事は、 ←新近性効果によるもの ←被害規模の大きいもの=テレビ映像のインパクト ←社会的影響が長期に渡るもの
認知率の低い出来事は、若年層に認知されていない 1970年代・1980年代の出来事 ←被害や社会的影響が相対的に小さい ←出来事を象徴する映像が存在しない ←後世に及ぶ影響が小さい ・社会的出来事に関する集合的記憶 におけるレミニセス・バンプ それぞれの年代において、その人たちが10~20代 のころの出来事がよく記憶されていた。 ・どの世代にも共有されている出来事 ←テレビ映像のインパクト(米同時多発テロ) ←長期的に注目された出来事(和歌山毒物カレー事件)
3.外国の社会的出来事 に関する集合的記憶 外国の社会的出来事に関する集合的記憶は、主にマス・メディアによって構築されていると考えられる。 3.外国の社会的出来事 に関する集合的記憶 外国の社会的出来事に関する集合的記憶は、主にマス・メディアによって構築されていると考えられる。 2011年に10代~60代を対象にウェブ調査を実施。 どの年代でも新近性効果が認められた。 スマトラ島沖地震・津波被害(2004) 米同時多発テロ事件(2001) 日韓共催W杯サッカー(2003) ・インパクトの大きい出来事がよく記憶されていた。 アポロ11号月面着陸(1969) ケネディ米大統領暗殺(1963)
←視覚的インパクト(決定的瞬間、出来事を象徴す る場面の映像の存在)が強い ←国際的・政治的インパクトが強い 最もよく記憶している出来事 ←視覚的インパクト(決定的瞬間、出来事を象徴す る場面の映像の存在)が強い ←国際的・政治的インパクトが強い 米国同時多発テロ(2001) ケネディ米大統領暗殺事件(1963) ベルリンの壁崩壊(1989) ・メディアによる疑似体験により構築される集合的記憶 ←瞬間的・象徴的な映像への繰り返し接触 ○40代以下にとってのケネディ米大統領暗殺事件 ×イラクのクウェート侵攻・湾岸戦争(1990~1991)
4.集合的記憶とテレビ視聴との関連 10代~60代を対象にした2009年のウェブ調査 古い出来事(1959~1988)と新しい出来事(1989~2008)についてテレビ視聴との関連を分析。 10~30代では、子供時代のテレビ熱中度、40~60代では子供時代の家族視聴が出来事の記憶を規定。 30~50代では、社会的出来事の記憶はテレビ視聴量に関連。 10代と20代では、古い出来事の認知にテレビ視聴量が関連。
5.社会的出来事 に関する集合的記憶の総括 国際的・政治的・社会的インパクト 出来事を象徴する映像 直接体験 5.社会的出来事 に関する集合的記憶の総括 直接体験 リアルタイムでの体験は自伝的記憶と結びつく。 パーソナル・ネットワークで共有される。 国際的・政治的・社会的インパクト 後世に影響を及ぼしていると集合的記憶となる。 政治的インパクトが弱い出来事は、時間の経過と共に風化。 出来事を象徴する映像 出来事を象徴する短時間の映像は繰り返し放送される。 疑似体験を通して集合的記憶として社会全体で共有される。
社会的インパクト 自伝的記憶 パーソナル・ネットワークでの共有 繰り返し報道 象徴的な映像
参考文献 佐藤浩一 (2008). 自伝的記憶研究の方法と収束的妥当性 佐藤浩一・越智啓太・下島裕美(編) 自伝的記憶の心理 学 北大路書房 (pp. 2-18). 小城英子・萩原滋・村山陽・大坪寛子・渋谷明子・志岐裕子 (2010). 集合的記憶とテレビ―ウェブ・モニター調査 (2009年2月)の報告(2) メディア・コミュニケーション, 60, 29-47. 小城英子・萩原滋・テーシャオブン・上瀬由美子・李光鎬・渋谷 明子 (2011). 外国に関する集合的記憶とテレビ―ウェ ブ・モニター調査(2010年2月)の報告(3) メディア・コミュ ニケーション, 61, 127-148.