コメント 狩野 裕 大阪大学人間科学部 日本心理学会ワークショップ 「探索的因子分析における変数の選択(3)」 Organized by Akira Harada コメント 狩野 裕 大阪大学人間科学部
agenda 解釈,共通性,適合度 共通性と信頼性の高低 共通性が高い項目が落ちる? 例 SEFAの役割 「共通性=0」の検定 ヨドミ(誤差相関)の影響 例
共通性の低い変数を除いても,モデルの適合度が上がるとは限らない 原田氏のスライドより (変数選択のための)3つの基準 それぞれ着目している側面が異なる 解釈:実質的な意味 共通性:因子負荷量の大小 適合度:モデルへのあてはまり ↓ 共通性の低い変数を除いても,モデルの適合度が上がるとは限らない
因子分析の基本 因子分析は何をしているか 原因系である因子によって観測変数間の相関を 全て説明するモデル 一般には,「モデルの適合がよい」ことは必須条件 因子分析の位置づけがはっきりしているときは,条件を緩めてモデルを再構築してもよい(しなければならない) 因子分析のためにデータがあるのではない
尺度構成(のための因子分析) 内容的妥当性(理論的妥当性) 信頼性 実行可能性
内容的妥当性(理論的妥当性) 基本項目からスタートする変数増加法が使いやすい 適合度に優先する 因子分析的解釈をするにはある程度の適合を達する必要はあるだろう 適合が悪くなる原因を同定しておきたい 因子分析モデルの諸仮定のどれが崩れているか SEMによるモデル化が有効
信頼性 信頼性係数の信頼性 高信頼性を達成するには α係数を信頼するには因子分析モデルの十分な適合が必須(+essentially τ- equivalence) モデルに合わない変数は除去するしかない 因子分析モデルが十分な適合を示さないとき SEMを行い,適合の良いモデルを探索する 得られたモデルに基づいて信頼性を計算する 高信頼性を達成するには 適合度とは無関係 高い共通性(大きな因子負荷量) or 多い項目数
実行可能性 項目は少ない方が良い 信頼性とトレードオフ 内容的妥当性とトレードオフ 信頼性が低いときは事後の分析でSEMを使う
尺度構成(のための因子分析)の 簡単なまとめ 実行可能性と内容的妥当性から最大項目数と必須項目が選定される この条件の下で,信頼性最大の項目群を探索する 因子分析的解釈のためある程度良い適合が必要 SEFAが便利 信頼性を正確に計算するために α係数を使うならば十分な適合が必要 項目を落とすのが唯一の処方箋 SEFAが大変便利 しかし,本来は SEMを行い,適合の良いモデルを探索する 得られたモデルに基づいて信頼性を計算する
共通性と信頼性_1 因子分析において共通性が低い変数を 入れておいても問題はない 尺度として用いるときは問題あり 解釈には注意が必要 主成分分析はダメ 尺度として用いるときは問題あり 共通性(因子負荷)が低いと信頼性が下がる
共通性と信頼性_2
共通性の検定について_1 SEFAは因子に寄与しない変数を排除 できない 対策 荘島(2001).昨年のWSでのコメント Hogarty et. al (2001) 対策 共通性の検定により有意にならない変数を落とす 低い共通性により信頼性を低めることになるのならば,その変数を落とす(e.g., Kano-Azuma, 2001)
共通性の検定について_2 Wald タイプの検定(Harada-Kano 2001) 尤度比検定(LR)
Wald vs. LR 一般論では漸近同値 経験的に,LRの方が少し良いと言われている 共通性の検定では LRは計算が面倒 自由度が異なり,パフォーマンスはかなり 異なると予想される 個人的には,LRが(相当)良いのではないかと考えている 近い将来の課題
共通性が高い項目が落ちる? SEFAは,「因子負荷が大きい変数を 落とせ」と言ってくることがある.なぜか? それが結構,鍵項目だったりする ヨドミがあるとSEFAはそれを検出する 因子負荷の大きい変数にはヨドミがあることが 割とある ヨドミがあるから因子負荷が大きくなる (Kano 2001) ヨドミとは「誤差相関」のこと
どうするか コンセプトの観点 信頼性の観点 ヨドミが大きな問題にならないか 誤差と思ってよいか ヨドミを考慮したモデルで考えて,信頼性が 向上するのならば落とさなくてもよい
パス図で解説すると_1 SEFA ρ' 0.64 α 0.74 ρ 0.76 α 0.74 ρ 0.63 α 0.63 悪い適合 ρ' 0.64 α 0.74 ρ,α共に不正確 信頼性の観点からは,V2を尺度項目に 入れる価値はあまりない ρ 0.76 α 0.74 ρ 0.63 α 0.63 悪い適合
パス図で解説すると_2 ρ 0.63 α 0.63 ρ' 0.68 α 0.70 信頼性の観点からは,V2を尺度項目に 入れる価値がある
α,ρ,ρ’ 十分な適合度+因子負荷が等しい 十分な適合度 適合しない場合
実例:SDデータ,因子1(7項目)
実例:SDデータ,因子1(7項目)
LM検定により誤差相関を同定
最終モデル
ヨドミ調整の効果
コンセプト上の問題
SEFAの結果との関係
どの変数を除くべきか_1 先般得たSEFAの結果再掲
どの変数を除くべきか_2
まとめ 低い共通性は尺度の信頼性を下げる α係数を用いるならばSEFAが便利 因子分析モデルからのズレをモデル化して信頼性を正確に計算すべき SEFA2002では共通性検定のオプションを追加 α係数を用いるならばSEFAが便利 十分な適合度が要求されるため 項目削減は適合度を向上させる(唯一の)有効な手法 因子分析モデルからのズレをモデル化して信頼性を正確に計算すべき 現在,新たなプログラムを開発中 コンセプトの問題は残る
参考文献 Harada-Kano (2001). Variable selection and test of communality in exploratory factor analysis. A paper presented at IMPS2001, Osaka. IMPS Abstracts, p.16 Hogarty et. al (2001). Selection of variables in exploratory factor analysis: An empirical comparison of stepwise and traditional approaches. (submitted) Kano-Azuma (2001). Use of SEM programs to precisely measure scale reliability A paper presented at IMPS2001, Osaka. IMPS Abstracts, p.57 Kano (2001). All about variable selection in factor analysis and structural equation modeling. A paper presented at IMPS2001, Osaka. IMPS Abstracts, pp. 205-206