乳房炎とは乳腺の炎症の総称であり起因物として微生物、特に細菌が重要である
乳房炎 乳房炎は乳牛の疾病の中で最も多い。 家畜共済統計によれば、最近でも全傷病事故中の約1/4を占める。 乳房炎の誘因として、遺伝、体型、季節や気候、牛舎や牛床の構造、栄養状態、搾乳方法、乳期、年齢、乳頭口の損傷など乳頭の状態、乳房炎以外の他の疾病感染などがある。
乳房炎の原因菌 100種類以上の微生物が本病に関与すると言われているが、ほとんどが細菌である。 Mycoplasma bovis Staphylococcus aureus Corynebacterium bovis Escherichia coli Streptococcus agalactiae Klebsiella pneumoniae 100種類以上の微生物が本病に関与すると言われているが、ほとんどが細菌である。 原因細菌は感染乳房から同じ個体あるいは別の牛の乳房に搾乳中に容易に感染する伝染性細菌と、環境に常在し主に乳頭口から侵入、感染する環境性細菌に大別される。 伝染性細菌にはStaphylococcus aureus, Streptococcus agalactiae, Mycoplasma bovis, Corynebacterium bovisなどがある。 環境性細菌には大腸菌群(Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeなど)、その他のレンサ球菌、腸球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)などがある。
乳房炎の感染環 伝染性細菌は通常、汚染された乳房清拭タオル、搾乳者手指、ティーカップなどを介して、またライナースリップや真空圧の変動による感染乳汁の逆流により伝播する。 環境性細菌は、牛床、糞尿、牛の体表、汚染水中に存在し、乳頭口から侵入する。
乳房炎の発病機序 微生物は通常乳頭口から侵入し、乳管洞、乳管、乳腺胞へと上行するが、時には乳房や乳頭の損傷部から侵入する。 感染乳房において乳汁生成や分泌機能に障害が起こり、また血液からの流入により乳汁中体細胞(特に白血球)が増加する。 乳量の低下や乳質の悪化が起こり、乳生産費の増大を招く。
乳房炎の症状 臨床症状の有無により潜在性乳房炎と臨床型乳房炎に大別される。 潜在性乳房炎は最も頻繁にみられ、乳量の減少による損失をもたらすが、乳房や乳汁には肉眼的に異常を認めない。 臨床型乳房炎は、乳房、乳汁に肉眼的に異常が認められ、発熱、下痢、その他の全身症状を伴い、乳量の低下も起こる。 突発的に発症するものを急性乳房炎、重篤な症状を呈するものを甚急性乳房炎といい、乳房炎の症状が長く続くものを慢性乳房炎という。 急性乳房炎は乳房に潮紅、熱感、腫脹、疼痛がみられ、浮腫、硬結の程度は症例により異なる。 慢性乳房炎では、硬結あるいは萎縮などを認める。
大腸菌性乳房炎の症状 大腸菌性乳房炎のため乳房皮膚が紫赤になった牛 目が虚ろな大腸菌性乳房炎牛 大腸菌性乳房炎を発症した牛の乳房下垂 大腸菌群のエンドトキシンあるいはそれに誘発されたサイトカインにより乳房の腫脹、熱感、硬結、乳量の著減、発熱などの症状を認める。 大腸菌性乳房炎の約10%が甚急性乳房炎を示し、急性乳房炎の症状に続いて眼粘膜や外陰部粘膜の充血などの播種性血管凝固(DIC)に伴う症状を呈する。 半日程度の経過で起立不能に陥り、時に死亡、稀に慢性乳房炎となる。
壊疽性乳房炎の病変 壊疽性乳房炎は甚急性で分娩後数日以内に発症し、乳房組織の広範な破壊と敗血症による全身症状を呈し、死亡率が高い。 壊疽性乳房炎の上乳房の断面 壊疽性乳房炎の乳房外観 壊疽性乳房炎は甚急性で分娩後数日以内に発症し、乳房組織の広範な破壊と敗血症による全身症状を呈し、死亡率が高い。 暗赤色または紫赤色を呈し、さわると硬い。 ガスがあれば圧迫により小気泡の滲出が認められる。 本症にかかった牛は、多くの場合敗血症などを呈しているため食用にならない。
乳房炎の組織病変 急性乳房炎では、間質や乳腺胞、乳管への強い細胞浸潤と、腺胞や乳管上皮の変性、剥離が認められる。 慢性乳房炎では間質の増生、腺胞の萎縮、乳管上皮の肥厚などがみられ、間質にはリンパ球、形質細胞などが、腺胞には好中球がみられる。 潜在性乳房炎の特徴は、腺胞内への細胞浸潤で、変性の程度は軽く、乳管には病変がないことが多い。
乳房炎の診断 臨床検査、乳汁の理化学的性状検査、細菌学的検査などにより診断する。 ストリップカップ法(水洗いして軽くしぼった黒布またはメッシュの金網を適当な容器の上にかぶせたもの、あるいは傾斜させた楓ハの平滑な黒い金属板上に搾乳当初の乳汁を各分房ごとに注ぎ、乳汁の均質性、絮片の有無、その大きさ、色、量を観察する方法)、CMT変法、電気伝導度(乳房炎になると、牛乳中の塩化ナトリウムが増加し、電気伝導度が上昇する特徴を利用して乳房炎を発見することができる)やNAGase活性値(NAGaseは乳腺細胞のライソゾームに含まれる酵素で、乳腺組織の損傷部より乳汁中へ遊離する)、体細胞の測定などの検査法がある。 ストリップカップ法やCMT変法は牛舎において実施できる診断法である。 原因細菌の分離には、一般に血液寒天培地が用いられるが、菌の種類によっては特殊な培地が必要となる。 分離菌については薬剤感受性試験を行い、治療のための参考とする。 大腸菌性乳房炎では血液中および乳汁中のエンドトキシンの測定と乳汁中の細菌を培養する。
乳房炎の予防・治療 ℃ Hours after inoculation 予防はディッピングの励行、乳頭の清拭と乾燥、乳房疾患牛の搾乳の後回しなどの正しい搾乳手順の励行と搾乳器具・搾乳システムの適切な保守管理が重要である。 セレニウムとビタミンEの補給、ビタミンAとβ-カロチンの不足解消などの良好な栄養管理による健康牛の確保、感染防御能の向上も重要である。 環境性細菌による乳房炎の予防法としては、清潔で乾燥した環境の維持が重要である。 治療には乳房内抗菌性物質注入法が最も多く用いられ、全身注射法は、強い全身症状、敗血症、菌血症、および乳房の腫脹が激しく、局所療法では乳房への浸透が期待できない場合に用いられる。 大腸菌性乳房炎では凝固物を排除するためのoxytocin注射と頻回の搾乳、輸液、抗菌性物質、抗炎症剤の投与などが行われる。 Result of clinical progress This is the movement of the temperature. On the third day Appetite was lost and the body temperature had risen more than 41℃. Mucopurulent nasal discharge started on the fourth day. On the fifth day, watery and hemorrhagic severe diarrhea was observed and fever decreased. Symptoms were getting severe. So we sampled the Spleen and Lymph nodes after euthanasia to obtain the passage materials. Hours after inoculation