第37回日本看護研究学会学術集会 シンポジウムII 20011/8/8(月)(デブの日)14:40~16:40 中山和弘(聖路加看護大学)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
Advertisements

生物統計学・第 5 回 比べる準備をする 標準偏差、標準誤差、標準化 2013 年 11 月 7 日 生命環境科学域 応用生命科学 類 尾形 善之.
マルチレベルモデルで 何ができるのか 清水裕士 広島大学大学院総合科学研究科. マルチレベルモデル Multilevel modeling データに階層性がある場合の統計手法 – 個人 ‐ 集団、測定 ‐ 個人、など さまざまなバージョンがある – 階層的線形モデリング HLM – マルチレベル構造方程式モデリング.
マルチレベル共分散構造分析 清水裕士 大阪大学大学院人間科学研究科日本学術振興会. 本発表の概要・目的 個人 - 集団データの階層性 個人 - 集団データの階層性 階層的データは従来の方法では十分な分析が できない 階層的データは従来の方法では十分な分析が できない 従来の方法は何が不十分なのか?
統計学入門2 関係を探る方法 講義のまとめ. 今日の話 変数間の関係を探る クロス集計表の検定:独立性の検定 散布図、相関係数 講義のまとめ と キーワード 「統計学入門」後の関連講義・実習 社会調査士.
1 徹底討論「主成分分析 vs 因子分析」 主成分分析は因子分析ではない ! 狩野裕 (大阪大学) 日本行動計量学会第 30 回大会 於:多摩大学.
がん患者の意思決定について がん患者の意思決定と、その過 程、要因について知る がん患者の意思決定への支援に ついて考える 先端侵襲緩和ケア 看護学 芦沢 佳津美.
多変量解析入門 基礎からSEMまで 中山和弘(聖路加国際大学).
グラフィカル多変量解析 ----目で見る共分散構造分析----
データ分析入門(12) 第12章 単回帰分析 廣野元久.
第35回日本看護研究学会学術集会 プレカンファレンスセミナー 2009/8/2(日)14:30~17:00 中山和弘(聖路加看護大学)
研究計画: 「患者の医療安全への参加」促進活動 に関するアクション・リサーチ
mukogawa-u.ac.jp/~kitaguti/
確率・統計Ⅰ 第12回 統計学の基礎1 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
時系列の予測 時系列:観測値を時刻の順に並べたものの集合
マーケティング戦略の決定.
論文紹介 青年期における恋愛相手の選択基準とアイデンティティ発達との関係
コメント 「ファセット・アプローチの 魅力とパワー」
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
攻撃性尺度の分析:小学生vs中学生Ⅱ ---- 多母集団の同時分析&男女間の平均を調整 ----
得点と打率・長打率・出塁率らの関係 政治経済学部経済学科 ●年●組 ●● ●●.
第4回 (10/16) 授業の学習目標 先輩の卒論の調査に協力する。 2つの定量的変数間の関係を調べる最も簡単な方法は?
分布の非正規性を利用した行動遺伝モデル開発
疫学概論 母集団と標本集団 Lesson 10. 標本抽出 §A. 母集団と標本集団 S.Harano,MD,PhD,MPH.
e-learningを利用した看護大学大学院・継続教育システムの 構築と評価
心理統計学 II 第7回 (11/13) 授業の学習目標 相関係数のまとめと具体的な計算例の復習 相関係数の実習.
データ解析基礎 4. 正規分布と相関係数 keyword 正規分布(教科書:31ページ~38ページ) 正規分布の性質 偏差値
社会心理学のStudy -集団を媒介とする適応- (仮)
因子分析や3相因子分析による分析の問題点を整理する 狩野裕+原田章(行動工学講座)
疫学概論 診療ガイドライン Lesson 22. 健康政策への応用 §B. 診療ガイドライン S.Harano, MD,PhD,MPH.
東京大学保健社会学同窓会シンポジウム 「保健社会学の発想と方法」 2005年12月10日 聖路加看護大学 中山和弘
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 社会統計 第12回 重回帰分析(第11章前半) 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
教育情報の多変量解析 データの視覚化 データの分類 2変数群間の関係 その他.
マーケティング・リサーチ.
統計学 第3回 10/11 担当:鈴木智也.
ワークショップ ユーザーとメーカーの公開相談会
データのバラツキの測度 レンジと四分位偏差 分散と標準偏差 変動係数.
? ? ? ? ? ? ? ? 多変量解析とは? 問題となっている現象 ●問題の発生原因がわからない(因果関係)
訪問看護における看護管理のあり方 ステーションの管理者に求められるもの 在宅看護学 遠山 寛子.
ヘルスプロモーションのための ヘルスリテラシーと 聖路加看護大学『看護ネット』
 クリティカルケア領域に             おける家族看護     ICU入室中の患者家族の      ニードに対する積極的介入について              先端侵襲緩和ケア看護学                    古賀 雄二 
構造方程式モデリング(SEM) Structural Equation Modeling.
中山和弘(聖路加看護大学) 戸ヶ里泰典(東京大学大学院健康社会学)
13.1 パス解析 (1) 標準偏回帰係数 変数の標準化.
相関分析.
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
 統計学講義 第11回     相関係数、回帰直線    決定係数.
第4日目第3時限の学習目標 検査の信頼性(続き)を学ぶ。 妥当性について学ぶ。 (1)構成概念妥当性とは? (2)内容妥当性とは?
多変量解析入門 中山和弘(聖路加国際大学).
新入生の事前知識の違いによる コンピュータリテラシ学習効果の分析
多母集団の同時分析 豊本満喜子 大阪大学人間科学部.
指標の数と信頼性・ 内容的妥当性 指標の数は多いほうがよい.
心理実験における データ分析 Q&A 平成15年12月3日(水) スポーツ心理学会第30回大会 ラウンドテーブルディスカッション
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 亀田弘之
多変量解析 ~主成分分析~ 1.主成分解析とは 2.適用例と解析の目的 3.解析の流れ 4.変数が2個の場合の主成分分析
尺度化について 狩野 裕 大阪大学人間科学部.
再討論 狩野裕 (大阪大学人間科学部).
対応のある共分散分散行列の同時分析 ーー 震災ストレスデータの同時分析 ーー
データの型 量的データ 質的データ 数字で表現されるデータ 身長、年収、得点 カテゴリで表現されるデータ 性別、職種、学歴
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
1.因子分析とは 2.因子分析を行う前に確認すべきこと 3.因子分析の手順 4.因子分析後の分析 5.参考文献 6.課題11
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
データ解析 静岡大学工学部 安藤和敏
相関分析 2次元データと散布図 共分散 相関係数.
第13回(通算29回) 福祉対象者への相談援助 合意形成
中山和弘(聖路加国際大学大学院看護学研究科 看護情報学) 2019年首都大学東京
未病はなぜよくならないのか? 医療者の問題 ① 未病をみることができない ② 健診に携わる医師や総合内科医の不足 ③ 患者さんとの意思疎通力の不足 患者さんの問題 ① 未病の概念をしらない ② 「薬」に対する絶大な信仰心.
Presentation transcript:

第37回日本看護研究学会学術集会 シンポジウムII 20011/8/8(月)(デブの日)14:40~16:40 中山和弘(聖路加看護大学) 多変量解析の意味と役割 を考える 第37回日本看護研究学会学術集会 シンポジウムII 20011/8/8(月)(デブの日)14:40~16:40 中山和弘(聖路加看護大学) 中山和弘(聖路加看護大学)

自己紹介 専門領域:保健医療社会学・看護情報学 研究テーマ 大学院生募集中(修士は9/1より受付開始) 健康と病いの情報共有(ヘルス・コミュニケーション) 情報に基づく意思決定(ヘルスリテラシー )支援 行動変容・ストレス(ポジティブ)コーピング支援 サポートネットワーク、コミュニティ、ソーシャルキャピタル形成 多変量解析、探索的データ解析のわかりやすい学習方法 大学院生募集中(修士は9/1より受付開始) 「ナースに役立つ種類のサイトとは?Nurse’s SOUL」http://www.nursessoul.info/ 中山和弘(聖路加看護大学)

今日の話 多変量解析をなぜするのか しなくてはいけないから? それで解釈はきちんとできる? 単相関と多変量解析で結果が違うときは? 多変量解析の2つの理由 見えないものを測るー潜在変数 因果の構造を知るー直接・間接効果、媒介変数と調整変数 生物心理行動社会的プロセスとケアの関係の解明 中山和弘(聖路加看護大学)

見えないものを測る 観測変数と潜在変数 中山和弘(聖路加看護大学)

相関がある=分散の重なり r2 r=0 相関がある=共分散あり 片方の偏差(平均値との差)が大きい時、もう一方の偏差も大きい 偏差のバラツキが2変数で連動している 分散(円)に重なり 面積=r2(各分散は1) r2 r=0 中山和弘(聖路加看護大学)

見えないものを測る多変量解析 観測変数 直接は測れない心理社会的変数:感情、イメージ、性格、能力、人間関係など(潜在変数) その概念の存在を引き出すため言葉や行動などで観察(観測変数) 概念の「定義」から「妥当性」のあるものを、「信頼性」のために繰り返し測定 観測変数 潜在変数 中山和弘(聖路加看護大学)

観測変数の相関から潜在変数の存在を たとえば「愛」を様々な言葉で問う 愛してる、一緒にいたい、いつも想っている…(モノ?) 同じ返事がある場合(相関の高い観測変数)は、背景に共通した「愛」(潜在変数=因子がある 因子分析) 観測変数 潜在変数(因子) 観測変数 観測変数 中山和弘(聖路加看護大学)

潜在変数は真の値に近い 観測値=真の値+誤差 観測値での相関係数は誤差を含んで低め 因子分析後の尺度得点も誤差を含む 観測変数から誤差を取り除いて潜在変数(真の値)で相関を計算すれば? 誤差 観測変数 潜在変数 (真の値) 誤差 観測変数 誤差 観測変数 中山和弘(聖路加看護大学)

構造方程式モデリング(SEM) 共分散構造分析 潜在変数を測る 測りたいものが、「観測」か「潜在」かよく考える 「観測」なら因子分析を分類目的で 潜在変数(真の値) 中山和弘(聖路加看護大学)

因果の構造を知り どうすべきか考える 中山和弘(聖路加看護大学)

多変量解析による因果の流れ 専門的ケア 経験年数 研修受講 新人(初期)教育 全変数を測定して関連をみる 中山和弘(聖路加看護大学)

(再掲)相関がある=分散の重なり r2 r=0 相関がある=共分散あり 片方の偏差(平均値との差)が大きい時、もう一方の偏差も大きい 偏差のバラツキが2変数で連動している 分散(円)に重なり 面積=r2(各分散は1) 経験 ケア 経験 ケア r2 r=0 中山和弘(聖路加看護大学)

研究は目的変数の分散の説明 専門的ケアの実施度にバラツキ =分散がある 質保障として問題 なぜ? 何と“共に変動”(=共分散)  =分散がある 質保障として問題 なぜ? 何と“共に変動”(=共分散)  しているのかで  説明する 研修 ケア 経験 新人教育 中山和弘(聖路加看護大学)

単相関だけの場合 経験年数と研修受講は別物の扱い 結論は経験のほうが大事?両方大事? ベテランは研修を受けるべき? ベテランほどすでに研修受けていないか? 経験 ケア 研修 ケア 中山和弘(聖路加看護大学)

多変量解析でも結果が同じとき 経験年数と研修受講に関連なし=説明変数間に相関なし 単相関と同じ結果になる 結論は同じ? ベテランは研修を受けるべき? 研修の役割と評価は? 研修 ケア 経験 中山和弘(聖路加看護大学)

多変量解析で結果が異なる場合 大抵は説明変数間に相関がある 経験年数があるほど研修を受けている 多変量解析でも両方とも関連があれば、それぞれ「独自」の重なり 両方備えての影響も ベテランは研修を受けるべき? 研修 ケア 経験 中山和弘(聖路加看護大学)

説明変数の直接、間接の関連 研修受講は、専門的ケアと「独自」の重なり 経験年数は、「独自」の重なりをもたない 研修(媒介変数)を介して「間接的」に関連している 経験年数→研修受講→専門的ケア 研修を受ければよい→経験で学ぶものを取り込んだすぐれた研修 研修 ケア 経験 中山和弘(聖路加看護大学)

因果の構造における 変数の種類 中山和弘(聖路加看護大学)

媒介変数(Mediator) 直接効果 専門的ケア 間接効果 経験年数 研修受講 経験年数は直接効果を持たず、間接効果を持つ 中山和弘(聖路加看護大学)

直接効果が小さくても… 患者QOL 0.15 0.8 0.5 看護学的ケア 医学的ケア 看護学的ケアの間接効果は、0.8×0.5=0.4 総合効果は、直接効果+間接効果=0.55>0.5 直接効果 患者QOL 看護学的ケア 0.15 0.8 間接効果 0.5 医学的ケア 中山和弘(聖路加看護大学)

調整変数(Moderator) 専門的ケア 研修受講 新人教育 新人教育の状況次第で、研修受講の効果が異なる 新人教育は調整変数(新人時代による) 専門的ケア 研修受講 新人教育 中山和弘(聖路加看護大学)

看護学で見えないものを 含めた人間とケアの構造を明らかに 中山和弘(聖路加看護大学)

QOL 生物心理行動社会環境的プロセスとケア ケア 健康に関連した要因として目に見えない変数とケアの構造の解明を 生物学的状況 行動(ストレス対処含む) 心理社会的状況 環境 中山和弘(聖路加看護大学)

分析の単位は?集団の文化を捉える 病棟、病院、ステーション、施設、クラス、地区・地域単位で集めたデータ 分析の単位は、個人orグループ 個人を超えた集団・チーム・コミュニティの文化・特徴を捉えるには? これも目に見えにくいものだった 個人とグループを同時に分析 マルチレベル分析へ 中山和弘(聖路加看護大学)