星形成銀河の星間物質の電離状態 (Nakajima & Ouchi 2014, MNRAS accepted, arXiv: )

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銀河進化研究会 @NAOJ on 04-06/Jun/2014 星形成銀河の星間物質の電離状態 (Nakajima & Ouchi 2014, MNRAS accepted, arXiv:1309.0207) 中島王彦 (国立天文台) 銀河進化研究会 @NAOJ on 04-06/Jun/2014

(arbitrary normalized) 星間物質(HII領域)の物理状態 1. 序論 Nagao+2006, Kewley&Dopita 2002 光電離モデル予想 近傍の経験則 銀河の化学進化 (MZR, FMR) (e.g., 午前の矢部さん, 柏野さんの発表) 星間物質の物理状態 重元素量 + 電離パラメーター (電離光子/水素原子 個数比) 電離パラメーター 高 重元素量 低 Hα [NII] Hβ [OIII] [OII] Hα [NII] Hβ [OIII] [OII] Hα [NII] Hβ [OIII] [OII] (arbitrary normalized) Flux density 輝線比から求める重元素量には電離パラメーターの不定性 遠方銀河の重元素量推定には近傍銀河の電離パラメーターを仮定 Wavelength (Å) 高電離輝線が強くなる Metal lines が弱くなる

本研究 電離パラメーターと重元素量を一緒に考察 電離パラメーター 重元素量 電離パラメーターの進化 1. 序論 電離パラメーターと重元素量を一緒に考察 電離パラメーター 高 重元素量 重元素量 低   電離パラメーター 電離光子/水素原子 個数比 特に [OIII]/[OII] 比が敏感   重元素量 12 + log (O/H) 特に R23-index が敏感 電離パラメーター SDSS銀河 =([OII]+[OIII]5007,4959)/Hβ 電離パラメーターの進化 重元素量や質量, 星形成率との関係(FMRへ与える影響)

電離パラメーターと重元素量 LAEs LBGs z~1 galaxies 遠方銀河ほど典型的に高い電離パラメーター・低い重元素量を持つ 2. 結果 z=2-3 LAEs Nakajima+13 Fosbury+03 Erb+10 Christensen+12 z=2-3 LBGs Pettini+01 Maiolino+08 Mannucci+09 Richard+11 Rigby+11 Wuyts+12 Belli+13 z~1 galaxies Savaglio+05 Maier+05 Queyrel+09 Chrsitensen+12 Henry+13 =([OII]+[OIII]5007,4959)/Hβ 重元素量 電離パラメーター LBGs Nakajima&Ouchi 2014 LAEs z~1 galaxies SDSS銀河 電離パラメーター 重元素量 遠方銀河ほど典型的に高い電離パラメーター・低い重元素量を持つ 質量, 星形成率との関係 (cf. FMR) ? 遠方銀河の重元素量推定は妥当 ? LAEs は特に高い電離パラメーターを示す 成長初期の若い銀河 電離光子が銀河外へ脱出しやすい(後述)

電離パラメーターの重元素量 - 質量 - 星形成率依存性 2. 結果 low Mstar 小質量・高星形成率の銀河ほど 高電離パラメーター・低重元素量を持つ low μ0.32 (low Z) high sSFR = SFR/Mstar = log Mstar − 0.32 log SFR Nakajima&Ouchi 2014

質量 – 星形成率 – 重元素量 – 電離パラメーター関係 2. 結果 Highly ionized Metal-poor 遠方銀河や 近傍の遠方対応銀河も同じ関係を満たす 近傍の 遠方対応銀河 Fundamental Ionization Relation (FIR) 分散を最小化 Low mass Efficiently star-forming Metal-poor = log R23 − 0.25 (μ0.32−10) = log R23 − 0.25 (log Mstar/1010 − 0.32 log SFR) Nakajima&Ouchi 2014

FMR 再考 FIR (本研究) FMR (Mannucci+2010,2011) z~2 と 3 の間で大きな違いは無い 3. 議論 FIR (本研究) FMR (Mannucci+2010,2011) z~3 high-Z branch (w/ high qion) z~3 low-Z branch (w/ low qion) 近傍の UV-selected 銀河も high-Z 解を支持 = log R23 − 0.25 (μ0.32−10) = log Mstar − 0.32 log SFR z~2 と 3 の間で大きな違いは無い z~2 から 3 で大きく進化 ? → 遠方銀河ほど高い電離パラメーターを持つ傾向を考慮に入れると   z~3 銀河も FMR に従う可能性 (cf. Davé+2011, Dayal+2013)

電離光子脱出率と [OIII]/[OII]比の関係 3. 議論 LBGs LAEs z=2-3 Low-z LyC 銀河 FIR 低い HIガス柱密度 高い [OIII]/[OII] 比 高い fesc 1 Zsun 0.05 Zsun Cloudy 計算 Nakajima&Ouchi 2014 HI HII HII [OIII] [OII] Ionization-bounded Density-bounded 電離光子が放射されやすい銀河は 特に高い [OIII]/[OII] 比を持つ

LAEs の高い fesc の解釈 FIRより有意に大きい [OIII]/[OII] 比を持つ LAEs は高い fesc を持つ候補天体 3. 議論 FIR = log R23 − 0.25 (μ0.32−10) FIRより有意に大きい [OIII]/[OII] 比を持つ LAEs は高い fesc を持つ候補天体 → z~3 LAEs・LBGs の fesc 直接測定研究と無矛盾 (e.g. Iwata+2009, Nestor+2013) Density-bounded HII領域が卓越 低い HI ガス柱密度 see Iwata+2009, Nestor+2013 Nakajima&Ouchi 2014 (see also Hashimoto+2013, Shibuya+2014a,b) 初期宇宙において LAEs が電離源として重要な寄与

まとめ Fundamental Ionization Relation 電離パラメーターの進化 4. 要約 Fundamental Ionization Relation → 小質量・高星形成率の銀河ほど 高電離パラメーター・低重元素量を持つ → FMR が z~3 でも “普遍的” である可能性 電離パラメーターの進化 → 遠方ほど質量の割に高い星形成率を持つ 銀河が典型的によく見つかる = log R23 − 0.25 (μ0.32−10) FIR =([OII]+[OIII]5007,4959)/Hβ 重元素量 電離パラメーター LBGs LAEs z~1 galaxies SDSS銀河 z=2-3 LAEs の特に高い [OIII]/[OII]比 → LAEs の若さ and/or 低い HI ガス柱密度, 高い fesc ~ 電離パラメーターの重要性 ~ high-Z branch (w/ high qion) low-Z branch (w/ low qion) = log Mstar − 0.32 log SFR z~3 FMR Iwata+2009, Nestor+2013