宇宙マイクロ波背景輻射 Bモード偏光観測の為の小型科学衛星LiteBIRDの測定感度に関するシミュレーション Sep. 13, 2010 日本物理学会 2010年秋季大会 片山伸彦(KEK) 小松英一郎(テキサス大) LiteBIRDワーキンググループ アウトライン 研究の背景 シミュレーションとその結果 まとめと今後の予定
研究の背景 r~0.001の測定を 目指して実験を計画! 小型科学衛星LiteBIRD インフレーション時の原始重力波が、CMBのBモード偏光を引き起こす その大きさを表すパラメタとしてテンサー/スカラー比 r が使われる モデルにもよるが、r の大きさはインフレーションを引き起こすポテンシャルの強さに依る r の値を測定したい r~0.001の測定を 目指して実験を計画! 小型科学衛星LiteBIRD 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
CMB衛星計画と本研究の目的 衛星の利点 衛星計画の現状 技術開発の一環として、 計算科学的興味 全天を観測出来る 大気がなく、冷たい 衛星計画の現状 米国Decadal Surveyでは(先行している)地上での観測を重視 国内で進める為には「技術」を持っている事が重要 技術開発の一環として、 新しい解析アルゴリズムの開発 日々、解析に関する論文が発表されており、若く、進展の激しい分野 計算科学的興味 計算量が非常に多くなる可能性 続く3つのトークで検出器・衛星については(少し)説明 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
LiteBIRD: プロジェクトマネジメントに関する進展 小型科学衛星ワーキンググループ提案が承認される(2008年9月) 日本物理学会・宇宙線宇宙物理領域 「宇宙背景輻射」セッション誕生(2009年3月) 平成21-25年度科研費新学術領域研究(研究領域提案型) 「背景放射で拓く宇宙創成の物理―インフレーションからダークエイジまで―」 採択 (2009年7月) メインは地上でサイエンスの結果を出すこと LiteBIRDに関しては基礎的試作の経費(特に焦点面検出器) 小型科学衛星ワーキンググループ継続提案が承認される(2010年1月) 日本物理学会CMBシンポジウム(2010年3月) 前哨戦としての地上CMB実験(QUIET、POLARBEAR) 要素技術の実証 系統誤差の徹底理解 他プロジェクトとの技術的連携 相乗効果・波及効果 DIOS: 冷凍機システムなど ASTE: TESボロメータ読み出しシステムなど 日本学術会議「天文学・宇宙物理学の展望と長期計画」において言及 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
LiteBIRDワーキンググループメンバー 福家英之、松原英雄、満田和久、吉田哲也(ISAS/JAXA)、 SPICA, DIOS, 大気球 篠崎慶亮、佐藤洋一、杉田寛之(ARD/JAXA)、 石野宏和、樹林敦子、服部香里、三澤 尚典、美馬覚(岡山大理)、 Adnan, Ghribi、William Holzapfel、Bradley Johnson、Adrian Lee、 Paul Richards、Aritoki Suzuki、Huan Tran(UC Berkeley/LBNL)、 POLARBEAR, EBEX, APEX, EPIC, BICEP, SPT Julian Borrill (LBNL)、 Planck 大田泉(近畿大)、 吉田光宏(加速器/KEK)、 石徹白晃治、片山伸彦、佐藤伸明、住澤一高、田島治、永井誠、永田竜、西野玄記、羽澄昌史、 長谷川雅也、樋口岳雄、松村知岳(IPNS/KEK)、 QUIET, POLARBEAR (松村はさらにPlanck, BICEP, EBEX) 柳沼えり(総研大) 、 高田卓(筑波大) 、 木村誠宏、 鈴木敏一、都丸隆行(低温セ/KEK)、 POLARBEAR 小松英一郎(UT Austin)、 WMAP 鵜澤佳徳、関本裕太郎、野口卓(ATC/NAOJ)、 茅根裕司、服部誠(東北大理)、 QUIET(茅根) 大谷知行(理研) コンサルタント: 小玉英雄(KEK)、中川貴雄(JAXA)、川邊良平(NAOJ) 46名 2010年9月13日現在
CMB偏光の測定方法 宇宙論パラメタ WMAP:Q/Uのマップ WMAP:温度とEモード偏光の 相関スペクトラム 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
r の測定感度 センサー・光学系に起因する要素 測定・衛星に起因する要素 前景輻射 解析に起因する要素 他の宇宙論パラメタに起因する要素 センサー数、ノイズ、偏光、ビーム 測定・衛星に起因する要素 測定可能時間、方向、通信 前景輻射 銀河からの偏光した電波 解析に起因する要素 計算量、行列の大きさなど解析手法の限界 他の宇宙論パラメタに起因する要素 re-ionization, lensing この後の 3講演 今回の研究 シミュレーションの 必要性 沢山の事が絡みあっている 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
最尤法で r の測定感度を求める np = 3072 (Nside=16) CMB は各点(ピクセル)でガウス分布する ここで ピクセル空間での最尤法はもっとも感度が高くバイアスも少ないが、計算量が多大である (Large factor×np3) ここで m は Q 、U マップのベクタで、長さは 2np S はシグナルの共分散行列 (2np×2np) S は宇宙論パラメタを与えて計算出来る N はノイズの共分散行列 N は、スムージングの為に非対角 np = 3072 (Nside=16) 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
前景輻射 熱的ダスト放射: 銀河中の熱的平衡状態にあるダストによる黒体放射。ダストの粒は磁力線と垂直な向きに整列しやすい。そのために、その向きの偏光成分を含みやすい。 シンクロトロン放射: 銀河中の相対論的な電子が銀河磁場の中でらせん運動することによる。n βs, (βs~-3)のような周波数依存性を持つ シグナル(Q, r=0.01) 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
例:2バンド観測によるダストの除去 ダストをモデルにより生成 c2 を aに関して最小化 In L Max:2.0mK これまでの研究( by Efstathiou, G. et al): 簡単な除去法では除去後、r0.03のオフセットが生じ、r=0.1程度までの測定しか出来ない事がわかっている 0mK 2mK Max:0.7mK 0mK 2mK Note: These map include both dust and synch 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
本研究による除去 3バンドでダストとシンクロトロンを除去 asynch(q, f) を位置により変える 51 パラメタによる最尤法 b 3バンドでダストとシンクロトロンを除去 asynch(q, f) を位置により変える 48 のリージョンに分ける 51 パラメタによる最尤法 逆行列(S+N)-1 はNN/(1-a)2の為、すべてのパラメタに依存 N/(1-a)2 (S+N)-1の計算量が莫大となり、無理 N/(1-a)2中のは、最初の の解を使用 (S+N/(1-a)2 )-1 はr(とs)のみの関数 計算可能 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
結果 マスクのみ 本研究(1) 本研究(2) オフセットはまだある r ~> 0.01 ならほとんどが影響ない with lensing オフセットはまだある r ~> 0.01 ならほとんどが影響ない 解析にはモデルを使用していないが、結果はシミュレーションで使用したモデルに依存している 小松さんと論文を書いている rinput = 0.003 (r=0: many s away) 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
まとめとこれから 宇宙マイクロ波背景輻射Bモード偏光観測の為の小型科学衛LiteBIRDのfeasibility studyを開始した どのパラメタがどういう風に効いてくるのかの理解を深める 目標達成の為に何が何処まで出来れば良いか、言える様になりたい 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
Likelihood fit procedure Assume r is the only unknown cosmological parameter Pre-compute 2Ylm (p), Cl [Q,U](p,p’) for 2 l 47 Pre-compute Sr=1tensor and Sscalar, N Pre-compute (r Sr=1tensor Sscalar N)-1 for r=0.0001, 0.0002, 0.0003,,, and store them Generate map (Nside=128) assuming r=rinput, add noise, smooth to Nside=16, apply P06 mask Compute ln L(m|r) for r=0.0001, 0.0002, 0.0003 and find r which gives max. ln L(m|r) repeat for many realizations get Dr from 0.5 = Dln L Plot resulting r, compute mean of r and Dr, etc. repeat for rinput = 0.001, 0.003, 0.01,,, The results are as expected and will be shown later 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
Spatial dist. of Synch. and Dust synch@100GHz dust@100GHz Max:1.2mK Max:1.0mK Remove foregrounds with multiband maps assuming morphology 0mK 2mK 0mK 2mK b b same scale Synchrotron Dust 2010/9/13 0mK N. Katayama (JPS) 2mK Maps from Planck Sky model based on WMAP(synch) and FDS(dust)
実験の最適化 どういう設計パラメタがあって、それらの 因果関係がどうであるかも自明ではない 小型科学衛星:極めて制約が多い シミュレーションによるフィージビリティ・スタディが必至 衛星・実験装置の最適化 観測周波数、周波数数・センサー数の選択 軌道・姿勢・測定時間・方向・通信量の選択 衛星重量・構造・打ち上げロケットの選択 打ち上げロケットにより、かかる加速度が違う どういう設計パラメタがあって、それらの 因果関係がどうであるかも自明ではない 2010/9/13 N. Katayama (JPS)
r 測定のシミュレーション 宇宙論パラメタを仮定し、ボルツマン方程式を解いてCMBのスペクトルを計算する 既存のプログラムCAMBを用いて行う。 r に依存するBモード偏光のスペクトルは、大きさがr に比例するが、形は変わらない スペクトルから、CMBのマップを生成する 乱数が必要。実際に観測できる宇宙は一つだが、シミュレーションでは沢山の「宇宙」を生成する マップにノイズ・ビームサイズの影響を加え銀河系による不可視領域のマスクをかける 2010/9/13 N. Katayama (JPS)