高強度フェムト秒レーザーパルスの石英中の伝播 2002年3月28日 第49回応用物理学関係連合講演会 理研レーザー物理工学研究室 石川顕一、熊谷寛、緑川克美 ishiken@postman.riken.go.jp submitted to Phys. Rev. Lett.
「高強度領域」 100 MW 〜 1 GW 50 Pcr 〜 500 Pcr 高強度レーザーパルスは、媒質中で自己収束 光Kerr効果 z 7.5mm r 石英 Hyperbolic-secant pulse (T0 = 130fs) Gaussian beam (r0 = 200mm) l = 800 nm 自己収束の閾値 (石英)Pcr = 2.2 MW 気体・固体中の伝播に関する従来の研究 閾値の数倍のパワー 本研究では、入力エネルギーが 10 〜 150 mJ 、パルス幅130 fs のパルスを考える。 100 MW 〜 1 GW 高強度領域 50 Pcr 〜 500 Pcr
シミュレーションモデル 拡張された非線形シュレーディンガー方程式 (1) 伝導電子密度 r の時間変化 (2) 群速度分散 高次の分散 回折 多光子吸収 (1) Kerr効果 プラズマ非収束化 Slowly varying envelope approximation (SVEA)を超える補正 伝導電子密度 r の時間変化 (2) ← Keldysh 理論より
数値解法 非線形シュレーディンガー方程式 伝導電子密度の時間変化の式 Split-step Fourier 法 [1] 回折項 : Peaceman-Rachford 法 [2] 非線形項(右辺) : 4次のルンゲ・クッタ法 伝導電子密度の時間変化の式 4次のルンゲ・クッタ法 [1] G.P. Agrawal, Nonlinear Fiber Optics, 2nd ed. (Academic, San Diego, 1995). [2] S.E. Koonin et al., Phys. Rev. C15, 1359 (1977).
伝播にともなう、強度分布の変化 入力エネルギー = 135mJ (自己収束閾値の500倍) z = 3200 mm 3300 mm 伝播距離 z = 3200 mm 3300 mm 3400 mm 3500 mm 3600 mm (a) (b) (c) (d) (e) Radius r (mm) 自己収束 自己急峻化 第1の円錐 第3の円錐 プラズマ非収束化 第2の円錐 高強度領域での新現象! 多重円錐状構造の形成 3 6 9 5 10 3700 mm 3800 mm 4000 mm 4500 mm 5000 mm (f) (g) (h) (i) (j) 強度 (1012 W/cm2) 5 10 15
多重円錐状構造形成のメカニズム 強度 → r の減少関数 z = 3340 mm r = 9 - 12 mm 屈折率変化 → ほぼ一定 第2の円錐 第1の円錐 3300 mm 3400 mm t = 44 fsにおける径方向の強度分布および屈折率変化 Dn の分布 強度 → r の減少関数 屈折率変化 → ほぼ一定 自己収束 → 第1のピークが周囲からエネルギーを「取り上げる」。 屈折率変化Dnに第2のピーク(r = 11.3 mm) 局所的自己収束 → 第2のピーク(円錐)成長 z = 3340 mm r = 9 - 12 mm z = 3360 mm
多重円錐状の強度分布 時間プロファイル 石英表面からの伝播距離5mm 入力エネルギー = 135 mJ FTOP シグナル 径方向に積分 Propagation フルエンス分布 時間方向に積分
入力パルスエネルギーに対する依存性 入力エネルギーの減少にともない, 円錐の数は減少。 円錐は伝播軸に対して平行に近づく。 入力エネルギー 135 mJ, z = 4500 mm 45 mJ, z = 5500 mm 15 mJ, z = 7000 mm Radius r (mm) Radius r (mm) Radius r (mm) 強度 (1012 W/cm2) 5 10 15 入力エネルギーの減少にともない, 円錐の数は減少。 円錐は伝播軸に対して平行に近づく。
伝導電子応答および伝導電子生成断面積に含まれる誤差の影響 伝導電子のドリフト速度に飽和がある場合の伝播距離4000ミクロンでの強度分布 伝導電子生成断面積がKeldysh理論から得られる値の100分の1であった場合の伝播距離3500ミクロンでの強度分布 ただし Ith = 1012 W/cm2. これらの影響を考慮にいれても、多重円錐状の強度分布になる。
結論 パルスの入力エネルギーが、自己収束の閾値の数百倍に達する高強度領域では、パルスは時間的および空間的に幾重にも分裂する。 その結果、強度分布は多重円錐状になる。 この構造は、Kerr効果による自己収束と、プラズマ非収束化の微妙なバランスによって、形成される。