「高強度領域」 100 MW 〜 1 GW 50 Pcr 〜 500 Pcr 高強度レーザーパルスは、媒質中で自己収束 光Kerr効果

Slides:



Advertisements
Similar presentations
『わかりやすいパターン認 識』 第 5 章 特徴の評価とベイズ誤り確率 5.4 ベイズ誤り確率と最近傍決定則 発表日: 5 月 23 日(金) 発表者:時田 陽一.
Advertisements

相対論的場の理論における 散逸モードの微視的同定 斎藤陽平( KEK ) 共同研究者:藤井宏次、板倉数記、森松治.
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
平成20年度 核融合科学研究所共同研究 研究会 「負イオン生成および負イオンビーム加速とその応用」 プロセスプラズマのPIC計算のモデリング
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
非線形光学効果 理論 1931年 Göppert-Mayer ラジオ波 1959年 Winter 可視光 1961年
Isao Matsushima, Toshihisa Tomie
Korteweg-de Vries 方程式のソリトン解に関する考察
内部導体装置Mini-RT 真空容器内に超伝導コイルを有する。 ポロイダル方向の磁場でプラズマ閉じ込め。 ECHでプラズマを加熱。
東京工業大学 機械制御システム専攻 山北 昌毅
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
シリカガラスの熱的性質 II ガラス転移,仮想温度 福井大学工学部 葛生 伸.
第23回応用物理学科セミナー 日時: 6月23日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流 -アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面-
電磁気学C Electromagnetics C 7/13講義分 電磁波の電気双極子放射 山田 博仁.
東京都立大学理学部物理学科 高エネルギー実験研究室 卒研生 春名 毅
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
数楽(微分方程式を使おう!) ~第4章 他分野への応用(上級編)~
(ラプラス変換の復習) 教科書には相当する章はない
東京大学大学院工学系研究科 石川顕一 理研レーザー物理工学研究室 河野弘幸、緑川克美
菊地夏紀 荒木幸治、江野高広、桑本剛、平野琢也
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
非エルミート 量子力学と局在現象 羽田野 直道 D.R. Nelson (Harvard)
Dissociative Recombination of HeH+ at Large Center-of-Mass Energies
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
正規分布における ベーテ近似の解析解と数値解 東京工業大学総合理工学研究科 知能システム科学専攻 渡辺研究室    西山 悠, 渡辺澄夫.
スペクトル法の一部の基礎の初歩への はじめの一歩
PIC/MCによる窒素RFグロー放電シミュレーション
et1 et1 et2 et2 信号 T2減衰曲線 Mxy(t) = M0 e-t/T2 T2*減衰曲線
正規分布確率密度関数.
電磁気学C Electromagnetics C 5/28講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
Cavity-Compton Meeting 2006年3月15日
QMDを用いた10Be+12C反応の解析 平田雄一 (2001年北海道大学大学院原子核理論研究室博士課程修了
制御系における指向性アクチュエータの効果
6. ラプラス変換.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/30講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
原子核物理学 第2講 原子核の電荷密度分布.
T型量子細線における励起子-プラズマクロスオーバー(現状のまとめ)
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
2次元系における超伝導と電荷密度波の共存 Ⅰ.Introduction Ⅱ.モデルと計算方法 Ⅲ.結果 Ⅳ.まとめと今後の課題 栗原研究室
開放端磁場における低温プラズマジェットに関する研究
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
Multi-Purpose Particle and Heavy Ion Transport code System
Mini-RT装置における 強磁場側からの異常波入射による 電子バーンシュタイン波の励起実験
BIのデータ解析法と 高エネルギー側の検出効率
Why Rotation ? Why 3He ? l ^ d Half-Quantum Vortex ( Alice vortex ) n
A4-2 高強度レーザー テーマ:高強度レーザーと物質との相互作用 橋田昌樹 井上峻介 阪部周二 レーザー物質科学分科
A4-2 高強度レーザー テーマ:高強度レーザーと物質との相互作用 井上峻介 橋田昌樹 阪部周二 レーザー物質科学分科
バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~
キャリヤ密度の温度依存性 低温領域のキャリヤ密度                   ドナーからの電子供給→ドナーのイオン化電圧がわかる                              アクセプタへの電子供給→アクセプタのイオン化電圧がわかる             常温付近                            ドナー(アクセプタ)密度で飽和→ドナー(アクセプタ)密度がわかる.
Numerical solution of the time-dependent Schrödinger equation (TDSE)
電子モンテカルロシミレーション 相互作用 近似 輸送方法 Last modified
高強度軟エックス線パルス同時照射によるHe+イオンからの高調波発生の飛躍的増大 Dramatically enhanced high-order harmonic generation from He+ under simultaneous laser and soft x-ray pulse irradiation.
サポートベクターマシン Support Vector Machine SVM
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
ガウス分布における ベーテ近似の理論解析 東京工業大学総合理工学研究科 知能システム科学専攻 渡辺研究室    西山 悠, 渡辺澄夫.
実験結果速報 目的 装置性能の向上 RF入射実験結果 可動リミター挿入 RFパワー依存性 トロイダル磁場依存性 密度依存性
媒質中でのカイラル摂動論を用いた カイラル凝縮の解析
γ線パルサーにおける電場の発生、粒子加速モデル
2008年 電気学会 全国大会 平成20年3月19日 福岡工業大学 放電基礎(1)
弱電離気体プラズマの解析(LXXVI) スプラインとHigher Order Samplingを用いた 電子エネルギー分布のサンプリング
高計数率ビームテストにおける ビーム構造の解析
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/7講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
Presentation transcript:

高強度フェムト秒レーザーパルスの石英中の伝播 2002年3月28日 第49回応用物理学関係連合講演会 理研レーザー物理工学研究室 石川顕一、熊谷寛、緑川克美 ishiken@postman.riken.go.jp submitted to Phys. Rev. Lett.

「高強度領域」 100 MW 〜 1 GW 50 Pcr 〜 500 Pcr 高強度レーザーパルスは、媒質中で自己収束 光Kerr効果 z 7.5mm r 石英 Hyperbolic-secant pulse (T0 = 130fs) Gaussian beam (r0 = 200mm) l = 800 nm 自己収束の閾値 (石英)Pcr = 2.2 MW 気体・固体中の伝播に関する従来の研究 閾値の数倍のパワー 本研究では、入力エネルギーが 10 〜 150 mJ 、パルス幅130 fs のパルスを考える。 100 MW 〜 1 GW 高強度領域 50 Pcr 〜 500 Pcr

シミュレーションモデル 拡張された非線形シュレーディンガー方程式 (1) 伝導電子密度 r の時間変化 (2) 群速度分散 高次の分散 回折 多光子吸収 (1) Kerr効果 プラズマ非収束化 Slowly varying envelope approximation (SVEA)を超える補正 伝導電子密度 r の時間変化 (2) ← Keldysh 理論より

数値解法 非線形シュレーディンガー方程式 伝導電子密度の時間変化の式 Split-step Fourier 法 [1] 回折項 : Peaceman-Rachford 法 [2] 非線形項(右辺) : 4次のルンゲ・クッタ法 伝導電子密度の時間変化の式 4次のルンゲ・クッタ法 [1] G.P. Agrawal, Nonlinear Fiber Optics, 2nd ed. (Academic, San Diego, 1995). [2] S.E. Koonin et al., Phys. Rev. C15, 1359 (1977).

伝播にともなう、強度分布の変化 入力エネルギー = 135mJ (自己収束閾値の500倍) z = 3200 mm 3300 mm 伝播距離 z = 3200 mm 3300 mm 3400 mm 3500 mm 3600 mm (a) (b) (c) (d) (e) Radius r (mm) 自己収束 自己急峻化 第1の円錐 第3の円錐 プラズマ非収束化 第2の円錐 高強度領域での新現象! 多重円錐状構造の形成 3 6 9 5 10 3700 mm 3800 mm 4000 mm 4500 mm 5000 mm (f) (g) (h) (i) (j) 強度 (1012 W/cm2) 5 10 15

多重円錐状構造形成のメカニズム 強度 → r の減少関数 z = 3340 mm r = 9 - 12 mm 屈折率変化 → ほぼ一定 第2の円錐 第1の円錐 3300 mm 3400 mm t = 44 fsにおける径方向の強度分布および屈折率変化 Dn の分布 強度 → r の減少関数 屈折率変化 → ほぼ一定 自己収束 → 第1のピークが周囲からエネルギーを「取り上げる」。 屈折率変化Dnに第2のピーク(r = 11.3 mm) 局所的自己収束 → 第2のピーク(円錐)成長 z = 3340 mm r = 9 - 12 mm z = 3360 mm

多重円錐状の強度分布 時間プロファイル 石英表面からの伝播距離5mm 入力エネルギー = 135 mJ FTOP シグナル 径方向に積分 Propagation フルエンス分布 時間方向に積分

入力パルスエネルギーに対する依存性 入力エネルギーの減少にともない, 円錐の数は減少。 円錐は伝播軸に対して平行に近づく。 入力エネルギー 135 mJ, z = 4500 mm 45 mJ, z = 5500 mm 15 mJ, z = 7000 mm Radius r (mm) Radius r (mm) Radius r (mm) 強度 (1012 W/cm2) 5 10 15 入力エネルギーの減少にともない, 円錐の数は減少。 円錐は伝播軸に対して平行に近づく。

伝導電子応答および伝導電子生成断面積に含まれる誤差の影響 伝導電子のドリフト速度に飽和がある場合の伝播距離4000ミクロンでの強度分布 伝導電子生成断面積がKeldysh理論から得られる値の100分の1であった場合の伝播距離3500ミクロンでの強度分布 ただし Ith = 1012 W/cm2. これらの影響を考慮にいれても、多重円錐状の強度分布になる。

結論 パルスの入力エネルギーが、自己収束の閾値の数百倍に達する高強度領域では、パルスは時間的および空間的に幾重にも分裂する。 その結果、強度分布は多重円錐状になる。 この構造は、Kerr効果による自己収束と、プラズマ非収束化の微妙なバランスによって、形成される。