第11回 星・惑星系の誕生の現場 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)

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第11回 星・惑星系の誕生の現場 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)

放出されたガスは、再び 次世代の星たちの原料となる。 ほ し     りん  ね 星の輪廻 輝く恒星 ガスが集まり 星が生れる 超新星 爆発 放出されたガスは、再び 次世代の星たちの原料となる。 ( STScI, JAXA宇宙科学研究本部)

星の誕生の現場の例: 可視光でみた散光星雲IC1396 (ケフェウス座) 可視光では中心の大きな星を取り囲む電離した水素ガスや、チリに散乱された大きな星からの光が星雲全体を光らせています。 黒い「しみ」は吹き払われずに残ったチリの雲です。

「あかり」でみたIC1396 (中間赤外線)

「あかり」が捉えた新しい星の誕生の現場

分子雲から星へ 星の原料が集まりはじめると重力が強くなり、 さらに星間ガスが集積する 3万年 10万年 原始惑星系円盤 集まるガスは、ある方向に回転していることが多く、そのために、集まったガスは円盤状になる。

このような若者星は、エネルギーをもてあまして、 外に向かってジェットを発生する

その結果、そのジェットはまわりのガスを 吹き飛ばし、だんだんと星が見えてくる。 その間、円盤から惑星系が形成される。 (SCScI)

ガス円盤が影になって見える例 オリオン大星雲を背景としてみえたうまれたばかりの星々。(STScI)

分子雲から星へ Tタウリ型星:核融合の起こる前の重力エネルギーの解放で光っている段階

Tタウリ型星の想像図 原始星 Tタウリ型星の特徴 赤外線超過(ダストからの熱放射) Hα等の輝線(高温領域の存在) Tタウリ型星

SEDによる原始星の分類 (1) SED: Spectral Energy Distribution Andre (1994) ‘Cold Universe’

SEDによる原始星の分類 (2) SED: Spectral Energy Distribution

惑星系の形成シナリオ (太陽質量の星の)

(a) 分子雲コアの収縮 原始星と原始惑星系円盤の形成 原始円盤:大きな角運動量を持ったガス 分子流(アウトフロー)が活発

(b) 降着円盤を通して原始星が成長 円盤の質量は、0.01太陽質量まで減少 観測的診断方法 赤外線:円盤(表面)の温度、ダスト鉱物学 サブミリ波: 円盤質量 ミリ波分子線(CO, HCO+. CN, HCN, ・・・) 

(c) 円盤中心面へダストが沈殿 中心星は、Tタウリ型星段階 微惑星の形成 ダスト密度が上昇するとお互いに衝突しやすくなり、ダストの合体成長が進む(微惑星の形成) ダストの吸収係数:   b=0-1.5 (粒子サイズが大きくなるため

(d) 微惑星の衝突・合体  原始惑星へ 「寡占的成長」により原始惑星が誕生 0.1 地球質量@地球のあたり (~106 yrs)

(e) 円盤ガスの降着  木星型惑星が形成 中心星はWTTS 原始惑星は、地球程度の質量に(岩石主体) 円盤ガスが降着し、ガス惑星が誕生。木星以遠では、氷も材料 Z

第11回の問題 問11. 太陽質量の20倍の大質量星を考える。この星の光度 は、太陽の105倍である。 光度Lの星から、距離rにおける放射圧は        で与 えられる。r =10AUでの放射圧を求めよ(単位:N/m2)。 上で求めた放射圧によって直径1mmの球形の塵(密度 4g/cm3)が得る加速度   を求めよ(単位 m/s2)。ここで塵 は光を吸収せず全て反射するものとする。また、これより 塵が小さくなると加速度はどうなるか? 質量Mの星から距離rでの重力加速度は       で与え られる。(2)で計算した加速度   と、  を比較せよ。 1 AU(天文単位)=1.496×1011 m 太陽光度=3.83×1026 W  光速 c = 2.9979×108 m/s 太陽質量=1.99×1030 kg 重力定数 G=6.6743×10-11 N m2 kg-2