有限温度有限密度QCD入門 北沢 正清 大阪大学.

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有限温度有限密度QCD入門 北沢 正清 大阪大学

目次 1,有限温度密度QCDへの招待 2,平衡状態 3,静的なゆらぎ 4,動的構造

目次 1,有限温度密度QCDへの招待 3,静的なゆらぎ 2,平衡状態 4,動的構造 標準模型とQCD QCDの相転移・相構造 重イオン衝突実験 中性子星 3,静的なゆらぎ ゆらぎ モーメント・キュムラント 臨界点でのゆらぎの増大 格子QCDのTaylor展開法 QCD相構造の実験的探索 2,平衡状態 4,動的構造 カイラル対称性 真空状態:BCS理論 NJL模型 カラー超伝導 線形応答 スペクトル関数 調和振動子の例 松原グリーン関数 格子QCD

1,有限温度密度QCDへの招待 標準模型とQCD QCDの相転移・相構造 格子QCDと熱力学量 重イオン衝突実験 中性子星

標準模型 重力 電磁気力 弱い力 強い力 量子電磁気学(QED) 量子色力学(QCD) 電弱統一理論 +ヒッグス粒子

量子色力学(QCD) 漸近的自由性 低エネルギー(長距離) 強結合 高エネルギー(短距離) 弱結合 カイラル対称性の自発的破れ 低エネルギー(長距離) 強結合 高エネルギー(短距離) 弱結合 カイラル対称性の自発的破れ ハドロンの質量の起源/軽いパイ粒子 カラーの閉じ込め クォーク・グルオンは単体では観測されない

QCDの相転移 温度 クォーク・グルオン・プラズマ ハドロン相 (閉じこめ相)

QCDの相転移 温度 クォーク・グルオン・プラズマ ハドロン相 (閉じこめ相) バリオン数 化学ポテンシャル

QCDの相転移 温度 クォーク・グルオン・プラズマ ハドロン相 (閉じこめ相) カラー超伝導 バリオン数 化学ポテンシャル

QCDの相転移 水の相図 温度 クォーク・グルオン・プラズマ QCD臨界点 ハドロン相 (閉じこめ相) カラー超伝導 バリオン数 化学ポテンシャル

QCD Critical Point(s) MK, et al.,2002 Stephanov, ’07 Where is the QCD critical point? And, how many? MK, et al.,2002 Stephanov, ’07

QCD Critical Point(s) MK, et al.,2002 Yamamoto, et al. ’06 Where is the QCD critical point? And, how many? MK, et al.,2002 GL analysis induced by axial anomaly Yamamoto, et al. ’06 Zhang, et al., ’09 Basler, Buballa, ’10 Stephanov, ’07

格子QCD数値シミュレーション 時空を格子化し、数値解析する Bluegene @KEK

格子QCD数値シミュレーション 時空を格子化し、数値解析する Bluegene @KEK 注意: 現在の数値解析技術では、 m=0の解析しかできない 「符号問題」

熱力学量 T=150-180MeV付近でeが急激に増大 明確な相転移点はない “クロスオーバー” e エネルギー密度 熱力学量 p 圧力 明確な相転移点はない “クロスオーバー” HotQCD, arXiv:0903.4379 e エネルギー密度 p 圧力 熱力学量

ハドロン共鳴ガス(HRG)模型 HRG模型 存在の知られているハドロンから成る自由ガス particle data groupより 格子QCDで計算される熱力学量の低温部の振る舞いをよく再現 “トレースアノマリ” バリオン数感受率

Stefan-Boltzmann極限 QCDが記述する物質の高温極限 ゼロ質量のクォークとグルオンからなる自由ガス Boson: Fermion:

中間領域では何が起こっているのだろうか? 有限温度(ゼロ密度)QCD T Tc* QCDの低温および高温極限には単純な描像が適用でき、 かつそれらは全く異なるのに連続的につながっている。 中間領域では何が起こっているのだろうか? 低温のハドロンの運命は?高温のクォークの運命は?

相対論的重イオン衝突実験 加速した原子核を衝突させる 小さなビッグバン

相対論的重イオン衝突実験 RHIC LHC アメリカ 2000年~ 全長6km 光速の99.996% スイス・フランス 2010年~ 光速の99.9999%

高温物質の時間発展 QGP 衝突 熱平衡化 ~1fm/c ハドロン化

化学凍結 (Chemical Freezeout) 観測される粒子収量が、T, mBのみでフィット可能! 化学平衡が実現している

化学凍結点の衝突エネルギー依存性 大 小 小 大 様々な の衝突実験により QCD相構造の探索ができる BESプログラム@RHIC STAR 2012 大   小 小   大 様々な    の衝突実験により QCD相構造の探索ができる BESプログラム@RHIC Beam Energy Scan

運動学的凍結(kinetic Freezeout) 粒子収量のpT分布 Blast wave fit 「温度+流れ」 STAR 200GeV

高温物質の時間発展 QGP 衝突 熱平衡化 ~1fm/c ハドロン化 化学凍結 運動学的凍結

楕円フロー 非中心衝突では、 粒子は非等方的に放出される。 フロー 実空間 pT空間 v2 >0 v2 <0 非中心衝突 ビーム軸 x z 反応平面 非中心衝突 Y 非中心衝突では、 粒子は非等方的に放出される。 フロー 実空間 反応平面 pT空間 v2 >0 v2 <0

流体模型 粒子流は流体模型によってよく記述される 速い熱平衡化 t~1fm/c ずり粘性係数hがものすごく小さい。 Song, Bass & Heinz, PRC 2011

強結合QGPの発見 RHICで発見されたQGPは、強く結合した物質であった

クォーク数スケーリング 運動量をクォーク数で割算 流れがぴったり重なる! 楕円フロー v2 v2 >0 解釈

クォーク数スケーリング / BES <19.6GeV LHC energy クォーク数スケーリングの破れ?

中性子星 パルサーとして観測 質量1.4~2M 半径 ~10km 表面温度 106~108K 中心密度 5~15r0 何が分かるの? 状態方程式 冷却速度 グリッジ 他もろもろ

状態方程式(EoS) ー(drあたり質量)×(重力) のこと 状態方程式が決まると、星が作れる! Tolman-Openheimer-Volkov(TOV)方程式 ー(drあたり質量)×(重力) に一般相対論的効果を加味

質量-半径の関係 2010年に発見 (1.97±0.04)M 連星中性子星の 典型的質量 ~1.4M Demorest+2010 NOTE: 自由度が増えるほど、EoSは柔らかくなる

初期宇宙とQGP ビッグバン後の10-5秒までの宇宙はQGPだった

ここまでのまとめ QCDの極限状態には面白い物理がある それらに迫る観測手段がある

ここまでのまとめ QCDの極限状態には面白い物理がある それらに迫る観測手段がある クォーク・グルオン・プラズマ QCD臨界点 ハドロン相 (閉じこめ相) カラー超伝導

将来の重イオン衝突実験 FAIR FAIR @GSI,Germany NICA @Dubna, Russia J-PARC @東海村

目次 1,有限温度密度QCDへの招待 2,平衡状態 3,静的なゆらぎ 4,動的性質

2,平衡状態 カイラル対称性 真空状態:BCS理論 NJL模型 カラー超伝導

「カイラル対称性」ってなんだ? 準備1:複素スカラー場 変換 のもとでLは不変 準備2:ゼロ質量Dirac場 変換 のもとでLはやっぱり不変

ゼロ質量Dirac場 スピノル表示 変換 のもとでLは不変 “カイラル対称性”

カイラル変換 注意 質量項は、カイラル対称性をexplicitに破る Nfフレーバーの系では、カイラル対称性は

自発的対称性の破れと超伝導 BCS理論は自発的対称性の 破れの概念の導入において 著しく重要な役割を果たした。

BCS (Bardeen-Cooper-Schrieffer)理論 金属のフェルミ面付近の電子には、 格子振動による引力が存在 フェルミ面は、電子対(Cooper pair)の形成に対し不安定となる Cooper, 1956 BCSハミルトニアン

変分による解法 BCSハミルトニアン の基底状態   を知りたい。 ただし、粒子数の期待値を固定。 を最小化すればよい。

BCS状態 Wにこの試行関数を代入 変分して解くと、 ただし

ギャップ方程式 左辺と右辺が相互規定的 “自己無撞着方程式” BCS近似 Dkはkに依らず一定 の解がある “BCS状態” NOTE:本当は、エネルギーが低いことも示さなくてはいけない。

BCS状態の性質 フェルミ面が“にじむ” 変な期待値 U(1)変換に対し不変でない! なる変換の下で状態が変わる

BCS真空からの励起 BCS真空に消滅生成演算子を掛けてみる 消滅演算子を作り直す “Bogoliubovの準粒子”

準粒子の励起エネルギー NOTE: ギャップの存在が、超伝導電流の起源 QCD真空における質量の起源への応用(NJL模型)

南部-Jona-Lasinio(NJL)模型 Nambu, Jona-Lasinio, 1961 Hatsuda, Kunihiro, 1994 NJL模型は、カイラル変換の下で不変

運動量空間に展開 BCS模型と似ている クォーク・反クォークが クーパーペアを作ることで 質量ギャップを獲得する。 スピンの上下→粒子・反粒子

フェルミ面のずれに対する超伝導の応答 磁場が侵入すると、上下スピンのフェルミ面がずれる クーパーペアが組みにくくなる 一次相転移 n p unlocking region

超伝導の磁場に対する応答 磁場が侵入すると、上下スピンのフェルミ面がずれる クーパーペアが組みにくくなる unlocking region p unlocking region

Color Superconductivity At extremely dense matter, quark (fermion) system attractive channel in one-gluon exchange interaction. [3]c×[3]c=[3]c+[6]c Cooper instability at sufficiently low T u d s Dud Dus Dds pairing in scalar (JP=0+) channel color,flavor anti-symmetric T m

Various Phases of Color Superconductivity m ms~m ms<<m u d s Dud Dus Dds Dud d u Dus Dds s 2-flavor SuperCondoctor (2SC) Color-Flavor Locking (CFL) analogy with B-phase in 3He superfluid

Color Superconductivity in Compact Stars Dud d effect of strange quark mass ms u neutrality and b-equilibrium conditions s Dus Dds Mismatch of densities T mismatched Fermi surfaces common Fermi surface m

Various Phases of Color Superconductivity Dud 3 order parameters Dud, Dus, Dds d  2*2*2=8 possibilities of distinct phases u Dud=Dus=Dds >0 CFL Alford, et al. ‘98 Dud>0, Dus=Dds =0 2SC Bailin, Love ‘84 Dus Dds s Dud>0, Dus>0, Dds =0 uSC Ruster, et al. ‘03 Dud>0, Dds>0, Dus =0 dSC Matsuura, et al., ‘04 cf.) Neumann, Buballa, Oertel ’03 + chiral symmetry restoration many phases at intermediate densities T Abuki, Kunihiro, 2005; Ruster et al.,2005 m

Various Phases of Color Superconductivity Dud 3 order parameters Dud, Dus, Dds d  2*2*2=8 possibilities of distinct phases u Dud=Dus=Dds >0 CFL Alford, et al. ‘98 Dud>0, Dus=Dds =0 2SC Bailin, Love ‘84 Dus Dds s Dud>0, Dus>0, Dds =0 uSC Ruster, et al. ‘03 Dud>0, Dds>0, Dus =0 dSC Matsuura, et al., ‘04 cf.) Neumann, Buballa, Oertel ’03 + chiral symmetry restoration many phases at intermediate densities T Abuki, Kunihiro, 2005; Ruster et al.,2005 m

3,静的なゆらぎ ゆらぎ モーメント・キュムラント 臨界点でのゆらぎの増大 テーラー展開法 QCD相構造の実験的探索

静的ゆらぎ ゆらぎの応用 観測量は、平衡状態においてもゆらいでいる P(N) Variance: N V N 物質のミクロな性質の理解 外場に対する系の応答 有限密度格子QCD(テーラー展開法) 重イオン衝突実験によるQCD相図探索 ゆらぎの応用

モーメント P(N) 確率分布を特徴づける量 N モーメント母関数

キュムラント キュムラント母関数 モーメント母関数 NOTE:キュムラントは、示量的である

練習 二項分布関数 ポアッソン分布

量子統計力学 (静的)量子統計力学のいちばん大事な式 “密度行列” “分配関数”

量子統計における粒子数ゆらぎ NOTE: 分配関数とは、要するにモーメント母関数である。 これらの関係式は、保存電荷のみで成立!      これらの関係式は、保存電荷のみで成立! 感受率としてのゆらぎ ゆらぎは、Nのmに対する応答に等しい!

テーラー展開法 on the lattice テーラー展開法の係数はキュムラントである。 奇数次は荷電共役対称性により消える。 収束半径内でないと展開の妥当性が保証できない。

格子QCD上のキュムラントの解析がアツい LATTICE2013より

検出器に到達する粒子数を、衝突イベント毎に数える 重イオン衝突におけるゆらぎの観測 検出器に到達する粒子数を、衝突イベント毎に数える “event-by-event解析” V Detector

検出器に到達する粒子数を、衝突イベント毎に数える 重イオン衝突におけるゆらぎの観測 検出器に到達する粒子数を、衝突イベント毎に数える “event-by-event解析” Detector 問1:どんな現象が期待されるのか 問2:このように観測されるゆらぎは、何者なのか?

基本自由度の識別 Free Boltzmann  Poisson

基本自由度の識別 Free Boltzmann  Poisson RBC-Bielefeld ’09

QCD臨界点の捜索 2次相転移点近傍では、ゆらぎが増大する。 例:イジング模型 N個のスピン

QCD臨界点の捜索 2次相転移点近傍では、ゆらぎが増大する。 例:イジング模型 N個のスピン N/L個の独立な スピンの集団 ゆらぎはLd/2で増大し、 臨界点で発散する。 長さLで大体同じ向き “相関長”

Proton # Fluctuations @ STAR-BES STAR, PRL2010

Proton # Fluctuations @ STAR-BES STAR, PRL2010 STAR, 2011 high m low m

Proton # Fluctuations @ STAR-BES STAR, 2012 (Quark Matter) STAR, 2011 high m low m

Proton # Cumulants @ STAR-BES STAR,QM2012 CAUTION! proton number baryon number MK, Asakawa, 2011;2012 Something interesting??

保存電荷の高次ゆらぎ Asakawa, Ejiri, MK, 2009 QCD相図上でのバリオン数ゆらぎ

Impact of Negative Third Cumulants Once negative m3(BBB) is established, it is evidences that (1) cB has a peak structure in the QCD phase diagram. (2) Hot matter beyond the peak is created in the collisions. No dependence on any specific models. Just the sign! No normalization (such as by Nch).

Charge Fluctuation @ LHC ALICE, PRL110,152301(2013) D-measure D ~ 3-4 Hadronic D ~ 1 Quark LHC: significant suppression from hadronic value LHC終状態の電荷ゆらぎは、ハドロン化 以前に生成されたものを強く反映している!

Dh Dependence @ ALICE ALICE PRL 2013 t Dh z rapidity window

観測されたゆらぎは、いつ形成されたのか? ゆらぎのダイナミクス(動的振る舞い)の議論が必要 Detector

保存電荷 vs 非保存電荷 保存電荷の場合 非保存電荷の場合 V V 境界を通過する電荷 のみが変化に寄与 体積内の任意の場所で 電荷が変化できる for for

Time Evolution in HIC Quark-Gluon Plasma Hadronization Freezeout

格子QCD vs 重イオン衝突 格子QCDで得られた ゆらぎ-m/T関係線 高次ゆらぎの観測値は、化学凍結点での熱平衡値と一致しない! HotQCD, LATTICE2013 格子QCDで得られた ゆらぎ-m/T関係線 高次ゆらぎの観測値は、化学凍結点での熱平衡値と一致しない!

高次ゆらぎのダイナミクスの記述のために 空間を離散化し、各セルの粒子数で系を記述する probability MK, Asakawa, Ono, 2013 空間を離散化し、各セルの粒子数で系を記述する probability Master Equation for P(n) x-hat: lattice-QCD notation

LHCでの2,4次ゆらぎ MK, Asakawa, Ono, 2013 2nd 4th

4,動的構造 線形応答 スペクトル関数 調和振動子の例 松原グリーン関数 格子QCD クォークスペクトル関数

統計力学 vs 時間? 例:音波、粘性係数、場の励起 問: 統計力学は、時間変化する現象も記述できるか? 答: 熱平衡状態からのずれが小さければ、いける! 例:音波、粘性係数、場の励起 有限温度実時間相関関数

線形応答1 平衡状態にある系に 外場を加える 密度行列の時間発展 時刻tにおける演算子Aの期待値

線形応答2 遅延グリーン関数:

Lehmann表示 スペクトル関数

Spectral Functions at T>0 r (w,p) w peaks slope at the origin quasi-particle excitation width ~ decay rate  transport coefficients Kubo formulae shear viscosity : T12 bulk viscosity : Tmm electric conductivity : Jii

Spectral Functions at T>0 r (w,p) r (w,p=0) w w Difficulties at T>0: continuous spectrum fixed temporal extent: T=1/aNt

松原グリーン関数

Matsubara Green Function Imaginary-time (Matsubara) propagator analytic continuation Retarded (real-time) propagator Spectral function

Analytic Continuation Lattice Dynamics discrete and noisy continuous

Extracting Spectral Functions continuous lattice observable discrete and noisy Ill-posed problem MEM analysis of r (w) most probable image estimated by lattice data + prior knowledge Asakawa, Hatsuda, Nakahara, 1999 qualitative structure of r (w). errors only for average for finite range

Quarks at Extremely High T Hard Thermal Loop approx. ( p, w, mq<<T ) 1-loop (g<<1) Klimov ’82, Weldon ’83 Braaten, Pisarski ’89 Gauge independent spectrum w / mT “plasmino” 2 collective excitations having a “thermal mass” The plasmino mode has a minimum at finite p. p / mT

Decomposition of Quark Propagator HTL ( high T limit ) Free quark with mass m

Decomposition of Quark Propagator HTL ( high T limit ) Free quark with mass m p / mT w / mT p / m w / m

Quark Spectrum as a function of m0 Quark propagator in hot medium at T >>Tc - as a function of bare scalar mass m0 m0 << gT w m0 >> gT We know two gauge-independent limits: m0 mT -mT r+(w,p=0) How is the interpolating behavior? How does the plasmino excitation emerge as m00 ? Baym, Blaizot, Svetisky 1992

Fermion Spectrum in QED & Yukawa Model Baym, Blaizot, Svetisky, ‘92 Yukawa model: 1-loop approx.: Spectral Function for g =1 , T =1 m/T=0.01 0.8 0.4 0.2 0.1 r+(w,p=0) w/T thermal mass mT=gT/4 single peak at m0 Plasmino peak disappears as m0 /T becomes larger. cf.) massless fermion + massive boson M.K., Kunihiro, Nemoto,’06

Spectral Function T = 3Tc 643x16 (b = 7.459) T=3Tc E2 E / T E1 w = m0 pole of free quark Z2 / (Z1+Z2) m0 / T w E1 -E2 Z1 Z2 w E1 -E2 Z1 Z2

Spectral Function T = 3Tc 643x16 (b = 7.459) T=3Tc E2 E / T E1 w = m0 pole of free quark Z2 / (Z1+Z2) m0 / T Limiting behaviors for are as expected. Quark propagator approaches the chiral symmetric one near m0=0. E2>E1 : qualitatively different from the 1-loop result.

Spatial Volume Dependence of mT MK, et al., PRD,2012 mT/T 483x16 643x16 1283x16 mT/T=0.771(12) mT/T=0.725(14) Note: lowest p Nx/Nt=4  pmin~1.57T Nx/Nt=8  pmin~0.79T Result on 1283x16 seems to converge. Much larger lattice is desirable. No lattice spacing dependence.

Quark Dispersion on 1283x16 Lattice MK, et al., in preparation HTL(1-loop) T=3Tc E2 has a minimum at p>0 Existence of the plasmino minimum is indicated. E2, however, is not the position of plasmino pole.

まとめ 有限温度・密度QCDは、各種の相転移など様々な興味 深い物性現象を持つ。 これら物性現象は、重イオン衝突実験や中性子星の観 測などを通して実験的に検証することも可能になりつつ ある。 格子QCDによる「仮想実験」も重要。 興味を持った人はぜひ参入して下さい。

おまけ

宅急便問題 問 直方体の三辺x,y,zの和x+y+z=Lを保ったまま 体積V=xyzを最大にするx,y,zを求めよ。 解 ラグランジュの未定乗数法を使う