一般診療所における インスリン外来導入について

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今 日 の ポ イ ン ト今 日 の ポ イ ン ト 糖尿病人口は予備群を含めると 2,050 万人1.1. 糖尿病は血糖値が高くなる病気 ただし自覚症状がほとんどありません 2.2. 血糖値が高い状態を「高血糖」といいます3.3. インスリンの作用が弱くなったために高血糖に なったのですが、高血糖は必ず改善できます.
血糖値の調節 膵臓 肝臓 筋肉 血 糖 脳 インスリン ↑ 200 g/ 日 120g/ 日 乳 酸 乳 酸 グリコーゲン グリコーゲン グリコーゲン グリコーゲン ( 食事 ) 脂肪組織 Plasma Glucose Blood Glucose 尿糖 血糖値は制御された値 であり制御機構が正常 なら全く血糖は上昇し.
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インスリン スライディングスケール 2007年11月 16 日 研修医勉強会. ①インスリン治療の導入 1 型糖尿病 1 型糖尿病 2 型糖尿病 2 型糖尿病 妊娠・授乳時の血糖正常化(食事療法でのコントロール不良) 高血糖性昏睡 重症感染症、外傷、外科手術 重篤な肝障害・腎障害 経口血糖降下剤無効例、副作用で使用できない例.
11-2 知っておくと役立つ、 糖尿病治療の関連用語 一次予防、二次予防、三次予 防 1.1. インスリン依存状態 インスリン非依存状態 2.2. インスリン分泌 3.3. 境界型 4.4. グルカゴン 5.5. ケトアシドーシス、ケトン体 6.6. 膵島、ランゲルハンス島 7.7. 糖代謝 8.8.
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一般診療所における インスリン外来導入について 中原区医師会糖尿病 病診連携の会 一般診療所における インスリン外来導入について ~持効型インスリン1日1回注射による2型糖尿病治療法 BOT~ 聖マリアンナ医科大学 内科学    代謝・内分泌内科 川田 剛裕 2009.6.23

2型糖尿病治療の実際 50%が経口糖尿病薬のみによる治療 HbA1c 6.5%未満 達成率 約30% コントロール目標達成困難であればできる限り 速やかにインスリン療法を導入することが重要

インスリン治療を開始した患者の平均HbA1c値は9%を超えていた 開始時のHbA1cが高いと、なかなか6.5%未満に到達できない 早期インスリン導入のメリット インスリン治療を開始した患者の平均HbA1c値は9%を超えていた 開始時のHbA1cが高いと、なかなか6.5%未満に到達できない インスリン治療を 開始した患者 インスリン治療を 開始しなかった患者 観察期間開始時 (インスリン治療を 勧めた時点) インスリン治療 開始1ヵ月後 観察期間終了後 7.9 8.9 9.4 8.5 6 7 8 9 10 11 12 N.S.*1 P<0.001*1 P<0.01*1 P<0.05*1 HbA1c値 (%) N=63 N=57 N=62 N=61 早く導入したほうが 血糖コントロールが容易 *1: non-paired t-test DAWN JAPAN調査2005

SU薬の二次無効 グリベンクラミド 7.5mg/dl SU薬極量の75% 以上を投与しても空腹時血糖値150mg/dl以上  and/or HbA1c 7.5%以上のコントロール不良例 日本糖尿病学会編 糖尿病治療ガイド 2006-2007 糖尿病専門医研修ガイドブック

インスリン導入フローチャート イ ン ス リ ン 導 入 良好な血糖コントロールが得られない場合 HbA1c7.5%以上 肥満・インスリン抵抗性がある場合 食後血糖が高い場合 食事療法 + 運動療法 α-GI、 グリニド系 SU薬 BG薬、 チアゾリジン系 SU薬+α-GI SU薬+BG薬 or チアゾリジン系 グリニド系+BG薬 SU薬+BG薬+チアゾリジン系 SU薬+α-GI+BG薬 SU薬+α-GI+BG薬+チアゾリジン系 良好な血糖コントロールが得られない場合 HbA1c7.5%以上 イ ン ス リ ン 導 入

2型糖尿病の治療戦略 インスリン療法 食事・運動療法 経口血糖 降下薬 (1剤) 経口血糖 降下薬 (2-3剤) インスリン 導入 経口血糖降下薬 + 基礎インスリン 混合型 インスリン +追加インスリン (強化インスリン療法) インスリン療法 経口血糖 降下薬 (1剤) 経口血糖 降下薬 (2-3剤) インスリン 導入

治療法と基礎インスリン製剤の内訳(現治療) インスリン処方患者数(2型) (n=1305) Basal-Bolus 21% (n=277) BOT &Basal only 22%(n=292) Pre-Mix 42% (n=554) Bolus only 8% (n=104) Other 6% (n=78) NPH 16.4% NPH 22.7% ランタス 50.2% レベミル 18.5% ランタス 65.1% レベミル 27.1% 2型糖尿病患者に対するインスリン処方状況調査 EPOCA Marketing、2009年1月

従来療法における作用プロファイル 混合型 2回法 混合型インスリン 健常人の24時間インスリン分泌パターン (  薬剤投与) 低血糖発現により、積極的な インスリンの増量が困難 作用不足 低血糖 朝食前 昼食前 夕食前 就寝前 Leahy JL. Insulin Therapy : 2002; 97,より一部改変 8

グラルギン+OHA と 混合型インスリン1日2回投与の比較 試験デザイン LAPTOP Study グラルギン+OHA と 混合型インスリン1日2回投与の比較 試験デザイン 前治療 試験期 0週 24週 n:割付け症例数 <グラルギン+OHA群> グラルギン1日1回 (朝) + グリメピリド*+メトホルミン n=177 2型糖尿病患者 無作為化 *3または4mg/日 経口血糖降下薬 n=364 <混合型インスリン群> ■ 経口血糖降下薬(OHA) SU薬はグリメピリドに切り替え、 メトホルミンとともに試験期間中、用法・用量を変更せずに継続 混合型インスリン1日2回 (速効型30%/NPH70%) n=187 Janka HU, et al. Diabetes Care 2005; 28: 254-259

グラルギン+OHAと混合型インスリン1日2回投与の比較 インスリン投与量の調節方法 LAPTOP Study グラルギン+OHAと混合型インスリン1日2回投与の比較 インスリン投与量の調節方法 インスリンは治療目標を目指し、最初の8週間は週に一度、 その後は2週ごとに用量を調節 SMBG値 インスリン追加量 (単位/日) >100~120mg/dL 2 >120~140mg/dL 4 >140~160mg/dL 6 > 160mg/dL 8 治療目標値:  グラルギン+OHA: FBG 100mg/dL以下 混合型インスリン: FBGおよび夕食前血糖値 100mg/dL以下 Janka HU, et al. Diabetes Care 2005; 28: 254-259

HbA1Cの変化度とHbA1C7%以下の達成率 LAPTOP Study HbA1Cの変化度とHbA1C7%以下の達成率 HbA1Cの変化度 HbA1C 7%以下の達成率 混合型 インスリン群 グラルギン +OHA群 (%) p=0.0596 (ANCOVA) 開始時 HbA1C 10 20 30 40 50 60 8.8% 8.9% (%) - 2 - 1.5 - 1 - 0.5 49.4 39.0 HbA1C 変化度 達成率 -1.31 -1.64 p=0.0003 (ANCOVA) 混合型 インスリン群 グラルギン +OHA群 Janka HU, et al. Diabetes Care 2005; 28: 254-259

LAPTOP Study 1日血糖プロファイルの変化 血糖値 混合型インスリン群 260 試験開始時 グラルギン+OHA群 240 投与前後の差: グラルギン+OHA群vs 混合型インスリン群                 (ANCOVA) 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 朝食前 朝食後 昼食前 昼食後 夕食前 夕食後 就寝前 午前3時 血糖値 試験開始時 (mg/dL) 混合型インスリン群 グラルギン+OHA群 開始時 終了時 試験終了時 * Janka HU, et al. Diabetes Care 2005; 28: 254-259

LAPTOP Study 低血糖発現頻度 発現頻度 * p<0.0001 2 4 6 8 10 12 混合型インスリン群 (回/患者・年) * p<0.0001 2 4 6 8 10 12 混合型インスリン群 グラルギン+OHA群 9.87 * Cochran-Mantel-Haenszel検定 * p=0.0009 発現頻度 5.73 4.07 2.62 * p=0.0449 1.04 0.51 0.05 全低血糖 症候性低血糖 夜間低血糖 重症低血糖※ ※重症低血糖:回復に第三者の介助を必要とし、血糖値<36mg/dLの場合、炭水化物の経口摂取やグルコース・グルカゴンの経静脈投与により回復した場合 Janka HU, et al. Diabetes Care 2005; 28: 254-259

LAPTOP Study インスリン投与量および体重変化度 混合型インスリン群 グラルギン+OHA群 インスリン 投与量 (単位) 開始時 朝 10.3 9.9 夕 終了時 33.5 28.2 31.0 体重変化度 (kg) +2.1 +1.4 Mean Janka HU, et al. Diabetes Care 2005; 28: 254-259

LAPTOP Study 治療満足度の変化 DTSQスコアの変化 試験終了時のDTSQスコア 3.95 14.0 11.5 変化度 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 2 4 6 8 10 12 14 16 3.95 14.0 11.5 変化度 DTSQスコア 2.32 混合型 インスリン群 グラルギン +OHA群 混合型 インスリン群 グラルギン +OHA群 Bradley C, et al. Diabetes 2005, 54 (suppl 1). Abstract 1246-P

LAPTOP Study 高齢者2型糖尿病におけるサブ解析 夜間低血糖なしで HbA1C 7%以下の達成率 HbA1Cの変化度 HbA1C 混合型 インスリン群 グラルギン +OHA群 (%) (%) 80 p=0.006 -0.5 60 HbA1C 変化度 達成率 55.2 -1 -1.4 40 -1.5 30.2 -1.9 20 -2 p=0.003 -2.5 混合型 インスリン群 グラルギン +OHA群 Janka HU. et al. J. Am. Geriatr. Soc.2007;55:182-188

LAPTOP Study 高齢者2型糖尿病におけるサブ解析 発現頻度 12 混合型インスリン群 10 グラルギン+OHA群 9.09 8 6 (回/患者・年) 12 p<0.008 混合型インスリン群 10 グラルギン+OHA群 9.09 * Cochran-Mantel-Haenszel検定 p<0.06 発現頻度 8 6 5.01 4 3.68 p<0.26 2.22 p<0.21 2 0.71 0.39 0.09 0.00 全低血糖 症候性低血糖 夜間低血糖 重症低血糖※ ※ 重症低血糖:回復に第三者の介助を必要とし、血糖値<36mg/dLの場合、炭水化物の経口摂取やグルコース・グルカゴンの経静脈投与により回復した場合 Janka HU,et al.J.Am.Geriatr.Soc.2007;55:182-188より作図

LAPTOP Study 経口血糖降下薬のみでは十分な血糖コントロールを得られない2型糖尿病患者において、グラルギンを1日1回追加する方法は、混合型インスリン1日2回投与に切り替える方法と比べて、HbA1Cは有意に低下した。 グラルギン群では、1日血糖プロファイルが全体的に低下した。 グラルギン+経口血糖降下薬群では、低血糖発現頻度が半減し、夜間低血糖を発現することなくHbA1C7%以下を達成した患者の比率が高かった。 65歳以上の患者のサブ解析では、夜間低血糖をきたすことなくHbA1c7%以下を達成した患者の比率は混合型インスリン群に比べてグラルギン+OHA群で有意に高かった。 Janka HU, et al. Diabetes Care 2005; 28: 254-259 Janka,HU.et al.:J.Am.Geriatr.Soc.2007;55:182-188

BOT; Basal Supported Oral Therapy OHA + Basal Insulin 「 経口薬(SU薬など)を服用しながら 基礎インスリンを追加する 」

+ 経口血糖降下剤と併用する場合 持効型インスリン 投与 用法:投与時期 夕食前又は就寝前 (いずれでもよいが、毎日一定にする) 経口血糖降下剤(SU薬・BG薬・α-GI etc)はそのままで + プラス 持効型インスリン 投与 用法:投与時期   夕食前又は就寝前    (いずれでもよいが、毎日一定にする) 用量:投与開始用量    4~8単位/日 ( 0.1単位/kg) 

BOTにおけるインスリン用量調節 基本は 1ヶ月ごと2単位 (可能なら導入後1ヶ月は2週間毎) 目標 (朝)空腹時血糖値 基本は 1ヶ月ごと2単位 (可能なら導入後1ヶ月は2週間毎) 調 整 法 目標 (朝)空腹時血糖値   80~130 mg/dl 2U 減 2U 増 低い 高い 1ヵ月後 2ヵ月後    経口剤 減量 (7.5 ⇒ 5mg)   + インスリン 増量 (2U)    経口剤 減量 (5 ⇒ 2.5mg)   + インスリン 増量 (2U) 導入     経口剤   + インスリン 4~8U

2型糖尿病の段階的治療 Basal-supported Oral Therapy(BOT) Step4 Step3 Step2 Step1 基礎+追加インスリン Step3 +基礎インスリン Step2 経口血糖降下薬 (2-3剤) Step1 経口血糖降下薬 (1剤) ライフスタイルの改善 Riddle M. Endo Metab Clin NA 1997; 26: 659 Riddle M. Am J Med 2004; 116: 35

BOTのコントロール目標 毎食前血糖値110mg/dl未満を目標に持効型インスリンの用量を調節 SU薬の効果が改善する可能性

TOB導入の一例 55歳 女性 身長 150cm, 体重 38kg, BMI 16.9 55歳 女性 身長 150cm, 体重 38kg, BMI 16.9 FPG 152, PPPG 212, HbA1c 7.5 2008年 8月 アマリール3mg + グラルギン2単位(夕)  FPG 77~82, HbA1c 6.5↓ 2008年10月 経過中、FPG 60前後と低値が続いたため グラルギン投与を夕⇒朝へ同量にて変更 2008年11月 2009年 1月 FPG 67, HbA1c 6.6

自己血糖測定導入のタイミング インスリン導入 インスリン導入の前後1ヶ月 ! 1ヵ月前 1ヵ月後 インスリン導入の前後1ヶ月 ! SMBG 導入時期 インスリン導入 1ヵ月前 1ヵ月後 導入の目安 ・インスリン注射への抵抗が強い患者には、血糖自己測定をインスリン導入前に指導することで、日常の血糖値が高いことを自覚させる ・インスリン注射への抵抗が弱い患者には、インスリン注射になれた後、  SMBGを導入し血糖コントロール改善に役立てる

自己血糖測定指導のコツ 朝食前 朝食後 昼食前 昼食後 夕食前 夕食後 160 184 226 143 168 192 132 188 159 214 172 235 121 156

低血糖を起こさずに血糖の正常化を 目指すことは、グローバルコンセンサス 科学的根拠に基づく 糖尿病診療ガイドライン ADA Guideline Standards of Medical Care in Diabetes 2008 3 血糖コントロールの目標 2.Glycemic goals(excerption) Recommendations ● Lowering A1C to an average of 7% has clearly been shown to reduce microvascular and neuropathic complications of diabetes and, possibly,macrovascular disease. Therefore, the A1C goal for nonpregnant adults in general is 7%. ● Epidemiologic studies have suggested an incremental benefit to lowering A1C from 7% into the normal range. Therefore, the A1C goal for selected individual patients is as close to normal (6%) as possible without significant hypoglycemia. 細小血管症の発症・進展抑制の観点からはHbA1C 6.5%未満を目指す。 大血管症の発症・進展抑制の観点からはHbA1Cの正常化、かつ食後高血糖の是正を目指す。 具体的には低血糖が起こらないことを確認しながらHbA1C 5.8%未満を目指す。 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン改訂第2版,p44,2007. Diabetes Care, 31, S12, 2008.

治療法と基礎インスリン製剤の内訳 (新規導入時)※ インスリン処方患者数(2型) (n=144) Basal-Bolus 15.3% (n=22) BOT &Basal only 51.4%(n=74) Pre-Mix 22.9% (n=33) Bolus only 9.7% (n=14) Other 0.7% (n=1) NPH 2.9% NPH 19.0% レベミル 17.1% ランタス 28.6% ランタス 80.0% レベミル 52.4% ※製剤内訳は3ヶ月内で処方変更された症例を除き算出 2型糖尿病患者に対するインスリン処方状況調査 EPOCA Marketing、2009年1月

ADA TOPIX 2-3剤の経口糖尿病薬(SU,BG,TZD)投与にてHbA1c>8.0%を呈した2型糖尿病患者 631例 グラルギンを用いたBOTを導入し、14週間追跡 288例 HbA1c<7.0% 343例 HbA1c>7.0% さらに、インスリングルリジンを追加 24週間追跡 グルリジン投与方法は1回、2回、3回注射法の3タイプで、HbA1c<7% 達成率はそれぞれ、29.7%, 33.3%, 45.1%であり、3回群が2回に比し優位に高かった。 有意ではないが、低血糖リスクが若干増加傾向を認めたことから、初回は1回注射から併用開始し、状態に応じて2回、3回と増やす方法が推奨される。(Dr.Davidson ; Charles Drew Univ. LA)    HbA1c<7.0% 達成 BOT + 超速効型インスリン追加投与により、更なる状態改善がもたらされた。 低血糖に注意が必要。状態に応じて、注射回数を段階的に増やす方法を推奨。