論文紹介06: 最近のγ線観測とGLASTとの関連

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論文紹介06: 最近のγ線観測とGLASTとの関連 May 08, 2006 Tsunefumi Mizuno Hiroshima University

(1)初期宇宙の星生成の探査 “A low level of extragalactic background light as revealed by g-rays from blazars,” Aharonian et al. 2006, Nature 440, 1018 他

基本原理 eV Blazarの銀河間吸収を測定することで、銀河間の軟光子の量、ひいては初期宇宙の星生成の量を知ることができる 銀河間には、星が放射してきた軟光子(赤外、可視、紫外)が存在 γ線は、軟光子との衝突(対生成)により消滅 (Stecker et al. 1992) GeV g線:可視および紫外光 TeV g線:赤外光 eV ブレーザーは、まっすぐ伸びるべき関数型のスペクトル Blazarの銀河間吸収を測定することで、銀河間の軟光子の量、ひいては初期宇宙の星生成の量を知ることができる

TeVγ線観測の特徴 近く(low redshift)の赤外光に感度 地上のチェレンコフ望遠鏡:ターゲットは少ないので、もとのスペクトルがある程度分かった、統計のよい天体が必要 観測:HESSによる1ES 101-232(z=0.186)とH 2356-309(z=0.165)

Extragalactic Background Light (EBL) open symbol: 銀河からの放射 filled symbol:銀河間軟光子の直接観測 上限値は2s upper limit P1.0は直接観測を通るモデルカーブ ENIRはIRTSのデータを説明するための成分

1ES 1101-232の場合 青:EBLの影響を戻したスペクトル 赤:観測スペクトル(G=2.88)

H 2356-309の場合 P0.45 青:EBLの影響を戻したスペクトル 緑:観測スペクトル(G=3.06) 1 TeV

考察および結論 Blazarの放射モデルによると、最も硬いスペクトルでべき1.5程度 (Malkov et al. 2001) より近く吸収のないTeV blazar Mkn421およびMkn501のべきは1.5-2.8 (Aharonian et al. 1999 Krennrich et al. 2002, Diannati-Atai et al. 1999) 赤方偏移0.2以下では銀河形成による進化効果も少ない 仮定したEBLの形が実際と異なる? 観測データに感度の高い領域は0.8-3mm 特に1-2mmがpeakを持つ必要 1.4mmをフラットにしてもDP~0.1 2mm以上をフラットにするとGint<0 P=0.55がせいぜい。銀河間赤外光は、銀河からの放射でほぼつきているようだ (宇宙初期の星生成は少ない)

GeVγ線の特徴 遠くまでの可視、紫外光に感度 GLASTによる観測:多数のターゲットによる統計的議論が可能 TeVγ線と相補的な役割 GLASTで見た場合のシミュレーション:Chen et al. 2004, ApJ 608, 686 十分な数? Luminosity Function ブレーザー自身のカットオフ? EGRETのデータ。cutoffのz依存性

Luminosity Function (LF) GLASTによって検出可能なBlazarの数の赤方偏移依存性 Stecker & Salamon (1986) FSRQs(flat-spectrum radio-loud quasars)と同じLF Chiang & Mukherjee (1998)

Blazarのスペクトル自身のカットオフ EGRETによる観測:G=2.15+-0.04 (Mukherjee et al. 1997) 50 GeVでのカットオフのある場合とない場合 10 GeV以上と1 GeV以上のフラックスの比のz依存性 なるべくBlazar自身のスペクトル、カットオフに依存しない方法でEBLを評価

Simulation結果(1) Stecker & Salamon (1996)のLuminosity Function。カットオフなし EBLなし EBL by Salamon & Stecker (1998) EBL by Primack et al. (1999)

Simulation結果(2) Chiang & Mukherjee (1998)のLuminosity Function。カットオフなし EBLなし EBL by Salamon & Stecker (1998) Primack et al. (1999)

Simulation結果(3) Chiang & Mukherjee (1998)のLuminosity Function。カットオフ有り EBLなし EBL by Salamon & Stecker (1998) Primack et al. (1999) Blazarの放射スペクトルにかかわらず、EBLのモデル間の違いを区別可能

(2)γ線で探る銀河系内の宇宙線分布 “Discovery of very-high-energy g-rays from the Galactic Center ridge,” Aharonian et al. 2006, Nature 439, 695 他

基本原理 陽子と物質との反応によるpi0の崩壊:70 MeVのγ線(重心系) 陽子加速の直接証拠 陽子のスペクトルをトレース 陽子のスペクトル測定 宇宙線の量と物質の量に比例 宇宙線と物質の分布にせまる EGRETによる全天マップ(E>100MeV) Log(E)

これまでの観測 高銀緯 6<|b|<10度 中銀緯 (2<|b|<6度) 0.1 1 10 (GeV) SAS-IIおよびCOS-Bによる銀河中心からの拡散ガンマ線放射 高銀緯 6<|b|<10度 銀河中心方向 Vs. 反対方向 制動放射(EB) E2*Flux Pi0崩壊(NN) 中銀緯 (2<|b|<6度) 逆コンプトン(IC) 0.1 1 10 (GeV) SAS-IIおよびCOS-B: 陽子崩壊由来のハンプ構造 EGRET: 太陽系近傍の陽子スペクトルからの予想を上回る放射(GeV excess) 方向によるスペクトルの違い 銀河面 (|b|<2度) GLASTにより、宇宙線と物質分布の理解が進むと期待される 0.1 1 10 GeV (Hunter et al. 1997)

TeV γによる、銀河中心イメージ(1) 銀河系内の宇宙線と物質分布の理解は、GLASTにより進むと期待される では特定の領域で、いま何が分かったか?の例が今回の論文 CSによる分子ガス密度のコントア Sgr A* G0.9+0.1(SNR) Sgr B(巨大分子雲)

TeV γによる、銀河中心イメージ(2) |b|<0.2度での銀経分布 最近の超新星爆発によるγ線放射? TeV γ線分布 陽子が104年で拡散した場合の予想分布 TeV γ線分布 CSによる分子ガスの分布 最近の超新星爆発によるγ線放射?

エネルギースペクトル 太陽系近傍の陽子スペクトルを仮定した場合:Γ~2.75 銀河中心領域:Γ~2.3 全放射エネルギーは~1050erg/s (SNRの10%) 104年以内の、単一のSN。SgrA east? 電子によるICの可能性は低い: 光子および磁場密度から、120年程度でエネルギーを失う

GLASTによる局所銀河群中の銀河の観測 Pavlidou & Fields 2001, ApJ 558, 63 観測されたSN rateおよび物質量から、γ線フラックスを予想 LMC, SMC, M31およびM33からの検出が期待

まとめ 初期宇宙の星生成: GeV/TeVγ線の吸収から、初期宇宙の星生成量を探る 可視、紫外の系統的研究:GLASTによる~10000のBlazarの観測 銀河系内の宇宙線分布: 70 MeVのハンプ:陽子加速の直接証拠。宇宙線と物質分布を探る SAS-II, COS-B,EGRETによる観測。GLASTによる詳細観測 TeVγで、銀河中心からの超過成分:最近のSN? GLASTにより、他の銀河の観測も可能に