~各国の理念と日・米・独の 援助政策~ 総合政策学部2年 関口洋介 政府開発援助体制 の国際比較 ~各国の理念と日・米・独の 援助政策~ 総合政策学部2年 関口洋介
日本のODA 顔が見えない 要請主義 主体性がない 贈与比率低い 割高コスト 腐敗 顔が見えない 要請主義 主体性がない 贈与比率低い 割高コスト 腐敗 日本は贈与国の中で唯一過去に途上国であったことがある国。他の国にはない日本独自の開発援助のあり方があるはず。
世界の平和を維持し国際社会の繁栄を確保することは日本の使命 日本の開発援助に対する基本理念 『政府開発援助大綱』(平成4年) Ⅰ 基本理念 「飢餓と貧困(中略)人道的見地からこれを看過することはできない」 「開発途上国の安定と発展が世界全体の平和と繁栄にとって不可欠(中略)を認識しなければならない」「環境の保全は(中略)全人類的課題」 世界の平和を維持し国際社会の繁栄を確保することは日本の使命
政府開発援助を行う意義 ①経済大国としての人道主義 ②世界経済の中での相互依存関係の認識 ③援助を通じて発展途上国の民政の向 ①経済大国としての人道主義 ②世界経済の中での相互依存関係の認識 ③援助を通じて発展途上国の民政の向 上を通じた政治的安定を実現すること ④経済発展に成功した経験を発展途上国に伝 達することが国際貢献になること ⑤経常収支黒字国としての資金還流
原則 1)環境と開発を両立させる。 2)軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。 3)国際平和と安定を維持・強化するとともに、開発 3)国際平和と安定を維持・強化するとともに、開発 途上国はその国内資源を自国の経済発展のために 開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイル の開発・製造、武器の輸出等の動向に十分注意を 払う。 4)開発途上国における民主化の促進、市場志向型経 済の導入の努力ならびに基本的人権及び自由の保 障状況に十分注意を払う。
日本のODAの歴史的変遷 1)第一期 1954年から57年まで 東南アジア諸国に対する賠償という形で経済援助が開始 1)第一期 1954年から57年まで 東南アジア諸国に対する賠償という形で経済援助が開始 2)第二期 1958年から60年代半ばまで 賠償以外の譲渡性の資金協力開始 但し互恵原則主義 日本の重機 械輸出、ないしは重要資源の安定的な購入に直接結びつくような形 3)第三期 1960年代半ばから70年代はじめまで 経常収支の黒字転換により援助額の急速な伸び 輸出促進を目的 東・東南アジアに偏る 4)第四期 1970年代はじめから77年まで 石油ショックの反省から資源の安定確保のために東・東南アジア以 外の国への援助の分散 5)第五期 1978年から80年代まで ODA拡充期 対GNP比一貫して増大 質・量ともに改善が進む 6)第六期 1989年以降 円高に支えられ世界最大の供与国へ
各国の開発援助に対する理念Ⅰ 米国(国益重視) 途上国の政治の方向づけ。ソ連に対抗するための手段。冷戦の集結で援助は無用だとする議論 90年に外交目標とリンク 1)民主主義の強化 2)市場開放促進 3)世界の平和安定の確立 4)国境を越えたグローバルな問題への協調的取り組み 5)アメリカの同盟関係の強化・更新 ドイツ (戦略的関心排す) 戦後賠償という形でスタート 供与国側では援助配分の決定要因としての政治的、経済的、戦略的関心のウェイトを低下させるべき。 人権の尊重、法の支配、民主主義、社会的・生態学的要請に適合した市場、軍事費の抑制にもとづいた構造が必要
各国の開発援助に対する理念Ⅱ フランス(自国文化の普及)仏語・仏文化の普及 旧植民地などフランスと関係の深い地域を「優先連帯地域」(ZSP)とし、教員・技術者派遣、留学生受け入れなど教育・文化面を重点的に行う。 二国間援助が中心 イギリス(旧宗主国としての関心) 貧困の撲滅を最終目標二国間援助の約7割が低所得国に集中 特にサハラ以南アフリカ等の低所得国、LLDCを重視。旧連邦諸国に対する援助が5割以上 EU及び国連を通じた援助の効率的実施を重視 債務救済にも積極的
各国の開発援助に対する理念 Ⅲ カナダ (国際協調、安全保障、自国文化の表現) 安全保障、カナダの文化の表現 キーワード「貧困の解消」 各国の開発援助に対する理念 Ⅲ カナダ (国際協調、安全保障、自国文化の表現) 安全保障、カナダの文化の表現 キーワード「貧困の解消」 1)BHN 2)女性の参加拡大 3)インフラ 4)人権・民主主義・「良い統治」5)民間セクター 6)環境 の6分野を設定 95年以降はアフリカ・中近東を重点地域 オーストラリア (国際協調、地域的関心 商業的利益に即したした援助」から「貧困対策を中心とした人道援助」へ 小規模できめの細かい援助に焦点を当てた援助 目標はあくまでもオーストラリアの国益を前進させる」こと パプア・ニューギニア、太平洋島嶼国、東アジア等のアジア・太平洋を重点地域
援助政策 米国1 2. 経済開発援助(DA) 1.経済支援援助(Economic Support Fund: ESF) 援助政策 米国1 1.経済支援援助(Economic Support Fund: ESF) アメリカの政治及び安全保障上の観点から特に関心を有する国・地域に対して供与される。二国間援助の30~40%を占める。国際収支改善のための商品無償、無償資金協力等を中心とした弾力的な援助形態であり、援助内容は国防省と議会の協議で決定 2. 経済開発援助(DA) 中・長期的な経済開発を目的とし、特に貧困層の生活環境改善のための案件について主に技術協力を中心に実施ESFとは異なり、USAIDの詳細な計画や実施手続きに従わなくてはならない 1)農業・農村開発・栄養 2)人口計画 3)保健衛生 4)児童生存基金 5)教育、人的資源開発 6)エネルギー、NGO 商業的手段として用いられることはほとんどない
援助政策 米国2 3 食糧援助 4 人道援助 アメリカの農産物が低利子かまたは直接融資で発展途上国に供与 援助政策 米国2 3 食糧援助 アメリカの農産物が低利子かまたは直接融資で発展途上国に供与 米国小麦等の定理・延べ払い輸出(タイトルⅠ)、無償による緊急の食糧援助(タイトルⅡ)、及び、被援助国の経済開発を目的とする対政府無償援助(タイトルⅢ)タイトルⅠは農務省、タイトルⅡとⅢはUSAIDが執行 4 人道援助 災害救済、緊急食糧援助、NGO支援などを含む迅速で効果的な危機の対応を推進
援助政策 米国3 1)開発援助(DA)は国ごとの援助額の確定は国務省によって行われた後で、USAIDが運営 援助政策 米国3 1)開発援助(DA)は国ごとの援助額の確定は国務省によって行われた後で、USAIDが運営 2)食糧援助の政策と配分に関しては農務省、USAID、国務省、財務省から構成される合同委員会によって決定。実施するのはUSAID。 (3)経済支援基金(ESF)は、基本的にには外交、安全保障政策に基づき国務省によって決定 (4)多国間開発銀行への援助供与については財務省が責任を負うが、国連専門機関のような国際機関への資金供与については国務省が直接管轄。 米国の対外援助予算は大統領によって議会に提出される連邦予算の一部 国務省と財務省が担当。財務省は多国間援助と発展途上国債務を含む対外経済政策、国務省は経済・軍事両面にわたる二国間援助政策の決定。 USAID(米国国際開発庁)は国務省と密接に協議しながら二国間援助を実施国務長官に報告義務、ますます援助の配分や運営に関して国務省が主導権を握るようになっている
今後の米国の援助政策 クリントン政権97年 旧ソ連向けの「自由のためのパートナーシップ(Partnership for Freedom)」 「アフリカ貿易・投資イニシアティブ」 貿易、投資の拡大とそれを支える開かれた市場が対象国の経済発展を促進。 伝統的な開発援助を維持しつつも貿易、投資の拡大を促進するための技術援助の重きを移してゆく方向 今後の米国の対外援助政策に変化をもたらす要因 1)アメリカの経済的利益が更に援助に組み入れられる。 2)発展途上国との貿易と援助との結びつきが更に強まる。
援助政策 ドイツ 連邦経済協力省(BMZ) (1)開発協力の計画と調整 (2)発展途上国との交渉 (3)融資 (4)非政府機関との調整 援助政策 ドイツ 連邦経済協力省(BMZ) (1)開発協力の計画と調整 (2)発展途上国との交渉 (3)融資 (4)非政府機関との調整 (5)他の供与国や多国籍企業との調整 (6)資金利用の監視 二国間資金・技術協力・・・ドイツ復興金融公庫(KfW)、ドイツ開発公社(DEG) 技術協力・・・ドイツ技術協力会社(GTZ) 特定の課題を担当する機関(対話と訓練にはドイツ国際開発財団(DSE)、ボランティア・プログラムにはドイツ開発奉仕部隊(DED)、開発研究、助言、将来の開発行政担当官の訓練にはドイツ開発研究所(GDI)等
ドイツの援助政策の特徴 政策決定と実施が分離されている。 開発政策を担当する独立の省が存在する。 援助実施に責任を持つ組織がなく、政府傘下機関、独立の非政府機関(NGO)、民間部門に委ねられている。 資金協力と技術協力は別の機関で扱われている。
ドイツの援助政策 地理的配分
ドイツの援助概念 「国別援助計画」の概念はなし あくまで合意原則 散水タンク方式・・・出来る限り多くの二国間援助を 戦略的関心のウェイトを低下させるべき 92年の援助計画 散水タンクの中の散水タンク (1)人権の尊重 (2)政治過程への住民参加 (3)法的制度への住民の信頼 (4)自由市場経済制度の創出 (5)開発に対する政府活動(軍事費が特に注目される) 「国別援助計画」の概念はなし あくまで合意原則
ドイツの援助政策の特徴と今後 グラントエレメント、アンタイド率は、DAC諸国の中でも日本と同じく最下位のレヴェル 「自助」を助けるという原則 技術協力も集中的に一分野に対してではなく、GTZやコンサルタント業界も開発に結びつくあらゆる領域でノウハウを供給 今後の課題は環境 戦略的関心を排しながらいかにして効率的に配分先を決定してゆくか
日本の援助政策 日本のODAの特徴 要請主義 インフラの整備 対アジア諸国の比重大 ツーステップ・ローンにような政策金融型の産業支援 援助管理は大蔵・外務・経済企画・通産の各省庁が協議して行う4省庁体制 贈与の比率が低い プロジェクト・ファイナンスの重視
日本のODAに対する批判 ODA援助のずさんさ、失敗例の多さ 情報公開不足、密室性 要請主義、主体性の無さ コンサルタンツの能力不足 コンサルタンツ業務の不当性、高価格 贈与分不足 プロジェクト中心主義 協力期間の短さ 専門家の交代 決定の遅さ 手続きの煩雑さ NGOの強化 理念の不在 戦略の稚拙 ODA基本法の不在 援助方針・方法論の不在 4省庁体制の非効率 経済協力省の不在 援助の商業主義、タイド性、資金還流 商社・メーカー主導型援助 専門的人員不足 調査費の不足 審査体制の不備 評価の不備 アフターケアの不備 金額志向 金持ち優先、貧乏人無視 独裁政権支援 不正助長 日本の援助の不評
総論 日本の開発援助 Ⅰ 日本は理念がないわけではない DAC諸国の中でも「国益」を明示する国としない国。 総論 日本の開発援助 Ⅰ 日本は理念がないわけではない DAC諸国の中でも「国益」を明示する国としない国。 アジア中心の幻想 人口比の援助額ではアジア、アフリカ、中近東、中南米ほぼ同じ。 あえて外交戦略と過度に絡めないことで被援助国からの支持。 国際開発省は必ずしも必要ではない。 ドイツの例 日本と類似した韓国の体制
総論 日本の開発援助 Ⅱ 要請主義であることは被援助国の自立性を高める。 借款が中心で贈与が少ない点について 総論 日本の開発援助 Ⅱ 要請主義であることは被援助国の自立性を高める。 借款が中心で贈与が少ない点について 欧米は贈与か商業借款かといったオールオアナッシング 欧米の贈与は社会部門中心 日本は金利に幅 その国の状況、事業内容によって条件決定。財源は財政投融資から。
総論 日本の開発援助 Ⅲ プロジェクト中心主義 借款が多いことに関係。産業振興には不可欠 今後の課題は人材の育成 他国政府、国際機関との協調