新宿区における 妊婦健康診査未受診妊婦への対応策

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新宿区における 妊婦健康診査未受診妊婦への対応策 第51回日本母性衛生学会 シンポジウム5 「これからの妊婦健診体制を考える」 2010年11月6日 新宿区における 妊婦健康診査未受診妊婦への対応策 国立国際医療研究センター 産婦人科 水主川純

緒言 医療機関をほとんど受診することなく分娩に至る 妊婦健康診査未受診妊婦(以下,未受診妊婦)が 社会的問題になっている. 未受診妊婦の背景として,経済的困窮,未婚,若年, 多産などが挙げられ,医療機関と行政機関が 連携した対応が重要である.

方法 当院で診療した未受診妊婦に関する現状に 基づき,新宿区保健所と検討会を開催し, 未受診妊婦への対応策を検討した.

医療機関と行政機関の連携 - 新宿区- 検討会の開催に至るまで 当院における 未受診妊婦の現状 新宿区保健所 保健センター 福祉事務所 現状を報告し,対応策について相談した.

新宿区保健所 支援や相談を要する場合,妊娠中から 保健指導や状況に応じた支援などを おこなうことができる. 支援 支援 妊娠 妊娠届 母子健康手帳 妊婦健康診査 分娩 受診票 支援や相談を要する場合,妊娠中から 保健指導や状況に応じた支援などを おこなうことができる.

未受診妊婦 未受診妊婦 婚姻状況 経済状況 生活拠点 養育意思 未受診であるため, 行政機関では妊娠中から 支援を開始することは困難 妊娠 妊娠届 母子健康手帳 妊婦健康診査 分娩 受診票 未受診妊婦 婚姻状況 経済状況 生活拠点 養育意思 未受診であるため, 行政機関では妊娠中から 支援を開始することは困難

医療機関と行政機関の連携 - 新宿区- 当院における 未受診妊婦の現状 新宿区保健所 保健センター 福祉事務所 検討会の開催

検討事項 未受診妊婦 未受診妊婦の分娩後,医療従事者は 行政機関の担当者と面談を要し, 少なからず負担になっている. 婚姻状況 経済状況 生活保護法  生活保護 児童福祉法  入院助産制度  乳児院  母子生活支援施設 売春防止法  婦人保護施設 女性相談センター  婚姻状況 経済状況 生活拠点 養育意思 未受診妊婦 未受診妊婦の分娩後,医療従事者は 行政機関の担当者と面談を要し, 少なからず負担になっている.

未受診妊婦 福祉事務所と 医療機関の連携 福祉事務所 婚姻状況 経済状況 生活拠点 養育意思 生活保護法 生活保護 児童福祉法 入院助産制度  生活保護 児童福祉法  入院助産制度  乳児院  母子生活支援施設 売春防止法  婦人保護施設 女性相談センター  婚姻状況 経済状況 生活拠点 養育意思 未受診妊婦 福祉事務所と 医療機関の連携 福祉事務所

妊婦自身が社会保障制度に アクセスできる支援 未受診妊婦 支援 支援 妊娠 妊娠届 (住所地の市区村長) 母子健康手帳 妊婦健康診査 分娩 受診票 未受診妊婦 妊婦自身が社会保障制度に アクセスできる支援

妊娠・出産に関する支援の情報提供 連携 妊娠 福祉事務所 医療機関 都心のクリニックを1度だけ受診 →リーフレット配布による情報提供 妊婦自ら相談 連携 妊娠 福祉事務所 医療機関 妊娠・出産に関する支援の情報提供    都心のクリニックを1度だけ受診  →リーフレット配布による情報提供

リーフレットの記載項目 相談内容の秘密は守られる ・「妊婦健診を受診しましょう.」 - ‘様々な理由や背景’で受診できない.  - ‘様々な理由や背景’で受診できない. ・「福祉事務所へ相談しましょう.」  - 福祉事務所とは?  - 所在地は?  - 連絡先は? 相談内容の秘密は守られる 躊躇なく相談できるような情報提供

あなたの秘密は、必ず守ります。 ★出産を迷っている方★ (相談できる相手がいない方・お金のことなどで困っている方など)  お住まいの市区町村の女性相談員(「福祉事務所」というところにいます)に相談しましょう。  生活のこと、お産の費用のこと、妊娠中をすごす家のことなど、ご家族に相談できないことでも、今あなたが困っていることを一緒に考えて、解決するお手伝いをします。 新宿区内で暮らしている方は、下記へご相談ください。  新宿区役所代表電話 3209-1111  「女性相談員をお願いします」といってください。 あなたの秘密は、必ず守ります。

名刺サイズ

    【表面】                 【裏面】 2010年6月から新宿区内の38施設で配布中

小括 ・新宿区保健所との検討会議 → 未受診妊婦の現状を共通認識 → 新宿区における連携の窓口: 福祉事務所   → 未受診妊婦の現状を共通認識   → 新宿区における連携の窓口: 福祉事務所   → 福祉事務所への相談を促すリーフレット作成   → 都心の生活環境を考慮した対応策

わが国の未受診妊婦 総分娩件数の0.2~0.5% 平成20年度厚生労働省科学研究費補助金 「わが国における新しい妊婦健診体制構築のための研究」 主任研究者: 松田義雄教授

児童虐待による死亡 26 13 28 心中以外の虐待による死亡事例: 67人 0歳児 1歳以上 生後1ヶ月未満 26    13 28 0歳児          1歳以上    生後1ヶ月未満 心中以外の虐待による死亡事例: 67人 (人) 主な加害者 実母 妊娠期・周産期の主な問題点 妊婦健診未受診 望まない妊娠 母子健康手帳の未発行 (2008年4月~2009年3月) 社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会 心中以外の虐待による死亡事例: 67人

未受診妊婦への対応策・継続的支援 次世代の適切な 養育環境の確保 安全な妊娠・出産 児童虐待予防 妊娠期から予防

まとめ ・地域の特性に応じた医療機関と行政機関の 連携が重要である. ・連携のみでは,未受診妊婦の背景にある すべての問題点の解決は困難であると思われた. ・妊婦自身が出産・育児に向けた生活環境を整備し, 妊婦健診の重要性を認識した上で,連携による 支援が重要である. ・分娩後も,生活基盤の確保,避妊指導を含めた 継続的支援が望まれる.

地域社会 教育 妊娠 受診 社会的 家庭的 経済的 未受診の背景 福祉事務所 分かりやすく,確実に 支援にアクセスできる情報提供 妊娠                  受診    社会的 家庭的 経済的 未受診の背景 福祉事務所 分かりやすく,確実に 支援にアクセスできる情報提供   市販妊娠検査薬,生理用品   携帯電話コンテンツ   美容院,ネイルサロン   ネットカッフェなど

結語 医療機関と行政機関の連携を更に図るとともに, 家庭,学校,地域社会とも連携し,未受診妊婦を 減少させるために,今後も検討を続けていきたい.

謝辞 発表の機会をお与え下さった第51回日本母性衛生学会 会長牧野田知教授,座長の労をお執りいただいた 松田義雄教授,石川紀子先生に深謝いたします.