北海道大学北方生物圏フィールド科学センター

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北海道大学北方生物圏フィールド科学センター えりもゼニガタアザラシ対策 現地報告会 ①北大その他 ②東京農大、環境省 2015年3月19日 北海道大学大学院水産科学研究院 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 水総研センタ―北海道区水産研究所 東京農業大学

人間活動 生態系 サケ 人 アザラシ 経済的リスク 絶滅リスク 気候変動 資源の減少 (局所的に)増加傾向 競合 漁獲 捕食 孵化放流事業 地域経済への負荷 絶滅危惧種 人 漁業被害 アザラシ 混獲 ※人間とゼニガタアザラシはともにサケ資源を利用するという点で競合している。したがって,サケ資源の減少は人間においては経済的影響を及ぼし,ゼニガタアザラシにおいては種の存続という点で負の影響をおよぼす。一方,ゼニガタアザラシは人間の漁業活動に接触することで被害を与えると同時に混獲という形で自らも被害を被る。 したがって,漁業活動へのゼニガタアザラシの接触は,人間においては経済的リスク,ゼニガタアザラシにおいては絶滅リスクの増大を招く。そのため,サケ資源の保全だけでなくゼニガタアザラシの漁業活動への接触を低減させることは,人間とゼニガタアザラシ双方の存続につながる。また,こうした漁業被害を除けば,ツーリズムの要素としてゼニガタアザラシは有益であり,人間の経済活動の一助ともなる。これらのことから,アザラシの絶滅リスクと人間活動における経済的リスクの双方を最小限でバランスさせることが結果的に持続可能な漁業の実現につながると考えられる。 この問題を解決するため,本研究ではゼニガタアザラシの個体数管理を行うためのモデル構築を行うこと,そして漁業被害軽減のための対策を提示することを最終目標とする。 このためには,個体群動態モデルの構築とゼニガタアザラシの絶滅リスクを回避できるような個体数管理が不可欠である。また,モデル構築のためのパラメータを確定するために,地域個体群の構造解明と健康モニタリングが必要となる. 沿岸海洋生態系の保全(環境収容力) ツーリズム 経済的リスク 絶滅リスク 保護と管理 (個体数管理・被害防除)

襟裳岬における魚類調査 計6回、12網の操業で魚類261kgを漁獲 優占種はいずれも未利用種 商業種は殆ど分布せず サブ② 鰭脚類による漁業被害と資源動態の関連評価 襟裳岬における魚類調査 計6回、12網の操業で魚類261kgを漁獲 優占種はいずれも未利用種 商業種は殆ど分布せず 調査海域は過去20年間操業行われず:漁獲でなくゼニガタ捕食圧の影響? 20m N.D. No fish caught 40m

襟裳岬ゼニガタアザラシによる推計年間捕食量 サブ② 鰭脚類による漁業被害と資源動態の関連評価 襟裳岬ゼニガタアザラシによる推計年間捕食量 •年間の消費量を推計 •タコ類(ミズダコ+ヤナギダコ)が最多い •タコ捕食量は漁獲量の17% •胃内容物を調べた結果によるため、胃中では見つかり難いサケはもっと多く食べられているかもしれない •上陸場近くには居なかった魚が多く食べられている        ↓ •上陸場周辺ではすでに食べ尽くされている可能性も(カジカ以外)

衛星発信器による追跡 サブ③北大FSC 採餌行動を解明し,被害軽減に役立てる 飼育および野生環境下における個体の採餌行動の解明 ー 140822-1 ー 140904-1 ー 140905-1 ー 140906-1

音響発信器の結果 2014/11/4 EZ140822-2(●) サブ③ 飼育および野生環境下における個体の採餌行動の解明 サブ③  飼育および野生環境下における個体の採餌行動の解明 音響発信器の結果 2014/11/4 EZ140822-2(●) ●:網をGPSで計測した場所 □:受信機設置場所 17:10 網から出る 17:17 受信終わり 17:00 網に接近 沖から沖下網に近づき,中だまりの手前から入ってしばらく滞在した後,岸側に抜けて行った 16:33 受信され始め

ヒゲを分析して、餌を推定する 夏から秋にかけて,低い値の餌(サケかスルメイカ)を食べていた? EZ1305 δ13C δ15N サブ③  飼育および野生環境下における個体の採餌行動の解明 ヒゲを分析して、餌を推定する EZ1305 2013.6.29 ヒゲ採取 δ13C δ15N ヒゲの根元からの長さ(cm) 春 冬 秋 夏 春 冬 夏から秋にかけて,低い値の餌(サケかスルメイカ)を食べていた?

試験網構造図 北大水産 ゼニガタアザラシの混獲・漁業被害軽減に向けた防除網試験 遮断網: アザラシと漁獲物(サケ)を分離することを目的とする。 スリット: アザラシが侵入した後、戻りにくくする。

時刻とサケの観測個体数(トロールカメラ):8月 撮影不能時刻 撮影不能時刻 8/21~8/22のトロールカメラによるサケの観測個体数 8/24~8/25のトロールカメラによるサケの観測個体数 サケは日中,時刻に関わらず入網している トロールカメラにより撮影されたアザラシ(8/24, 17:45,中溜り内) 群れで泳ぐサケ

DIDSON(音響カメラ):8月 低周波モード:画質低,撮影範囲大 高周波モード:画質高,撮影範囲狭 低周波モード 低周波モード  撮影記録例:個体サイズ 約1.2m カメラは縦置き→画像は箱網の断面 右側の縦方向の線は箱網の脇網部,左側がアザラシ

DIDSON(音響カメラ):8月 高周波モード:サケを追うアザラシの様子

定置網内のアザラシの遊泳速度と体サイズ 遊泳速度 アザラシの遊泳速度は日没前後に大きい:最大2m/s以上 網に入るアザラシのサイズは60~200cm弱 100~150cmが多い 体長 時刻と網に入るアザラシの体長に関連性なしい

試験網と対照網の漁獲量・食害量の比較:11月 試験網でも漁獲量は特に減少しない

汎用水中カメラ(GoPro)による金庫入口の観測:11月 キンコ内から昇り網端口方向を撮影 27 18 16.5 3.5 10 8 1.5 撮影記録の一例:サケの群れの通過

16.0 サケのスリットに対する忌避行動:11月 平均忌避率(%) 11/5 6:54 13:12 87 4 4.4 14:13 15:01 日付 開始 終了 通過 回避 回避率 (%) 11/5 6:54 13:12 87 4 4.4 14:13 15:01     - 11/6 6:27 8:20 11/7 7:02 11:20 1 0.0 11/8 6:36 7:50 11/11 6:46 8:07 50.0 11/12 6:39 11:00 2 11/15 7:08 13:28 32 13 28.9 11/17 6:48 11:07 11/18 6:55 13:15 11 8 42.1 合計 137 26 16.0 平均忌避率(%) ※機械の不備により録画時間に差異あり

まとめ 仕切り網については,一定の効果 操業上の負担増加→改善が必要 カメラの観測結果より, アザラシの定置網内への侵入は日中午後日没前から始まり,  夜間箱網内で活動 侵入しているアザラシの体長範囲は60~200cmと幅広い サケは日中は時刻に関わらず、定置網内へ入網              ↓ サケの入網後にアザラシが網内に侵入,夜間にかけて捕食 今後の計画:スリット(格子)のみによるアザラシ防除 スリット(格子網)に対するサケの忌避率は平均16%(11月試験)   →格子サイズおよびロープ直径の縮小と材質の検討