DECIGO ワークショップ (2007年4月18日) 始原星の質量、形成率、連星度 大向一行 (国立天文台 理論研究部)
目次 初代星の質量 超大質量星の形成条件、形成率 それらは連星になるのか?
CDMシナリオでの初代天体形成 小天体が最初に形成 階層的構造形成 星形成が起こる条件 小天体が最初に形成 星形成が起こる条件 Virial化後、さらに収縮して星になるには輻射冷却が必要 初代天体 (3sの場合) z~30, M~106Msun, Tvir~2000K H2輻射により冷却 Tegmark et al. 1996
始原ガスの輻射過程 原子冷却はT>104Kでのみ有効 それ以下では, H2による冷却が重要 始原ガスの輻射冷却率 Barkana & Loeb 2001
Simulating the formation of first objects ΛCDMモデル 密度揺らぎから初代天体の形成までシミュレーション Yoshida, Abel, Hernquist & Sugiyama (2003) 600h-1kpc 初代天体
初代天体の分裂過程 ~1000Msun 初代天体の分裂スケール 分裂片(高密度コア) =「初代星のたまご」 Bromm et al. 2001
熱進化と分裂質量の関係 (Schneider, Ferrara, Natarayan, & K.O. 2002; Larson 2005) γ=dlog p/dlogρ g > 臨界g だと、収縮は止まる。 球:臨界γ=4/3 シート:臨界γ= 0 フィラメント:臨界γ= 1 収縮の初期は複雑な形状をしているが、分裂片の生成のまえにはフィラメント状をしている。 大雑把には、 γ<1である間は分裂、γ>1になると分裂しない。 ~1000Msun
星形成コア収縮期の 熱進化と分裂質量 始原ガス(Z=0) H2がLTEに達するとき(n=104cm-3)で温度最小 現在の星間ガス(Z=Zsun) ダストとガスの熱的結合時(n=105cm-3)に温度最小 ~103Msun ~1Msun 温度最小時のジーンズ質量が分裂の典型的な質量に対応する (Bromm, Coppi, & Larson 1999; Larson 2005)
Pop I と Pop III 星形成の比較 Pop I コア Pop III コア コア質量: ~1Msun 降着率: 10-6Msun/yr ダストあり(高opacity) Pop III コア コア質量 : ~103Msun 降着率 : 10-3Msun/yr ダストなし(低opacity) 大質量星 (>>10Msun) の形成は困難 降着はとめられずに続き、 超大質量星が形成される (100-1000Msun)
初代星(100-1000Msun)の条件 始原ガス(Z<Zcr)から形成 X 低質量星(~1Msun)が形成 (ただし、低質量星が主かは不明) 外部輻射がない 初期に電離など経験しない X 原子冷却により収縮、 HD冷却で~10Msunの星
異なった重元素量を持つガスの熱進化 1) Dust cooling (thermal emission) : [Z/H]~-5 2 2) H2 formation on dust: [Z/H]~-4 3 3) metal-line cooling: [Z/H]~-3 (外部からの加熱はないとした) K.O., Tsuribe, Schneider & Ferrara (2004)
3つの特徴的な時期 1) 輝線冷却による温度極小 2) ダスト冷却による温度極小 3) 光学的に厚くなることによる断熱収縮の開始 line-induced 2) ダスト冷却による温度極小 dust-induced 3) 光学的に厚くなることによる断熱収縮の開始 opacity-limit
どれくらいのダスト量で分裂は可能か? 重元素(ダスト)量が Z~10-6Zsunでは、熱的進化は始原ガスの場合と変わらず、分裂は起こらない。 Zcr ~ 10-6-10-5Zsun とはいえ、初期にそれなりに歪んだコアが必要で、頻度は不明である。 また、周囲のガスの降着によりさらに太るかもしれない。 Tsuribe & K.O. (2006)
第二世代の始原星 あるいは種族II.5星 始原ガスからは大質量星しかできないのか? 始原組成でも、一旦電離を経験したガスからは、HD冷却により、小さめ(~10Msun)の星ができる。 具体例:構造形成・SNなどのショック、relic HII領域など 初期のH2 (1) y(H2)=10-6 電離せず (2) y(H2)=10-3 電離したガス
背景輻射が無視できるには? fx(星の中で燃える割合)x(解放されるエネルギーの割合) x(mpc2/hn) =1 バリオンのうち割合fが星になったときに、全バリオン数と星からのUV光子数が等しくなるとする。 fx(星の中で燃える割合)x(解放されるエネルギーの割合) x(mpc2/hn) =1 ~0.1 ~0.01 ~108 f~10-5 clumping(再結合)の効果で x ~10 f=10-5 – 10-4 これはちょうど、H2冷却する(~105-106Msun)な3σ揺らぎ中で、数100Msunな星が1つ形成される場合に対応している(cf. Madau & Rees 2001)。
始原星の連星形成 初期の回転パラメータ β=(回転)/(重力エネルギー)が 10-5以上では原始星形成時に分裂 Machida, K.O., Matsumoto, Inutsuka, in prep. シミュレーションの最終状態 初期の回転パラメータ β=(回転)/(重力エネルギー)が 10-5以上では原始星形成時に分裂 PopIIIコアでは、β~10-3なので、連星形成が期待される。
まとめ 星の典型的な質量 初代星の形成率 連星形成 初代星は超大質量(100-1000Msun) バリオンのうちf=10-5-10-4が初代星 連星形成 回転があると可能