特論B 細胞の生物学 第3回 タンパク質の形と働き 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.

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序 論 生化学とは 生化学はbiochemistryという名で表したように簡単にいえば生命の化学である。ギリシャ語ではbiosは生命という意味である。つまり生化学は化学的理論と技術および物理学、免疫学の原理と方法を応用し、生体における化学構成と化学的変化を研究する学問である。
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特論B 細胞の生物学 第3回 タンパク質の形と働き 和田 勝 東京医科歯科大学教養部

塩基の配列→アミノ酸の配列   読み初めのMetを指定するコドン(AUG)から、終止コドン(UAA, UAG, UGA)まで、順番にアミノ酸をつないでいく。  塩基の配列がアミノ酸の配列に翻訳される。

ここでもう少し詳しく、、 次のサイトが参考になる。  次のサイトが参考になる。 http://www.callutheran.edu/Academic_Programs/Departments/BioDev/omm/ribosome/ribosome.htm http://pubs.acs.org/cen/coverstory/85/8508cover.html

ペプチド結合がリボソームで、、 H R1 O H-N+-C-C H H O- H R2 O H-N+-C-C H H O- + H2O H R1 O R2 O H-N+-C- C-N- C-C H H H O- ペプチド結合

アミノ酸 R NH2-C-COOH H H R O H-N+-C-C H H O- アミノ酸の構造式 アミノ酸の構造式 (中性水溶液中)

アミノ酸の種類 Asp D Ala A Glu E Gly G Arg R Val V Lys K Leu L His H Ile I アスパラギン酸 Asp D 負電荷 アラニン Ala A 非極性 グルタミン酸 Glu E グリシン Gly G アルギニン Arg R 正電荷 バリン Val V リシン Lys K ロイシン Leu L ヒスチジン His H イソロイシン Ile I アスパラギン Asn N 極性 プロリン Pro P グルタミン Gln Q フェニルアラニン Phe F セリン Ser S メチオニン Met M トレオニン Thr T トリプトファン Trp W チロシン Tyr Y システイン Cys C

ポリペプチド アミノ末端(N末端) カルボキシル末端(C末端)

タンパク質の一次構造 アミノ酸の配列が決まると、タンパク質の性質はおのずと決まる。 アミノ酸の配列のことを、タンパク質の一次構造(primary structure)という。 アミノ末端側を左にして順番に書き、番号を付ける。

タンパク質の一次構造 たとえば卵白リゾチームの一次構造は次のとおりである。 1 2    3    4    5    6    7    8    9   10  11 12   13 14  15 1 Lys Val Phe Gly Arg Cys Glu Leu Ala Ala Ala Met Lys Arg His 15 16 Gly Leu Asp Asn Tyr Arg Gly Tyr Ser Leu Gly Asn Trp Val Cys 30 31 Ala Ala Lys Phe Glu Ser Asn Phe Asn Thr Gln Ala Thr Asn Arg 45 46 Asn Thr Asp Gly Ser Thr Asp Tyr Gly Ile Leu Gln Ile Asn Ser 60 61 Arg Trp Trp Cys Asn Asp Gly Arg Thr Pro Gly Ser Arg Asn Leu 75 76 Cys Asn Ile Pro Cys Ser Ala Leu Leu Ser Ser Asp Ile Thr Ala 90 91 Ser Val Asn Cys Ala Lys Lys Ile Val Ser Asp Gly Asn Gly Met 105 106 Asn Ala Trp Val Ala Trp Arg Asn Arg Cys Lys Gly Thr Asp Val 120  121 Gln Ala Trp Ile Arg Gly Cys Arg Leu

タンパク質の二次構造 二次構造(secondary structure)には、2種類ある αヘリックス(α-helix) βシート(β-sheet) 逆平行βシート 平行βシート

αへリックス Ball and stick模型

αへリックス リボン模型

βシート Ball and stick模型

βシート リボン模型

タンパク質のドメイン αヘリックスやβシートなどの二次構造が組み合わせって、球状となった構造単位があることがわかってきた。 大きなタンパク質を構築するモジュール単位で、これをドメインと呼ぶ。

タンパク質の三次構造 サイトゾール中では、側鎖の性質のために決まった立体構造(conformation)をとる。

タンパク質の四次構造 一本のポリペプチド鎖を一つの単位として、これが複数組み合わさったタンパク質がある。これを四次構造という。 たとえばヘモグロビンはα鎖2本とβ鎖2本の四量体である。  α2β2

二つの合成経路

分泌性タンパク質の合成 先頭にシグナルペプチドが付加している。膜タンパク質の場合も同じ。

細胞内のソーティング リボソーム 細胞膜 核 ミトコンドリア 葉緑体 ペルオキシゾーム 次のスライドに模式図

リボソーム形成には、、、 1)核小体で転写された rRNA 2)サイトゾールで合成されたタンパク質が核へ

分泌タンパク質の一次構造 翻訳直後の、卵白リゾチームの一次構造は次のとおり     1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 1 Met Arg Ser Leu Leu Ile Leu Val Leu Cys Phe Leu Pro Leu Ala 15 16 Ala Leu Gly Lys Val Phe Gly Arg Cys Glu Leu Ala Ala Ala Met 30 31 Lys Arg His Gly Leu Asp Asn Tyr Arg Gly Tyr Ser Leu Gly Asn 45 46 Trp Val Cys Ala Ala Lys Phe Glu Ser Asn Phe Asn Thr Gln Ala 60 61 Thr Asn Arg Asn Thr Asp Gly Ser Thr Asp Tyr Gly Ile Leu Gln 75 76 Ile Asn Ser Arg Trp Trp Cys Asn Asp Gly Arg Thr Pro Gly Ser 90 91 Arg Asn Leu Cys Asn Ile Pro Cys Ser Ala Leu Leu Ser Ser Asp 105 106 Ile Thr Ala Ser Val Asn Cys Ala Lys Lys Ile Val Ser Asp Gly 120 121 Asn Gly Met Asn Ala Trp Val Ala Trp Arg Asn Arg Cys Lys Gly 135 136 Thr Asp Val Gln Ala Trp Ile Arg Gly Cys Arg Leu マゼンダ色がシグナルペプチド

卵白リゾチーム リゾチーム(lysozyme)は、細菌の細胞壁を構成するN-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミン間の結合を切断する。 1 2    3    4    5    6    7    8    9   10  11 12   13 14  15 1 Lys Val Phe Gly Arg Cys Glu Leu Ala Ala Ala Met Lys Arg His 15 16 Gly Leu Asp Asn Tyr Arg Gly Tyr Ser Leu Gly Asn Trp Val Cys 30 31 Ala Ala Lys Phe Glu Ser Asn Phe Asn Thr Gln Ala Thr Asn Arg 45 46 Asn Thr Asp Gly Ser Thr Asp Tyr Gly Ile Leu Gln Ile Asn Ser 60 61 Arg Trp Trp Cys Asn Asp Gly Arg Thr Pro Gly Ser Arg Asn Leu 75 76 Cys Asn Ile Pro Cys Ser Ala Leu Leu Ser Ser Asp Ile Thr Ala 90 91 Ser Val Asn Cys Ala Lys Lys Ile Val Ser Asp Gly Asn Gly Met 105 106 Asn Ala Trp Val Ala Trp Arg Asn Arg Cys Lys Gly Thr Asp Val 120  121 Gln Ala Trp Ile Arg Gly Cys Arg Leu リゾチーム(lysozyme)は、細菌の細胞壁を構成するN-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミン間の結合を切断する。

ヒトリゾチーム ヒトでは、涙のなかに含まれていて殺菌に寄与する。他に免疫にも関与する 1 2    3    4    5    6    7    8    9   10  11 12   13 14  15 1 Lys Val Phe Glu Arg Cys Glu Leu Ala Arg Thr Leu Lys Arg Leu 15 16 Gly Met Asp Gly Tyr Arg Gly Ile Ser Leu Ala Asn Trp Met Cys 30 31 Leu Ala Lys Trp Glu Ser Gly Tyr Asn Thr Arg Ala Thr Asn Tyr 45 46 Asn Ala Gly Asp Arg Ser Thr Asp Tyr Gly Ile Phe Gln Ile Asn 60 61 Ser Arg Tyr Trp Cys Asn Asp Gly Lys Thr Pro Gly Ala Val Asn 75 76 Ala Cys His Leu Ser Cys Ser Ala Leu Leu Gln Asp Asn Ile Ala 90 91 Asp Ala Val Ala Cys Ala Lys Arg Val Val Arg Asp Pro Gln Gly 105 106 Ile Arg Ala Trp Val Ala Trp Arg Asn Arg Cys Gln Asn Arg Asp 120 121 Val Arg Gln Tyr Val Gln Gly Cys Gly Val ヒトでは、涙のなかに含まれていて殺菌に寄与する。他に免疫にも関与する

リゾチームの比較 活性部位 E:グルタミン酸、D:アスパラギン酸 SS結合:24-145(146), 48-133(134) 1 11 21 31 41 eggwhite MRSLLILVLC FLPLAALGKV FGRCELAAAM KRHGLDNYRG YSLGNWVCAA human MKALIVLGLV LLSVTVQGKV FERCELARTL KRLGMDGYRG ISLANWMCLA 51 61 71 81 91 eggwhite KFESNFNTQA TNRN-TDGST DYGILQINSR WWCNDGRTPG SRNLCNIPCS Human KWESGYNTRA TNYNAGDRST DYGIFQINSR YWCNDGKTPG AVNACHLSCS 101 111 121 131 141 eggwhite ALLSSDITAS VNCAKKIVSD GNGMNAWVAW RNRCKGTDVQ AWIRGCRL human ALLQDNIADA VACAKRVVRD PQGIRAWVAW RNRCQNRDVR QYVQGCGV 活性部位 E:グルタミン酸、D:アスパラギン酸 SS結合:24-145(146), 48-133(134) 82(83)-98(99), 94(95)-112(113)

ヒトリゾチーム SS結合が4本あって、三次構造に寄与している。 1 2    3    4    5    6    7    8    9   10  11 12   13 14  15 1 Lys Val Phe Glu Arg Cys Glu Leu Ala Arg Thr Leu Lys Arg Leu 15 16 Gly Met Asp Gly Tyr Arg Gly Ile Ser Leu Ala Asn Trp Met Cys 30 31 Leu Ala Lys Trp Glu Ser Gly Tyr Asn Thr Arg Ala Thr Asn Tyr 45 46 Asn Ala Gly Asp Arg Ser Thr Asp Tyr Gly Ile Phe Gln Ile Asn 60 61 Ser Arg Tyr Trp Cys Asn Asp Gly Lys Thr Pro Gly Ala Val Asn 75 76 Ala Cys His Leu Ser Cys Ser Ala Leu Leu Gln Asp Asn Ile Ala 90 91 Asp Ala Val Ala Cys Ala Lys Arg Val Val Arg Asp Pro Gln Gly 105 106 Ile Arg Ala Trp Val Ala Trp Arg Asn Arg Cys Gln Asn Arg Asp 120 121 Val Arg Gln Tyr Val Gln Gly Cys Gly Val SS結合が4本あって、三次構造に寄与している。

ヒトリゾチーム

ヒトリゾチーム

酵素タンパク質 酵素(enzyme)は触媒作用を持つタンパク質である。酵素自身は変化せず、繰り返して反応を触媒する。 酵素が働きかける相手を、基質という。酵素は特定の基質にたいしてのみ働きかける。これを基質特異性(substrate specificity)という。

リゾチームの作用機序 N-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸 のβ1-4 グリコシド結合を切る(丸で囲んである)

リゾチームの作用機序

酵素タンパク質 酵素タンパク質として、リゾチームを取り上げて、三次構造(立体構造)を取ることで、基質結合部位と活性部位が構成され、酵素としての働きが生まれることを学んだ。

酵素タンパク質 したがって、立体構造の保持が妨げられると、酵素として機能できなくなる。 これが、酵素の活性に最適温度、最適pHが存在する理由である。

プロテアーゼ ペプチド結合は簡単には切れない。化学的には、酸を加えて熱を加える必要がある。 生体内では、ほぼ中性、体温の条件下で、プロテアーゼと総称される酵素が ペプチド結合を切断する。

プロテアーゼ H R1 O R2 O H-N+-C- C-N- C-C H H H O- プロテアーゼ H2O H R2 O

プロテアーゼ タンパク質 ペプシン ポリペプチド断片 トリプシン キモトリプシン より小さなポリペプチド アミノペプチダーゼ カルボキシルペプチ           ダーゼ アミノ酸

キモトリプシン キモトリプシンは、セリンプロテアーゼの一つで、膵臓から不活性型のキモトリプシノーゲンとして十二指腸へ分泌される ウシのキモトリプシンの一次構造 10 20 30 40 50 60 1 CGVPAIQPVL SGLSRIVNGE EAVPGSWPWQ VSLQDKTGFH FCGGSLINEN WVVTAAHCGV 60 61 TTSDVVVAGE FDQGSSSEKI QKLKIAKVFK NSKYNSLTIN NDITLLKLST AASFSQTVSA 120 121 VCLPSASDDF AAGTTCVTTG WGLTRYTNAN TPDRLQQASL PLLSNTNCKK YWGTKIKDAM 180 181 ICAGASGVSS CMGDSGGPLV CKKNGAWTLV GIVSWGSSTC STSTPGVYAR VTALVNWVQQ 240 241 TLAAN

キモトリプシン キモトリプシノーゲンは、十二指腸でトリプシンによって活性型のキモトリプシンとなる。 キモトリプシンは、Tyr、Trp、PheのC末端側でペプチド結合を切る。 活性中心は、Asp102、His57、Ser195で構成される。

トリプシン トリプシンも、セリンプロテアーゼの一つで、膵臓から不活性型のトリプシノーゲンとして十二指腸へ分泌される トリプシノーゲンは、十二指腸でエンテロキナーゼによって活性型のトリプシンとなる。トリプシンも、トリプシノーゲンを活性型のトリプシンにする。

トリプシン トリプシンは、塩基性アミノ酸Arg、LysのC末端側でペプチド結合を切る。 活性中心は、キモトリプシンと同じ。 トリプシンとキモトリプシンは、活性中心も分子の形も良く似ている(serine protease famliy)が、基質特異性が異なる。

離れたアミノ酸が近づく

キモトリプシン

電子の流れ このように、酵素の働きは電子が基質から酵素タンパク質の側鎖へ流れることにより実現されることが多い。 そのためには、適切な位置決め(立体的な相互位置関係)が必要なのである。