英米法 最近の連邦最高裁判決から見るアメリカ法の動向 #08 Williamson v. Mazda Motor 他

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不法行為法の効果 1.序 2.損害賠償の方法 3.損害賠償の主体と複数者の関与 4.損害賠償額の算定 5.損害賠償額の調整 6.損害賠償請求権の特殊問題.
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英米法 最近の連邦最高裁判決から見るアメリカ法の動向 #08 Williamson v. Mazda Motor 他 2012年12月20日 北海道大学大学院法学政治学研究科(法科大学院・法学政治学専攻) 会沢 恒

1月8日(火)5講目× 1月15日(火)5講目× 1月21日(月)5講目× 1月22日(火)5講目

Williamson v. Mazda Motor of America, Inc., 131 S. Ct. 1131 (2011) Bruesewitz v. Wyeth LLC, 131 S. Ct. 1068 (2011) PLIVA, Inc. v. Mensing, 131 S. Ct. 2567 (2011) 不法行為法> 製造物責任 連邦制> 専占 行政法> 製品安全規制 Code Statute; statutory warranty

→〈不法行為改革tort reform〉運動へ 「訴訟社会」と〈不法行為改革〉 20世紀後半の民事責任の拡大 製造物責任 Warranty、negligence構成から厳格責任strict liabilityへ Greenman v. Yuba Power Products, Inc., 377 P.2d 897 (1963) →第二次不法行為法リステイトメントRestatement (Second) of Torts §402A 医療過誤 「保険危機」? →〈不法行為改革tort reform〉運動へ

推進者=ビジネス界 「草の根」運動(の外観) 「常識」の強調 道徳性の注入 〈不法行為改革〉の推進者 Manhattan Inst. for Pol’y Research Am. Tort Reform Assoc. (ATRA) 「草の根」運動(の外観) 「常識」の強調 濫訴 詐欺的・無責任な原告 欲深な原告側弁護士;弁護士数 「訴訟の爆発」 イノベーションの萎縮、製品・サービスの不提供・価格上昇 経済活動への負荷 道徳性の注入

社会科学的研究 原告側弁護士層 ポジティブなメッセージの不足 〈不法行為改革〉の批判者 特に、統計学的手法の利用 学術的研究としての頑健さ 政治的言説としての影響力 原告側弁護士層 ポジティブなメッセージの不足

「アメリカとの契約Contract with America」(1994) 連邦立法部・執行部 「アメリカとの契約Contract with America」(1994) The “Common Sense” Legal Reform Act vetoed by then-President Clinton 限定的成功 2005年クラス・アクション公正法 * -> “Silent tort reform” by federal admin. agencies

「改革派知事」としてのGeorge W. Bush 州立法部 主戦場 「改革派知事」としてのGeorge W. Bush “More than 45 states have enacted portions of ATRA's legislative agenda” since its foundation 懲罰的賠償 非経済的利益の賠償;慰謝料 連帯責任joint and several liability collateral source rule

懲罰的賠償punitive damages 州レベルの懲罰的賠償「改革」 懲罰的賠償punitive damages 懲罰punishment 抑止deterrence “Punitive damages are skyrocketing.” Are they? 実体面 上限設定 Split-recovery 手続面 証明水準の引き上げ 2段階トライアル

若干の判例法による「改革」 「改革」立法を州憲法違反に 州司法部 -> 州憲法の改正 -> 裁判官選挙の過熱化 1990~99年の候補者の調達した選挙資金:8330万ドル 2000~09年の候補者の調達した選挙資金 :2億0690万ドル

州最高裁裁判官候補者の調達した選挙資金

献金額の内訳:2000~2009年

不法行為法の「連邦化」 憲法による介入 連邦司法部 連邦行政規制による州民事責任法の専占preemption 連邦裁判所の州籍相違管轄権 修正14条デュープロセス条項による懲罰的賠償の規制 BMW of N. Am., Inc. v. Gore, 517 U.S. 559 (1996) State Farm Mut. Auto. Ins. Co. v. Campbell, 538 U.S. 408 (2003) Philip Morris USA v. Williams, 549 U.S. 346 (2007)

U.S. Const. art. VI, cl. 2 This Constitution, and the laws of the United States which shall be made in pursuance thereof; and all treaties made, or which shall be made, under the authority of the United States, shall be the supreme law of the land; and the judges in every state shall be bound thereby, anything in the Constitution or laws of any State to the contrary notwithstanding.

明示的専占express preemption 専占の一般的枠組 議会の意思 明示的専占express preemption 専占条項preemption clause 留保条項saving clause 黙示的専占implied preemption 領域型field preemption 抵触型conflict preemption 「不可能」アプローチ 「目的の挫折」「障害」アプローチ 専占しない方向の推定presumption against preemption?

行政規制=行為態様や製品の品質を定める 不法行為法 両者の関係は? 不法行為法と行政規制 過失→一定の注意義務水準の設定と、その違反の認定 欠陥→一定の品質を満たしていないこと 両者の関係は? 州による行政規制 連邦による行政規制 議会立法 行政規則 -- ブッシュ(子)政権

Geier v. Am. Honda Motor Co., Inc., 529 U.S. 861 (2000) Geier v. Honda Motor:事案 Geier v. Am. Honda Motor Co., Inc., 529 U.S. 861 (2000) 原告は自動車にエアバッグの未装備を欠陥と主張してD.C.裁判所に製造物責任訴訟を提訴 連邦行政規制ではエアバッグの装備は義務づけられていなかった National Traffic Motor Vehicle Safety Act of 1966 →Federal Motor Vehicle Safety Standard 208 (1984) エアバッグその他の受動的拘束装置を1987年モデルには全車両の10%導入することを要求し、以降この割合は引き上げられる。 専占条項preemption clause;留保条項saving clause

Geier v. Honda Motor:法廷意見 明示的専占なし ∵専占条項あるが、留保条項もある 留保条項の存在は、黙示的専占の可能性を排除しない 基準の策定経緯に照らし、専占を肯定 運輸省の政策意図:エアバッグの段階的導入 NOT一律導入

Williamson v. Mazda Motor:事案 Williamson v. Mazda Motor of America, Inc., 131 S. Ct. 1131 (2011) ミニバンのシートベルト 運転席等:3点ベルト 後部座席の通路側座席:腰ベルトでOK カリフォルニア州裁判所に製造物責任訴訟 腰ベルトしかしていなかった乗客が事故で死亡した 欠陥=腰ベルトしかないこと、3点ベルトでないこと

Williamson v. Mazda Motor:判旨 一般論の部分はGeierを踏襲 3点ベルトの安全性の問題→解決済み 利便性 費用対効果 →コモンローの発展を固定するには不十分 大抵の基準策定で考慮→常に最大基準? 連邦政府の意見 →専占否定

連邦食品・医薬品・化粧品法 Federal Food, Drug, and Cosmetic Act 医薬品と医療器具 連邦食品・医薬品・化粧品法 Federal Food, Drug, and Cosmetic Act 連邦食品医薬品局 Food and Drug Administration Riegel v. Medtronic, Inc., 552 U.S. 312 (2008) 医療器具(カテーテル)・専占肯定 ∵特に厳格な認証手続 Wyeth v. Levine, 555 U.S. 555 (2009) 医薬品(警告上の欠陥)・専占否定 製薬会社は添付文書の変更可

Bruesewitz v. Wyeth LLC, 131 S. Ct. 1068 (2011) 3種混合ワクチンの設計上の欠陥 製造上の欠陥 警告上の欠陥 1986年全国児童ワクチン被害法 ワクチン被害者による不法行為訴訟からワクチン市場安定化させるため 無過失補償スキーム →請求裁判所による裁定が出てから選択可 回避不可能な副作用からの免責

ワクチンに関するあらゆる設計上の欠陥の製造物責任訴訟を専占 Bruesewitz v. Wyeth:判旨 ワクチンに関するあらゆる設計上の欠陥の製造物責任訴訟を専占 文言解釈 体系解釈 製造上の欠陥、警告上の欠陥には言及あり 補償スキームへの出資

PLIVA v. Mensing:事案と法廷意見 PLIVA, Inc. v. Mensing, 131 S. Ct. 2567 (2011) 長期使用による副作用が明らかになってきた医薬品 ジェネリック医薬品の使用者が警告上の欠陥を主張して出訴 ジェネリック医薬品の簡易な承認手続 成分がブランド薬と同じこと ラベル・効能書きが同じこと ラベル・効能書きの変更手段→FDAは否定 →ジェネリック医薬品の製造業者は添付文書を勝手に変更できない →専占肯定

ジェネリック業者はラベルの変更のためにFDAを説得できる PLIVA v. Mensing:反対意見 ジェネリック業者はラベルの変更のためにFDAを説得できる 「不可能」になるのはFDAが実際に変更を拒絶したら 患者はブランド薬かジェネリックか分からない

各規制のスキームの特性に依拠した細かい判断 議会による意図の明示の要求 分析と評価 各規制のスキームの特性に依拠した細かい判断 議会による意図の明示の要求 行政庁限りでは足りない Institutional choice 被害救済? 損害填補は不法行為法の目的か? だが;イデオロギー的捻れ さらなるフォーラムのシフト

次回 S. Union Co. v. U.S.