情報文化における インターネットの意味と方向

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情報文化における インターネットの意味と方向 第5回情報文化学会全国大会 1997年11月8日(土) 東京工業大学 明治大学 阪井和男 sakai@isc.meiji.ac.jp http://www.isc.meiji.ac.jp/~sakai/ res/academy/jics/jics.html

内容 1. インターネット社会の意味 2. ホームページによるコラボレーションを目指して 3. 社会システムとしての成立要件 まとめ インターネットがもたらす社会とは? 2. ホームページによるコラボレーションを目指して イントラネットによるコラボレーション? 3. 社会システムとしての成立要件 協調的な社会を実現する要件とは? まとめ 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

↓ 進化 1. インターネット社会の意味 インターネット=高速道路・道路網? インターネット=神経系(生物)! インターネット社会の意味! 情報スーパーハイウェイ構想(ゴア副大統領) インターネット=神経系(生物)! 神経系のない「生物」 ↓ 進化 神経系のある「生物」 インターネット社会の意味! 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

工業社会の発展 1.1 インターネットは道路網?(Yes) Yes! (1) 情報スーパーハイウェイ構想 ↓ (2) 利用者の共有設備 ゴア副大統領提唱 アメリカの道路網整備(父親の業績) ↓ 工業社会の発展 (2) 利用者の共有設備 道路はみんなの共有設備 いろんな荷物を運ぶトラックが乗り入れ TCP/IPプロトコル 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

1.2 インターネットは道路網?(No) No! Then (1) インターネットは「物」を運ぶわけではない (2) インターネットが運ぶのは「情報」である Then 「道路網」 = 物流システム 工業社会のインフラ 「インターネット」 = 情報流システム 情報社会のインフラ 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

1.3 生物と社会システム 社会を生物にたとえる アナロジーによる三段論法 社会(インフラ) アナロジー 生物(インフラ)   社会(インフラ)  アナロジー 生物(インフラ) 情報社会(インターネット) ← 神経系(脳・神経) ↑ 工業社会(物流システム) → 循環系(心臓・血管) 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

1.4 物流システム→循環系 工業社会における物流システムの効果 エネルギー消費量/人 工業社会のヒト:生物個体 = 63 : 1 工業社会におけるヒト = 4,274ワット 生物個体としてのヒト = 68ワット (ヒトの標準代謝量) 工業社会のヒト:生物個体 = 63 : 1 一桁大きい消費エネルギー!! 生物的意味? 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

1.5 消費エネルギー激増の生物的意味 消費エネルギー1桁大 進化上の大ジャンプ 循環系なし → 循環系あり e.g. 単細胞生物 →>> 多細胞生物 変温動物  →>> 恒温動物 標準代謝量 vs. 生物サイズ 工業社会におけるヒト = T・レックス(4.3トン) 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

1.6 生物における循環系の意味 酸素・栄養素の吸収・体の隅々へ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ サイズ 吸収 攪拌 サイズ 吸収 攪拌 小 体表 自然拡散 大 肺・消化器 循環系による強制攪拌 循環系の発達→サイズ大→消費エネルギー激増 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

1.7 循環系 → 神経系 大きいだけの「生き物」 → 機敏に動ける「動物」 協調的活動による新しい機能! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 器官 機能 効果・能力 循環系 栄養素の「物流」 サイズ大 神経系 情報の伝達・処理 判断 → 脳 知覚 → 感覚器官 運動 → 筋肉 協調的活動による新しい機能! 「脳」 <ー(別機能)ー>「筋肉」  ┗━━━━━━━━━┛ 神経経路 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

1.8 神経系 → インターネット 神経経路 = インターネット インターネットを活用した結果… 自律的かつ協調的な社会活動 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 器官 効果 情報社会 脳 機敏な判断力 分散協調型の 社会的意思決定 感覚器官 的確な知覚力 地球的規模の 知覚情報共有化 筋肉 すばやい行動力 ? 進化した「生物」! 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

2. ホームページによるコラボレーション インターネットのインパクト ハイパーテキスト ホームページの活用 協調的な活動へ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ タイプ 説明 (a) 宣伝型 一方的なPRパンフレットのイメージ。 (b) 公開型 ドキュメント全文などを積極的に公開。 (c) 共有型 日常的な情報を載せ情報の一元化を。 (d) 協調型 ネットワーク上で協調作業が行える。 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

2.1 ホームページのこれまでの流れ (a) 宣伝型 → (b) 公開型 知らせたい情報 vs. 知りたい情報 利用者のニーズ把握 公開用サーバ vs. 日常作業用マシン リアルタイムな情報の公開 緊密な情報連携の仕組み Webによる情報共有へ PDF (Portable Document Format) 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

2.2 ホームページのこれからの流れ (c) 共有型 → (d) 協調型 情報共有が自然に行えること 共有型の実現を目指そう! 自律した個人・組織が高度に協調している活動 共有型の実現を目指そう! XML (eXtensible Markup Language) Push Technology Java, JavaScript 個人認証システム (Not Fire Wall) 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3. 社会システムとしての成立要件 インフラと機器の普及がもたらすもの 情報社会として成立? 運用のための… 情報の氾濫 協調的な機構を社会システムに 運用のための… システム マナー・ルール 支援体制 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3.1 自動車産業の興隆 (1) インフラの整備 (2) 利活用機器の普及 ↓ ハードの標準化 その結果… 道路網・橋・フェリー トラック・乗合バス・自家用車 ↓ ハードの標準化 その結果… 自動車の氾濫 用事もないのに町の中に自動車があふれる 社会的システムとして成立するわけがない! 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3.2 物流システムの社会的深化 (3) 運用システムの確立 (4) 運用マナー・ルールの確立 (5) 運用支援体制の確立 信号機システム (4) 運用マナー・ルールの確立 運転マナー 交通法規 (5) 運用支援体制の確立 自動車教習所 修理工場・車検工場 緊急時のJAF 物流システム → 人流システム 前提 ┏━━━━━━━━┓ ┃ソフトの標準化 ┃ ┃ ↓ ┃ ┃社会システム ┃ ┃ として確立 ┃ ┗━━━━━━━━┛ 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3.3 物流システムの個人的深化 物流 人流 人の自律的活動を支援 トラック → ライトバン、宅配便 乗合バス → 自家用車 トラック → ライトバン、宅配便 人流 乗合バス → 自家用車 (社会的意義) (個人的意義) 人の自律的活動を支援 生活感覚で納得! 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3.4 情報産業の興隆 (1) インフラの整備 (2) 利活用機器 その結果… 電話・電信網、CATV、インターネット パソコン、ワークステーション、ファミコン ↓ ハードの氾濫 その結果… パソコンの氾濫 情報の氾濫 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3.5 情報システムの社会的深化(その1) (3) 運用システムの確立 (4) 運用マナー・ルールの確立 ネットワーク運用システム・組織 アウトソーシングの切り分け 管理組織の確立 (4) 運用マナー・ルールの確立 情報倫理・知的財産権 情報倫理教育(利用者として・管理者として) 知的財産権のマルチメディア・インターネット対応 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3.6 情報システムの社会的深化(その2) (5) 運用支援体制の確立 エンドユーザ支援 情報システム → エンドユーザシステム ヘルプディスク・FAQ集のデータベース化 エンドユーザコンピューティングのサポート クールな利活用方法の提案 情報システム → エンドユーザシステム 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

↓ 3.7 情報システムの個人的深化 パソコン、ワープロ パソコン、ネットコン、携帯情報端末 情報機器 広義のコミュニケーション環境 人の自律的活動を支援 エンドユーザコンピューティングの実現へ 個人的意義(生活感覚)の認知! 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

3.8 社会システムの成立要件(まとめ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ システム要素 物流システム 情報社会 システム要素 物流システム 情報社会 インフラの整備 高速道路網等 情報スーパーハイウェイ ──────────────────────────── 利活用機器の普及 自動車等 情報機器等 運用システムの確立 信号機等 ネットワーク運用 システム・組織 マナー・ 運転マナー 情報倫理 ルールの確立 交通法規等 知的財産権等 支援体制の確立 自動車教習所・ エンドユーザ支援 車検工場・JAF ヘルプディスク・FAQ集 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

まとめ インターネットは神経系 ホームページも協調型を ハードの普及 → 運用ソフトの標準化 提案: 進化した新生物に匹敵する自律的かつ協調的活動 ホームページも協調型を 共有型 → 協調型 ハードの普及 → 運用ソフトの標準化 運用システムの確立 マナー・ルールの確立 支援体制の確立 提案: 運用ソフト標準化のためのコンソーシアムを Web連携で実現しよう! 1997年11月8日 明治大学 阪井和男

参考文献 「知の技法のための人間・社会・コンピュータ」、大岩幸太郎・阪井和男・二宮智子、弘学出版、1996年、pp. 60-63. 「ゾウの時間 ネズミの時間(サイズの生物学)」、本川達雄、中公新書、No.1087、中央公論社、1992年、第3章・第8章. 1997年11月8日 明治大学 阪井和男