クール・ジャパン ~文化で儲けるとは~ 1066569c 清水良恵
クール・ジャパン(かっこいい日本)とは 2002年、米国ジャーナリストダグラス・マグレイ氏の論文「日本の国民総クール力(Japan’s Gross National Cool)」 「ポップミュージックから家電まで、建築からファッションまで、そしてアニメから料理まで、日本は1980年代の経済パワーが成し遂げた以上の文化パワーを示している」 ダグラス氏:日本の文化はGDPなどの経済指数では測ることのできないソフトパワーを発揮している クールブルタニアの影響も?
なぜ今クール・ジャパンか これまでわが国の経済を牽引してきた製造業の国際競争力は、新興国の攻勢等の要因から急速に失われつつある マンガやアニメといった文化産業は、既に海外で高く評価されており、今後の日本経済の成長を牽引する新しい産業領域としての期待が高まっている ⇒文化産業に対する大きな期待 経済産業省によると、現在の日本のコンテンツ産業の海外売上高は約7千億円で、ここ数年はほぼ横ばいの状態が続いている。アニメや漫画、玩具などのサブカルチャーがアジアなどでブームになった時期もあったが、資金力の乏しい中小のコンテンツ企業が手がけているため、単発で終わることが多かった。 国家戦略としてコンテンツ輸出を拡大している韓国などに押されているという事情もある。韓国は約10年前からコンテンツ産業の振興を掲げ、ドラマや音楽の海外輸出が急伸した。人気ドラマに出演した女優を広告などに使い、韓国製品のイメージ向上につなげた。コンテンツのブランド力が、製品の売り上げを押し上げる効果を生んだ。
経済産業省 クール・ジャパン/クリエイティブ産業政策 世界が共感する「クール・ジャパン」の海外進出促進、クリエイティブ産業の育成や国内外への発信などの施策を業種横断的、政府横断的に推進する。 「クール・ジャパン官民有識者会議」提言に基づいて各種施策をすすめる。
政府が介入する理由 文化産業の担い手はデザイナーなどの個人や中小企業や若者が中心⇒海外に活路を見いだしたくても、資金やノウハウなどの面で独自に進出するのはなかなか難しい 経産省はこうした事業者を掘り起こして海外の事業者と結びつけ、輸出産業として育成。 経済産業省はアニメやファッション、食など海外で人気の高い日本文化「クール・ジャパン」を各国で売り込む新事業を2011年度から本格展開する。酒類や食材を紹介するアンテナショップを現地で期間限定で設置したり、相手国の流通業者と連携したりして普及につなげる。中小企業や職人、クリエーターといった個人が手掛ける製品の輸出を後押しし、20年には13兆円程度の輸出規模を目指す。 経産省は11年度政府予算案などに「クール・ジャパン戦略」として14億円を盛った。具体的には中国へファッションや生活用品を輸出したり、日本方式の地上デジタル放送を採用したブラジルへアニメや家電を売り込んだりするなどの10事業を選び、重点的に力を入れていく。 例えば中国では、まず国内のデザイナーや中小企業などの商品の作り手などを集めた共同事業体を形成。商品をまとめて現地でアンテナショップやインターネット通販などを通じて試行販売する。さらにショッピングモールなどを展開する流通業者と組み、継続的な販売に結び付ける。この仕組みが成功すれば他の地域や分野に応用する。
クール・ジャパン官民有識者会議 クール・ジャパンをビジネスにつなげるという視点から、ものづくり、地域おこし、食、ファッション、デザインなど、現場の第一線で活躍する有識者により、海外展開の具体的な進め方を検討。 ○基本コンセプトの検討、重点分野やターゲット国の絞り込み、地域ごとの戦略を策定し、提言。 ○経済産業大臣はじめ、内閣官房(知的財産戦略推進事務局)、総務省、外務省、文部科学省 (文化庁)、農林水産省、国土交通省(観光庁)の政務三役が参加。事務局は経済産業省。国際標準化、知的財産、クールジャパン、制度整備など横断的に検討 「21世紀日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」「アジア展開における国家戦略プロジェクト」「知的財産・標準化戦略とクール・ジャパンの海外展開」知的財産戦略推進本部クール・ジャパン官民有識者会議クール・ジャパンの産業化、海外市場開拓に向けた戦略の検討成果
クール・ジャパン官民有識者会議提言(2011年5月12日)
クール・ジャパン戦略推進事業 ファッション、食、住まい、地域産品、伝統工芸品、コンテンツ等、日本の優れた商品の海外展開を支援するプロジェクト 広報活動 クリエイティブ・シティの確立 近年こうした取組における国際的都市間競争が進展。 例:香港、シンガポール、ソウル。 「東京をアジアのクリエイティブ・ハブにする」ことを宣言‘2011年11月4日(。下記取組を行う。 世界の才能を呼寄せ、世界で活躍できる人材や企業を育成する。 国内外のクリエイティブ・シティと交流、連携し、国際的な活動の場を確保する。 直島は、現代美術館や民家でのアートプロジェクトにより、人口の100倍の観光客を誘致
コンテンツ産業
コンテンツ産業の可能性 (単位) 兆円 一般に映画・音楽・ゲーム・放送(アニメ)・出版(マンガ)・キャラクターなどの情報の内容に関する産業 2001、2002、2003、2004、2005年 一般に映画・音楽・ゲーム・放送(アニメ)・出版(マンガ)・キャラクターなどの情報の内容に関する産業 出所)PricewaterhouseCoopers”Global Entertainment and Meda Outlook:2006-2010”
コンテンツ産業 現状① 13兆円程度でとどまる (単位) 兆円 2001、2002、2003、2004、2005年 日本のコンテンツ市場は世界第2 位。 1 位アメリカの1/3 の規模、GDP 比でも世界2 位で、国民1 人当たり消費額では4 位 13兆円程度でとどまる 出所)PricewaterhouseCoopers”Global Entertainment and Meda Outlook:2006-2010”
コンテンツ産業 現状② 日本のコンテンツ市場は世界第2位! 海外の収入比率は米国の4分の1! 我が国のコンテンツ産業と世界市場(2004年)
現状の課題 プロモーションが単発に終わってしまい、相乗効果を十分に得られていない 。 プロモーションが単発に終わってしまい、相乗効果を十分に得られていない 。 日本コンテンツの権利料や翻訳費などのコストが高い上、権利関係の処理が煩雑で、活用にあたっての障害となる。 各国事情を踏まえた効果的な露出機会の創出ノウハウやローカライズすべき内容に関する知見などは全般的に不足している。 日本のコンテンツの海外展開が進まない原因は、これまで日本は世界第2位の国内市場規模を有し、国内向けの製作・流通だけでビジネスが完結していたため。企業に対して、海外展開のインセンティブを持たせるために何が出来るか検討すべきではないか
韓国の事例 国家ブランドランキングを15位まで引き上げたい 韓国では、「国家ブランド委員会」を設置して戦略的に文化産業を育成しています。 発端になったが、ブランド力調査機関のアンホルトGMIがまとめた07年の国家ブランド指数(NBI)。 全世界で2万5000人を対象に他国の政府、文化、観光、企業、移民、国民性に関するイメージを調査し、国家ブランド価値の順位を決定しているのですが、韓国の国家ブランド価値は、調査対象となった世界38カ国のうち32位だと判定されたのです。05年の25位(35カ国対象)に比べても7ランクも低下してしまいましたこの結果を受け、イ・ミョンバク大統領は、「国家ブランド委員会」を主宰し、2013年までに国家ブランド順位を15位まで引き上げることを目標として確定したのです韓国 2009年 50か国中33位 2010年50か国中31位 日本
日本の予算の8倍(左) コンテンツ関連予算を6倍に増額(右)
韓国 「韓流」(クール・コリア)のアジア波及に関する4ステップ ①映画やドラマなどの大衆文化の流行 ②その派生商品の販売 (ドラマ観光、DVDなど) ③韓国製品の売上げ増加(家電製品、生活用品など) ④韓国の国としてのイメージアップ 放送映像分野、ゲーム関連分野、エンターテイメント・コンテンツ分野など、それまで別々に運営されていた振興組合を統合、コンテンツ産業総括の振興機関として 産業政策・戦略の策定、産業振興、人材育成など。 文化国家としてのイメージ向上は文化や産業の国際競争力の底上げになる。文化産業を次世代の経済成長の原動力にしたいと考えている
日本の問題:ブランド力ではない
政策提言 方向性 必ずしも“Japan”を前面に押し出さず、無国籍化するやり方。 今あるものを海外に出すだけでなく、海外のものを取り込んで、新たなものを創りだすという目線も必要では。 日本文化の単純な輸出ではない。日本はコラボレーション、相手に合わせることが得意。海外の国が日本の何を魅力的に感じているかを知り、合わせていくことを考えたほうがよい
政策提言 具体策 海外のクリエーターの受け入れ促進 海外との共同制作を促進 日本のクリエーターの世界に外国人がどんどん入ってきて欲しい。そのためには移民政策など制度面の手直しも必要となる。例えば外国人が日本の調理学校で日本食を学んでも査証(ビザ)の関係で日本国内のレストランでは働けず、日本企業の戦力になれない。すしチェーンが世界展開しようとしても人材面で足かせとなる。
イメージ 販売 購入 ・外国人向けのコンテンツを制作 (共同開発)
インド版『巨人の星』 野球マンガ「巨人の星」をインドの人気スポーツ、クリケットに置き換えたアニメーションにリメークし、現地テレビ局で放映。 建設ラッシュに沸く巨大都市ムンバイを舞台に、貧しい主人公が努力してクリケットのスター選手になる成功物語。 講談社は6日、野球マンガ「巨人の星」をインドの人気スポーツ、クリケットに置き換えたアニメーションにリメークし、今秋から現地テレビ局で放映すると発表した。 タイトルは「ライジング・スター(仮)」。建設ラッシュに沸く巨大都市ムンバイを舞台に、貧しい主人公が努力してクリケットのスター選手になる成功物語。骨格は、かつて日本の少年たちを熱狂させた「巨人の星」(梶原一騎原作)と同じだ。 タイトルは「ライジング・スター(仮)」。建設ラッシュに沸く巨大都市ムンバイを舞台に、貧しい主人公が努力してクリケットのスター選手になる成功物語。骨格は、かつて日本の少年たちを熱狂させた「巨人の星」
J-Pitch(主に映画) 経済産業省の映像コンテンツ国際共同製作基盤整備事業として、2006年4月より発足した国際共同製作支援プロジェクト 海外企画マーケットへの参加 ビジネスマッチング セミナーの開催 牧野聖修経産副大臣は「政府はカネを出す、(連携の)場をつくる、宣伝をする、規制は緩和する。そのように頑張る」と話した J-Pitchとは、経済産業省の映像コンテンツ国際共同製作基盤整備事業として、2006年4月より発足した国際共同製作支援プロジェクトです 世界の映像産業は、コンテンツのグローバル化の動きの中で、国際共同製作を通して国際市場へのアクセスを実現し、競争力を高めています。今後、日本の映像産業を国際市場に通用する映像コンテンツとして強化するために、本事業では、日本映画を中心としたコンテンツ製作者へ向け、国際的な共同製作事業への参画を促進、海外の映像コンテンツ製作者とのマッチング、ネットワーキングの場を提供するとともに、国際市場に通用するコンテンツの企画開発支援を行っております. 2006年度にスタートしたJ-Pitch事業は、これまでに、カンヌ、上海、パリ、トロント、釜山、ロッテルダム、ベルリン、香港の各マーケットに参加し、国際共同製作の実現に向けた企画のピッチングの場の提供を行ってきた他、企画開発ワークショップや国際共同製作セミナーを開催 2010年3月31日をもちまして、映像コンテンツ国際共同製作基盤整備事業/J-Pitch(国際共同製作支援プロジェクト)は終了いたしました
期待する効果 一回きりのプロモーションイベントで終わらない。 輸出の際に、コンテンツの権利料や翻訳費など考えなくてよい。 ローカライズすべき内容に関する知見などを得る。 ⇒利益につながる 文化の押しつけにならない(E.xアンチ韓流) 日本のクリエイティビティーの発揮(和魂洋才、コラボレーション)
成功のカギ 戦略的に考え、支援を集中する。 日本目線によるものではなく、現地とのウィンウィンの関係を構築する。 (日本の文化産業に関する政策の最終目的) 諸外国から「儲ける」のではなく、諸外国からの評価を高め、味方につけて、その力を利用して日本の力を増幅し、再び外に発信すること。 個別売りではなく、日本のライフスタイル全体をプロモーションする。
論点 クール・ジャパン戦略の意義や是非について 文化産業のどの分野に重点を置いていくべきか。 日本はこれからも「文化で儲ける」ことを考えていくべきか。 政府としてすべきこととは何か。
参考文献・資料 渡辺靖著『文化と外交』 2011年、中公新書 渡辺靖著『文化と外交』 2011年、中公新書 アン・アリスン著『菊とポケモンーグローバル化する日本の文化力』2010年、新潮社 経済産業省ホームページhttp://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/mono_info_service.html