GPS3点観測によるF領域 イレギュラリティのドリフト速度の測定

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Presentation transcript:

GPS3点観測によるF領域 イレギュラリティのドリフト速度の測定 Measurements of F-Region Irregularity Drift Using Spaced GPS Receivers 荒牧 徹[1]、大塚 雄一[1]、小川 忠彦[1]、塩川 和夫[1] 斉藤 昭則[2]、津川 卓也[2] [1]名古屋大学太陽地球環境研究所 [2]京都大学大学院理学研究科

目的 イレギュラリティの水平面内ドリフト速度を算出することにより、電離圏イレギュラリティ(プラズマバブル)の運動を調べることを目的とする。  イレギュラリティの水平面内ドリフト速度を算出することにより、電離圏イレギュラリティ(プラズマバブル)の運動を調べることを目的とする。 近接した3点にGPS受信機を設置し、受信信号強度を連続観測することで、イレギュラリティの水平面内ドリフト速度を算出する。 これらのイレギュラリティはE×Bドリフトする。我々はこれらのデータから電離圏イレギュラリティ、今回は特にプラズマバブルの運動を調べることを目的とする。

観測内容  2002年7月24日~8月9日の期間、名古屋大学太陽地球環境研究所附属鹿児島観測所(31.3° N, 130.4 °E, MLAT; 24.0 °N)にGPSアンテナ(Ashtech-G12)を約80m間隔で3台設置し、受信信号強度を同時に20Hzでサンプリングした。 観測内容の説明をする。20Hzのサンプリング。

1周波用GPS受信機 (Ashtech-G12)とパソコン 1周波(L1:1.575GHz)用GPSアンテナ 今回観測に使用したGPSのアンテナは一周波用アンテナでL1波、1.575GHzを受信した。 一周波用受信機とそれを制御するパソコンである。 1周波用GPS受信機 (Ashtech-G12)とパソコン 1周波(L1:1.575GHz)用GPSアンテナ

観測の概要図 200~300m イレギュラリティのスケール 観測の概要図をしめす。GPSアンテナを約80m間隔で東西方向を底辺とする三角点に設置した。 電離層高度を300kmと仮定し、平面内のドリフト速度と、GPS衛星の移動速度からにイレギュラリティのドリフト速度を算出する。 この時シンチレーションを発生させるイレギュラリティのスケールはフレネルスケールより200~300mになる。 イレギュラリティのスケール 200~300m

●各受信機間で得られた信号強度データの相互相関を計算し、変動波形の時間差を求める。 ドリフト速度の算出  ●各受信機間で得られた信号強度データの相互相関を計算し、変動波形の時間差を求める。 データセグメント:60s ドリフト速度の算出方法について、実際に例を示し説明する。 各受信機で得られた受信信号強度の時系列からデータセグメントを60sで取る。 この時二つの受信機で得られた受信信号強度の時系列の例を上図に示す。 次に各データセグメントについてcorrelationをとり、変動波形の時間差を求める。 上図の二つの信号強度の変動について、correlationを取ったものを下図に示す。 この時の相互相関値が0.5以上のデータについて時間シフトを求める。 これを3つの受信機間で行うことにより、ドリフト速度の算出を行った。 相互相関値:0.5以上 変動波形時間差

観測結果 2002年8月8日0200~0400JSTにおいてGPS衛星(PRN20)の受信信号強度に強い変動が観測された。同時に佐多の大気光イメージャーでプラズマバブルが観測された。 観測結果を示す。2002年8月8日0200~0400JSTにおいてGPS衛星(PRN20)の受信信号強度に強い変動が観測された。 同時に名古屋大学が設置した佐多の大気光イメージャーでプラズマバブルが観測された。 これら二つの観測結果を比較し、解析を進める。

シンチレーション Zenith Angle≦60 今回観測されたシンチレーションについて、受信信号強度の時系列プロットをシンチレーション時と、 前日の同時刻のものとで比較したものを上図にしめす。 さらに下図では、信号強度の1s間のStandard Deviationをプロットものと衛星の天頂角を示す。 0230~0330JSTに強いシンチレーションが観測された。 天頂角が60度以下のデータについて解析をすすめた。

東西成分:東向き80~150m/s 南方向 北東方向 北東方向 西方向 実際に算出したドリフト速度のベクトルプロットを示す。 強いシンチレーションの発生時刻、0230JSTにおいて、ドリフトが西向きから 東向きへ急激に変化していることがわかる。さらに、その後南向きとなり、 北東方向へと変化していることが確認できる。ここで0230JST以降のドリフトの東西成分に着目する。 80~150m/sの東向きドリフト成分が観測された。

●GPS Receiver Position、▲Subionospheric Point イメージャーデータとの比較 ●イレギュラリティのドリフト速度(東西成分) ⇒(東向き約80~150m/s) ●プラズマバブルの移動速度⇒(東向き:90m/s) 東向き90m/s 大気光イメージャーデータとの比較を行う。 (図の説明)630nm大気光画像を地理座標に焼直したものになる。 ●が観測地、▲は受信機-衛星間のパスと、電離層(高度300km)との交点を示している。 コンタの高い部分が電子密度の高い領域で、暗い部分がDepletion領域になる。 このイメージャーデータからプラズマバブルが東向きに90m/sで移動していることがわかった。 先程のドリフト速度との比較を行うと、イレギュラリティのドリフト速度は、東西成分について、 東向き80~150m/sで移動していた。イメージャーで観測されたプラズマバブルは東向きに90m/s で 移動しており、両者の結果はほぼ一致した。 ●GPS Receiver Position、▲Subionospheric Point

ドリフトの南北成分はDepletion 領域と対応して変動 北向き成分 観測地付近にある国土地理院GPS受信機で得られたTECデータとドリフト成分について比較を行う。 (図の説明)黒のラインが、TECの、一時間ランニングアヴェレージを取ったもの。 さらに位相データの欠測や、サイクルスリップを示している。 青いドットはドリフトの南北成分を示している。上が北向き、下が南向きを表す。 プラズマバブルに伴ってTECのDepletionが確認できる。同時に位相データの欠測も見られる。 ドリフトの南北成分については、Depletionと対応して変動している事が分かった。 南向き成分

東向き成分 70~100m/s 西向き成分 先程と同様に、TECデータとドリフトの東西成分について比較を行う。 赤いドットはドリフトの東西成分を示している。上が東向き、下が西向きを表す。 まず、イメージャーで確認されたように、プラズマバブルと共に移動する 東向き90m/s前後のドリフト成分が確認できる。 シンチレーションが発生した2300JSTのDepletion領域においては、 強い西向きドリフトから東向きドリフトへと急激に変化している。 西向き成分

▲Subionospheric Point ●Receiver Position ▲Subionospheric Point シンチレーションが発生した時刻0230JSTにおけるイメージャーの画像になる。 ▲がSubionospheric Point になる。 Subionospheric Pointとプラズマバブルの位置がほぼ一致している。 この時、電波のパスが通過しているプラズマバブルの形は、 子午線方向に対して西向きに傾いていることが確認できる。 このような西向きに傾いた構造のプラズマバブルにおける、東西ドリフト成分について考察する。

Vd’ Ep Vd Ep Ep Vd Vd’ North (top) J=ρ(E+U×B) B East 東向き成分 西向き成分 北向き成分 まず、紙面垂直方向の磁力線を考え、上に磁力線直行北向き成分、右を磁気的な東を考える、 子午線方向に対して西向きに傾いた、プラズマバブルのようなDepletion領域を考える。 電流が東向き成分を持つとき、電流の一様性を保つため分極電場が発生する。 この分極電場により、プラズマバブル内部のイレギュラリティはE×B方向にドリフトする。 この時のDepletion領域では、西向きにドリフトし、外側では東向きにドリフトする。 B Ep Vd Vd’ East

●プラズマバブル内イレギュラリティの東向きドリフト速度とバブルの移動速度(Imager)はほぼ一致 まとめ ●プラズマバブルによるGPSシンチレーションを観測 ●プラズマバブル内イレギュラリティの東向きドリフト速度とバブルの移動速度(Imager)はほぼ一致 ●プラズマバブル内部で西向きのドリフトを観測 北向き分極電場の存在を示唆