法と経済学(file 6) ゲーム理論2 今日の講義の目的 (1)展開型ゲームという考え方を理解する (2)後方帰納法の考え方を理解する (3)部分ゲーム完全均衡という概念を理解する (4)コミットメントという考え方を理解する 法と経済学 file6
ゲームの例 企業が競争力を付けるための努力をするかしないかを選択する。企業の行動を観察した後、政府は自由化するか否かを選択する。 企業が努力して政府が自由化したときの企業の利得は5、政府の利得は10。企業が努力して政府が自由化しなかったときの企業の利得は6、政府の利得は5。企業が努力せず政府が自由化したときの企業の利得は0、政府の利得は0。企業が努力せず政府が自由化しなかったときの企業の利得は10、政府の利得は4。 法と経済学 file6
展開型ゲーム(extensive form game) (5,10) 政府 自由化する 努力する 企業 (6,5) 自由化しない 自由化する 努力しない (0,0) 政府 (5,10) (10,4) 自由化しない 法と経済学 file6
後方帰納法(backward induction) (5,10) 政府 自由化する 企業 努力する (6,5) 自由化しない 自由化する 努力しない (0,0) 政府 (5,10) (10,4) 自由化しない 法と経済学 file6
部分ゲーム(subgame) 部分ゲーム:特定のノード(点)から始まるゲームで、そのゲームがもとのゲームの一部になっているもの。 ~もとのゲームは部分ゲームの一つ。これを含めて例では3つの部分ゲームが存在する。 法と経済学 file6
展開型ゲーム(extensive form game) (5,10) 政府 自由化する 努力する 企業 (6,5) ② 自由化しない ① 自由化する 努力しない (0,0) ③ 政府 ③ (10,4) 自由化しない 法と経済学 file6
部分ゲーム完全ナッシュ均衡(subgame perfect Nash equilibrium ) 部分ゲーム完全ナッシュ均衡:すべての部分ゲームでナッシュ均衡になっている均衡 ~左記の例では後方帰納法に従って解いた均衡が部分ゲーム完全ナッシュ均衡に対応する 部分ゲーム完全ナッシュ均衡ならそれはナッシュ均衡、逆は真ではない。 法と経済学 file6
部分ゲーム完全ナッシュ均衡 ② ① ③ (5,10) 政府 企業 (6,5) (0,0) 政府 (10,4) 自由化する 努力する 自由化しない ① 自由化する 努力しない (0,0) ③ 政府 ③ (10,4) 自由化しない 法と経済学 file6
展開型・戦略型ゲームの関係 この例を戦略型ゲームで表現する。下記は典型的な誤り。政府は企業の行動をみてから自由化するか否か決められる。企業が努力した時のみ自由化することも可能。下記のゲームではこれを表現できない。 政府 自由化する しない 努力する (5,10) (6,5) (0,0) (10,4) 企業 法と経済学 file6
戦略型ゲームでの表現 政府 A B C D 努力する (5,10) (6,5) しない (0,0) (10,4) 企業 A:常に自由化 B:企業が努力したときのみ自由化 C:企業が努力したときのみ非自由化 D:常に非自由化 法と経済学 file6
ナッシュ均衡 政府 A B C D 努力する (5,10) (6,5) しない (0,0) (10,4) 企業 A:常に自由化 B:企業が努力したときのみ自由化 C:企業が努力したときのみ非自由化 D:常に非自由化 法と経済学 file6
ナッシュ均衡の比較 政府 A B C D 努力する (5,10) (6,5) しない (0,0) (10,4) 企業 (努力する,A)は尤もらしくない→相手の選択に依らずAよりBの方が大きな利得か少なくとも同じ利得を政府に与えるから(AはBに弱支配されている) 同様に(努力しない,D)も尤もらしくない 法と経済学 file6
展開型ゲーム (努力しない、B)のナッシュ均衡に対応 (5,10) 自由化する 政府 企業 努力する (6,5) ② 自由化しない ① 自由化する 努力しない (0,0) ③ 政府 ③ (10,4) 自由化しない 法と経済学 file6
展開型ゲーム(尤もらしくないケース) ② ① ③ (5,10) 政府 企業 (6,5) (0,0) 政府 (10,4) 自由化する 政府 企業 努力する (6,5) ② 自由化しない 自由化する ① 努力しない (0,0) ③ 政府 ③ (10,4) 自由化しない (努力しない、D)のナッシュ均衡に対応 法と経済学 file6
展開型ゲーム(尤もらしくないケース) (努力する、A)のナッシュ均衡に対応 展開型ゲーム(尤もらしくないケース) (努力する、A)のナッシュ均衡に対応 自由化する (5,10) 政府 企業 努力する (6,5) ② しない ① 自由化する 努力しない (0,0) ③ 政府 ③ 自由化しない (10,4) 法と経済学 file6
空脅し(empty threat) 政府が合理的で、政府が合理的であることを企業が知っていて、企業が合理的であると、必然的に(努力しない、自由化しない)という状況に陥る。 政府が、「企業の努力の有無によらず自由化する」と宣言し、これを企業が信じれば(努力する、自由化)という、政府にとってより望ましい状況が実現する。 しかし企業は実際に政府は企業が努力しなければ自由化しないことを知っている。 実行する誘因のない脅しを空脅しという。 法と経済学 file6
コミットメント 将来の自分の行動の自由度を狭めることによって、空脅しを本当の脅しに変える~コミットメント (例) ・経営者が経営目標を上げ、達成できなければ退任する仕組みを作る ・背水の陣、退路をあえて断つ ・わざと強硬派を全権代表として交渉の場に送り込む 法と経済学 file6
コミットメント ② ① ③ (5,10) 政府 企業 (6,5) (6,-1) (0,0) 政府 (10,4) (10,-2) 自由化する (5,10) 政府 企業 努力する (6,5) (6,-1) ② 自由化しない 自由化する ① 努力しない (0,0) ③ 政府 ③ (10,4) (10,-2) 自由化しない あらかじめ手を打って自由化しなかったときに 政府に大きな損失が生まれるように構造を変える 法と経済学 file6
展開型・戦略型ゲームの関係 このゲームをあえて展開型ゲームで表してみる 政府 自由化する しない 努力する (5,10) (6,5) (0,0) (10,4) 企業 法と経済学 file6
展開型ゲーム(extensive form game) (5,10) 政府 自由化する 企業 努力する (6,5) 自由化しない 自由化する 努力しない (0,0) 政府 情報集合 自由化しない (10,4) 情報集合~政府はこの2つのノードを区別できない 法と経済学 file6
情報集合 政府と企業が同時に意思決定する →企業が意思決定し、その後政府が意思決定する。政府は企業の意思決定を観察する前に意思決定する。 ~政府が企業の行動を観察した後で行動するか、観察する前に行動するかでゲームが変わってくる。 →情報集合が重要。 法と経済学 file6
部分ゲーム ① (5,10) 政府 企業 (6,5) (0,0) 政府 (10,4) 部分ゲームは全体ゲームの1個だけ 自由化する 努力する 自由化しない 努力しない 自由化する ① (0,0) 政府 自由化しない (10,4) 部分ゲームは全体ゲームの1個だけ 法と経済学 file6
ナッシュ均衡=部分ゲーム完全均衡 政府 自由化する しない 努力する (5,10) (6,5) (0,0) (10,4) 企業 法と経済学 file6