しつこい咳・息切れ我慢して いませんか? ~肺気腫のお話~ 湘南鎌倉総合病院 呼吸療法部 鵜川美穂
ここでは、長引く咳や痰、息切れの原因となる 肺の病気「肺気腫」をとりあげお話しします。 しつこい咳や息切れが長く続くのは・・・ よくありがちな症状ですが長引いているなら、 気管支や肺、あるいは心臓に何らかの異常が潜んでいます。 風邪や年のせいだと思ってはいけません。 肺の病気 肺気腫・慢性気管支炎 気管支喘息・結核後遺症 肺炎など 心臓の病気 心不全・狭心症など その他の病気 貧血・神経系の難病 ここでは、長引く咳や痰、息切れの原因となる 肺の病気「肺気腫」をとりあげお話しします。
肺気腫とは 肺胞が壊れて呼吸機能が低下する病気です。 本来とても小さな袋になっている肺胞の壁が壊れ、隣の肺胞と合わさり一つの大きな袋になってしまいます。
そのため、吸い込んだ息を吐き出しにくく、 肺胞が壊れると・・・ 大きくなってしまった肺胞ほど、肺胞壁の弾力性が乏しく、内部に空気がたまった状態になります。 そのため、吸い込んだ息を吐き出しにくく、 息苦しさを感じます。
慢性気管支炎とは 気道のトラブルが続く病気です。 気道の壁に炎症が起き、痰が過剰に出ます。 「咳と痰が、冬季に3ヶ月以上ほぼ毎日続く状態が2年以上連続していて、それが他の病気でないもの」です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD) 「肺気腫」と「慢性気管支炎」をまとめて 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と言います。 肺胞の破壊や気管支が狭まるような病状が、長く続く病気という意味です。 適切に治療をしないでいると、呼吸機能が少しづつ悪化していきます。 日常生活から徐々に快適さが 奪われていきます。 Chronic 慢性の Obstructive 閉塞性 Pulmonary 肺の Disease 疾患
肺気腫(COPD)の原因は 肺気腫(COPD)患者さんの90%は喫煙者です。 タバコ以外では、有害物質を吸うことが多い、鉱山、建築現場、化学工場、自動車工場で長期間働いている人たちもいます。 タバコの煙は周りの 人へも害を もたらします
肺気腫の3大症状 しつこい咳 痰 息切れ これらは喫煙者に 多く見られる 肺気腫の初期症状 ゴロゴロ ゴホゴホ ハアハア
病状はゆっくり進行し大きな合併症へ 少し動いただけでも息苦しく、やがては寝たきりになります。 少し風邪をひいただけなのに肺炎にまで進行します。 やがては体の隅々まで酸素が行き届かず、慢性的に心臓に負担をかけ、心疾患、脳卒中などの重大な病気を合併します。 肺炎 心筋梗塞 狭心症・心不全 脳梗塞 寝たきりに!
COPDの有病率は増え続けている 70歳以上が最も多い 40歳以上の男女のうち8.6%にCOPD疑いがある。 潜在患者数は530万人で、治療を受けているのは38万人程度しかいません。 70歳以上が最も多い 7.1% 有病率 3.1% 歳 Fukuchi Y.Et al.:Respiorology9:458.2004一部改変
肺気腫(COPD)は高血圧や糖尿病と同じくらい、非常にあふれた病気 1990年 第1位 虚血性心疾患 第2位 脳血管障害 第3位 下部呼吸器感染症 第4位 下痢性疾患 第6位 COPD 2020年(予測) 第1位 虚血性心疾患 第2位 脳血管障害 第3位 COPD 第4位 下部呼吸器感染症 第5位 呼吸器がん WHOと世界銀行による研究より 肺気腫(COPD)は高血圧や糖尿病と同じくらい、非常にあふれた病気 喫煙者が発症しやすい、「肺の生活習慣病」
症状がある方は、 病院受診をお進めします! 診察/検査/治療
診察 現在の症状 これまでにかかった病気 喫煙本数・年数 これまでの生活環境 顔色や唇の色、爪の色などに異常がないか 会話時に口すぼめ呼吸をしていないか 胸部に変形がないか 聴診器で呼吸音の異常はないか
検査
肺機能測定検査 息を吐くだけでわかる検査です。 肺活量や1秒率から、肺がどのくらい機能しているかを調べる検査です。1秒率の低下が目立つ(息を吐き出しにくい)のが特徴です。 スパイロメーター 検査は15分程度 大きく息を 吸って 一気にはく
胸部レントゲン・CT検査 画像診断は体へ負担をかけることなく肺の状態を見ることができます。 《レントゲンの特徴》 肺が膨らみすぎた状態 (過膨張肺)となり 横隔膜は平たくなる また、吐き出しきれない空気が 多くなり肺の色は黒くなる CTは肺を輪切りにした状態を見て、 肺胞がどの程度の壊れているかを 診断します。
動脈血酸素分圧 動脈血中の酸素や二酸化炭素を調べます。 呼吸機能が低下していると酸素が少なく二酸化炭素は多くなります。 動脈血から採血をして 調べる検査です。 動脈血酸素分圧 健康な人:80Torr以上 COPD患者:60Torr以上
酸素飽和度測定 指先にセンサーをつけ、血液中の酸素濃度(酸素飽和度)を調べます。 動いた時の酸素濃度の低下などを簡易的に調べることが出来ます。 パルスオキシメーター 酸素飽和度 健康な人:96%以上 COPD患者:90%以上
治療 禁煙 ワクチン接種 薬物療法 在宅酸素療法 栄養療法 呼吸 リハビリテーション 運動療法 呼吸法
禁煙 禁煙は最大の治療です。 ・病気の原因であると同時に、病気の進行を 早めます。 禁煙をサポートする禁煙外来などをご活用 ください。 ・病気の原因であると同時に、病気の進行を 早めます。 禁煙をサポートする禁煙外来などをご活用 ください。 湘南鎌倉総合病院 禁煙外来
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの ワクチン接種 風邪を引いたことをきっかけに病状が重症化し、回復しても以前より息苦しさが強くなることがあります。 原因としては気道感染や大気汚染があげられます。 インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの 予防接種をおすすめします。
風邪をひかないための5つのポイント 帰宅したら必ず ワクチン接種 栄養のある 手洗い・うがいをしましょう バランスよい食事 十分な睡眠を取りましょう 人ごみを避ける
薬物療法(吸入薬) 去痰薬 痰を出しやすくします 気管支拡張薬 気管支を広げる薬 ステロイド薬 気管支の炎症を抑える薬 抗生剤 細菌を殺す薬 SpiNet COPD情報サイトより改変
栄養療法 症状がひどくなると、食事を摂るのもつらくなってきます。 肺気腫の人は通常の人に比べ1.2~1.6倍のエネルギーが必要です。 十分な栄養を取らないと体重が減っていき体力も低下していきます。 食事制限がなければ何を食べても大丈夫です。 痰を出しやすくするためには、水分補給も重要です
食事方法 高カロリー・高蛋白食を取りましょう。 バランスのよい食事を5~6回に分けて少しづつ とりましょう。 たんぱく質を含み とりましょう。 たんぱく質を含み カロリーを多く取れる食品 できるだけ避けたい食べ物 胃の中でガスを発生させる食品
在宅酸素療法 呼吸不全が進んできたら、持続的に酸素補給を行いましょう 酸素吸入の効果は ①生命予後の改善 ②生活の質の向上 酸素もお薬です ①生命予後の改善 ②生活の質の向上 ③肺高血圧の予防と病状 進展防止 ④息切れや呼吸困難の軽減 酸素もお薬です
酸素を上手に取り入れ心臓への負担を減らしましょう 外出はもちろん在宅酸素のアフターサービスが 在宅酸素療法 対象となる患者さん 動脈血酸素分圧:60torr以下 酸素飽和度:90%以下 導入には医師の処方が必要です。 健康保険適応されており、現在では日本全国で 12万人が在宅酸素の治療を受けています。 酸素を上手に取り入れ心臓への負担を減らしましょう 外出はもちろん在宅酸素のアフターサービスが 充実しており、旅行もできます。 事前に申請すれば飛行機にも乗れます。
障害者認定 公的扶助は自己申請が 基本となっています 重症の呼吸器疾患は障害者福祉法で定められた身体障害者の対象となります。 呼吸機能障害者として認められると、身体障害者手帳が交付されます。 申請は市町村の福祉事務所へ。(自治体により扶助の内容は異なります) 公的扶助は自己申請が 基本となっています
呼吸リハビリテーション 運動療法 ・疲れを残さない程度の運動をしましょう 呼吸法 ・疲れを残さない程度の運動をしましょう 呼吸法 ・呼吸のストレッチや、動作に合わせ呼吸を整え少しでも楽に動作しましょう。 ・無理なく日常的に行いましょう ・毎日継続することが大切です。
お年よりが病気で寝込むと歩けなくなってしまうのはそのためです。 運動療法 お年よりが病気で寝込むと歩けなくなってしまうのはそのためです。 運動不足は心臓や体の筋肉を弱めます。 呼吸を楽に保つためには運動が大切です。 足の筋肉を鍛えましょう!
足の筋肉を鍛えると心臓や肺の機能が活発になり、 運動療法 足の筋肉を鍛えると心臓や肺の機能が活発になり、 その結果、酸素が体の隅々まで届きやすく 持久力がつき、疲れにくくなります。 いまからでも 運動能力を改善 できます そして、もっと たくさん動くことが できます 足の筋を使うウオ-キング(散歩)が 最も効果的
呼吸法 正しい呼吸法を身につけ、効率よく呼吸することが大切です。 まずは体のリラックスから 肩をすぼめて、ポンッと下ろす。 (3回繰り返す) 頭を左右に倒し、まわす。 (2回繰り返す)
①口すぼめ呼吸 口をすぼめてゆっくり空気を吐き出すことで、気管の空気を通りやすくする方法です。 鼻から息を吸い込む 口をすぼめて吐き出す ~ポイント~ 吐くときは吸うときの2倍の時間をかけてゆっくりと吐き出しましょう
②腹式呼吸 横隔膜を上下に動かすとても効率の良い呼吸法です ~ポイント~ 吐くときは吸うときの2倍の時間をかけてゆっくりと吐き出しましょう
③歩く時 「1・2」で鼻から吸って「3・4・5」で口をすぼめて吐き出しましょう。
毎日の生活を 少しでも 息切れをせずに過ごすには
日常生活の動作をラクラク 行動を起こす前に必ず息を吸い、息を吐きながら行動しましょう。
①イスに座るとき 「1・2」鼻から息をすう。 「3・4・5」で座りながら前かがみになった時、息を吐き出す。
②物を押すとき 「1・2」鼻から息をすう。 「3・4・5・6」で押しながら口からゆっくり息を吐き出す。
③物を持ち上げるとき 「1・2」鼻から息を吸う。 「3・4・5・6」で持ち上げながら口からゆっくり息を吐き出す。
④階段を登るとき 鼻から深く息を吸う。 口から息を吐き出しながら1~2段または1~2歩上がる 止まって休む。または鼻から息を吸う。
・普段から使うものは胸の高さにおきましょう ~普段の動作~ おなかを圧迫する姿勢は避けましょう。 ・イスに座った状態で物を拾ったりしない。 ・トイレは和式より洋式を使用する。 手を高く上げる姿勢は息苦しくなりがち ・普段から使うものは胸の高さにおきましょう ×
~入浴中~ 入浴中は浴槽につかったときに、水圧で胸を圧迫しないよう半身浴がお進めです。 動作時は息を止めないようにしましょう。