JAXA宇宙科学研究所 海老沢 研、辻本 匡宏 西はりま天文台 森鼻 久美子

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JAXA宇宙科学研究所 海老沢 研、辻本 匡宏 西はりま天文台 森鼻 久美子 海老沢 研、辻本 匡宏 西はりま天文台 森鼻 久美子

Galactic X-ray Ridge Emission I-1. 銀河面リッジX線放射とは何か? 森鼻久美子博士論文2012(東京大学)より 銀河面に沿って拡がったX線放射 (ℓ<±45度、b <±1度) LX~2×1038 ergs s-1(2-6keV; Warwick et al.,1985) 銀河面のX線強度マップ (Ebisawa et al., 2008) X線スペクトル 5-10keVの熱的放射 3本の鉄輝線   (6.4, 6.7, 7.0 keV) 中性 He-like H-like

Galactic X-ray Ridge Emission I-2. 銀河面リッジX線放射の起源 拡散説 (Ebisawa et al., 2001, 2005) 点源説 (Revnivtsev et al., 2006, 2009) 主に拡がったプラズマ 主に暗いX線点源 (28.5°,0.0°) (0.0°,-1.4°) Revnivtsev et al. (2009) リッジ放射の観測として最長の約900 ksの観測 リッジ放射を鉄輝線付近で約80%点源に分解→点源が優勢であることが明らかに

Revnivtsev field (~900 ksec)で、あるthresholdより明るいX線点源を重ね合わせとき、 Morihana et al.2013 銀画面上の暗いX線源がGRXEの鉄輝線を主に担っている

Galactic X-ray Ridge Emission 残された問題 現在想定されている天体種族で説明できない Revnivtsev field 明るい天体のスペクトル→鉄輝線なし 鉄緯線を担っている暗いX線天体の正体は? →どのような種族の天体が銀河系内に存在し、それらがどれだけリッジ放射に寄与しているか? 手法 X線と同程度の透過力を持つ近赤外線を使用 近赤外線分光によって種族に制限

IRSFによるフォローアップ観測 Revnivtsev fieldで X線天体を同定

IRSFによるフォローアップ観測

検出されたX線源の一割程度しか 赤外線同定されていない!

Subaru MOIRCS スナップショット (Ks~20.5) 近傍のCataclysmic variable (GRXEの対応天体候補)をd~8kpcに持って行く  Ks~28magが必要

すばるによる分光観測 日時 :2011年6月23-24日 (Revnivtsev field) 2007年6月17-10日、 分散方向 ディザリング方向 日時 :2011年6月23-24日 (Revnivtsev field) 2007年6月17-10日、 2008年6月27-28日     (Ebisawa field) バンド:Ks (R~1300) 視野 :4視野 (Revnitvsev field) 13視野 (Ebisawa field) 時間 :720s〜10800s シーイング:0.3”〜1.3” 主に背景光を除く目的  →ディザリング   (幅はマスクごとに異なる)

II-iii-2. 近赤外線分光観測の解析•結果 : (1)リダクション すばるによる分光観測 II-iii-2. 近赤外線分光観測の解析•結果 : (1)リダクション 2次元処理 生データ ダーク補正 フラット補正 A 分散方向 1次元処理

鉄輝線を示す天体の種族 鉄輝線放射  数 keVの高温プラズマ 大部分は白色矮星連星系 (伴星から白色矮星への質量降着) 大部分は白色矮星連星系 (伴星から白色矮星への質量降着) ロッシュローブオーバーフローを起こしている場合  Cataclysmic Variables (激変星) 白色矮星のまわりに降着円盤が形成 円盤から可視光・赤外線輝線放射 ロッシュローブオーバーフローを起こしていない場合  Pre CV 白色矮星の周りに降着円盤が形成されない 可視光・赤外線輝線が観測されない

II-iii-2. 近赤外線分光観測解析•結果 : (2)近赤外線分光解析 すばるによる分光観測 II-iii-2. 近赤外線分光観測解析•結果 : (2)近赤外線分光解析 Cataclysmic Variables (降着円盤からの 赤外線輝線が特徴)が 意外に少ない! X線でハード(高温)、 赤外線で吸収線を持つ天体を 数多く検出 Revnivtsev field →33天体 Ebisawa field   →55天体 赤外線で吸収線晩期型星 赤外線で輝線Cataclysmic Variables Wavelength [μm]

GRXEの起源天体の分類 Hard、鉄輝線無し Hard、鉄輝線あり Soft 変動小 変動大 NIR対応あり 分光あり Brγ輝線あり (1) Brγ輝線なし 9 (10) 14 10 分光なし 2 26 79 82 NIR対応なし 58 541 469 712 Total 60 576 562 804 割合 (2-8keVでのFXの割合) 3% (38%) 29% (35%) 28% (5%) 40% (22%) 種族 背景のAGN CVs 約1割 Pre-CVs 約9割 晩期型星 (静穏時) (フレア) 白色矮星と晩期型星のdetached binary

GRXEの起源天体について 銀河面リッジ放射を構成している暗いX線天体に対して、その種族を知る目的で、IRSFを用いて近赤外測光観測、すばる望遠鏡を用いて近赤外線分光観測を行った。 リッジ放射構成点源をAGN、CVsとPre-CVs、晩期型星に分類し、 それぞれの種族からのリッジ放射成分への寄与を見積もった。 X線でハードなスペクトルを持ち近赤外線では吸収線を持つ天体が多数存在することを発見した。 銀河面には、未だ同定されていない多くの暗いX線天体が存在し、その多くは(おそらく)白色矮星と晩期型星のdetached binaryであるpre-CVsと考えられる。 森鼻久美子博士論文2012より

GRXEの主な起源天体の起源は? Pre-CV説 (Morihana et al.) X線を放射するpre-CVはまだほとんど見つかっていない 1030erg/sよりも明るいCV(IP)説 (Yuasa et al.) それほど数を稼げるか? 赤外線スペクトルで輝線が出るはず 1030erg/sよりも暗いCV説 (Reis et al.)

Pre-CV起源説 強い鉄輝線 Pre-CV QS Virの X線スペクトル(XMM) と赤外線スペクトル 赤外線吸収スペクトル

CV起源説1 GRXEのハード成分(>5 keV)の多くは1030erg/sよりも明るい Intermediate Polar Yuasa et al.2012より

CV起源説2 Reis et al. 2013, MNRAS, 430, 1994より

CV起源説2 SDSSでみつかったCVの可視光スペクトル (Reis et al. 2013) SDSSでみつかったCVのX線スペクトル

なぜGRXEの起源が解明されないのか? 赤外線で同定されているX線天体は、明るい方の氷山の一角 完全に同定するには、Ks〜28等が必要 現在の不定性は、おそらくサンプルの少なさによる 赤外線でできるだけ多くのX線天体を同定し、スペクトルのサンプルを増やすことが必要

どう攻略するか? 今まで銀河リッジ X 線放射について得られた X 線、赤外線データの知見に加えて、より多くの赤外線対応天体を検出する。 X 線で高温スペクトルを持つGRXEの起源天体を赤外線でフォローアップ Chandraアーカイブによる銀河面上のX線天体広い範囲で赤外線分光観測 銀河リッジ X 線放射の起源候補天体である、激変星の性質をより詳細に調べる。 Narrow band filter(Paa/Br g)を用いた輝線天体探査

SWIMSの強み 観測時間(視野、天体数)を稼げる? Paaが使える Narrow band filterが使える 多バンドで、種族に厳しい制限を付けられる?