小諸市上水道事業基本計画の策定について
1.水道行政の現状と課題 2.小諸市水道事業の現状 3.小諸市上水道事業基本計画の策定
1.水道行政の現状と課題
1.日本の水道事業の現状 平成16年度版「日本の水資源」(国土交通省)によると、水道水が飲める国は世界で13カ国しかなく、高い普及率と安全性を誇る日本の水道事業は、世界のトップレベルにあるといえます。 水道法が制定された昭和32年時点の水道普及率は、全国で約41%でしたが、高度経済成長期を中心に飛躍的な拡張を遂げ、平成24年度末には97.7%まで向上しています。 なお、小諸市の水道普及率は平成25年度末で99.5%となっています。 一方、総務省統計局のデータによると、日本の人口は平成22年(2010年)から減少しており、2060年には3割程度減るものと見込まれ、水需要は2060年には4割程度が減少すると見込まれています。(厚生労働省新水道ビジョンより)
2.人口減少と水道事業 水道事業における人口減少問題は、料金収入の減少に直結する問題で、単純に現在と同じ料金収入を確保しようとした場合、人口が1/5減れば25%の料金アップ、人口が1/3減れば50%の料金アップが必要となります。 出展:厚生労働省 平成24年度水道技術者研修会資料
3.普及率の向上から維持管理へ 日本の水道施設は、昭和50 年前後と平成10 年前後をピークとして整備されてきましたが、新規の投資は減少傾向にあり、拡張期の水道施設が耐用年数を迎え始めたことにより、施設の維持や更新が大きな問題となってきています。 しかし、更新には多額の費用を要することから、現行の料金水準を維持したまま、全ての水道施設の更新を行うことは非常に困難な状況となってきています。 出典:厚生労働省 水道ビジョンフォローアップ検討会資料
4.水道事業が抱える今後の課題 施設の老朽化や人口減少の問題などから、将来も健全な水道事業を継続していくためには、水道料金の値上げは避けられない状況とも言えますが、無計画に更新を行っていったのでは水道料金は何倍にも膨らんでしまいます。 限られた財源を有効に活用するため、民間委託なども含めた経営改革を進めながら、中長期の財政見通しと合わせた更新計画が必要となります。 こうした課題は、多くの水道事業が抱える共通の課題ではありますが、特に給水人口が10万人未満の小規模事業体は、人口密度が低いことから財政基盤が脆弱な上、人口減少は早く進行するといった傾向にあることから、特に大きな問題となっています。
2.小諸市水道事業の現状
1.小諸市の水道事業について 小諸市の水道の歴史は古く、大正13年に近隣市町村に先駆けて創設され、平成26年で90周年となります。 小諸市の水道の歴史は古く、大正13年に近隣市町村に先駆けて創設され、平成26年で90周年となります。 昭和30年代には多くの簡易水道施設が整備され、農村部における生活環境の向上と近代化が図られ、昭和50年代から徐々に上水道へ統合されてきました。 平成27年4月に小諸市外二市御牧ヶ原水道組合が統合されると、簡易水道は菱野簡易水道のみとなりますが、経営は小諸市で行っているため、経営上は全ての簡易水道が上水道へ統合されることとなります。(飲料水供給施設等は除く) 御影配水池 現在は、25箇所の水源と38箇所の配水池を基本とし、浅麓水道企業団からの受水を含めて安定した供給を行っています。
1.小諸市の水道事業について 全国的にダムなど貯留水への依存度が高まる中、小諸市の水道水源は全て深井戸と湧水で、塩素滅菌だけで水道水として使用できる良質で貴重な水です。 ろ過などの浄水処理を行わず水道水に利用できる良質な水は年々減少してきており、全国的には20%を割っています。 浅間山麓周辺の水資源は、全国的にも非常に貴重な財産と言えます。 出展:社団法人 日本水道協会ホームページ
1.小諸市の水道事業について 平成25年度末の給水戸数は17,643戸、給水人口は42,339人で、前年度と比較して給水戸数は39戸増加し、給水人口は206人の減となりました。 給水量は、節水型社会情勢の影響もあり減少傾向で、こうした状況は今後も続くとものと思われます。 近年は給水人口が減少する半面、給水戸数は増加傾向にありますが、賃貸集合住宅等の増加により、単身世帯が増えたことによるものと思われます。 給水人口(百人) ◎給水人口及び給水戸数の推移 給水戸数(千戸)
2.小諸市新水道ビジョンについて こうした状況の中、小諸市は将来の水道事業の方向性を検討するため、平成23年3月に「小諸市水道ビジョン」を策定し、状況の変化に合わせて改定を行ってきました。 現在の水道ビジョンは、御牧ヶ原水道組合の統合を最重要項目としていますので、統合計画の進捗に合わせ、平成24年3月と平成25年12月に一部改定を行ってきました。 ただし、配水計画や更新計画の具体的な検討は、御牧ヶ原水道給水区域への安定給水が確認できた後としていますので、今後は、基本計画の策定に合わせ改定を行うこととなります。
3.小諸市上水道事業基本計画の策定
1.アセットマネジメント(資産管理)について アセットマネジメント(資産管理)は、厚生労働省が平成 20 年7月に策定した「水道ビジョン改訂版」の重点取組項目として、水道事業者へ導入を強く勧めている手法で、中長期の財政見通しと更新需要から将来の事業見通しを計るものです。 小諸市でも、平成25年11月に、アセットマネジメント手法による中長期の財政見通しを試算したところ、水道施設の更新基準を耐用年数の1.5倍まで伸ばしても、40年後には2.37倍の料金水準としなければ、水道事業を継続できないといった結果となりました。 ただし、この試算は新設分を見込んでおらず、古い施設情報には再調査が必要と思われる内容もあり、また、御牧ヶ原水道統合後には再度試算を行う必要があることから内部資料とし、公開はしておりません。
1.アセットマネジメント(資産管理)について 出展:厚生労働省 平成24年度水道技術者研修会資料
2.基本計画の位置付け 水道ビジョンを実行するための具体的な計画 アセット マネジメント アセット マネジメント 水道ビジョンを実行するための具体的な計画 出典:厚生労働省「アセットマネジメント手法の検討事例」
施設の更新計画 上水道事業基本計画 中長期財政計画 2.基本計画の位置付け 小諸市水道事業基本計画は、アセットマネジメント手法に基づき、技術的検討と財政的検討を行うこととなりますが、具体的には「施設の更新計画」と 「中長期財政計画」が2つの大きな柱となります。 特に「施設の更新計画」は、破損時や緊急時に影響の大きい施設などから優先的に順位付けしていく必要がありますので、将来の配水計画も同時に作成することとなります。 上水道事業基本計画 施設の更新計画 中長期財政計画
施設の更新計画 中長期財政計画 基本調査 基本調査 配水計画 経営改革 更新計画 財政計画 小諸市上水道事業基本計画 3.基本計画の進め方 基本計画の策定の、具体的な進め方は以下のようになります。 施設の更新計画 中長期財政計画 基本調査 基本調査 連携 配水計画 経営改革 連携 更新計画 財政計画 小諸市上水道事業基本計画
4.耐用年数での更新と老朽化 基本計画の中核は、施設の更新計画となりますが、仮に配水管だけで更新計画を考えた場合、一般的な配水管の法定耐用年数は40年となっていますので、毎年総延長の2.5%を更新していかなければ耐用年数内で更新を完了することはできませんが、小諸市の最近5年間の更新状況は、平均で0.75%と基準値の3割にも満たない更新率となっています。 耐用年数40年から逆算すると年2.5%の更新が必要 小諸市アセットマネジメントより
4.耐用年数での更新と老朽化 小諸市における平成25年度末の送配水管の経年化率は約21.8%で、現在の更新率で試算すると10年後には33%程になる見込みです。 しかし、10戸以上の断水などを緊急に要した水道事故を、原因別に過去5年間調査したところ、御牧ヶ原水道を合わせて15件ありましたが、老朽化が直接の原因と考えられる事故は御牧ヶ原水道の1件のみで、最も多い原因は人的破損となっており、殆どが水道管以外の工事による送配水管の破損となっています。 ■過去5年間で10件以上の断水等を緊急に要した水道事故の原因別件数
4.耐用年数での更新と老朽化 耐用年数内での更新が行えない理由は、工事費用の問題が最も大きいのは当然ですが、その他にも多くの問題があります。 耐用年数内での更新が行えない理由は、工事費用の問題が最も大きいのは当然ですが、その他にも多くの問題があります。 現在の上水道課では2~3人の技術担当者が、年間70~90件程の工事を担当していますが、その中には消火栓の新設や移設、市や県の大型事業や下水道関連事業などもあり、多い年には工事全体の1/3程度を占めることもあります。 また、各年度の財源は限られていますので、新設工事が増加すると更新工事は減少することとなります。 さらに、水道管の多くが道路に埋設されていることから、道路改良や道路の掘削を伴う下水道やガス管工事などが計画されている場合は、重複工事を避けるため優先的に新設や布設替えを行ってきましたので、必ずしも耐用年数に沿った更新を行えるわけではありません。
4.耐用年数での更新と老朽化 現在よりも多くの更新工事を行うためには、職員体制の見直しも必要となりますので、人件費の増額も必要となります。 現在よりも多くの更新工事を行うためには、職員体制の見直しも必要となりますので、人件費の増額も必要となります。 効率的な更新工事を行うためには、更新計画の策定だけではなく、同時に水道事業全体の見直しを行い、より効率的な経営を目指していかなければなりません。 工事費用のための財源を確保することも重要な課題で、これまでは「世代間負担の公平化」という観点から、起債による工事も多く行ってきましたが、人口減少が見込まれる中、多額の借金を後世に残すことも見直していかなければなりません。 現在、水道施設の更新等に利用できる補助金は限られており、国の予算も減少傾向にあります。 国や県への要望も行っていきますが、大きな改善が見られなければ、水道料金の値上げを含めた財源確保を検討しなければなりません。
5.基本計画の策定方法について 厚生労働省の新水道ビジョンでは、将来にわたって水道事業を持続していくためには、関連事業者や使用者の協力が必要不可欠としており、特に住民との連携は大きなテーマとして掲げられています。 『水道を地域の住民の共有財産として、水道事業者とのコミュニケーションを図りつつ、自らも地域を支える水道の経営に参画している認識で水道に関わっていくことが重要です。』(厚生労働省「新水道ビジョン」より) こうした状況から、小諸市では住民参加による計画策定を予定しており、より正確な情報提供ができるよう、平成26年度より基本調査を開始いたしました。 ◎平成26年度以降調査予定項目 ・湧水水源の現況調査 ・各施設状況再調査 ・仕切弁状況調査 ・深井戸施設揚水試験(水量調査) ・水源(湧水)の取水量試験(水量調査) 等 柏木水源
5.基本計画の策定方法について 基本的な調査や検討事項は、遅くとも平成27年度中に終了させ、基本計画の策定は平成28年度に行う予定です。 基本的な調査や検討事項は、遅くとも平成27年度中に終了させ、基本計画の策定は平成28年度に行う予定です。 ◎小諸市上水道事業基本計画策定スケジュール(概要) 柏木水源
5.基本計画の策定方法について 基本計画策定は、住民の皆さんを交えた「小諸市上水道事業基本計画策定会議(仮称)」により行う予定ですが、技術的な検討が必要となる配水計画や更新計画の骨格は平成27年度までに作成し、検討の下地として協議を行っていきたいと考えています。 なお、小諸市上水道事業基本計画策定会議(仮称)の詳細につきましては、基本調査の結果や各作業の進捗状況などから、住民の皆さんの意見を取り入れ易い方法を検討していきます。
6.情報提供と広報活動について これまでの水道事業における広報活動や情報提供は、決して十分であると言えない状況でした。 これまでの水道事業における広報活動や情報提供は、決して十分であると言えない状況でした。 小諸市水道事業では、新しいホームページへの切り替えに際し、情報提供の方法や内容等について、事業課内に広報会議を設け検討を開始しました。 現在は公開中の情報の再点検が中心となっていますが、今後は広報や回覧文書、窓口チラシなども含め、情報提供の在り方を検討していく予定です。 また、宅内漏水の予防や早期発見のためには、日頃から使用者自身が水道設備の点検などを行うことが有効であることから、各地区へ職員が伺い、水道設備の点検方法などの説明を行うような機会を設けることも検討しています。 さらに、「かかりつけ」の水道業者を持つことも有効な対策であることから、水道事業者とも連携した取り組みを検討したいと考えています。 柏木水源
7.最後に 小諸市上水道事業基本計画は、将来も「安全・安心」な水を「安定的」に、さらに可能な限り「安価」で提供できるよう、現在の水道事業を根本的に見直し、住民と一緒に作り上げていく計画です。 蛇口をひねれば、安全な水がいつでも飲めるという状況は、今の日本では当たり前となっていますが、この環境を維持していくことが難しい時代へと変わってきています。 小諸市では、使用者の皆さんに分かりやすい資料の提供ができるよう、水道施設等の調査及び既存資料の見直しを進めています。 平成28年度には、公募による住民参加の会議を複数回行いたいと考えていますので、ぜひご参加いただき、一緒に小諸市の水道事業の将来について考えていただきたいと思います。 なお、公募の詳細につきましては、基本調査の進捗状況により、広報等でお知らせしていく予定です。 柏木水源
今後も「安全・安心」な水を「安定的」に、可能な限り「安価」で提供できるよう努力してまいります。
■小諸市役所上水道課経営改革係 TEL:0267-22-1700 内線206 FAX:0267-24-1340 小諸市上水道事業基本計画に関するお問い合わせは、 ■小諸市役所上水道課経営改革係 TEL:0267-22-1700 内線206 FAX:0267-24-1340 E-mail:wkeiei@city.komoro.nagano.jp までお願いいたします。