「健やか親子21」の中間評価 結果と推進における課題
「健やか親子21」中間評価の方法 1)人口動態統計(8項目) 十代の自殺率,妊産婦死亡率,周産期死亡率 低出生体重児の割合 新生児死亡率,乳児死亡率,乳児のSIDS死亡率 幼児(1~4歳)死亡率,不慮の事故死亡率 2)乳幼児健康診査時の自記式調査 (19項目) 妊娠・出産について満足している者の割合 妊娠中の喫煙率, 育児期間中の両親の喫煙率 妊娠中の飲酒率 かかりつけの小児科医を持つ親の割合 休日・夜間の小児救急医療機関を知る親の割合 事故防止対策を実施している家庭の割合 など
中間評価のための実態調査 調査対象:自治体の人口規模で階層化して,無作為抽出された182自治体の乳幼児健診受診者 調査方法:乳幼児健康診査受診時に調査票に記入 (調査票は報告書50ページ~) 調査時期:平成17年7,8月 調査結果:182市区町村中147市区町村の協力を得た (協力率:80.8 %)
実態調査の概要 自治体数 対象者数 有 効 回答数 回収率 3,4ヶ月児 126 7,782 6,109 78.5% 1歳6ヶ月児 139 有 効 回答数 回収率 3,4ヶ月児 126 7,782 6,109 78.5% 1歳6ヶ月児 139 9,965 7,490 75.2% 3歳児 138 9,567 7,460 78.0%
「健やか親子21」中間評価の方法 3)厚生労働科学研究などの調査研究(10項目) 15歳女性の思春期やせ症の発生頻度 薬物乱用の有害性について正確に知っている 小・中・高校生の割合 十代の喫煙率,十代の飲酒率 避妊法を正確に知っている18歳の割合 産後うつ病の発生率 など 4)その他 国の実施する調査・報告など(24項目) 法に基づき児童相談所等に報告があった被虐待児数 など
中間評価結果の概要(1) 61項目の評価指標のうち、58項目について直近の値を把握することができた。 ◎改善が見られた項目(41項目 70.7%) 十代の喫煙率 高校3年生男子 36.9% → 21.7% 十代の人工妊娠中絶率 15~19歳女子人口1000対 12.1 → 10.5 妊産婦死亡率 出産10万対 6.3 → 4.3 乳児のSIDS死亡率 人口10万対 26.6 → 19.3 1歳6ヶ月までに麻疹予防接種を終えた児の割合 70.4% → 85.4% など
中間評価結果の概要(1) ●不変,あるいは悪化していた項目13項目(22.4%) 十代の自殺率 15~19歳人口10万対 6.4 → 7.5 十代の淋菌感染症罹患率(20歳未満定点) 1,668件 → 2,189件 低出生体重児の割合 8.6% → 9.4% 育児期間中の父母の喫煙率 父 35.9% → 54.5%,母 12.2% → 18.1% △目標値とかけ離れている項目(4項目 6.9%) 事故防止対策を全項目実施の3歳児親の割合 2.9% (目標100%) 常勤の児童精神科医がいる児童相談所の割合 5.9% (目標100%)
中間評価結果の概要(1)
思春期の保健対策の強化と健康教育の推進 ①自殺率は10~14歳で減少しているが,15~19歳では増加 今後も引き続き,きめ細かな対策が必要 今後も引き続き,きめ細かな対策が必要 ②思春期の不健康な「やせ」は増加 思春期やせ症の発生頻度は横ばいであったが,適切な 対応と啓発が必要 ③人工妊娠中絶率は低下しているが,性感染症は増加 中絶率の低下の要因は明らかでなく,地域格差もあり, 更なる分析が必要 ④十代の喫煙率,飲酒率は低下 低下の要因は明確ではなく,未成年の喫煙と飲酒をなくす ことを目標に更なる取り組みを推進することが必要
妊娠・出産に関する安全性と快適さの 確保と不妊への支援 ①妊娠・出産に関する保健水準の指標(妊産婦死亡率)は改善 周産期医療ネットワークの更なる充実が必要 ②産婦人科医師数は減少 産科医の地域偏在,助産師の施設間偏在の是正が必要 ③妊娠・出産に関する満足度は改善 満足度の評価方法の検討 真の満足度向上のための支援が必要 ④不妊専門相談センターの整備は目標を達成 不妊夫婦への支援の質の向上に向けた取り組みが必要 ⑤妊産婦を取り巻く環境整備は不十分 公共交通機関,職場,飲食店などで妊産婦に対する配慮を 促すことが必要
小児保健医療水準を維持・ 向上させるための環境整備 ①麻疹予防接種率は順調に改善 医療と保健が一体となった更なる推進が必要 ②事故防止対策は目標からかけ離れている 20項目の事故防止対策全てを行っている家庭の割合を 目標にするのは不適切 5年前より減っていた「チャイルドシートの適正使用率」等 の重点項目を指標にするなど,適切な指標の設定が必要 ③病児支援の整備は不十分 院内学級,遊戯室を持つ小児病棟の割合,慢性疾患児等 の在宅医療の支援体制が整備されている市町村の割合は 改善が認められなかった ④低出生体重児の割合は増加 妊娠中の適切な食生活ができるよう食育の推進と妊婦の 喫煙対策が必要
子どもの心の安らかな発達の促進 と育児不安の軽減 ①児童虐待件数は死亡数,相談処理件数ともに増加 虐待防止対策の強化が急務である ②父親の育児参加は増加しているが,ゆったりとした気分で 子どもと過ごす時間がある母親の割合は減少 ③乳幼児健康診査の満足度は改善していない 育児支援に重点を置いた健診を行っている市町村は89.3% と高率だったが,健診に対して「信頼がおけ,安心」と答えた 母親の割合には改善がなかった ④子どもの心の健康に対応できる医療従事者は不足している 子どもの心の健康に対応できる小児科医の養成が必要 児童相談所における児童精神科医の確保が必要 ⑤母乳育児の割合はあまり改善していなかった 母乳栄養は愛着形成にも良い影響を及ぼすといわれ,出産 直後からの支援,授乳しやすい環境の整備などが必要
指標の見直しについて 現実の値が目標値とかけ離れており,見直しが必要な項目は以下の4項目である。 ①母性健康管理指導事項連絡カードを知っている妊婦の割合19.8%(目標100%) 妊娠した時点で仕事をしていない妊婦については 知らなくても当然であり,指標としては,対象(分母) を「就労している妊婦」とする ②妊産婦人口に対する産婦人科医・助産師の割合 産婦人科医数,助産師数の実数の推移を追う
新たな指標について 「健やか親子21」の推進のために,新たに設定された指標は以下の3つである。 ①児童生徒における肥満児の割合 10.4% → 減少傾向に (平成16年度学校保健統計調査をもとに日比式により算出) ②食育の取り組みを推進している地方公共団体の割合 関係機関等のネットワークづくりの推進に取り組む 都道府県の割合87.0% 保育所,学校,住民組織など関係機関と連携して 取り組む市町村の割合87.1% ③う歯のない3歳児の割合 68.7% → 80%以上に (平成15年度3歳児歯科健康診査)
引き続き,検討が必要な指標 継続的に評価をするために,モニタリング方法を 見直すことが必要な指標は以下の5項目である。 ①避妊方法を正確に知っている18歳の割合 ②性感染症を正確に知っている高校生の割合 ①②とも,「正確に知っている」という基準が 明確でない。 ③事故防止対策を実施している家庭の割合 20項目の事故防止対策をすべて実施している 家庭の割合は現実的でない ④常勤の児童精神科医がいる児童相談所の割合 ⑤親子の心の問題に対応できる技術を持った小児科医の割合
市町村の取り組み状況(1)
市町村の取り組み状況(2) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 妊娠中の飲酒防止 妊娠中の喫煙防止 「いいお産」の普及 母乳育児の推進 産後うつ対策 児童虐待の発生予防 親子の心の健康づくり 充実した ある程度 不 変 縮小した 未実施 充実した
市町村の取り組み状況(3)
取り組みとアウトカム指標の推移 都道府県 政令市等 市町村 充実した ある程度 充実 十代の人工中絶防止 21.3 44.7 10.4 アウトカム 指標推移 充実した ある程度 充実 十代の人工中絶防止 21.3 44.7 10.4 27.3 2.8 12.7 不変 十代の性感染症予防 17.0 66.0 13.2 56.6 3.2 15.6 悪化 十代の喫煙防止 23.4 57.5 19.5 46.8 4.5 18.6 改善 十代の飲酒防止 8.5 42.6 9.1 35.1 2.0 10.6 調査中 十代の薬物乱用防止策 55.3 13.0 32.5 2.1 9.9 指標(-) 思春期の心の健康対策 12.8 48.9 6.6 34.2 女子悪化
取り組みとアウトカム指標の推移 都道府県 政令市等 市町村 充実した ある程度 充実 妊娠中の飲酒防止 17.0 66.0 7.8 39.0 アウトカム 指標推移 充実した ある程度 充実 妊娠中の飲酒防止 17.0 66.0 7.8 39.0 4.1 23.5 やや改善 妊娠中の喫煙防止 2.1 46.8 14.5 50.0 6.0 32.9 不妊専門相談センター 59.6 25.5 6.9 16.7 - 改善 周産期医療ネットワーク 55.3 13.9 不変 「いいお産」の普及 0.0 27.7 5.2 27.3 5.1 25.1 母乳育児の推進 4.3 21.3 14.3 24.7 7.2 30.2 産後うつ対策 10.9 45.7 23.7 44.7 8.4 35.2 調査中
取り組みとアウトカム指標の推移 都道府県 政令市等 市町村 充実した ある程度 充実 小児期からの生活習慣 8.7 45.7 11.8 アウトカム 指標推移 充実した ある程度 充実 小児期からの生活習慣 8.7 45.7 11.8 40.8 9.3 38.0 指標(-) 予防接種率の向上 10.6 55.3 21.6 54.1 18.2 49.9 改善 「かかりつけ医」の確保 13.0 32.6 9.2 23.7 2.8 18.0 小児救急医療対策 46.8 33.8 36.4 7.1 20.6 子どもの事故防止対策 14.9 34.0 19.5 49.4 5.4 34.5 不変 慢性疾患児の療養支援 6.4 9.1 0.8 6.5 児童虐待の発生予防 36.2 51.3 13.3 49.0 悪化 親と子の心の健康づくり 17.0 40.4 16.9 40.3 8.5 37.4 不変? 食育の推進 25.5 64.9 14.2 53.9
関係団体の取り組み状況(プロセス評価) 1.担当者を決めましたか。 2.健やか親子21の推進について活発に検討や議論を行いましたか。 3.年次計画に中に「健やか親子21」関連の事業を盛り込みましたか。 4.取り組む課題を明確にしましたか。 5.課題を達成させるための方策(事業)を明確にしたか。 6.アウトカム指標(成果)の目標値を設定しましたか。 7.アウトプット指標(事業量)の目標値を設定しましたか
関係団体の取り組み状況(プロセス評価) 8.指標のモニタリング(データを収集する)システムはありますか。 9.定期的に取り組みの評価をおこないましたか。 9.健やか親子事業関連の予算を別途計上しましたか。 10.健やか親子関連の研究事業などに参加したか。 11.他の機関との連携を図りましたか。 12.自分の機関や団体のホームページ等に取り組みを公表しましたか。 13.健やか親子21公式ホームページに情報を提供しましたか。
市区町村の「健やか親子21」への取り組みの効果に関する分析 (分担研究者:藤内修二) 市区町村の「健やか親子21」への取り組みの効果に関する分析 (分担研究者:藤内修二) 【対 象】 「健やか親子21」の中間評価のために,人口規模別に無作為に抽出された182市区町村のうち、調査に協力の得られた147市区町村から,平成14年4月1日以降に市町村合併をして,母子保健事業の枠組みに影響があったと考えられる31市区町村を除いた116市区町村において,平成17年6~8月に乳幼児健康診査を受診した親子。 3,4か月児 102市区町村 5,272人 1歳6か月児 110市区町村 6,158人 3歳児 109市区町村 6,082人 【方 法】 厚生労働省母子保健課が、平成17年6月に実施した 全国市区町村に対する実態調査により得られた「健やか親子21」への取組状況に関するデータと乳幼児健康診査受診の際に自記式調査で得られた親子の健康状態や生活習慣についてのデータをリンケージして分析を行った。
妊娠中の喫煙対策の効果 出産3,4か月後の喫煙率 他部局と の連携 県と の連携 関係機関 との連携 関係団体 との連携 住民組織 との連携 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 他部局と の連携 なし あり 県と の連携 なし * あり 関係機関 との連携 なし * あり 関係団体 との連携 なし あり 住民組織 との連携 なし あり * p<0.05
母乳育児推進の効果 生後1ヶ月時に母乳のみ者の割合 他部局と の連携 県と 関係機関 との連携 関係団体 住民組織 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% なし あり 他部局と の連携 県と 関係機関 との連携 関係団体 住民組織 ** * * * p<0.05 ** p<0.001
生後1ヶ月時の栄養法と次の出産の意向 母 乳 混 合 人工乳 64.6% 56.3% 46.3% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 母 乳 64.6% 1097名 混 合 56.3% 1313名 人工乳 46.3% 164名 産みたい どちらかといえば,産みたい 産みたくない どちらかといえば,産みたくない (生後3,4か月の第1子をもつ母親 2574名)
妊娠期から産後までの継続した支援体制の 整備への取り組みと次の子どもの出産の意向 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 第1子 16.9% * p<0.05 第2子 11.9% 第3子 取り組んでいる 取り組んでいない
自治体の事故防止対策の取り組みと事故対策得点 77 77 78 78 79 79 80 未実施 パネルやビデオ 実施 未実施 パンフの配布 実施 未実施 チェックリスト 実施 未実施 個別指導 実施 集団指導 (統一テーマ) 未実施 実施 未実施 集団指導 実施