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表紙

インフレーションと バックグラウンド重力波 大阪大学理学研究科 作成 横山順一 代読 瀬戸直樹

f=0.1Hzの宇宙論的意義 現在の波長 このスケールがホライズンに入ったのは の初期宇宙 このスケールがホライズンに入ったのは          の初期宇宙 それから現在までにスケールファクターは      倍になっている。

インフレーション 初期宇宙のインフレーション:宇宙の一様等方化 緩慢な時間発展をするスカラー場の ポテンシァルエネルギー(宇宙が膨張 してもエネルギー密度が減衰しない) によってインフレーションが起こる Chaotic Inflation New Inflation 振動のエネルギーが熱化し、 再加熱: hot big bang 宇宙へ Slow-roll近似 加速的膨張により、非一様性が引き延ばされ、 曲率半径も指数関数的に大きくなる。

インフレーションによる密度・曲率揺らぎの生成 古典解は         、 のようになるが、実際には量子揺らぎ により、場の進化は一様でなく、場所に 依存したズレが現れる。 Chaotic Inflation New 曲率揺らぎ

量子揺らぎの性質 インフレーションを起こすスカラー場Φ の量子的性質~ インフレーションを起こすスカラー場Φ の量子的性質~ De Sitter時空に於けるmassless scalar field の振る舞い モード関数は より、 とかける。 長波長域で一定。

量子揺らぎの性質 を用い、対数(周)波数間隔 すなわち で積分すると という波数によらない値になる。 を用い、対数(周)波数間隔     すなわち で積分すると という波数によらない値になる。 Hubble time 毎に、初期波長~  、 振幅        の 揺らぎが次々と生成し、宇宙膨張によって引き延ばされていく

重力波モードの量子揺らぎ テンソル型線型摂動 と展開すると、 はmassless scalar場としてふるまう。( は偏極 ) したがって、                 となり、対数周波数あたりの 振幅は となり、 これは振動数によらない振幅を持つ。 Hはインフレーション中のハッブルパラメタ。 Hubble time 毎に、初期波長~  、 振幅        の 揺らぎが次々と生成し、宇宙膨張によって引き延ばされていく

インフレーション宇宙におけるスケールの進化 scale H-1 Hubble horizon 図の波長の重力波の振幅 は波長がホライズンより長 い、  から  の間は一定 Radiation dominant 波長 波長がホライズンに入った 後はスケールファクターに 反比例して振幅は小さくなる inflation H-1 Matter dominant time 現在の振幅は

このようなテンソル揺らぎは宇宙背景輻射の非等方性を                    程度もたらす。 COBEの制限は           である。 まであってもよい。

現実的なインフレーションモデルでどれくらいできるか Chaotic Inflation New Chaotic Inflation:密度揺らぎの 振幅からHが決まってしまう。 New Inflation: Coleman-Weinberg型ポテンシァル: 不定である。 Double-wellポテンシァル 最大で           程度までできる。 その際密度揺らぎのスペクトル指数が1より小さくなる

すぐにみつかるだろう (Chaotic inflationの方がもっとも らしいから) CMBから許される上限 New inflationの上限

その宇宙論的意義 Cosmic inversion計画*や大域構造から揺らぎの初期スペクトルが 求められるのは20~1000Mpcスケールだけである。 インフレーションのポテンシァルに対する情報も限られる。 これらのスケールがインフレーション中にホライズン を出る間に、インフラトンΦはプランクスケール程度 変化しているので、これは素粒子論に大きな知見を 与える。 Decigoによって       スケールのことがわかるということは インフレーションのポテンシァルを再構成することに大きな意義を 持つ。 *CMB揺らぎからの初期スペクトル再構成:松宮佐々木横山Phys. Rev. D65(2002)083003

しかしもちろん、それ以外のstochastic backgroundがないことが前提である。 Astrophysical sourcesからのバックグラウンド: WD-WDバイナリ、NS-NSバイナリから。0.1Hz域に寄与する数は 少ないので分離できるだろう。(Schneider et al 2000) Cosmic stringsからの重力波: 線密度μと相転移のスケー ルvは        を満たし、 重力波のエネルギー密度は 周波数によらず、なんと にもなる。 もし、       にストリング ができたとすると、そちらの 重力波が凌駕する。 CMBから許される上限 Chaotic inflationの予言 New inflationの上限

縮退した真空*を持つスカラー場が一様化する際に放出する重力波: (*flat direction) (Krauss 92) ならインフレーションの重力波を凌駕する。 Chaotic inflationの予言 New inflationの上限

これらはむしろ積極的にとらえるべきで、 仮にこの感度で有意な検出がなかったとしたら、、、 で生成するローカルストリングを棄却できる。 のflat directionを持ったスカラー場の相転移 を禁止できる。

DECIGOは宇宙論に大きなインパクトを与える。 と素粒子物理 これくらい感度が良くなると、もはや 「重力相互作用は弱いから、その影響は見えない」 などと暢気なことは言えなくなる。