わが国の産婦人科医の現状 平成26年医師歯科医師薬剤師調査の結果を踏まえて 2015年12月21日 わが国の産婦人科医の現状 平成26年医師歯科医師薬剤師調査の結果を踏まえて 日本産科婦人科学会 医療改革委員会
わが国の産婦人科医の現状 平成26年医師歯科医師薬剤師調査の結果を踏まえて 医師歯科医師薬剤師調査(三師調査)は2年ごとに行われ、詳細が公表されています。平成26年末現在のデータが平成27年12月17日に公表されました。前回調査と比較して、産婦人科+産科を主たる診療科とする医師が2%増加したことが報道されています。この報道は以下の「結果の概要」及び「報道発表用資料」に基づいているものと考えられますが、産婦人科の現場の感覚とは解離があるように思われます。そこで、今回の調査結果の詳細について、「詳細な統計」データの解析を行いましたので、ご報告いたします。 ちなみに前回の調査結果公表の際に、様々な解析を行っています。以下をご参照いただければ幸いです。 http://shusanki.org/theme_page.html?id=250 結果の概要: http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/index.html 報道発表用資料 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/H26houdou.pdf 詳細な統計: http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001030962
医師歯科医師薬剤師調査 医師数の変化(主たる診療科)小児科と産婦人科+産科 医師歯科医師薬剤師調査 医師数の変化(主たる診療科)小児科と産婦人科+産科 主たる診療科が産婦人科ないし産科の医師数は、平成16年の10074名をボトムに、過去4回の調査で連続して漸増し、平成26年には11085名となっています。10年間で10.0%増加したことになります。 日本産科婦人科学会では、関係諸団体及び国、都道府県等と協力して、現場の産科・周産期医療を担う医師が絶対的に不足している現状を打開するために、活動を続けてきました。 今回の調査結果は、過去10年間の私どもの活動の成果の一側面を示すものと考えられます。
産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2005年度 産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2005年度 日本産科婦人科学会員の会員数の推移について検討しました。2005年(平成17年)のデータでは産婦人科医の性別構成は男性優位から女性優位に急速な変化が認められていました。
産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2010年度 産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2010年度 5年後の状況です。
産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2015年度 産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2015年度 10年が経過して、若手医師の全体の数が増加傾向にあること、男性医師の減少傾向に一定程度の歯止めがかかっていることが明らかになってきていると思われます。
過去10年間の産婦人科医数・構成の変化 産婦人科医は臨床現場を離れていても、ある程度の年齢になるまで学会を退会することは稀と考えられ、学会員数の調査結果はその限界を認識した上で評価する必要があります。ここでは、年齢を65歳までに絞った産婦人科医数の変動をみてみました。25ー65歳の産婦人科医数は過去10年間で11.1%増加しています。男性医師は10.6%減少し、女性医師は69.9%増加していました。 この結果は、三師調査の結果とほぼ一致していると考えられます。
産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科医) 2015年3月31日現在 産婦人科医の現状 日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科医) 2015年3月31日現在 産婦人科専門医制度を運営している学会として、新規産婦人科専攻医の増加をはかり、社会が必要とする産婦人科医を確実に養成することは。日産婦学会の重要な任務と考えられます。そのために様々な努力を続けてきていますが、現実は厳しく、2010年度まで増加していた新規産婦人科専攻医数はその後、5年連続で減少を続けています。
医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 平成18年から平成26年の変化の分析 医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 平成18年から平成26年の変化の分析 三師調査では、都道府県別、診療科別、病院ー診療所別の医師数のデータも公表されています(表41)。 このデータを用いて、都道府県ごとの産婦人科医の変化を分析しました。
医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 全医療機関 平成18年から平成26年の変化 医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 全医療機関 平成18年から平成26年の変化 全国で1011名増 2006年から2014年の間の都道府県別の増減をみると、増加数が多いのは大都市圏にほぼ限定され、福島、栃木、群馬、山梨、島根、山口、徳島、高知、宮崎、鹿児島の10県では減少していることがわかります。
医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 全医療機関 平成18年から平成26年の増加率 医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 全医療機関 平成18年から平成26年の増加率 平成18年からの変化率でみると、増加率が高いのは、滋賀、青森、東京、大阪、奈良、沖縄、神奈川、福岡などであり、減少率が高いのは、鳥取、高知、福島などであることがわかります。
医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 全医療機関 平成18年から平成26年の増加数(人口100万対) 医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 全医療機関 平成18年から平成26年の増加数(人口100万対) 医師数変化の影響の大きさを標準化するために、人口100万人あたりの増減数を計算すると、人口あたり増加数が多いのは滋賀、東京、沖縄、大阪、青森、奈良、福岡、岡山などであり、人口あたり減少数が多いのは、鳥取、高知、栃木、福島などであることがわかります。
医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 病院 平成18年から平成26年の変化 医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 病院 平成18年から平成26年の変化 全国で1162名増 病院勤務医に限定した場合、増加数が多いのは、4大都市圏であり、減少しているのは、福島、栃木、山梨、鳥取、高知であることがわかります。
医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 診療所 平成18年から平成26年の変化 医師歯科医師薬剤師調査 都道府県別医師数 主たる診療科 産婦人科+産科 診療所 平成18年から平成26年の変化 全国で151名減 診療所勤務医は全体として151名減少していますが、その中で増加しているのは、青森、秋田、東京、神奈川、静岡、愛知、滋賀、香川、大分、沖縄であることがわかります。このうち秋田以外では病院勤務医の増加も認められています。
医師歯科医師薬剤師調査の結果からみた 産婦人科医の動向 産婦人科医全体の数が増加に転じた平成18年以降の都道府県別の増減を検討しました。 増加数が多いのは大都市圏にほぼ限定され、福島、栃木、群馬、山梨、鳥取、山口、徳島、高知、宮崎、鹿児島の10県では減少しています。 平成18年からの変化率でみると、増加率が高いのは、滋賀、青森、東京、大阪、奈良、沖縄、神奈川、福岡など、減少率が高いのは、鳥取、高知、福島などでした。 人口100万人あたりの増減数を計算すると、人口あたり増加数が多いのは滋賀、東京、沖縄、大阪、青森、奈良、福岡、岡山など、人口あたり減少数が多いのは、鳥取、高知、栃木、福島などでした。 病院勤務医に限定した場合、増加数が多いのは4大都市圏であり、減少しているのは、福島、栃木、山梨、鳥取、高知でした。 診療所勤務医は全体として151名減少していますが、その中で増加しているのは、青森、秋田、東京、神奈川、静岡、愛知、滋賀、香川、大分、沖縄でした。 福島、栃木、鳥取、高知の各県は平成18年から平成26年の8年間で特に産婦人科医の減少が著しいことがわかります。大都市圏と地方の県の間で産婦人科医の地域偏在が進行していると考えられます。