聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 後記研修医 三上翔平 Temporal trends in the use of parenteral nutrition in critically ill patients. Hayley B. Gershengorn , MD ; Jeremy M. Kahn , MD ; and Hannah Wunsch , MD (Chest. 2014 Mar 1;145(3):508-17. doi: 10.1378/chest.13-1597.)(PMID 24233390) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 後記研修医 三上翔平
背景 近年の重症症例における非経口栄養投与の方法 重症疾患では栄養状態不良となりやすい。 ガイドラインでは経口摂取不可の症例に対し、24~48時間以内の早期栄養投与開始を推奨している。 非経口栄養は経腸栄養単独で行った場合よりもより高カロリー状態を保つことが可能と考えられる。 しかしその一方で消化管粘膜の萎縮、過剰栄養状態、体液量過剰、高血糖、感染などの合併症を引き起こす可能性も高い。 そのためガイドラインでは消化管機能に問題なければ重症症例でも経腸栄養のほうがより好ましいと強調している。 また非経口栄養の開始については、かつて健康であった患者が7日間絶食状態とされて初めて開始することを推奨している。 しかし今までのデータでは 非経口栄養の実際の使用頻度や開始時期についての情報が乏しい。
目 的 アメリカ合衆国における重症患者において、非経口栄養の使用方法の疫学の特徴を明らかにする。
方 法 1 成人ICU入院患者に対し、Project IMPACT databaseを用いた後ろ向きコホート研究を施行 方 法 1 成人ICU入院患者に対し、Project IMPACT databaseを用いた後ろ向きコホート研究を施行 Project IMPACTに参加しているICUは定期的な監査、およびそれについてのFeedbackを受けている。 データ:2001年~2008年のものを使用
方 法 2 対象 参加した125病院のうちの176のICUに最初に入院した成人患者 ※除外項目: ・18歳未満 方 法 2 対象 参加した125病院のうちの176のICUに最初に入院した成人患者 ※除外項目: ・18歳未満 ・neurologic ICU ・neurosurgical ICU ・cardiac surgery ICU 特に下の3つの施設は数も少なく、専門性が高いという理由で除外
方法3 選定されたICUにおいて患者を年齢、性別、人種に分類したほか、MPM0-Ⅲに基づき重症度を振り分けた。 選定されたICUを教育的施設か否か、都会・近郊・田舎、内科ICU・外科ICU・混合型、Open型・Close型(もしくはすべての入室症例に対しコンサルトが義務化されている施設)によって分類した。(Table2)
方法4 それぞれの対象患者に対する栄養投与の開始、および中止した日数を算出。 栄養投与方法はTPN、TPN+Lipids、PPN、PPN+Lipids、Lipids、経腸栄養に分類。 非経口栄養はTPN、PPN、Lipidsのうち、いずれの組み合わせも含まれ、経腸栄養の補助として使用された場合も含む。 最低でも1日以上ICUに滞在していたことが条件。
方 法5:統計解析 一般的な統計解析 2001年~2008年の期間をそれぞれ2年ごとに分割 χ2検定、分散分析を使用 方 法5:統計解析 一般的な統計解析 2001年~2008年の期間をそれぞれ2年ごとに分割 χ2検定、分散分析を使用 多変数解析を使用し、補正後確率を算出。 →すべての患者、および患者グループにおける継時的な非経口栄養の使用頻度について評価。
結 果
対象となった337,422症例のうち、20,913(6.2%)症例がICU入院中に非経口栄養投与を受けていた。(そのうちの95%がTPN)
非経口栄養の使用頻度は減少傾向であった。(Table4) 2001年から2002年にかけては7.2% 2007年から2008年にかけては5.5% 非経口栄養の使用頻度が特に減少していたのは、緊急手術後の患者、重症度が中等度の患者、外科ICUの患者、そして教育的施設入院中の患者であった。(Table4)
Figure1 15.3% 11.5% 経腸栄養の使用頻度は増加傾向にあった。(Figure1) 2001年から2002年にかけては11.5% 2007年から2008年にかけては15.3%
非経口栄養開始時期は平均してICU入室して2日後
Figure2 90%以上の患者が7日以内に非経口栄養を開始されていた。
結論 アメリカ合衆国のICUにおける非経口栄養の使用頻度は2001年から2008年にかけて減少傾向にある。 経腸栄養の使用頻度は増加傾向にある。 非経口栄養投与の大半はICU入室後7日以内に開始されている。 経腸栄養の補助として非経口栄養が使用されている。 ※③、④については、2001年から2008年にかけて変化なし
考 察 1 非経口栄養の使用頻度の減少について 経腸栄養の使用頻度の増加 考 察 1 非経口栄養の使用頻度の減少について 経腸栄養の使用頻度の増加 非経口栄養に合併する様々なリスク(感染、体液量過剰等)との兼ね合い。 等が影響していると思われる。 経済学的分析においては、ICUにおける非経口栄養の使用はコストを削減するとの報告もあり。
考察 2 経腸栄養の使用頻度の増加について 重症患者における経腸栄養と死亡率との関係を調査した研究や、経腸栄養の早期投与について疑問視する研究も出てきている。
考 察:Limitation 非経口栄養の投与方法や開始理由が明確ではなかった。 非経口栄養の投与期間や、実際に使用されていた非経口栄養が必要カロリーを満たすための経腸栄養の補助であったかどうか不明であった。 CVカテーテル感染症など、致死的合併症についての情報がなかった。 Project IMPACTが2008年以降のデータ収集を中止したため、それ以降の傾向について評価不可能であった。
結 語 非経口栄養の使用頻度は減少傾向にあることが証明された。 結 語 非経口栄養の使用頻度は減少傾向にあることが証明された。 非経口栄養の開始時期についてはガイドラインの推奨時期よりもはるかに早期であった。 一方で非経口栄養使用頻度の高いグループもあり(Table1)、これについてはその正当性について決定していく必要がある。