聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 後記研修医 三上翔平

Slides:



Advertisements
Similar presentations
自然気胸. 自然気胸になりやすい条件 ・喫煙者は非喫煙者に比べて気胸になりやすい。 1-12 本 本 23 本以上 ( 1 日当り)男 7 倍 21 倍 102 倍 女 4 倍 14 倍 68 倍 ・ 20 歳代前半で生じることが多い。 症状 ほとんどは安静時に生じる突然の呼吸苦・胸膜痛。
Advertisements

2015/6/16 聖マリアンナ医科大学 救急医学 森澤健一郎. 背景 COPD は米国で死亡原因の第 3 位 500 億 $/ 年のコストの 60% は「急性増悪」 COPD 急性増悪の死亡率は 倍 ステロイド全身投与は有用だが適量は不明 ICU 症例では一般病棟に比べてステロイド量が.
米国の外来呼吸器感染症での抗菌薬投与状況 抗菌薬投与率 普通感冒 5 1% 急性上気道炎 52% 気管支炎 6 6% 年間抗菌薬総消費量 21% 【 Gonzales R et al : JAMA 278 : ,1997 】
2015/03/02 聖マリアンナ医科大学 救急医学講座 後期研修医 吉田英樹
つちだ小児科  土田晋也
当院健診施設における脂肪肝と糖尿病リスクの統計学的な検討
背景 CABGを必要とする虚血性冠動脈疾患の背景には動脈硬化の影響があり、プラークの退縮効果が明らかにされているスタチンを投与することで予後を改善する効果が期待される CABGを行った患者に対しスタチンを投与することで予後を改善する効果を検証することが本研究の目的である 2015/2/17 第45回日本心臓血管外科学会.
体重減少 ◎食欲があるのに体重が減る ⇒糖尿病、甲状腺機能亢進症、吸収不良症候群などを疑う ◎食欲がなくて体重が減る ⇒その他の疾患を疑う
どうしてメタボは       なくならないのか? メタボって 最低よね?❤ えっ!!?.
児童の4年間の成長曲線と給食から見られる 食事の偏りとの関連性の検討
Yokohama City Save Hospital ☆Emergency and Critical Care Medicine☆
聖マリアンナ医科大学 救急医学講座 後期研修医 吉田英樹
Effects of fluid resuscitation with colloids vs crystalloids on mortality in critically Ill patients presenting with hypovolemic shock JAMA. Nov vol310,No.17.
トラネキサム酸の効果 出血を伴う外傷患者の死亡リスクを低下 科学的根拠をここに示します.
社会問題 安楽死、尊厳死 (参考)
Journal Club N Engl J Med 2014; 370:
4.「血液透析看護共通転院サマリーVer.2」 の説明
2006年度からのリハビリ日数制限と発症後60日以内の入院制限の影響
聖マリアンナ医科大学救命救急医学教室 今西 博治
図1 対象症例 H20.1/1-1/31までの入院・外来糖尿病患者総数 入院患者 15203名(内 透析患者 622名)
透析患者に対する 大動脈弁置換術後遠隔期の出血性合併症
Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock, 2012 岩村あさみ.
集中治療室入室経験者の その後の生活・人生について
一般住民の大腿骨近位部骨折発症率で 認められる地域差は、 血液透析患者でも認められる
A 「喫煙率が下がっても肺ガン死亡率が減っていないじゃないか」 B 「喫煙を減らしてもガン減るかどうか疑問だ」
回復期リハビリテーションの成績報告 脳卒中の病型・部位別に
インスリンの使い方 インターンレクチャー.
汎用性の高い行動変容プログラム 特定健診の場を利用した糖尿病対策(非肥満を含む)
Hironori Kitaoka.
1 大阪大学で行っているリスク分類の原則 1)原則として、胎生期の一番早期に、信頼出来る条件で測定された
「小児急性中耳炎診療指針」 利用上の注意点
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
汎用性の高い行動変容プログラム 特定健診の場を利用した糖尿病対策(非肥満を含む)
四国調剤グループ:稲本悠 田中繁樹 浜田嘉則 徳島文理大学薬学部 医療薬学講座:浜田嘉則 京谷庄二郎
Outcomes Among Patients Discharged From Busy Intensive Care Units
「保育所等におけるアレルギー対応」 厚生労働省 平成28年度保育所等事故予防研修会 国立病院機構 福岡病院 名誉院長 西間 三馨
VAP(人工呼吸器関連肺炎) の予防 JSEPTIC_Nursing.
チュートリアルシリーズ 検索事例編② 静脈血栓塞栓症(VTE) 予防 ガイドラインの参照について
疫学概論 患者対照研究 Lesson 13. 患者対照研究 §A. 患者対照研究 S.Harano,MD,PhD,MPH.
スギ花粉とダニの重複抗原例の 舌下免疫療法について-副作用の検討- はじめに 対象と方法 シダトレン®、 ミティキュア®重複投与例
聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 救命    古澤 彩美.
第48回日本神経学会 PZZ-301 神経学資源の国内分布 池田正行1) 2) mail adresss goo
第2回 福祉の現在・現在 厚生労働省(2018) 障害者白書 厚生労働省(2016) これからの精神保健福祉のあり方に          関する検討会資料.
看護管理学特論 救急・集中治療領域における家族看護
一般住民と比較した米国透析患者の標準化自殺率比(SIR) 表.一般住民と透析患者の年齢階級別死亡者数
健診におけるLDLコレステロールと HDLコレステロールの測定意義について~高感度CRP値との関係からの再考察~
感染症集団発生事例に対する基本的対応 大山 卓昭 感染症情報センター 国立感染症研究所.
疫学概論 交絡 Lesson 17. バイアスと交絡 §A. 交絡 S.Harano, MD,PhD,MPH.
医療法人社団 高山泌尿器科 臨床工学部門 斎藤 寿 友西 寛 工藤 和歌子 佐藤 友紀
Interventions to Improve the Physical Function of ICU Survivors            (CHEST 2013;144(5): ) 聖マリアンナ医科大学 救急医学 田北 無門.
日本形成外科学会 皮膚腫瘍外科分野指導医 症例記録用紙
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化による回復期リハの成果測定法の提唱
St. Marianna University, School of Medicine Department of Urology 薄場 渉
肺炎診断の最新知見と ガイドラインに基づく治療戦略 ~カルバペネム系抗菌薬を中心に~
Journal Club 2013/11/19 聖マリアンナ医科大学 救急医学
異所性妊娠卵管破裂に対する緊急手術中の輸血により輸血関連急性肺障害(TRALI)を発症した1例
データベースの作り方  リサーチカンファレンス.
高齢慢性血液透析患者の 主観的幸福感について
疫学概論 情報の要約 Lesson 3. 情報の要約 (率、比、割合) S.Harano,MD,PhD,MPH.
院内の回復期リハ病棟間の成果比較  -予後因子(入院時年齢・FIM・発症後日数)の階層化による測定法を用いて-
筑波メディカルセンター病院 緩和ケア病棟 佐々木智美
我が国の自殺死亡の推移 率を実数で見ると: 出典:警察庁「自殺の概要」
先進予防医学共同専攻臨床疫学 臨床疫学とは 現在の取り組みと成果 研究材料・手法 未来のあるべき医療を見つめて改革の手法を研究します。 特徴
麻疹(はしか) の流行が広がっています! - 早急に予防接種が推奨される方 - - 特に麻疹が疑われる方 -
各施設の悩みなど 西関東グループ.
川崎医科大学心臓血管外科 心臓血管外科専門医認定機構 種本和雄
疫学概論 §C. スクリーニングのバイアスと 要件
「JSEPTIC-BW ICU における体重測定の意義」 経緯と今後
衛生委員会用 がんの健康講話用スライド.
Presentation transcript:

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 後記研修医 三上翔平 Temporal trends in the use of parenteral nutrition in critically ill patients. Hayley B. Gershengorn , MD ; Jeremy M. Kahn , MD ; and Hannah Wunsch , MD (Chest. 2014 Mar 1;145(3):508-17. doi: 10.1378/chest.13-1597.)(PMID 24233390) 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 後記研修医 三上翔平

背景 近年の重症症例における非経口栄養投与の方法 重症疾患では栄養状態不良となりやすい。 ガイドラインでは経口摂取不可の症例に対し、24~48時間以内の早期栄養投与開始を推奨している。 非経口栄養は経腸栄養単独で行った場合よりもより高カロリー状態を保つことが可能と考えられる。 しかしその一方で消化管粘膜の萎縮、過剰栄養状態、体液量過剰、高血糖、感染などの合併症を引き起こす可能性も高い。 そのためガイドラインでは消化管機能に問題なければ重症症例でも経腸栄養のほうがより好ましいと強調している。 また非経口栄養の開始については、かつて健康であった患者が7日間絶食状態とされて初めて開始することを推奨している。 しかし今までのデータでは 非経口栄養の実際の使用頻度や開始時期についての情報が乏しい。

目 的 アメリカ合衆国における重症患者において、非経口栄養の使用方法の疫学の特徴を明らかにする。

方 法 1 成人ICU入院患者に対し、Project IMPACT databaseを用いた後ろ向きコホート研究を施行 方 法 1 成人ICU入院患者に対し、Project IMPACT databaseを用いた後ろ向きコホート研究を施行 Project IMPACTに参加しているICUは定期的な監査、およびそれについてのFeedbackを受けている。 データ:2001年~2008年のものを使用

方 法 2 対象 参加した125病院のうちの176のICUに最初に入院した成人患者 ※除外項目: ・18歳未満 方 法 2 対象 参加した125病院のうちの176のICUに最初に入院した成人患者 ※除外項目:  ・18歳未満  ・neurologic ICU ・neurosurgical ICU  ・cardiac surgery ICU 特に下の3つの施設は数も少なく、専門性が高いという理由で除外

方法3 選定されたICUにおいて患者を年齢、性別、人種に分類したほか、MPM0-Ⅲに基づき重症度を振り分けた。 選定されたICUを教育的施設か否か、都会・近郊・田舎、内科ICU・外科ICU・混合型、Open型・Close型(もしくはすべての入室症例に対しコンサルトが義務化されている施設)によって分類した。(Table2)

方法4 それぞれの対象患者に対する栄養投与の開始、および中止した日数を算出。 栄養投与方法はTPN、TPN+Lipids、PPN、PPN+Lipids、Lipids、経腸栄養に分類。 非経口栄養はTPN、PPN、Lipidsのうち、いずれの組み合わせも含まれ、経腸栄養の補助として使用された場合も含む。 最低でも1日以上ICUに滞在していたことが条件。

方 法5:統計解析 一般的な統計解析 2001年~2008年の期間をそれぞれ2年ごとに分割 χ2検定、分散分析を使用 方 法5:統計解析 一般的な統計解析 2001年~2008年の期間をそれぞれ2年ごとに分割 χ2検定、分散分析を使用 多変数解析を使用し、補正後確率を算出。 →すべての患者、および患者グループにおける継時的な非経口栄養の使用頻度について評価。

結 果

対象となった337,422症例のうち、20,913(6.2%)症例がICU入院中に非経口栄養投与を受けていた。(そのうちの95%がTPN)

非経口栄養の使用頻度は減少傾向であった。(Table4) 2001年から2002年にかけては7.2% 2007年から2008年にかけては5.5% 非経口栄養の使用頻度が特に減少していたのは、緊急手術後の患者、重症度が中等度の患者、外科ICUの患者、そして教育的施設入院中の患者であった。(Table4)

Figure1 15.3% 11.5% 経腸栄養の使用頻度は増加傾向にあった。(Figure1)   2001年から2002年にかけては11.5%   2007年から2008年にかけては15.3%

非経口栄養開始時期は平均してICU入室して2日後

Figure2 90%以上の患者が7日以内に非経口栄養を開始されていた。

結論 アメリカ合衆国のICUにおける非経口栄養の使用頻度は2001年から2008年にかけて減少傾向にある。 経腸栄養の使用頻度は増加傾向にある。 非経口栄養投与の大半はICU入室後7日以内に開始されている。 経腸栄養の補助として非経口栄養が使用されている。 ※③、④については、2001年から2008年にかけて変化なし

考 察 1 非経口栄養の使用頻度の減少について 経腸栄養の使用頻度の増加 考 察 1 非経口栄養の使用頻度の減少について 経腸栄養の使用頻度の増加 非経口栄養に合併する様々なリスク(感染、体液量過剰等)との兼ね合い。 等が影響していると思われる。 経済学的分析においては、ICUにおける非経口栄養の使用はコストを削減するとの報告もあり。

考察 2 経腸栄養の使用頻度の増加について 重症患者における経腸栄養と死亡率との関係を調査した研究や、経腸栄養の早期投与について疑問視する研究も出てきている。

考 察:Limitation 非経口栄養の投与方法や開始理由が明確ではなかった。 非経口栄養の投与期間や、実際に使用されていた非経口栄養が必要カロリーを満たすための経腸栄養の補助であったかどうか不明であった。 CVカテーテル感染症など、致死的合併症についての情報がなかった。 Project IMPACTが2008年以降のデータ収集を中止したため、それ以降の傾向について評価不可能であった。

結 語 非経口栄養の使用頻度は減少傾向にあることが証明された。 結 語 非経口栄養の使用頻度は減少傾向にあることが証明された。 非経口栄養の開始時期についてはガイドラインの推奨時期よりもはるかに早期であった。 一方で非経口栄養使用頻度の高いグループもあり(Table1)、これについてはその正当性について決定していく必要がある。