2015.03.15 (株)地域・技術経営総合研究所 (株)多夢 中原 新太郎 災害と日本人、イノベーション 2015.03.15 (株)地域・技術経営総合研究所 (株)多夢 中原 新太郎
1.はじめに:1995年から20年 1995年は平成日本の防災の一大エポック 自然災害 1/17:阪神・淡路大震災(大都市圏直下型地震) 事件・事故 3/20:地下鉄サリン事件(世界初の都市型毒ガステロ) ↓ 少子高齢化だけでなく、災害・事件についても日本は「課題先進国」 多発する災害に鍛えられた高度先進技術の応用と運用 日本の経験と日本発のICTによる対策を世界へ提供 世界に貢献できるのは環境技術だけではない。 世界に提供できるソフトもゲーム・アニメだけではない。 対策:技術+人・組織の対応(ソフト)
2.日本の特徴 1.まず自分に何ができるか考え、リスクを取って 行動する人間が、年代・地域を問わずに存在。 2.子供の頃から身近にICT。 3.研究者、技術者のコミュニティが被災地の近くに存在。 4.歴史の伝承がある。 5.自然との共生が受け継がれている。 6.利他の心が重んじられている。 7.識字率が高く、地方でも大学進学率が高い。
2.1.自分に何ができるか考え、リスクを取って 行動する人間が、年代・地域を問わずに存在。 2.2.子供の頃から身近にICT。 同時多発的に各地で行動が開始される。 例:NHKのニュースをネットに流したのは 広島の中学生だった。 それをNHKの公式Twitter担当者が追認。 更にはNHKの公式サイトからリンク。 発災2時間後には福岡県久留米市運営の 地域SNSが支援表明。
2.3.研究者、技術者のコミュニティが 被災地の近くに存在。 2.3.研究者、技術者のコミュニティが 被災地の近くに存在。 これにより、被災地で必要な製品、サービスが 災害の段階に応じて提供される。 例:モバイルフォーンのアプリケーション by Androidの会、IT×災害on Facebook 大阪安全安心まちづくり支援ICT活用協議会 Yahooトップページ
2.4.歴史の伝承があること。 過去の風習と現代技術の融合でイノベーション 過去の災害の記憶の伝承 例:地域SNS連携村継ぎプロジェクト 村継ぎ:江戸時代(400年前)の風習 災害の境界線としての古刹
2.5.自然との共生が受け継がれている。 自然の脅威を抑え込むのではなく、 受け止め受け流す。 例:信玄堤、防潮林
2.6.利他の心が重んじられている。 公益>利己 例:1986年大島三原山の噴火 支払の約定も無いのに私企業の東海汽船 支払の約定も無いのに私企業の東海汽船 自主的に定期便を全便欠航、避難に振向。 同社バス運転手、ピストン輸送 島民1万人全員脱出、犠牲者ゼロ。 南三陸町防災無線係の犠牲 東京都特殊救助隊、域外の福島原発に 放水、冷却作業
2.7.識字率が高く、地方でも 大学進学率が高い。 2.7.識字率が高く、地方でも 大学進学率が高い。 災害の詳細な記録が残される。 状況や意思伝達が迅速、的確。 モバイルフォーンの普及率が高く、 アプリケーションソフトの開発も活発
3.自然災害とICT:課題と教訓 災害発生の度に、その教訓とICT進歩で、対応が進化 ・1995年:阪神・淡路大震災→パソコン通信+スニーカーネット (死者:6,434名 行方不明者:3名 負傷者:43,792名) 課題・教訓:電話の輻輳、安否確認・生活情報提供の必要性 ・2004年:新潟県中越地震→ 緊急地震速報、GIS、無線LAN 課題・教訓:速報システム、映像情報の重要性認識(しかしシステム貧弱) ・2005年:スマトラ沖地震→特定非営利活動法人BHN(Basic Human Needs 1992年設立) を経由した業界団体(CIAJ)主体の支援 (通信業界OBからなるスタッフを派遣、救援チームのための無線 通信網と被災者のためのFM放送局構築+FMラジオ16千台寄贈) 課題・教訓:日本の社会システムは世界に通用、人というソフトの強さ ・2007年:新潟県中越沖地震→緊急地震速報、BCP(事業継続)(←リケン工場被害)、 コミュニティFM (日経地域情報化大賞2007特別賞) (部品工場被災、死者15名 負傷者2345名 ) 課題・教訓:複数機関(警察・消防・防衛・県庁)での情報共有の重要性 ・2009年:台風9号→ 地域SNS、SNSコミュニティ (兵庫県の佐用町、穴粟市中心に多数の家屋が床上浸水、倒壊) 課題・教訓:SNSによるコミュニティ力回復で被害の局限化/復旧加速
4.東日本大震災での動き-1 4.1.地域SNS村継ぎプロジェクト 全国の地域SNSが連携し、物資をリレー 江戸時代の「村継ぎ」をSNS活用で現代に実現 背景に全国フォーラム定期開催による相互信頼 4.2.大槌みらい新聞 現地に大学生インターン、取材と配布 東京で地方新聞経験者が編集、印刷 クラウドファウンディングで資金調達 アマゾン欲しいものリストで機材調達 以上は世界初の試み
4.東日本大震災での動き-2 4.3.モバイルフォーンアプリケーション開発 エンジニアのコミュニティが自主開発 by Androidの会、IT×災害on Facebook 4.4.SNSの活用 Twitter、Facebook 4.5.カーナビゲーション+マッピング 自動車の走行記録を地図上に集積し、使用可能道表示 4.6.検索エンジン事業者の活躍 Yahoo、Google http://www.google.org/crisisresponse/kiroku311/
5.自然災害とICT:課題と教訓 そして3.11(2011年)東日本大震災
5.1.東日本大震災発生当日、筆者の周囲で起きたこと 発生から2時間で民-民が中心になるという暗黙の了解 ←公的支援の即時出動は、規模の大きさから無理 日赤も共同募金も資金は半年動かないと予測 特定個人を中継点・結節点とした情報の流通開始 特定個人への著しい情報の集中 +中継点・結節点が事実上の司令センターに。 トリアージの訓練無しでの状況判断と、 それに対する高レベルのストレスの発生 各組織からの参加要請←情熱のある人はいるが、 実務家は案外少ない。 阪神淡路被災者が中心となり活動開始。 12
5.2.自然災害とICT:課題と教訓(まとめ1) 発生直後は 多(被災地)→一(首長)の情報集約 次いで 多(指揮命令)→多(被災地現場部隊) 復興時は 一(公的機関)→多(被災者)の情報提供 と時期により、情報伝達の形態が異なる。 また、情報伝達の形態により、最適な通信システムも異なる 映像情報(特に現場からのもの)の有用性と、 複数機関/組織(警察・消防・防衛・県庁)での情報共有の重要性 しかし、緊急時に実際に使える通信システムは少ない。 通信インフラの重要性の再認識:被害の局限化に必須。 ↓ 復旧の加速にも寄与。 途切れない通信網への期待 国際貢献としてのソフト(人)も含めたシステムの提供
5.3.自然災害とICT:課題と教訓(まとめ2) 自治体機能喪失時の情報の流れの規定 信用できる連絡先に玉石混交の情報が殺到し 結果として機能不全に。 民間ベースでの連携の基盤 地域SNSでは半年毎に全国フォーラムで 顔をあわせているので、相互の信頼関係。 地権処理のルール化 権利関係が複雑な状況での迅速な処理。 「普段使っていないものを緊急時だけ使えるかという 話になる。 普段使っているものの安全性を高めないと、 通信途絶と孤立の問題には対応できない」 新潟県 泉田知事(新潟中越地震の経験)
5.4.安全・安心を確保するICTシステムの課題[調達面] 平時には、調達数少←自治体緊縮財政 災害・事件が起きてから緊急調達急増 調達が活発なのは半年のみ(喉元過ぎれば) 担当者、首長が変わると教訓活かされず ↓ 調達の急増に対応できない(部品手配、IC増産) 調達少ない平時は生産ラインが維持できない 半年後には、仕掛品、部品在庫の山 メーカーにとっては参入リスク大 製造は企業の社会的責任への対応頼み?
参考資料.東日本大震災復興支援活動1 図は和崎宏氏 提供
支援活動2:大槌みらい新聞 19
そして未来へ:自ら動く高校生による派生プロジェクト (支援活動3) 20
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