首都圏震災時における帰宅困難者・ボランティアと地域住民・自治体との協働による減災研究 (平成19~20年度)

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首都圏震災時における帰宅困難者・ボランティアと地域住民・自治体との協働による減災研究 (平成19~20年度) 交付申請者:久田嘉章(工学院大学・建築学科) 共同研究者:村上正浩(工学院大学・建築学科)     干川剛史(大妻女子大学・人間関係学部)

背景 都心・超高層建築の地震防災対策が急務(直下型地震、長周期地震動、帰宅困難者対策、自治体・住民・ボランティアの共助・・・) 首都圏直下の地震:全体の30年発生確率は70% (中央防災会議, 、地震調査研究推進本部) 南海トラフ海溝型巨大地震の30年発生確率: 東海地震:86%、東南海地震: 60% (内閣府による被害推定)

研究の目的 1)大震災時における超高層建築の減災対応システムの開発 2)帰宅困難者をボランティアとして活用し、地域住民・自治体との協働による減災対応システムの構築 3)開発した2つのシステムを連携させた実証実験の実施し、有効性の確認(対象:工学院大学、新宿区)

1)大震災時における超高層建築の減災対応システムの開発 緊急地震速報・リアルタイム地震観測システムを活用した地震被害情報推定・応急対応支援システムの開発 リアルタイム強震観測システム(2004年紀伊半島沖地震の工学院大学28Fの記録) 工学院大学新宿校舎(28階鉄骨造建築) 緊急地震速報(提供:防災科学技術研究所) ・エレベータ地震時管制運転、早期地震動・被害予測 ・アナウンス(閉じ込め防止、落下物から身を守る、パニック防止など) ・早期緊急対応(メール配信、緊急対応組織召集など)

超高層建築(新宿校舎)における自助による対策 ハード対策:地震動、地震応答、構造・設備・ライフライン・什器・・ ソフト対策:点検マップ・被害推定・備蓄・通信・対応組織・・ フロア点検 マップ 設備・ライフライン機器 エレベータ経路・機械    防災センター・警備室  災害対策本部 構造解析 5

13秒前 緊急地震速報(2008年5月8日震源:茨城県沖) →S波に加え表面波(長周期地震動)とビルの揺れを評価 通常画面 工学院大学における 推定震度 工学院大学における 到達予想時間 新宿区震度3、工学院震度2(計測震度2.4) 13秒前 →S波に加え表面波(長周期地震動)とビルの揺れを評価 →館内アナウンス、エレベータの地震時管制運転に適用 地震情報受信 地震防災対策と投資効果に関する研究 24-May-08

工学院大学新宿校舎のリアルタイム強震観測と活用 大学棟 オフィス棟 29階 28階 22階 22階 16階 15階 8階 8階 1階 B6階 ・地階の防災センターで把握 →パニック防止アナウンス GL-100m 強震観測センサーの配置 7

2)帰宅困難者・ボランティアと地域住民・自治体との協働による減災対応システムの開発 地元住民・事業者の協働による地域防災活動支援システム(地域点検マップ・図上演習・情報共有)の開発 2008年新宿区東戸山地区における  地域点検マップ(右) WebGISを活用した地域防災活動支援  システム(左)

2)帰宅困難者・ボランティアと地域住民・自治体との協働による減災対応システムの開発 地元住民・事業者の協働による地域防災活動支援システム(地域点検マップ・図上演習・情報共有)の開発 2008年西口現地本部防災訓練より ・GISを活用した地域防災活動支援システム(新宿駅西口現地本部)

2)帰宅困難者・ボランティアと地域住民・自治体との協働による減災対応システムの開発 広域情報共有システムの開発(GEO-Quick) 被災家屋Webデータベースシステム(左)・ボランティアコーディネーションWebシステム(右) (2008年6月宮城内陸地震において栗原市ボランティアセンターにて) ・住民及びボランティア参加による被害情報収集・共有システム

3)帰宅困難者・ボランティアと地域住民・自治体 との協働による防災訓練 新宿:都心型超高層 輻輳に強い非常時通信網の整備 (約35km、長距離無線LAN ) 八王子:郊外型 自助、新宿・八王子地域の 広域連携 地域共助:周辺事業者・地域住民・自治体などとの協働体制の整備、 帰宅困難者(学生、教職員)を災害ボランティアへ 東戸山地域防災WS・発災対応訓練(2008) 滞留者対策訓練、現地本部訓練(2008)

地域連携による減災体制の構築と訓練 地元住民との協働による地震防災活動: 新宿区:東戸山地区、四谷地区など 八王子市:中野地区など  新宿区:東戸山地区、四谷地区など  八王子市:中野地区など 新宿駅周辺地区との協働による地震防災活動:  新宿駅周辺滞留者対策訓練協議会(2007-2009)  新宿駅周辺防災対策協議会(2009-)  → 東京都、新宿区、日赤、地元事業者(鉄道・通信・百貨店・ホテルなど)、大学(工学院大)など  → 新宿駅周辺滞留者対策訓練(2008/1) 新宿西口現地本部(新宿区・工学院大の協定)  →新宿駅周辺地震防災訓練(2008/12, 2009/10/15) 12

2008年12月新宿駅周辺地域防災訓練 他地域との情報共有 非常時通信網を使った相互の情報共有 新宿区役所 東京都庁・議会棟1階 工学院大学八王子キャンパス ・情報受発信訓練(八王子地域情報) 大妻女子大学、星陵女子短期大学 ・情報受発信訓練(広域情報) 新宿区役所 ・情報受発信訓練 東京都庁・議会棟1階 ・災害時要援護者受入れ訓練 ・学生ボランティア活動訓練 非常時通信網を使った相互の情報共有 工学院大学新宿キャンパス ・超高層ビル発災対応型訓練 ・西口地域現地本部活動訓練 ・傷病者対応訓練(トリアージなど) ・災害時要援護者受入れ訓練 ・広域情報共有訓練(八王子など) ・体験型訓練、講演、展示など 新宿中央公園 ・角筈特別出張所 現地本部 ・西口地域情報提供拠点 ・学生ボランティア活動訓練 ・体験型訓練 13 13 13

超高層建築における 発災対応型防災訓練 ・高層階(14階以上)で発災対応訓練の実施 ・各階で小火・怪我人・閉じ込めなどが発生 14階以上 11階以下 ・高層階(14階以上)で発災対応訓練の実施 ・各階で小火・怪我人・閉じ込めなどが発生 ・教職員・学生全員参加で緊急対応 ・学科事務室で情報集約、災対本部に連絡 ・フロア確認の後、避難開始 ・学科単位で低層階教室に収容、安否確認 ・その後、体験型訓練(応急救護など)に参加

発災対応型防災訓練(2008年10月22日) 高層階での発災の様子(怪我人発生) 初期消火訓練(NHK・ニュース9より) 防災センター・災対本部への連絡 災害対策本部の立ち上げ・被害状況把握 15

避難・安否確認・体験型防災訓練 避難訓練(NHK・ニュース9より) 安否確認訓練(低層階教室にて) 体験型防災訓練(消火器使用、心肺蘇生、応急救護など) 16

新宿駅西口現地本部(1階:区・都・事業者、情報収集・共有、Web GIS) 2008年度防災訓練(10/22) 新宿駅西口現地本部(1階:区・都・事業者、情報収集・共有、Web GIS)   広域情報収集(八王子、大妻女子大等) 情報提供(新宿中央公園)   体験型訓練(工学院大) 17

その他:成果・波及効果 ・成果公表:論文・報告・解説など(平成19年6編、平成20年14編) ・文部科学省・学生支援GP:「いのち・つなぐ・ちから-学生連携型地域防災拠点の構築-」(2008-2011年度) →学生向け防災教育プログラム(上級救命士、地域の防災活動支援など) ・文部科学省・大学教育充実のための戦略的大学連携文部科学省・新規学習ニーズ対応プログラム:「首都直下地震に備える施設管理者への減災対策および復旧復興マネジメント教育プログラム」(2008~2010年度) →社会人対象の地震防災セミナー「新都心の地域減災セミナー」(新宿駅西口の自助・共助による減災対策) ・文部科学省・大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム―大学間連携戦略―:「防災・減災・ボランティアを中心とした社会貢献教育の展開」(2009~2011年度) →工学院大・神戸学院大(社会貢献学など)・東北福祉大学(福祉・ボランティアなど)の連携による社会貢献教育(社会貢献活動支援士など) ・NHKニュース(2008/11/22)、NHKスペシャル(2009/9/1)など 18

おわりに 1)大震災時における超高層建築の減災対応システムの開発  →緊急地震速報・リアルタイム地震観測システムを活用し、超高層建築を対象に長周期地震動にも対応した減災システム(エレベータ管制運転、館内放送など)を開発、工学院大学新宿校舎に適用 2)帰宅困難者をボランティアとして活用し、地域住民・自治体との協働による減災対応システムの構築  →WebGISを活用した地域減災対応システム(地域点検マップ、被災時の被害情報共有)、広域情報共有システム(Geo-Quick)を開発 3)開発した2つのシステムを連携させた実証実験の実施し、有効性の確認(対象:工学院大学、新宿区)  →新宿区や地元事業者などと連携した新宿駅周辺地域による連携体制の構築(新宿駅周辺防災対策協議会)。地域連携による防災訓練を実施(超高層ビルの発災対応型訓練、現地本部による情報共有訓練など)