ブラックホール降着・噴出流の 輻射磁気流体シミュレーション 大須賀 健 (国立天文台) -新型ジェットと母銀河への影響- 輻射加速 磁気収束

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ブラックホール降着・噴出流の 輻射磁気流体シミュレーション 大須賀 健 (国立天文台) -新型ジェットと母銀河への影響- 輻射加速 磁気収束 I talk about global multi-dimensional simulations of accretion disks. 大須賀 健 (国立天文台) Super- Eddington円盤

巨大BHと銀河の共進化における 降着円盤(+ジェット)の役割 ブラックホール同士の合体も重要かも。。。 母銀河へのフィードバック 輻射が星形成に影響 ガス噴出が星形成に影響

階層的アプローチ 本日のお題 川勝

三種の降着モード Advection Radiation ADAF/RIAF Slim disk Standard disk Abramowicz et al. 95 Optically thick Optically thin [降着率] BH BH BH Our targets are three distinct modes of accretion flow and outflow. As you know, there are three famous solutions, ADAF, Standard disk, and slim disk, depending the optical thickness and mass accretion rate. In the standard disk, the radiative cooling is very important. On the other hand, the radiation pressure is important in the slim disk model. In contrast, the radiative effect is negligible in the ADAF. Non-radiative MHD simulations are available for ADAF model. The radiation HD simulations are able to study these disks, but they cannot treat magnetic effect. Thus, radiation-MHD simulations are required to investigate all three distinct modes. ADAF/RIAF 磁場 YES 輻射(冷却) No 輻射(力) Standard 磁場 YES 輻射(冷却) 輻射(力) No Slim disk 磁場 YES 輻射(冷却) 輻射(力)

巨大BHのSuper-EddinGton成長 進化 L/LE 成長時間<宇宙年齢(Z~7) 成長時間>宇宙年齢(Z~7) 成長時間>宇宙年齢(現在) 1 ULX NLS1 QSO Sy QSO 0.1 10-2 XRB 10-3 降着率一定の線 LLAGN SgrA* 102 104 MBH 106 108

輻射ジェットによるM- relationの構築 Super-Eddington円盤からのWindで掃き集められたガスシェルの速度が、脱出速度(速度分散)以下ならBHは成長を続けるが、脱出速度を超えるとガス欠になってBHの成長は止まる。 M(R) R King 03, Silk & Rees 98

輻射流体シミュレーションで、Super-Eddington円盤と噴出する輻射加速ジェットを再現 Gas Density Radiation Energy Density Ohsuga et al. 2005 輻射流体シミュレーションで、Super-Eddington円盤と噴出する輻射加速ジェットを再現

母銀河からのガス供給率が30程度であれば、King(03)のモデルが成立 Ohsuga 2006 ▲質量降着率 ■光度 ●質量噴出率 ●運動量放出率 ●運動エネルギー放出率 母銀河からのガス供給率が30程度であれば、King(03)のモデルが成立 母銀河からガス円盤へのガス供給率

研究の進展状況 1次元モデル 輻射流体計算 輻射磁気 相対論的 流体計算 磁気流体計算 多次元計算 相対論的輻射磁気流体計算 大須賀+ 09 Shakura & Sunyaev 73; Ichimaru 77 Abramowicz et al. 88; Narayan, Yi 94 松元 99; 町田+ 00 Stone, Pringle 01 Hawley, Balbus 02 輻射流体計算 Eggum+ 88; 奥田 02; 大須賀+ 05, 07; 大須賀 06; 川島+ 09 竹内+09 大須賀+ 09 小出+01; De Villiers+03; Hawley, Krolik 06 McKinney, Blandford 09 多次元計算 相対論的輻射磁気流体計算 開発中(大須賀, 井上, 富田, 関口) (Farris et al. 2008)

降着円盤における磁場の役割 (1)磁気回転不安定 (1)AからBへ角運動量が輸送される (2)磁場が増幅される:BzBr, B B 円盤 BH Bz A B A B (1)AからBへ角運動量が輸送される (2)磁場が増幅される:BzBr, B

降着円盤における磁場の役割 (2)磁気浮力不安定 磁場が増幅される:Br, BBz (3)磁気圧 磁気圧ジェットの原動力 A A Br or B Bz BH BH 円盤 磁場が増幅される:Br, BBz (3)磁気圧 A A B 磁気圧ジェットの原動力

降着円盤における磁場の役割 (4)磁気リコネクション 磁気リコネクションのポイントで効率的なジュール加熱が起こる(円盤の加熱メカニズム) B 磁気リコネクションのポイントで効率的なジュール加熱が起こる(円盤の加熱メカニズム) A A B 注) 降着円盤業界では現象論的なリコネクションモデルを利用. 精緻なモデルの導入が急務! A B

降着円盤における輻射の役割 (1)輻射冷却 ・円盤温度が下がる ・ガス圧の低下により円盤が薄くなる (2)輻射力 ・円盤を厚くする BH (2)輻射力 A ・円盤を厚くする ・輻射ジェットの原動力

輻射磁気流体シミュレーションを用いることで、全種の降着円盤を調べることが可能 三種の降着モード Advection Radiation ADAF/RIAF Slim disk Standard disk Abramowicz et al. 95 Optically thick Optically thin [降着率] 輻射磁気流体シミュレーションを用いることで、全種の降着円盤を調べることが可能 Our targets are three distinct modes of accretion flow and outflow. As you know, there are three famous solutions, ADAF, Standard disk, and slim disk, depending the optical thickness and mass accretion rate. In the standard disk, the radiative cooling is very important. On the other hand, the radiation pressure is important in the slim disk model. In contrast, the radiative effect is negligible in the ADAF. Non-radiative MHD simulations are available for ADAF model. The radiation HD simulations are able to study these disks, but they cannot treat magnetic effect. Thus, radiation-MHD simulations are required to investigate all three distinct modes. ADAF/RIAF 磁場 YES 輻射(冷却) No 輻射(力) Standard 磁場 YES 輻射(冷却) 輻射(力) No Slim disk 磁場 YES 輻射(冷却) 輻射(力)

Slim mode(Super-Eddington) 輻射冷却 △ 輻射力 ○ Slim mode(Super-Eddington) The size of the computational domain is about 100Rs. We assume axisymmetry and reflection symmetry relative to the mid-plane. We set rotating torus as initial condition. The most important parameter is density at the center of torus. We set 3 models like this. Roughly speaking, model A, B, and C corresponds slim disk model, standard-disk model, and ADAF model. ・幾何学的・光学的に厚い輻射圧優勢円盤が形成 ・輻射圧加速ジェットが噴出 http://th.nao.ac.jp/~ohsuga/でダウンロードできます

Standard mode ・輻射冷却が効き、低温で薄い円盤が形成 ・標準円盤モデルの予想に反し、ジェットが噴出 輻射冷却 ○ 輻射力 × The size of the computational domain is about 100Rs. We assume axisymmetry and reflection symmetry relative to the mid-plane. We set rotating torus as initial condition. The most important parameter is density at the center of torus. We set 3 models like this. Roughly speaking, model A, B, and C corresponds slim disk model, standard-disk model, and ADAF model. ・輻射冷却が効き、低温で薄い円盤が形成 ・標準円盤モデルの予想に反し、ジェットが噴出 http://th.nao.ac.jp/~ohsuga/でダウンロードできます

RIAF mode ・輻射冷却が効かず、光学的に薄い高温円盤が形成 ・磁気圧加速ジェットが噴出 輻射冷却 × 輻射力 The size of the computational domain is about 100Rs. We assume axisymmetry and reflection symmetry relative to the mid-plane. We set rotating torus as initial condition. The most important parameter is density at the center of torus. We set 3 models like this. Roughly speaking, model A, B, and C corresponds slim disk model, standard-disk model, and ADAF model. ・輻射冷却が効かず、光学的に薄い高温円盤が形成 ・磁気圧加速ジェットが噴出 http://th.nao.ac.jp/~ohsuga/でダウンロードできます

Slim(L/LE>1) Standard(L/LE<1) RIAF(L/LE<<1) Isosurface(outflow) カラー(密度場) 大須賀、嶺重、森、加藤 2009; PASJ表紙 40Rs カラー(輻射場) Lines(磁力線)

輻射磁気流体ジェットモデルの物理 加速は輻射圧 磁気収束 Super-Eddington円盤 運動量放出率は~1.3LE/cでKingの条件をおよそ満たす 竹内, 大須賀, 嶺重 in prep.

加速メカニズム 輻射流体計算と同様に、輻射力(>>重力)で加速している! 輻射力 ベクトル

収束性の向上 輻射磁気流体計算 輻射流体計算 より軸に沿った方向に噴出している 放射状に噴出している

収束メカニズム ローレンツ力で収束している (磁気圧と磁気テンションは同程度) ジェットを取り巻く磁力線 =磁気タワー ローレンツ力 ベクトル

まとめ 輻射磁気流体計算コードを駆使し、三種の降着モードをシミュレートした 巨大BHの成長過程、母銀河へのフィードバックを正しく評価する第一歩である 新しいジェットモデルを提唱した 加速メカニズム=輻射力 収束メカニズム=ローレンツ力 当面の課題(個人的) 3次元化[with 小川、松元(千葉大)] 相対論化[with 井上、富田、関口(NAOJ)]

銀河中心領域の新理論構築へ向けて ジェット 円盤風 NLR 降着円盤 BLR トーラス <10-3pc 10-3~1pc 研究の進展状況 SN乱流モデル(和田+ 02) Line-driven wind (Proga+ 00) 輻射磁気流体モデル (大須賀+ 09) ジェット 円盤風 NLR 降着円盤 BLR トーラス 理解度

BLR+円盤風(10-3-1pc領域) 理論計算 理論と観測の比較[with 三澤さん(理研)] Proga+00 理論計算 和田コードに輻射の効果           (電離、加熱、line-force)を追加 とはいっても一番ややこしいところ(輻射輸送)は完成済み 今のところ大須賀、和田、須佐で進行中 理論と観測の比較[with 三澤さん(理研)]

トーラス+NLR(1-100pc); 輻射流体計算+SN、ダスト、電離、自己重力 光電離したガス雲 速度~数百km/s トーラス 須佐, 和田, 大須賀 in prep. 103cm-3の ガス雲が数十pc まで広がる トーラス edge-on view MBH~106Msun