Multi-λで探る活動銀河核ジェットの高エネルギー放射領域

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Multi-λで探る活動銀河核ジェットの高エネルギー放射領域 永井 洋 (国立天文台ALMA推進室)

内容 活動銀河核ジェットで観測される高エネルギー放射に関係する最近の観測成果(多波長電磁波観測)の紹介 ALMA時代の活動銀河核ジェット研究 電波(VLBI)+可視光偏光+γ線 ALMA時代の活動銀河核ジェット研究

Jets, everywhere! 規模の差はあれど、たいていのAGNにジェットは存在 Blazars Radio galaxies Sy2 -BL Lacs -FSRQs Radio galaxies -FRI & FRII (misaligned blazars) 3C 273 (FSQRs) 3C 219 (FRII RGs) NGC 7674 (Sy2) PMN0948 (NLSy1) Radio-loud zone Radio-quiet zone Sy2 RQQSO Sy1 規模の差はあれど、たいていのAGNにジェットは存在

Jets SED of Mrk 501 IC Paneque+ ~20桁にもおよぶエネルギーレンジで非熱的放射が卓越 シンクロトロン 逆コンプトン IC Paneque+ ~20桁にもおよぶエネルギーレンジで非熱的放射が卓越 超光速運動 (3C 120) -> 相対論的スピードで物が動いている 非熱的プラズマを生成(粒子加速) 非熱的プラズマの塊をバルクに加速

非熱的放射の起源はどこか? 降着円盤は熱的プラズマによる放射である一方、ジェットは非熱的プラズマからの放射で光っている ジェット:非熱的世界 標準降着円盤における“Big blue bamp”(黒体放射)の存在や、ADAFの熱的シンクロトロン+制動放射は、円盤が熱的な世界であることを示唆 円盤:熱的世界 降着円盤は熱的プラズマによる放射である一方、ジェットは非熱的プラズマからの放射で光っている 円盤からジェットに至るどこかで、粒子加速を行わなければいけない

標準的描像 変動のタイムスケール~1 day ジェットのVLBI観測 R~(0.001×δ ) pc δ~Γ~10(光速の99.9%) ブレーザーの時間変動 変動のタイムスケール~1 day ジェットのVLBI観測 R~(0.001×δ ) pc δ~Γ~10(光速の99.9%) Kataoka+ 2001 ~0.01 pc ブレーザージェットの速度 ~0.1 pc Lister+ 2001 ※開口角~1/Γを仮定

FermiによるGeVブレイクの発見 3C 454.3 (z=0.859, FSRQ) Ackermann+ 2011 3C 454.3 (z=0.859, FSRQ) フラックスは桁で変化している一方で、ブレイクの位置はほとんど変化しない

FermiによるGeVブレイクの発見 4C 21.35 (z=0.434, FSRQ) Tanaka+ 2011 4C 21.35 (z=0.434, FSRQ) 3C 454.3で見られたブレイクとほぼ同じ位置に現れる

γ-γ absorption Hydrogen Ly continuum Broad Line Cloud ~0.1 pc He II Ly continuum BLRから出るLy continuum photonとγ-ray photonとのphoton-photon pair creationによって説明可能 ⇒ 放射領域は~0.1 pc(~103 Rs)以内 Hydrogen Ly continuum Poutanen+ 2010

Polarization P.A. Swing PKS1510-089 Marscher+2011 可視光偏光 VLBIムービー(電波) 電波~γ時間変動 PKS1510-089 Marscher+2011 可視光偏光角の回転が起こるタイムスケール(tpol) = ブラックホールから出たノットがガンマ線放射領域にまで到達する時間 ⇒ D =vjet x tpol = ~1-10 pc (~104-5 Rs)

Polarization P.A. Swing 他にも3C279でも同様の現象が観測されている(Kanata望遠鏡) 電波・可視光変動 VLBIムービー(電波) 他にも3C279でも同様の現象が観測されている(Kanata望遠鏡) Jorstad+ 2010

例外:HST-1 TeVフレアと同期して、中心核から~100 pcも離れた成分が電波~X線で明るくなる Cheung+ 2007 TeVフレアと同期して、中心核から~100 pcも離れた成分が電波~X線で明るくなる 2008年、2010年にもTeVフレアが確認されたが、X線では中心核が明るくなった(Raue+ 2011)

非熱的放射源の所在をめぐる議論 近傍説:ブラックホールからの距離が~0.1 pc (~103 Rs)以内 ガンマ線の典型的時間変動やGeVブレイクによって示唆される 遠方説:ブラックホールからの距離が~1-10 pc (~104-5 Rs) 可視光偏光角の回転とガンマ線フレアのタイミング、ガンマ線フレア時に超光速ノットが出現することによって示唆される 電波コアはτ~1光球面を見ているのではなく、standing shockなど 問題点 同じ天体において、あるガンマ線フレアではGeVブレイクが見えるが、異なる時期に発生したフレアではGeVブレイクが見えないと言った例や、同様に偏光角の回転を伴うフレアとそうでないフレアがあったりなど(逆回転の例も!)、まだ統一的な解釈にはいたっていない。 ⇒より系統的な研究 ガンマ線変動のタイムスケールはday-weekだが、VLBIのサンプリングはせいぜい~month ⇒密なVLBIモニター観測

高頻度VLBIによる放射領域の同定 ねらい:密なVLBIモニター観測によって、電波コアとガンマ線変動の関係を明らかにし、ガンマ線源の所在ならびに電波コアの本質を理解する (a) (b) (c) 電波コア (あるいはジェット) 強度 電波コア 電波コア 強度 強度 ガンマ線 ガンマ線 ガンマ線 時間 時間 時間 電波 ガンマ線 電波コア ガンマ線源 電波コア=ガンマ線源 電波コアにガンマ線源がある 電波コア上流にガンマ線源がある 電波放射とガンマ線放射は空間的に異なる(例えば多層構造)

GENJI programme 永井洋(天文台) 紀基樹(天文台) 新沼浩太郎(山口大) 秦和弘(総研大) 小山翔子(東大) 秋山和徳(東大) 本間希樹(天文台) 徂徠和夫(北大) 日浦晧一朗(北大) G. Giovannini (INAF-IRA) M. Giroletti(INAF-IRA) M. Orienti (INAF-IRA) ++

GENJIプログラムのトリガー:3C 84 γ-ray Radio Kataoka+ 2010 gamma-ray and radio lightcurve of 3C84 2-yr lightcurve Fermi γ-ray EGRET Kataoka+ 2010 Abdo+ 2009 Brown&Adams 2011 Radio 2006/May 2007/Sep 2007/Nov 2008/Apr 2009/Apr Nagai+ 2010

GENJIプログラムのトリガー:3C 84 VERA@22GHz 2010/Novから開始 DA55, 3C84, M87, PKS1510-089, NRAO530, BL Lac, 3C454.3, DA406, OJ287

3C454.3 flare

一方、M87では・・・ 電波コアはτ~1 surface 一方、22 GHzコアはBHからわずか~0.01 pcの距離にある Hada et al. 2011, Nature 電波コアはτ~1 surface 一方、22 GHzコアはBHからわずか~0.01 pcの距離にある

我々が期待している描像 D230GHz ≦ Dgamma < D22GHz GENJI+Fermiによるガンマ線放射領域の所在の系統的調査 ガンマ線源 D230GHz ≦ Dgamma < D22GHz もし、M87と同じ物理が他のジェットも支配しているとすると、D22GHzは~0.01 pc ミリ波・サブミリ波で見える領域 GENJI+Fermiによるガンマ線放射領域の所在の系統的調査 ガンマ線源を見通すであろうミリ波・サブミリ波を使った研究(ALMA) ミリ波・サブミリ波とγ線変動との相関 Polarization swingの有無

ALMA時代の活動銀河核ジェット研究

What’s ALMA? チリのアタカマ高地に建設中の大型ミリ波サブミリ波干渉計 合計66台のアンテナから成る 日米欧とチリの協力によって推進される

ALMA facilities Joint ALMA Observatory (JAO) office Operation Support Facilities (OSF) @ 2900 m Array Operation Site (AOS) @ 5000 m

Band毎の性能(specification) 周波数 [GHz] 分解能 [“] Compact / Extended 連続波感度 [mJy/beam] ライン感度 [K] Compact/Extended 3 84-116 4.9-3.6 / 0.05-0.038 0.05 0.07 / 482 4 125-163 3.3-2.5 / 0.035-0.027 0.06 0.071 / 495 6 211-275 2.0-1.5 / 0.021-0.016 0.1 0.104 / 709 7 275-373 1.5-1.1 / 0.016-0.012 0.2 0.29 / 1128 8 385-500 1.07-0.82 / 0.011-0.009 0.4 0.234 / 1569 9 602-720 0.68-0.57 / 0.007-0.006 0.64 0.641 / 4305 10 787-950 0.52-0.43 / 0.006-0.005 1.2 0.94 / - ※60秒積分における感度 ※ラインは0.1km/sのチャンネル幅 分光性能:2GHz帯域幅(1ベースバンド)を最大8192点分光 ⇒ 110GHzで観測した場合、0.01 km/sの速度分解能に相当 全バンドでFull stokes parametersの取得が可能

Recent News 現在、16台のアンテナで初期科学運用を開始している(Cycle 0) 12/20: 26台目のアンテナが到着 12/21: 5台目のACA7mアンテナが到着 1/24: 27台目のアンテナが到着 現在、16台のアンテナで初期科学運用を開始している(Cycle 0)

Cycle 1 Capability (Preliminary!) Number of antennas: Target: Thirty-two 12m antennas and six 7m antennas (ACA, TA) 12m Array Configurations: Maximum baseline lengths will be from 150 to 1km Bands 3, 6, 7 and 9 (100, 230, 345, 650 GHz) Polarization, solar observation, band 4 & 8 (150, 450 GHz) will not be offered in Cycle 1 Band Frq. [GHz] Maximum angular resolution [arcsec] 3 100 0.62 6 230 0.27 7 345 0.18 9 650 0.12

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ALMAで探るlarge-scale jet研究 kpcスケールのノット構造の成因は? 母銀河中のISMとの衝突? ノット周辺に分子ガスが存在するか?ジェットとの相互作用があれば、分子ガス雲の速度構造に反映されるはず -> サブミリ波分子輝線の観測

今後のタイムライン(暫定版) Cycle 1 anouncement: 4月 Call for Proposal: 5月 Proposal deadline: 7月 Cycle 1観測開始:2013年1月 是非、積極的なプロポーザル投稿を! 必要があれば、チュートリアルを実施します

まとめ AGNジェットからの高エネルギー放射領域の探査をテーマに、multi-λ観測の最近の動向を紹介 γ線放射領域をめぐっては、近傍説(<0.1pc, 103Rs)と遠方説(1-10pc, 104-5Rs)が議論されているが、まだ決着をみない 系統的なVLBI観測「GENJI」の取り組みを紹介 ALMA時代の研究の展望