<8> 地球の水は，枯渇するのか? Y ＜第3章＞ 世界の水 日本の水 <8> 地球の水は，枯渇するのか? Y ＜第3章＞ ■ 地球の水は，「章の題」のように，本当に枯渇するのか? 1 水資源の枯渇要因とは? 2 地球温暖化と水の枯渇 3 水をめぐる5つの神話?

例題 水と油，類似点と相違点は? 今日の水と石油 類似・共通点は？ 基本的な相違点は？  Y(09, 第8章 p.120) 例題　水と油，類似点と相違点は? 今日の水と石油 類似・共通点は？ 基本的な相違点は？ 　Y(09, 第8章 p.120) 「いずれ水は，オイルよりも投資価値が出てくる」 But Why?  水も枯渇するから？

1 地球上の水資源の枯渇要因とは? マスコミ等で騒がれる 現象と要因? 要因1&2は, 確かに水不足 but それは枯渇要因か? 【世界市民】「水」問題を考える 1　地球上の水資源の枯渇要因とは? マスコミ等で騒がれる 現象と要因? 増加する水需要を確保できない 大河の断流, 地下水の枯渇, 湖水の縮小 水資源の汚染による 水供給の減少 下水の未整備等による 汚染・感染症の拡大 地球温暖化による気候変動 Y(09,3章)： 「温暖化が水の枯渇をもたらす」？ 要因1&2は, 確かに水不足 but それは枯渇要因か?

<S1>の例題: 「石油は枯渇しない」 【世界市民】「水」問題を考える Q1　水不足と枯渇問題： 石油との相違 <S1>の例題: 「石油は枯渇しない」  「機械的な計算」の誤り： 費用の変化  インセンティブ それでは，「地球上の水」について， 水を過度に使用すれば，地球上の水は枯渇するか? 汚染水は飲めなくなるが，それは資源枯渇を意味するか？

石油は，現時点では再生不能資源 （化石燃料 有機成因説） but 水は，天然の再生可能資源  雨による循環 【世界市民】「水」問題を考える A1　水は，「再生可能資源」 石油は，現時点では再生不能資源 （化石燃料 有機成因説） but 水は，天然の再生可能資源  雨による循環 地下水の再生には歳月を要するとしても，使った水も使わない 水も再生される 汚染した水の完全な浄化には費用を要するとしても，常に一 部は雨として浄化され再生される ∴大局的には，枯渇しない　 <S7> 現状：局所的な水不足  将来は大局的な水不足?　

陸地への年間降雨量 地球は閉鎖系 ⇒ 水は，究極の再生可能資源 年間陸地降雨量 11.3万km3 = 113兆m3 地球は閉鎖系　⇒ 水は，究極の再生可能資源 年間陸地降雨量　11.3万km3 = 113兆m3 ÷70億人 ＝ 1.6万m3： 年間需要量の約 4倍 海上には, その2倍　 <S1> ミラー (10, 8章) ∴ 問題は，降雨量の偏在 & その活用法 But グローバル（大局的）には, まだ十分に余裕 ∴ 残るは，温暖化 と 気候変動 の影響  まだ不確実な要素

2 地球温暖化 と 水の枯渇 Y(09, 3章)： 「温暖化  水の枯渇」 の 理由 But How 世界 & 日本の水が, 枯渇 ? 【世界市民】「水」問題を考える 2　地球温暖化 と 水の枯渇 Y(09, 3章)：　「温暖化  水の枯渇」 の 理由 2007年報告 by IPCC（気候変動に関する政府間パネル） 温暖化  気候変動  干ばつ ＆ 洪水 日本： 雨量増加 but 水資源減少 ? (p.39) 水災害の増加： 台風・津波の巨大化 猛暑と豪雨の増加 積雪量・期間の変化 But How 世界 & 日本の水が, 枯渇 ?  偏在による不足と，消滅による枯渇の 区別が重要

地球温暖化 と 降雨量の増加 地球温暖化の基本論理 気温上昇の効果  ロンボルグ (08b, 3章) 産業化以降，CO2濃度が36%上昇 CO2増の80%は，石油・石炭等の燃焼 2100年には，気温が2.6度上昇 中位シナリオ by 2007年 IPCC 報告書　cf. 2014年報告書 気温上昇の効果　 ロンボルグ (08b, 3章) 異常気象： 洪水・台風 ＜ 熱波 ＜ 寒波  温暖化により，死亡者は減少 降雨量： 2100年には降水量が5%増加 (p.183) 　 雨量は増加  2012年 OECD “Outlook to 2050”

京都議定書の効果 by ロンボルグ 京都議定書 2008-12年に先進国に削減義務（日本は９０年比6%）  COP21 【世界市民】「水」問題を考える 京都議定書の効果 by ロンボルグ 京都議定書 2008-12年に先進国に削減義務（日本は９０年比6%）　 COP21 2012年で廃止された場合 ほとんど効果はない 2100年まで堅持した場合 2100年の気温は2.42度： 0.18度だけ抑制（= 2.6 ー 2.42） = 2095年の気温　⇒ 温暖化を, 5年だけ遅らせる効果 さらに米国の参加拒否 ⇒ わずか0.04度の低下のみ(p.60) その費用はEU・日本等が $1.5兆  莫大な機会費用  <S6> トレードオフ　

10億人の飲料水と，25億人の衛生問題 ロンボルグ(08a, b p.185)の結論  コペンハーゲン合意の政策 京都議定書は，便益・費用比が悪い  非効率な政策 費用は，年$500億かかるのに， 飲料水と衛生設備の改善人口はそのまま　　 代わりに年に$40億使うだけで，　 トレードオフ・機会費用 30億人がアクセス可能になり， その金銭換算便益は，$2000億以上  コペンハーゲン合意の政策

Q2 温暖化 と 水問題の基礎知識 [正誤問題] ロンボルグ(08b)によると，今世紀の地球温暖化の進行は， 気温を2.6度上昇させ，寒波より死者の多い熱波の増加により， 総死亡者を増加させる 干ばつと洪水を引き起こし，降雨量の減少を通じて水不足をも たらす 京都議定書の堅持によって，効率的に抑制できる  2015年末 COP21 (第21回国連気候変動枠組み条約締結国会議） 日本は，2030年に２０１３年度比26%削減　日経新聞2015/4/9,6/3

3 水をめぐる 5 つの神話? ＜S１＞ミラー(2010, 8章)の指摘する ５ つの誤謬 3　水をめぐる 5 つの神話? ＜S１＞ミラー(2010, 8章)の指摘する ５ つの誤謬 地球は，干上がりつつある　（水の枯渇） 水洗トイレや農業用水を抑制すれば，水の枯渇を防げる 他の財と異なり，水は特殊な資源 ★水の料金規制は，低所得者を保護　 <S5> 価格規制 海水は，飲むには塩辛すぎる <S1-5> 事実と科学的な事実判断力の重要性 「事実認識　 価値判断  政策」 の 吟味

Q3 生存に不可欠な財と需要・供給 あなたにとって，生存に不可欠な財とはどんなもの? その財の中で，需要法則に従わない財は? = 価格が上がれば，需要量が減少する その財の中で，供給法則に従わない財は? = 価格が上がれば，供給量が増加する <S5-6> 財の価値は希少性に依存 トレードオフ・機会費用 ≒ 欲求量 / 存在量

水が枯渇しない理由 地球は閉鎖系 ＋ 水は再生可能資源 But 深刻化する問題は存在 【世界市民】「水」問題を考える 水が枯渇しない理由 地球は閉鎖系 ＋ 水は再生可能資源 降雨量は，現在需要量を十分に満たす トイレや農業の抑制は，降雨量とは無関係 But 深刻化する問題は存在 人口増 & 都市集中，水偏在　 <S7> ∴ 経済財 even though 生命に不可欠（飲料は 2ℓ / 日 ?） 希少性　⇒ 需要法則 & 供給法則 ∴ 深刻な問題への<S7>応戦力こそ重要

再確認： 市場価格以下での需要と供給 <S5> 低い上限価格Pの規制が生む悲劇 損をするのは? 低い価格 OP 【世界市民】「水」問題を考える 再確認： 市場価格以下での需要と供給 <S5> 低い上限価格Pの規制が生む悲劇 低い価格 OP 超過需要 BF （水不足） 供給量 PB　に減少 死荷重 ABE　（非効率） 国民の満足度の減少 損をするのは? 価格 需要曲線 供給曲線 C A D E B F 上限価格 P 超過需要 O 数量

水は本当に枯渇するのか? 本日の要点&次回の準備 But 私見は NO: 水は枯渇しない ミラー，ロンボルグ 都市化  需要増， 汚染  供給減， 温暖化 But 私見は NO: 水は枯渇しない ミラー，ロンボルグ 地球は，閉鎖系 水は，再生可能資源 温暖化は，むしろ降雨量を増加させる 問題は，「局所的な水不足 と 需給のミスマッチ」 次回： 安い牛丼を平気で食べて良いか? Y 2章

例解 注目点で異なって見える物語・世界観 類似・共通した現象 ≒ （欲求量）÷（存在量）  <S6> 経済財 基本的な相違 【世界市民】「水」問題を考える 例解　注目点で異なって見える物語・世界観 類似・共通した現象 不足・枯渇 ?　 争奪戦・安全保障 希少性↑  価格↑ ≒ （欲求量）÷（存在量）  <S6> 経済財 基本的な相違 水は生存に不可欠? or 代替可能な財の多寡 再生可能資源 vs. 化石燃料（ 有機成因説）  無機成因説，沖縄のオーランチオキトリウム

参考文献 世界の難問の「費用-便益分析」と地球温暖化の議論 その他の貧困&経済発展，外部性&戦略的思考の議論 ロンボルグ (08a) 『500億ドルでできること』 ロンボルグ (08b) 『地球といっしょに頭も冷やせ』 その他の貧困&経済発展，外部性&戦略的思考の議論 ●カーラン・他 (13) 『善意で貧困はなくせるのか?』 石井光太 (08) 『絶対貧困：世界最貧民の目線』 コイル(08, 1章） 『ソウルフルな経済学』 ディキシット・他 (10) 『戦略的思考をどう実践するか』