第1章:ATIS(アテローム血栓症)とは? atherothrombosis

Slides:



Advertisements
Similar presentations
高齢者に多い脳疾患と心疾患 ~原因と症状を中心に~ 7 月 23 日 院内勉強会. 1. 脳梗塞.
Advertisements

メタボリックシンドロームの考え方. 危険因子の数と心臓病のリスク 軽症であっても「肥満(高 BMI )」、「高血圧」、「高血糖」、「高トリグリセリド(中性脂肪) 血症」、または「高コレステロール血症」の危険因子を2つ持つ人はまったく持たない人に比べ、
サノフィと Regeneron 社は、脂質管理の重要性の認知 向上と LDL コレステロール治療におけるアンメット メディカルニーズの研究に寄与してまいります。 脂質管理におけるアンメットニーズ 2015 年 6 月作成 2016 年 5 月改訂 SAJP.ALI 監修 : 帝京大学医学部.
山口県医師会 禁煙推進委員会 禁煙の効用 1. 山口県医師会 禁煙推進委員会 禁煙の効用 禁煙後 20分 12時間 2週間~ 3ヵ月 1~9 ヵ月 1年 5年 10年 血圧や脈拍が下がる 血液中の一酸化炭素濃度が正常になる 心機能が改善する 肺機能が回復する 咳、息切れが改善される 上昇していた冠動脈疾患のリスクが半減す.
循環器系の疾患 ー高齢者を中心にしてー これが・・・・ “ 恋する心臓 ” です 循環器系の疾患 ー高齢者を中心とし てー ①虚血性心疾患 1.狭心症 2.心筋 梗塞 ②心不全 ③不整脈 ④高血圧症 ⑤動脈硬化症.
2008 年医師国家試験解説 ー画像診断のポイントー 放射線科 石口恒男 2008 年 7 月 1 日 (1) 頭部.
あいち健康の森健康科学総合センター 保健師 原田有希子 / 山下 恵 実践者育成 研修プログラム 技術編 たばこに関する保健指導の実際 厚生労働科学研究「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】及び健康づくりのための身体活動基準 2013 に基づく保健事業の研修手法と評価に関する研究」津下班.
SSA湘南外科グループ 湘南鎌倉総合病院外科(血管外科) 荻野秀光
Stable Angina Pectoris 18井上兼史 42佐藤宏紀 66中谷昌裕 90三木美香
1. 動脈硬化とは? 2. 動脈硬化のさまざまな 危険因子 3. さまざまな危険因子の 源流は「内臓脂肪」 4. 動脈硬化を防ぐには
高齢者の神経障害と精神障害(認知障碍とうつ)
Update in ESC: Dabigatran among OAC
福山市民病院 内科 山陽病院 内科 辰川匡史 (武田製薬の資料を参考にしました )
脂質代謝.
背景 CABGを必要とする虚血性冠動脈疾患の背景には動脈硬化の影響があり、プラークの退縮効果が明らかにされているスタチンを投与することで予後を改善する効果が期待される CABGを行った患者に対しスタチンを投与することで予後を改善する効果を検証することが本研究の目的である 2015/2/17 第45回日本心臓血管外科学会.
脂質管理における アンメットニーズ 寺本 民生 先生 監修 : 帝京大学医学部 臨床研究センター センター長 2015年6月作成
RMP における薬剤疫学.
CHA2DS2-VAScスコア別 RE-LY®サブグループ解析結果の考察 小川 久雄 熊本大学大学院 生命科学研究部 循環器病態学
息苦しくてつらい 4年 佐野智子.
Association of Major and Minor ECG Abnormalities With Coronary Heart Disease Events 心電図異常と 心血管イベントの関係 谷川 徹也 JAMA, April 11, 2012—Vol 307, No
全身倦怠感 全身倦怠感はさまざまな病気にみられます 疲れやすい… だるい…
荏原病院放射線科・総合脳卒中センター 井田正博
失神.
動悸にはこんな種類があります 心臓の動きが 考えられる病気 動悸とは、心臓の動き(心拍)がいつもと違って不快に感じることをいいます。
 出光健保の喫煙状況と 喫煙による健康被害について 2013年5月 出光興産健康保険組合.
胸痛をもたらす疾患の頻度と重大性.
狭心症と心筋梗塞 大橋壮樹 大垣徳洲会病院.
透析患者に対する 大動脈弁置換術後遠隔期の出血性合併症
生活習慣病について 船橋市医師会ホームページ掲載用.
D18fu906pr102 社会保険制度 介護保険制度の概要.
CHA2DS2-VAScスコア別 RE-LY®サブグループ解析結果の考察 小川 久雄 熊本大学大学院 生命科学研究部 循環器病態学
脳卒中急性期患者データベースの 統計解析に関する研究 ― 中高レベル血栓溶解療法の評価 ―
糖尿病の合併症について 三大合併症 神経障害 網膜症 腎症 フットケアを日頃から 心がけましょう! 単純網膜症・前増殖網膜症
学習目標 1.呼吸機能障害のメカニズムについて理解する. 2.呼吸器系における各機能障害とその看護について理解できる. 3.換気障害,拡散障害,ガス運搬障害について,その機能異常や障害が起こるメカニズムとその所見について理解できる. SAMPLE 板書(授業終了まで消さない) 学習目標 1.呼吸機能障害のメカニズムについて理解する.
日本人を脅かす三大疾病 癌 脳血管障害 心臓病 脳梗塞・脳内出血 虚血性心疾患・弁膜症・大動脈瘤・心不全 体にやさしい心臓・血管手術
今は良いんだけど ③uAP  研修医.com.
各種手術における静脈血栓塞栓症のリスクの階層化(年齢因子を含む)
輸血の適応/適正使用 赤血球製剤 琉球大学輸血部 佐久川 廣.
喫煙と口腔の健康について 三重県・三重県歯科医師会.
血管と理学療法 担当:萩原 悠太  勉強会.
脳血管 MR診断に必要な脳動脈の解剖 荏原病院放射線科 井田正博
表1 糖尿病性腎症の組織像 Ⅰ.糸球体病変 1.び漫性糖尿病性糸球体硬化症 2.結節性糖尿病性糸球体硬化症 3.滲出性病変
1. 糖尿病の患者さんは、脳梗塞や 心筋梗塞に注意が必要です 2. 脳梗塞と心筋梗塞の原因は どちらも動脈硬化です 3.
メタボリックシンドロームはなぜ重要か A-5 不健康な生活習慣 内臓脂肪の蓄積 高血糖 脂質異常 高血圧 血管変化の進行 動脈硬化
第2章:血栓形成メカニズムと血小板 この章では、血栓の形成メカニズムと血小板の役割について解説する。
バージャー病の克服に向けて ー血管外科の立場からー
「糖尿病」ってどんな病気?? ★キーワードは・・・「インスリン」!!!
救急撮影セミナー 広島 2018/11/9 救急撮影セミナー 第1回 救急撮影セミナー.
4.生活習慣病と日常の生活行動 PET/CT検査の画像 素材集-生活習慣病 「がん治療の総合情報センターAMIY」 PET/CT検査の画像
画像診断検査の画像例 RI検査 RI 1 RI 2 RI 3 RI 4 骨シンチ(全身) 画像例 腫瘍ガリウムシンチ(全身) 画像例
最近の国試問題における 画像診断のポイント
第2回 市民公開講座 糖尿病を知って その合併症を防ぎましょう
脳梗塞.
福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇
高脂血症.
知っとく情報<春号> ○○○保険事務所 ★CONTENTS★ ■代理店●●●●情報 保険募集には無関係な代理店情報が掲載されます(写真含む)
強皮症に伴う腎障害 リウマチ・アレルギー疾患を探る p142. 永井書店 強皮症に伴う腎病変には次の3パターンがある。
血栓性血小板減少性紫斑病 TTP 溶血性尿毒素症候群 HUS
遺伝子診断と遺伝子治療 札幌医科大学医学部 6年生 総合講義 2001年4月16日 2019/4/10.
A-2 男性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
高槻市医師会地域連携クリティカルパス(患者様用)
末梢性めまいと鑑別困難な小脳梗塞例のまとめ
Willis 動脈輪と主要分枝 Willis 動脈輪 内頸動脈 前大脳動脈A1-前交通動脈 後大脳動脈P1-後交通動脈 A2 A1 Acom
心電図 二次チェック 非ST上昇心筋梗塞 ST上昇心筋梗塞 ー不安定狭心症 予防的治療: (禁忌でなければ): βブロッカー、ACE阻害薬
一過性脳虚血発作の機序: (1990年NINDSの定義と 2009年AHA/ASAの定義別に)
A-3 女性用 健診結果から今の自分の体を知る 内臓脂肪の蓄積 ~今の段階と将来の見通し~ 氏名 ( )歳 摂取エネルギーの収支
MD計算による血小板細胞膜蛋白とリガンド結合の立体構造および結合の力学特性の解明(loss of function 型変異体に関して)
(上級医) (レジデント) 同意説明取得 無作為化 割り付け群による治療開始 来院時
外側線条体動脈領域:分枝粥腫型梗塞とラクナ
Aqtiの効果・効能.
Presentation transcript:

第1章:ATIS(アテローム血栓症)とは? atherothrombosis この章では、ATIS(アテローム血栓症)の形成過程やその臨床症状、患者数、リスクファクターなどのATIS(アテローム血栓症)の基礎を解説する。

ATIS(アテローム血栓症)とは? これらは、 ATIS(アテローム血栓症) “atherothrombosis” アテローム性の動脈硬化症はプラークの破綻につながる重要な病態であり、血栓症を併発していることが多い。 動脈硬化巣に形成される血栓は、心筋梗塞(MI)、脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)を引き起こす。 これらは、 ATIS(アテローム血栓症) “atherothrombosis” として一括してとらえられる病態。 ATIS(アテローム血栓症)は、血小板活性化や血栓形成を引き起こすプラーク(粥状動脈硬化巣)の崩壊(破裂あるいはびらん)により生じる病態である。 ATIS(アテローム血栓症)(atherothrombosis)とは、アテローム性動脈硬化に併発した血栓症を指す。ATIS(アテローム血栓症)は、冠循環系、脳循環系、末梢循環系まで、全身の血管に発生する可能性のある血管病変であり、心筋梗塞(MI)や脳梗塞などの虚血性イベントを引き起こす原因となる。 左側の画像は、ATIS(アテローム血栓症)の急激な進行を表しており、閉塞性血栓を伴う崩壊した冠動脈プラークである1。 右側の画像は、急性冠動脈血栓症を伴うプラークびらんである2。 プラーク破裂1 プラークびらん2 1. Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71. 2. Arbustini E et al. Heart 1999; 82: 269–72.  MI : myocardial infarction PAD : peripheral arterial disease References: 1. Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71. 2. Arbustini E et al. Heart 1999; 82: 269–72.

ATIS(アテローム血栓症)の成立1 ―アテローム性動脈硬化症からATIS(アテローム血栓症)へ― 不安定狭心症 心筋梗塞 (MI) 脳梗塞 / TIA 末梢動脈疾患(PAD) 間歇性跛行 心血管死 ATIS(アテローム血栓症) ATIS(アテローム血栓症)は、アテローム硬化性のプラークの破綻を契機に、血小板に富む血栓が集積し、虚血または閉塞を招く疾患である。これは、やがて不安定狭心症、心筋梗塞(MI)、脳梗塞などを引き起こす。 安定狭心症 / 間歇性跛行 1. Libby P. Circulation 2001; 104: 365-372.より改変  MI : myocardial infarction TIA : transient ischemic attack PAD : peripheral arterial disease Reference: 1. Libby P. Circulation 2001; 104: 365-372.

ATIS(アテローム血栓症)の成立 ー全身性かつ進行性の発生過程1ー 急性の症候群: 冠動脈 脳血管 末梢血管 閉塞性血栓 プラーク破綻 血小板の活性化と凝集 アテローム硬化性プラークの破綻により形成される血小板に富む血栓は、動脈を閉塞する(すなわち、ATIS(アテローム血栓症))原因となる 。これが、虚血性イベント発生の引き金となる。 閉塞性血栓の場合、冠動脈、脳血管、あるいは末梢血管において急性の虚血性症候群が発生する。 非閉塞性血栓の場合、虚血性症候群の発生は一過性である。 血栓の形成は常に形成と消退を繰り返す動的なプロセスであり、臨床所見として現れない場合でもプラークの成長を促す原因となっている。 また、形成途中の血栓から凝集した血小板が小凝集塊として飛来し、末梢血管閉塞などの急性反応をきたすことがある。 非閉塞性血栓 形成と消退 プラークの成長 1. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.より改変 Reference: 1. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.

ATIS(アテローム血栓症)と小凝集塊1 プラーク破綻 小凝集塊 微小血管の閉塞 血流 小凝集塊の剥離は数時間から数週間続くことがあり、微小血管の閉塞から心不全や脳血管性痴呆に至る可能性もある3。 このように、ATIS(アテローム血栓症)は形成された血栓から飛来した小凝集塊が塞栓となり得る点でも重要である。 プラーク破綻 小凝集塊 微小血管の閉塞 1. Topol EJ, Yadav JS. Circulation 2000; 101: 570–80. , and Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71.をもとに作成 References: 1. Topol EJ, Yadav JS. Circulation 2000; 101: 570–80. , and Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71. 2. Topol EJ, Yadav JS. Circulation 2000; 101: 570–80. 3. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.

ATIS(アテローム血栓症)に起因する 全身の主な臨床症状1 1. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.をもとに作成 一過性脳虚血発作(TIA) 狭心症: 安定狭心症 不安定狭心症 脳梗塞 心筋梗塞(MI) ATIS(アテローム血栓症)は、冠循環系、脳循環系から末梢循環系まで、全身の血管に発生する可能性のある血管病変である。 冠動脈におけるATIS(アテローム血栓症)は、急性冠症候群(ACS)の主要な原因となる。 脳動脈におけるATIS(アテローム血栓症)は、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞の主要な原因となる。 末梢動脈では、間歇性跛行、虚血性壊死、四肢損失につながる原因となる。 末梢動脈疾患(PAD): 間歇性跛行 安静時疼痛 壊疽 壊死 MI : myocardial infarction TIA : transient ischemic attack PAD : peripheral arterial disease ACS:Acute Coronary Syndrome Reference: 1. Drouet L. Cereobrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.