第1章:ATIS(アテローム血栓症)とは? atherothrombosis この章では、ATIS(アテローム血栓症)の形成過程やその臨床症状、患者数、リスクファクターなどのATIS(アテローム血栓症)の基礎を解説する。
ATIS(アテローム血栓症)とは? これらは、 ATIS(アテローム血栓症) “atherothrombosis” アテローム性の動脈硬化症はプラークの破綻につながる重要な病態であり、血栓症を併発していることが多い。 動脈硬化巣に形成される血栓は、心筋梗塞(MI)、脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)を引き起こす。 これらは、 ATIS(アテローム血栓症) “atherothrombosis” として一括してとらえられる病態。 ATIS(アテローム血栓症)は、血小板活性化や血栓形成を引き起こすプラーク(粥状動脈硬化巣)の崩壊(破裂あるいはびらん)により生じる病態である。 ATIS(アテローム血栓症)(atherothrombosis)とは、アテローム性動脈硬化に併発した血栓症を指す。ATIS(アテローム血栓症)は、冠循環系、脳循環系、末梢循環系まで、全身の血管に発生する可能性のある血管病変であり、心筋梗塞(MI)や脳梗塞などの虚血性イベントを引き起こす原因となる。 左側の画像は、ATIS(アテローム血栓症)の急激な進行を表しており、閉塞性血栓を伴う崩壊した冠動脈プラークである1。 右側の画像は、急性冠動脈血栓症を伴うプラークびらんである2。 プラーク破裂1 プラークびらん2 1. Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71. 2. Arbustini E et al. Heart 1999; 82: 269–72. MI : myocardial infarction PAD : peripheral arterial disease References: 1. Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71. 2. Arbustini E et al. Heart 1999; 82: 269–72.
ATIS(アテローム血栓症)の成立1 ―アテローム性動脈硬化症からATIS(アテローム血栓症)へ― 不安定狭心症 心筋梗塞 (MI) 脳梗塞 / TIA 末梢動脈疾患(PAD) 間歇性跛行 心血管死 ATIS(アテローム血栓症) ATIS(アテローム血栓症)は、アテローム硬化性のプラークの破綻を契機に、血小板に富む血栓が集積し、虚血または閉塞を招く疾患である。これは、やがて不安定狭心症、心筋梗塞(MI)、脳梗塞などを引き起こす。 安定狭心症 / 間歇性跛行 1. Libby P. Circulation 2001; 104: 365-372.より改変 MI : myocardial infarction TIA : transient ischemic attack PAD : peripheral arterial disease Reference: 1. Libby P. Circulation 2001; 104: 365-372.
ATIS(アテローム血栓症)の成立 ー全身性かつ進行性の発生過程1ー 急性の症候群: 冠動脈 脳血管 末梢血管 閉塞性血栓 プラーク破綻 血小板の活性化と凝集 アテローム硬化性プラークの破綻により形成される血小板に富む血栓は、動脈を閉塞する(すなわち、ATIS(アテローム血栓症))原因となる 。これが、虚血性イベント発生の引き金となる。 閉塞性血栓の場合、冠動脈、脳血管、あるいは末梢血管において急性の虚血性症候群が発生する。 非閉塞性血栓の場合、虚血性症候群の発生は一過性である。 血栓の形成は常に形成と消退を繰り返す動的なプロセスであり、臨床所見として現れない場合でもプラークの成長を促す原因となっている。 また、形成途中の血栓から凝集した血小板が小凝集塊として飛来し、末梢血管閉塞などの急性反応をきたすことがある。 非閉塞性血栓 形成と消退 プラークの成長 1. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.より改変 Reference: 1. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.
ATIS(アテローム血栓症)と小凝集塊1 プラーク破綻 小凝集塊 微小血管の閉塞 血流 小凝集塊の剥離は数時間から数週間続くことがあり、微小血管の閉塞から心不全や脳血管性痴呆に至る可能性もある3。 このように、ATIS(アテローム血栓症)は形成された血栓から飛来した小凝集塊が塞栓となり得る点でも重要である。 プラーク破綻 小凝集塊 微小血管の閉塞 1. Topol EJ, Yadav JS. Circulation 2000; 101: 570–80. , and Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71.をもとに作成 References: 1. Topol EJ, Yadav JS. Circulation 2000; 101: 570–80. , and Falk E et al. Circulation 1995; 92: 657–71. 2. Topol EJ, Yadav JS. Circulation 2000; 101: 570–80. 3. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.
ATIS(アテローム血栓症)に起因する 全身の主な臨床症状1 1. Drouet L. Cerebrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.をもとに作成 一過性脳虚血発作(TIA) 狭心症: 安定狭心症 不安定狭心症 脳梗塞 心筋梗塞(MI) ATIS(アテローム血栓症)は、冠循環系、脳循環系から末梢循環系まで、全身の血管に発生する可能性のある血管病変である。 冠動脈におけるATIS(アテローム血栓症)は、急性冠症候群(ACS)の主要な原因となる。 脳動脈におけるATIS(アテローム血栓症)は、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞の主要な原因となる。 末梢動脈では、間歇性跛行、虚血性壊死、四肢損失につながる原因となる。 末梢動脈疾患(PAD): 間歇性跛行 安静時疼痛 壊疽 壊死 MI : myocardial infarction TIA : transient ischemic attack PAD : peripheral arterial disease ACS:Acute Coronary Syndrome Reference: 1. Drouet L. Cereobrovasc Dis 2002; 13(suppl 1): 1–6.