JT-60プラズマ対向壁のバルク内への拡散と蓄積

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JT-60プラズマ対向壁のバルク内への拡散と蓄積 N16/ 日本原子力学会 2009年春の年会 2009.3.24 東京工業大学 JT-60プラズマ対向壁のバルク内への拡散と蓄積 吉田 雅史1 ,田辺 哲朗1 柳生 純一2, 三代 康彦2, 林 孝夫2, 正木 圭2, 仲野友英2, 伊丹潔2 ○   1 九大総理工, 2 JAEA    

Introduction 核融合炉では、炉内へのトリチウム(T)残留量が厳しく制限されているため、Tがどこにどれだけ蓄積しているかを知ることは重要 JT-60Uでも、ダイバータ、第一壁の表面近傍での水素蓄積に関するデータが集積しつつある。 ダイバータ 第一壁 損耗 再堆積層 H D [x1022 atoms/m2] H+D retention 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 第一壁 損耗 再堆積層 ダイバータ 炉内水素蓄積の定量と予測を目指して 水素蓄積源となり得る領域への蓄積状況を把握する必要性 内部への水素蓄積(バルクリテンション)状況は不明

Purpose JT-60Uプラズマ対向壁として用いられた黒鉛タイル内部の水素蓄積量を測定し、過去に得られたタイル表面でのものと比較して、その定量と蓄積機構を明らかにし、蓄積予測を可能にする。

Sample ~タイル測定位置と放電履歴~ OD1,2 FW1 (15Ek1) FW2,3 (7Fb1) 第一壁 外側赤道面 Inboard ダイバータ損耗部 外側ウィング Inboard OD1,2 試料名 放電期間 DD [sec] HH [sec] 最終放電 Temp [K] FW1 ’92.07–’04.11 56000 6300 HH 600-800 FW2 ’92.07–’03.03 48500 5350 DD FW3 ’03.10–’04.11 7500 950 > 420 OD1 ’97.06–’99.10 6000 600 1400 OD2 ’97.06–’03.03 27000 5400

Experiment ~タイル加工と分析条件~ タイル切断と加工 昇温脱離法(TDS): HおよびDの蓄積量測定 プラズマ対向面 黒鉛タイル 3mm ~10mm 24mm ~15mm 10mm 1mm 昇温脱離法(TDS): HおよびDの蓄積量測定 昇温速度: 0.42 K/s 到達温度: 1273 K (10分間保持) 脱ガス分析:QMS 定量化したガス種: 2(H2), 3(HD), 4(D2), 15(CH4), 19(CHD3), 20(CD4) 26(C2H4), 30(C2H6), 32(C2D4), 36(C2D6), 39(C3H8)

タイル内部へ重水素が侵入、蓄積していることを示唆 Result(1) ~第一壁(FW3)のTDSスペクトル~ 表面 バルク 未照射 H2 HD  D2  バルクのDD,HDのスペクトルは表面と比較してかなり少 未照射ではDはほとんど観測されず タイル内部へ重水素が侵入、蓄積していることを示唆

Result(2) ~第一壁(FW3)深さ方向のH+D蓄積量~ 表面よりも蓄積量は少ない。重水素Dの蓄積も確認 4.0 プラズマ対向面 黒鉛タイル 3mm ~10mm 24mm ~15mm 3.0 D H+D retention [x1022 atoms/m2] 2.0 1.0 H 表面 (0mm) バルク(3mm) バルク(10mm) バルク(15mm) バルク(24mm) 未照射 水素(H+D)の蓄積は深さ方向にほぼ一様 バルクでは使用前に比べ加熱脱ガスにより蓄積量が減少

Result(3) ~ダイバータ損耗部(OD2)のH+D蓄積量~ 表面よりも蓄積量は少ない。重水素Dの蓄積も確認 4.0 3.0 H+D retention [x1022 atoms/m2] D 2.0 1.0 H 表面 (0mm) バルク(3mm) 未照射 バルクでは使用前に比べ、プラズマ照射により蓄積量が増加

バルクへ蓄積したDが周囲環境下のHと同位体置換されたことを示唆 Result(4) ~バルクと未照射試料のH+D蓄積量~ H+D retention [x1022 atoms/m2] 2.0 1.0 H D OD1 OD2 FW3 FW2 FW1 未照射黒鉛 最終放電DD 放電履歴に寄らず、バルクでの水素蓄積はHが支配的 バルクへ蓄積したDが周囲環境下のHと同位体置換されたことを示唆 場所による蓄積状況が異なる。

加熱脱ガスと放電中の水素取り込みとの競合で増減が決まる Discussion ~バルクと未照射試料のH+D蓄積量~ 場所による蓄積状況が異なる。 H+D retention [x1022 atoms/m2] 2.0 1.0 H D OD1 OD2 FW3 FW2 FW1 未照射黒鉛 < 拡散、蓄積 加熱脱ガス 拡散 蓄積 > 加熱脱ガス 600-800 K 1400 K 加熱脱ガスと放電中の水素取り込みとの競合で増減が決まる

Discussion 600-800 K ~第一壁蓄積イメージ~ 放電中タイル温度 →(粒内拡散≒0、空隙拡散のみ) 対向面近傍 DDプラズマからの直接入射(粒の深部へ) 放電終了後も、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。 直接入射されたDは残留する。 バルク内部 空隙拡散により粒のごく表面に蓄積 放電終了後、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。

Discussion 1400 K ~ダイバータ損耗部蓄積イメージ~ 放電中タイル温度 →(粒内拡散活発) 対向面近傍 DDプラズマからの直接入射(対向面近傍のみ) 放電終了後、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。 バルク内部 活発化した粒内拡散により粒表面より深い位置へ拡散、蓄積 空隙侵入により粒のごく表面に蓄積 放電終了後、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。

Summary タイル表面での蓄積量に比べてかなり少ない。 濃度はバルク内ほぼ一様、Hの蓄積が支配的、Dの蓄積も確認。 JT-60Uで使用された黒鉛タイル内部への水素蓄積量を測定した。 タイル内部への単位体積あたりの水素蓄積量は、 タイル表面での蓄積量に比べてかなり少ない。 濃度はバルク内ほぼ一様、Hの蓄積が支配的、Dの蓄積も確認。 Dの蓄積は粒界侵入で、粒表面に限定的と考えられ、周辺環境下 のH2或いはH2Oによって、容易に同位体置換されてしまう。 未照射黒鉛の水素保持量と同程度で、加熱による脱ガスとプラズマ 照射中の取り込み(空隙侵入による水素の、粒界表面近傍での捕 獲)との競合で、大小が決まる。 タイル厚、真空容器に占める面積の大きさを考慮すれば、その総量 は再堆積層への蓄積に匹敵する。トロイダル、ポロイダルの詳細測 定が必要である。

Appendix ~イオンの直接入射と空隙拡散~ Ref: T.Tanabe, et al., JNM 209(1994)109-112

Appendix ~放電時間とH+D蓄積量の関係~ H+D retention [x1022 atoms/m2] 4.0 3.0 2.0 1.0 10000 30000 50000 70000 ○ 第一壁表面 ○ ダイバータ損耗部表面 ● 第一壁バルク ● ダイバータ損耗部バルク HH+DD放電時間 [sec]

Appendix ~第一壁(FW3)のTDSスペクトル~ 表面 バルク 未照射 H2 CH4 HD  CHD3 D2 

~ダイバータ損耗部(OD2)のTDSスペクトル~ Appendix ~ダイバータ損耗部(OD2)のTDSスペクトル~ 表面 バルク 未照射 H2 CH4 HD  CHD3 D2 

Appendix ~各試料の表面とバルクのH+D蓄積量~ H+D retention [x1022 atoms/m2] 4.0 3.0 D 最終放電DD 最終放電DD 4.0 3.0 D H+D retention [x1022 atoms/m2] 2.0 1.0 H 表面 バルク 表面 バルク 表面 バルク 表面 バルク 表面 バルク FW1 FW2 FW3 OD1 OD2

~放電時間とガス脱離するDの割合の関係~ Appendix ~放電時間とガス脱離するDの割合の関係~ (HD+DD)/Total D retention [-] 0.10 0.08 0.06 0.04 10000 30000 50000 70000 0.02 ● 第一壁バルク ● ダイバータ損耗部バルク HH+DD放電時間 [sec]

Appendix プラ図目対向黒鉛タイル仕様 Sample 第一壁 ダイバータ IG-430U ETP-10 CX2002U Density [g/cm3] 1.82 1.75 Grain size [um] 9.2 10 60

Appendix 昇温脱離法 昇温条件と脱ガス信号強度(T-900K)、装置外略図 210-6 Pa 時間(分) 1273 300 40 40 50 温度T [K] T=900 K

Appendix ~タイル放電履歴~ 第一壁:外側赤道面 外側ダイバータ、損耗 タイル加工模式図 Open divertor ~420K baking (long pulse operation ~60s) Inner side pumping Both side pumping FW3 FW1 FW2 OD1 OD2 ~573K baking (short pulse operation ~15s) 第一壁:外側赤道面 プラズマ対向面 黒鉛タイル 3mm ~10mm 24mm ~15mm 外側ダイバータ、損耗 タイル加工模式図

(タイル温度またはTDSピーク温度で整理できないかな? 使用される前の蓄積(全部軽水素)に対して、脱ガスで減少、プラズマ照射で増加、これはプラズマ照射中のガス(中性粒子の粒間への侵入による) その証拠の一つとして、ダイバータの高温で吸収量が多いことが挙げられる(ガスによる平衡吸収量は温度が高くなると、減少するが、拡散とのかねあいで、吸収量のピークが1000程度になる (タイル温度またはTDSピーク温度で整理できないかな? 要検討:非照射試料では粒内、照射試料では粒界にたまっていることが実験的に示せるとよい、TDSスペクトルの比較

Appendix 600-800 K ~第一壁蓄積イメージ~ 放電中タイル温度 →(粒内拡散≒0、空隙拡散のみ) 対向面近傍 DDプラズマからの直接入射(粒の深部へ) HH放電中、粒深部に打ち込まれたDはHと置換できず 放電終了後も、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。 バルク内部 空隙拡散により粒のごく表面に蓄積 DD後のHHによりほとんどDとHは置換 放電終了後も、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。

Appendix 1400 K ~ダイバータ損耗部蓄積イメージ~ 放電中タイル温度 →(粒内拡散活発) 対向面近傍 DDプラズマからの直接入射(対向面近傍のみ) HH放電によりDとHほとんど置換 放電終了後も、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。 バルク内部 活発化した粒内拡散により粒表面より深い位置へ拡散、蓄積 空隙侵入により粒のごく表面に蓄積 DD後のHHによりほとんどDとHは置換 放電終了後も、周囲環境下のH由来の分子と同位体置換される。