磁歪式振動発電の 高出力化と発電床への応用 「磁歪式振動発電の高出力化と発電床への応用」と題しまして、磁気応用グループ 知能電気機器研究室の岩本が発表させていただきます。 磁気応用グループ 知能電気機器研究室 岩本泰典
研究背景・目的 振動エネルギー(力) 電気エネルギー(起電力) 発電量の高出力化と人の歩行運動からの発電 振動エネルギー(力) 電気エネルギー(起電力) 振動発電とはその名の通り振動エネルギーから電気エネルギーを取り出す発電方法です。照明などの電源として使うことで送電コストをなくすことができるといった利用価値があります。そこで本研究では道路の照明の電源に利用することを目標として、磁歪式振動発電の高出力化と人の歩行運動による発電についての研究を行いました。 発電量の高出力化と人の歩行運動からの発電
磁歪材料FeGa 鉄ガリウム合金 Fe81.6Ga18.4 逆磁歪効果 磁歪定数dが大きい 機械強度大 発電デバイスに最適 応力 磁束密度が変化 鉄ガリウム合金 磁歪定数dが大きい 機械強度大 本研究室では磁歪材料「鉄ガリウム合金」を使用した振動発電技術の開発を行っています。鉄ガリウム合金は、逆磁歪効果という加えられた応力によって磁束密度が変化するという性質をもった磁歪材料の1つです。機械強度が高く、比透磁率が100程度ある、といった発電デバイスに適した特徴を多数持っています。 発電デバイスに最適
磁歪式振動発電素子の構成・原理 (逆磁歪効果) (電磁誘導) 振動発電素子の構成図および原理 応力の変化 磁束の変化 起電力 ④発電素子の構成 鉄ガリウム合金を利用した振動発電素子について説明します。3mm×15mm×100mmの鉄ガリウム合金から成る磁歪板を平行に並べ、その両端を鉄製のヨークに接合してあります。一方には力を加えるためのアルミ製の移動子が取り付けてあります。なお、バイアス磁界を付与する必要があるのでこのようにネオジム磁石を取り付けてあります。実際に作製した素子の写真がこの右の図になります。 素子の片端を固定し、移動子先端に図のように力を加えると、上下の磁歪板で応力が加わり、逆磁歪効果により磁束が増減します。加振力によって素子が周期的に振動すると、磁歪板の内部で磁束周期的に増減し、ファラデー電磁誘導の法則によりコイルに起電力が発生します。 振動発電素子の構成図および原理 応力の変化 磁束の変化 起電力 (逆磁歪効果) (電磁誘導)
実際に作製した素子の写真 実際に作製した素子
振動発電の等価モデル 振動発電素子の等価回路 振動発電は機械系の運動方程式と電気系の回路方程式で表わされます。素子に力を与えると、素子に振動速度が生じます。その速度に応じた起電力が逆磁歪効果により回路方程式に入力されます。また、この起電力によって電流が流れると、振動を打ち消そうとする反力が素子に働きます。したがって、振動発電は図のような等価回路図で表わすことができます。 このように振動発電は機械系と電気系が密接に結合しています。 振動発電素子の等価回路
自由振動による発電 自由振動による発生電圧と変位の実験方法 素子の高出力化のための実験を行いました。素子の片端を固定し、一方に錘を糸で吊るして切る事で素子を自由振動させて発電を行いました。移動子先端の変位と負荷での電圧を測定しました。 自由振動による発生電圧と変位の実験方法
自由振動による変位と電圧 変位に応じた電圧が発生 自由振動による変位と開放電圧の時間応答 左の図が移動子の先端の変位と開放電圧、右が負荷を結線したときの変位と電圧の時間応答です。50Nの入力によって素子が自由振動し、その変位に応じた開放電圧として最大電圧24Vが生じていることわかります。負荷にて取り出すことのできる出力エネルギーは電圧からこのように算出できます。 自由振動による変位と開放電圧の時間応答 変位に応じた電圧が発生
自由振動による変位の減衰 振動エネルギーが電気エネルギーに変換されている 変位の時間応答の比較 左の図が移動子の先端の変位と開放電圧、右が負荷を結線したときの変位と電圧の時間応答です。50Nの入力によって素子が自由振動し、その変位に応じた開放電圧として最大電圧24Vが生じていることわかります。負荷にて取り出すことのできる出力エネルギーは電圧からこのように算出できます。 変位の時間応答の比較 振動エネルギーが電気エネルギーに変換されている
抵抗と出力エネルギーの関係 出力エネルギー 抵抗と出力エネルギーの関係(理論値と実験値の比較) 負荷抵抗を変化させたときの出力エネルギーを調べたところ、40Ωに整合がとれ、23mJのエネルギーが取り出すことができました。振動発電は機械系のパラメータも含めた整合条件となり、素子の内部抵抗6.4Ωと異なった値でエネルギーを最も多く取り出すこと出来ました。この後はこの40Ωを最も電力の得られる負荷として利用しました。 抵抗と出力エネルギーの関係(理論値と実験値の比較) 出力エネルギー
発電床への応用 歩行運動から電力を取り出す 発電床の構成および原理 次に高出力化した素子を利用して人の歩行運動から電力を取り出す機構を考えました。発電素子を設置し、四隅にゴム足を取り付けた床板と磁石で吸着させた構造になっています。 発電床を踏むと、素子が一体となって床板が沈み込みます。素子が元に戻ろうとする力が磁石の吸着力を超えた時、磁石が脱着し、素子が自由振動します。これにより発電します。 発電床の構成および原理
歩行運動からの発電 これが実際に歩行運動から発電を行う動画です。 歩行運動からの発電の様子
歩行運動による発電の実験方法 発電床の発電に関する実験方法 これが歩行運動からの発電の実験方法です。素子の移動子先端と負荷での電圧を測定しました。負荷にはさきほど整合のとれた40Ωの抵抗を結線しました。 発電床の発電に関する実験方法
歩行運動による変位と発生電圧 最大電力5.6W,出力エネルギー31mJ 磁石脱着時の電圧・変位の時間応答 そのときの変位と電圧の時間応答波形がこの図です。移動子先端が4mm曲がったところで磁石が脱着し、素子が自由振動しています。そのときに負荷抵抗で最大電圧15Vが発生しました。ここから出力エネルギーは31mJとなり、人の歩行運動からエネルギーを取り出すことができました。 磁石脱着時の電圧・変位の時間応答 最大電力5.6W,出力エネルギー31mJ
まとめおよび今後の課題 まとめ 機械系と電気系を考慮した整合条件 歩行運動から電力を取り出す機構 足踏み1回で5.6W,31mJのエネルギー 設置する素子の数を増加 素子と床をつなぐ磁石の検討
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応力分布図 平均 最大 長手方向応力[MPa] 22.3 86.4 長手方向の応力分布
バイアス磁界の付与による動作点 引っ張り方向・圧縮方向の両方 大きい磁歪定数で動作 内部磁束密度が0.75T 図 FeGaのS-H曲線およびB-H曲線
パラメータの導出方法 図 開放状態の変位の時間応答
Matlab Simulinkによる解析 Mechanical circuit coupling coupling Electric circuit Electric power 振動発電の理論モデル
容量可変時の発電量 150μF付近で40Ω時で27mJ、6.4Ω時で14mJ 40Ωのみで24mJ 6.4Ωのみで12mJ 図 出力エネルギーーキャパシタ容量特性 150μF付近で40Ω時で27mJ、6.4Ω時で14mJ
衝撃式発電床
衝撃式発電床の発電量