NICT 鹿島ー小金井基線VLBIを用いたSgr A*強度モニター観測 竹川俊也、岡朋治 (慶應義塾大学)、関戸衛 (情報通信研究機構) 概要 銀河系中心に位置する電波源Sgr A*は約400万太陽質量の超巨大ブラックホール(SMBH)と認識されている。このSgr A*は電波以外では極端に暗く、質量攻略率および放射効率が極めて低いと考えられている。昨年、銀河系中心SMBHに向かって落下しつつあるガス雲G2の発見が報じられた(Gillessen et al. 2012)。G2の質量は3地球質量程度であるが、Sgr A*に質量降着することにより様々な波長域で大きな増光を引き起こすことが期待されている。最新の予測によれば、G2本体の最接近は今年9月もしくは来年の3月と推定されているが、今年4月の時点で既に潮汐破壊された断片が近心点~2000Rsを通過しており、正確な増光のタイミングは全く予想できない。SMBHの理解を深めるために、この増光現象を捉えることは極めて重要であり、あらゆる波長域において可能な限りの頻度で Sgr A* の強度モニター観測を行うことが望ましい。 私たちはG2落下に伴うSgr A*の電波での光度変動を捉えるために、今年 2 月半ばから情報通信研究機構(NICT)鹿島ー小金井輝 線 VLBI システムを利用して8 GHzおよび2 GHzでの強度モニター観測を実施している。望遠鏡はNICT の鹿島11 m鏡および小金井11 m 鏡を用いており、基線長は109 kmである。7月24日現在の総観測日数は35日で、各日の観測時間は約5時間であり、時間スケール変動の検出も可能である。強度較正天体と してNRAO530 を含む4つのクェーサーを用いている。現在のところ、Sgr A*は2 GHzでは検出されておらず、8 GHzでのフラックス密度は0.48±0.05 Jy と非常に安定している。Sgr A*の増光をいち早く検出し、世界中の研究機関に警報を発することもこの観測の重要な役割である。本ポスターではこれまでの観測結果および現状を報告し、今後の展望を述べる。 銀河には、中心部だけが異常に明るく、太陽系よりも小さな非常にコンパクトな領域から銀河全体の光度に匹敵するほどの莫大なエネルギーを放出している天体がある。このような天体は活動銀河核(AGN ; Active Galactic Nuclei)と呼ばれ、そのエネルギー源は太陽の100万倍から10億倍もの質量をもつ超巨大ブラックホール (SMBH)がつくる重力エネルギーであると考えられている。活動銀河核は全ての波長域で激しい光度変動を示すことが知られており、数倍もの増光を示すものもある。この時間変動に関する研究から、近年では光度が低く(< 1042 erg s-1)母銀河に埋もれてしまっている低光度活動銀河核がいくつも見つかっており、超巨大ブラックホールに起因する活動銀河核のような活動性は銀河一般に普遍的な現象である可能性が示唆されてきた。 背景 AGN統一モデル ブラックホールエンジン 降着円盤内で効率よくエネルギーが変換 様々な種類のAGN ・セイファート銀河 ・電波銀河 ・クェーサー ・ブレーザー ・ライナー 標準円盤 重力エネルギー→運動エネルギー →熱エネルギー→放射エネルギー 降着ガス密度が低いと... エネルギー変換が非効率的 重力エネルギー→運動エネルギー →熱エネルギー→放射エネルギー RIAF円盤 本質的な違いは無い 見込む角度の違い 銀河系中心 電波源Sgr A* めちゃ暗い おとなしい しょぼーん(´・ω・`) 謎のガス雲G2がSgr A*に近づいてきている!! 今年4月に取得されたG2の位置速度図。(Gillessen et al. 2013)横軸は視線速度、縦軸はSgr A*までの距離を表す。実践はG2の予測軌道で、すでに朝夕破壊された断片が近心点を通過しているのがみてとれる。 G2の質量は3地球質量程度 G2がSgr A* に質量降着すれば… 2008.3 ★ 増光?! 2011.3 2004.5 4月時点で 一部が既に近心点通過していた! さじえー は元気に?! キリッ(`・ω・´) 左図の星印はSgr A*。右図の赤い点線はG2の予測軌道。青い線はSgr A*周りを公転する恒星S2の軌道。(Gillessen et al. 2012) → AGN化?! 観測史上初の事象!(何が起こるかわからない!) いつ増光するかわからない!(モニターすべき!) 世界中が注目! 結果 at 8 GHz 電波での観測 天気の影響受けにくい!年中無休で観測できる! 情報通信研究機構(NICT)の鹿島ー小金井基線VLBI を用いて8 GHzおよび2 GHzのSgr A*強度を監視! 鹿島 11m鏡 観測周波数 2.21–2.29 GHz / 8.2 – 8.5 GHz 相関処理システム K5/VSSP32 (32 Msps/1 bit/16 ch) 観測時間 Sgr A*が昇って沈むまでの約5時間 109.1 km 慶應大 強度較正天体として 4つのクエーサーを順に観測 NRAO530 1921-293 1622-253 1622-297 小金井 11m鏡 分解能:~70 mas at 8 GHz 0.48±0.05 Jy程度で非常に安定 まだ目立った変化なし! Sgr A*と強度較正天体を数分置きに交互に観測 2 GHz ではフリンジ検出できず *1日の平均値をプロット フラックス密度は、NRAO530を3.3 Jyで一定と仮定し相関振幅の比をとることにより算出 SSgrA*= 3.3×ρSgrA*/ρNRAO530 Jy エラーバーはその日のデータのバラツキ具合 今後 いち早く増光の兆候を捉えるために、より高頻度で観測 強度較正法の再検討 増光するのを楽しみに、少なくとも来年の5月までは続けていく予定です。 変化があれば即ご報告致します!