当院における透析間体重管理指導方法についての検討

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当院における透析間体重管理指導方法についての検討 医療法人社団スマイル クレア焼山クリニック1) 医療法人社団スマイル 広島ベイクリニック2) 医療法人社団スマイル 博愛クリニック3) ○宮園和也1)、鎌田正彦1)、木曾早苗1)、永谷美子1)、藤井恵子1)  桐林慶1)、沖永鉄治2)、松尾晴美2)、平林晃2)、松見勉3)、高杉敬久3)

緒 言 透析間の体重増加は、患者の生命予後に関わる重要事項である。 緒 言  透析間の体重増加は、患者の生命予後に関わる重要事項である。  当院の維持透析患者の中には、体重増加率を3~5%以内に管理できない傾向にある患者が約30%いるため、管理意識を改善する必要がある。

目 的  当院の透析患者における体重の自己管理状況を把握し、自宅での体重測定、記録を促すことによる体重増加率、各種検査データの変化について検討する。

対 象 男/女(人) 年齢(才) 透析期間(年) DW(kg) DM/非DM 対 象  週初めの体重増加率が過去5ヶ月において月間平均で5%を超えていたことが一回以上あった透析患者のうち、インフォームドコンセントに基づいて了承を得ることが出来た14名。 男/女(人) 年齢(才) 透析期間(年) DW(kg) DM/非DM :4/10 :66.6±13.9 :6.8±6.6 :51.9±13.2 :10/4 (平均±標準偏差)

方 法 (1)  体重の自己管理について口頭アンケートを行なった上で、対象患者に対して塩分、水分制限を中心とした体重管理指導を行い、記録用紙(別紙参照)を用いて自宅での体重測定、記録を促した。糖尿病症例については、血糖上昇に伴う口渇症状に関連して血糖管理についての指導も行なった。

方 法 (2) 体重増加率について、指導前五ヶ月間と指導開始後一ヶ月間の平均値を比較検討した。 方 法 (2)  体重増加率について、指導前五ヶ月間と指導開始後一ヶ月間の平均値を比較検討した。 同様にNa、K、Cl、アルブミンについて、また糖尿病症例については随時血糖、グリコアルブミン(以下GA)について検討を行なった。なお、統計処理にはWilcoxonの符号順位検定を用いた。

口頭アンケート内容 問1.透析間の体重増加は気になりますか? a) とても気になる、b) 少し気になる、c) どちらでもない   d) あまり気にならない、e) 全く気にならない 問2.ご自宅で体重測定をしていますか?   a) はい、b) いいえ 問3.その体重をノートなどに記録されていますか?

口頭アンケート結果 ~自宅での体重測定実施率~  問1で「透析間の体重増加を気にしている」と回答した患者群では、自宅での体重測定実施率(問2)が80%であったが、記録をしている人は10%しかいなかった(問3)。

週初め体重増加率 週中日体重増加率 n=14 n=14 p<0.01 p<0.05 (%) (%) 6.0 4.0 5.0 3.0 4.0 3.0 2.0 2.0 1.0 1.0 週初め、指導前 週初め、指導後 週中日、指導前 週中日、指導後  体重管理指導の前後における体重増加率は、週初めで5.1±0.6から4.7±0.7(%)、週中日で3.4±0.3から3.1±0.4(%)へとそれぞれ有意に低下した。(平均±標準偏差)

体重管理指導の前後において、有意な変化を認めなかった。 血清ナトリウム値   血清クロール値 n=14 n=14 (mEq/L) (mEq/L) n.s. n.s. 160 120 140 100 120 80 100 80 60 60 40 40 20 20 指導前Na 指導後Na 指導前Cl 指導後Cl 体重管理指導の前後において、有意な変化を認めなかった。

血清カリウム値 血清カリウム値 血清カリウム値 血清アルブミン値 血清アルブミン値 血清カリウム値  血清カリウム値  血清カリウム値  血清アルブミン値 血清アルブミン値 n=14 n=14 (g/dL) (mEq/L) p<0.01 n.s. 6.0 4.0 5.0 3.0 4.0 3.0 2.0 2.0 1.0 1.0 指導前K 指導後K 指導前ALB 指導後ALB  体重管理指導の前後において、血清カリウム値は4.6±0.6から4.4±0.5(mEq/L)へと有意に低下した。アルブミン値に変化は認めなかった。 (平均±標準偏差)

随時血糖値 グリコアルブミン n=10 n=10 (mg/dL) (%) p<0.05 n.s. 35 200 30 25 150 20 100 15 10 50 5 指導前血糖 指導後血糖 指導前GA 指導後GA  体重管理指導の前後において、随時血糖に変化は認めなかったが、GAは23.2±7.5から21.8±6.4(%)へと有意に低下した。(平均±標準偏差)

考 察  自宅での体重測定、記録により患者自身が日常レベルで状況を把握できたことで、体重増加が抑制されたと考えられる。糖尿病症例については、血糖改善に伴って、口渇、飲水について多少なりとも改善があった可能性が示唆された。  しかし今回、体重管理指導を受けること自体について了解が得られない患者もあり、更なる教化啓発について検討する必要があると思われた。

患者自身による自宅での体重測定および記録の指導は、体重増加の抑制に有効である。 結 語  患者自身による自宅での体重測定および記録の指導は、体重増加の抑制に有効である。